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2019年4月18日 (木)

AIが熟練工を育てる世界

3月の中旬に、一週間びっちりお客様のとある工場でプロジェクトのためのインタビューと情報収集に行って来た。プロジェクトの中身を詳細に記載することはできないのだが、製造工程にこれまでとは異なる技術を用いることで、工場で働いている方の生産性を飛躍的に増加させたい・・・というのがプロジェクトの目的だ。



理系とはいえソフトウェア側にずっといたので、工場の中に一週間もいて作業をしっかりみるという機会はこれまで一度もなかったのだが、今回見てみて、あらためて「まだまだ人間にしか出来ない世界は存在する」のだなということを理解できた。その工場ではμmオーダーの製品を作っており、その製品の製造自体はほぼ自動化されているのだが、"その製品を作るための自動化ラインのメンテナンス"はほぼ完全に人の手によるものである。残念ながら、現在の技術ではどこで発生するかわからない故障に対して自動で対応できるロボットを作ることは不可能であり、たとえ「人工知能が人間の知恵を超えて、人工知能が人工知能自体を作るようになる」といわれるシンギュラリティを超えても、「製造設備を全て作ることができる製造ロボット」はまだ実現しそうにない。鍛えられた人間の微細を感じる感覚というのは、まだまだ模倣が難しいのだ。

 

もう一つ、今回の出張期間では製造設備設計を行う方に話を聞く機会があったので、"世の中では、AIや新技術により「人間の仕事がなくなってしまうのではないか・・?」という漠然とした不安感があると言われているが、どう思うのか"という質問をしてみたところ、大変示唆に富んだ回答をいただくことが出来た。
 
  • 少なくとも自社(および自社グループ)の工場では継続的に人間が作業をしなければならない工程や、そもそも関わっている人を減らすこと(省人化)をしているので、人間自体が工程から減ることは脅威ではない。それが機械的に実現されるのか、それともソフトウェアによって実現されているのかの差だけであると感じる。
  • 上記のような考え方をとっている一方で、生産数自体は増加しつづけており、全体としての労働者数は減ってはいない。全てを自動化することはまだ遠く、また出来たとしても生産設備改善やメンテナンスは常に必要であり、AIやロボットが人間の仕事をゼロにしてしまうという未来がすぐに来るとは思えない。
  • 現状で人間が関わっている部分というのは、これまでの手法では「どうやっても人間を排除できなかった工程」であり、全工程のほんの一部に人間が残っているというのは労働者にとってもあまりいい環境ではない。できることなら、枯れた製品については早めに完全自動化を実現したい。
 
 
このように、工場の現場では「限られた人間のみが行える業務(習得が極めて難しい業務)」と「既に汎用対応が終了している業務」(ロボットやソフトウェアで対応が可能な業務)が並存しており、長期的に見れば後者の領域は拡大され続けているが、製品の精度や変更タイミングの短期化、そしてメンテナンスの複雑化といった問題が存在している限り人間がなすべき作業というのは存在し、さらにその難易度は上がり続けていくのだ。
難易度があがるということは当然習熟までに時間がかかるし、そもそも習熟出来る人間というのもそれなりに限られてくる。少なくとも今回訪問したお客様では、習熟した人間を育成するスピードよりも、製品製造量の拡大スピードの方が大きいため(人材育成スピード < 製造量拡大スピード)人材は常に足りなくなるという危機感を持っており、その状況を改善するために「人材育成にAIを含む最先端の技術を活用したい」と考えているのだ。
 
これは少なくとも今後10年以上は続く、技術的なトレンドなのではないかな・・・と個人的には考えている。以前に、技術はコストダウンだけではなく人間の能力を拡張(Augmentation)する方向に利用されるだろうと書いたことがあるが、まさに日本の工場でも同じようなトレンドを見ることが出来た。日本で取り上げられるのは圧倒的にコストダウンの話が多いが、これからもこういった現場の深い知識(Deep knowledge)を活用した技術開発を提供していきたい。

2019年3月29日 (金)

USPSで荷物を送る時の注意

今の会社は法務部や財務といった、いわゆるバックオフィス部門は海外には置けないという構造になっているので、契約書やら請求書といった文書類を扱うのはすべて本社側に頼む必要がある。ほとんどの日本企業は原本を必要とするので、サイン済みのものをシリコンバレーの本社から毎回送ってもらう必要があるわけだが、当然、お客さんの手元に物理的に届くまでには時間がかかる。

日本側にいる自分たちとしてはこういった処理は早く終えてしまいたいし、日本企業はだいたいにおいて「◯◯日までに届きます」という情報を事前に欲しがるものなので、本社側から資料を送ってもらう場合には、期間がヨめてトラッキングが確実な方法であるEMSやFedexを利用するようにしている。普通の郵便に比べて高いけど、安心料含めての値段である。本社の人間も慣れている部署の場合は、特にお願いをしなくてもどちらかの方法で送ってきてくれる。

 

ところが先日、滅多にない税務関連の部署に書類をお願いしたところ「USPSで送りました」という返事がきた。USPSというのはアメリカの郵便局なのだが、EMSとわざわざ指定されていなかったので、心の中でアラートが鳴り嫌な予感がしたのであった(※1)。とりあえずトラックナンバーを送ってくれ、というお願いをしても「今週中につくと思うから大丈夫」という返事が帰ってきたきり連絡なしになってしまい、さらに嫌な予感が膨らむだけで、待つこと10日。やはり書類は届かない。EMSやFedexならとっくに届いているのに。

さすがに10日経っても届かないとこちらも怒りが湧いてきてマシンガンのようにメールを送ると「USPSでは遅れることもありますので・・」という怒りに油を注ぐような返事がヘラっと帰ってきたので、担当部門長(連絡先の人間)の上司に「ふざけんな、さっさと再発行してFedexで送りやがれ」というメールを送った対応をしてもらっているところ、ようやく書類が到着。米国発から実に15日間の長旅であった。書類1枚で15日、まだまだ地球は大きい。

 

今回こんなに到着が遅れたのは、発送した人間がUSPSのサービスカテゴリーをよく理解しておらず「普通郵便扱い」で送ってしまったのが理由なのだが、確かにUSPSのサービス名称はめちゃくちゃわかりづらい。はっきり言ってどれが一番早くて、どれが一番遅いのか、名称だけではさっぱりわからない。4つのサービス名称は以下。

  • Express Mail International
  • Priority Mail International
  • First Class Mail International
  • Global Express International

あまりにもわかりづらいのでTwitterで、どれが一番早く届くでしょうか?というアンケート結果をやった結果、First Class Mailが一番早い・・・という回答が最も多かった。自分だってFirst Classだし一番早いと思ったし。


 

 

ころが、なんとこのFirst Class Mailが一番遅いのである! そんなんわかるか!
15日間かかった今回の書類もFirst Class Mailで送られてきており、おそらく発送担当者も知らなかったと思われる。しかもこのカテゴリーは普通郵便と同じ扱いをされているので、トラックナンバーもあってないようなもので、国際郵便は追跡できない。

 

ということで、もし米国から郵便を送ってもらう際には、ぜひどのサービスカテゴリーで送ってもらうかを指定することをオススメする(普通に日本で生活していると、ほぼそういう機会はないと思うが・・・)。カテゴリーごとの違いはこちらのサイトを参照のこと。ちなみにEMSに該当するのはExpress Mail Internationalである。
明らかに名称がミスリーディングなのに変更しないということは、そもそも国際郵便のニーズはないということなのかしれない・・・。

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2019年3月 6日 (水)

CEIBSが今年のFT MBA ranking5位に

多少の上下はありつつも基本的に右肩上がりを続けている卒業したCEIBSのMBA ranking (Financial Times)もついに2019年版では5位になったようだ。上にいるのはウォートン、HBS、スタンフォード、INSEADという文字通りの世界的なMBAスクールのみで、下にはLBSやChicago Boothがあるという、なかなかに壮観な表がFTのページを開くと出てくる。なんと、MITよりも上なのだ。なんかの間違いじゃないかと思わずにはいられない。

Business School Ranking from the Financial Times 2019

20190306_113815_2


まあ、これはFinancial timesによるものなので、あくまで一面的な評価でしかない。他のMBAランキングでは名前が全く出てこないということもまだまだあるわけだし。以前にも書いたことがあるように、CEIBSの運営はある意味で非常に企業的に「MBAランキングをあげること」を目標にプログラムが組まれている。MBAランキングは様々な指標により構成されており、結局このランキングを目標にすることは学生側にとってもメリットになることが多いため、基本的にランキングをあげるための努力をするということは、学生の視点から見ても間違っていないとも思う。


ランキングの決定の中で最も重要な要素の一つは「卒業後のサラリーアップ」で、この項目でCEIBSは非常に強い(※1)。海外から来た学生が大きくサラリーを上げる機会を多く手に入れることはなかなか難しいと思うので、この項目に主に貢献しているのは大陸の学生だと思う。とはいえ、僕自身もそうであるように、5年後ともなると、それなりに帰った後の評価も上がってくるので、海外に戻って行った卒業生もこの項目には少しは貢献をしているはずだ。

一方で、今回の項目の中では「卒業生が推薦するかどうか」というところでは、あまり成績がよくなかったと聞く。これは卒業生が後輩に対してスクールを推薦するかどうか・・ということで、究極的には個人の考えによるものだが、確か僕もこの項目ではそれほど高い点数はつけなかった記憶がある。理由としてはだいたい以下のようなもの。

  • 学費や生活費が上がって来たので、かつてのように「米国と比較して安価にMBAを取れる」というメリットが薄れて来てしまったこと。近しい金額を払うのであれば、欧米のビジネススクールを比較した上で決定をした方が良いと思う。
  • 中国経済のレベルが上がって来て、”先進国の人間"ボーナスが使いづらくなったこと。日本に戻って中国企業に雇ってもらうということは可能性としてあるが、大陸で働こうと思ったら自分がいた頃よりもさらに厳しい戦いが待っていると思う。現地採用でいいというのなら別だが、大陸で幹部候補生のようなキャリアを外国人が得るのは大変難しい。
  • 日本ではまだまだCEIBSの知名度が低くて、外資系コンサルやIBDなどに入ろうとした際の「下駄」がまだまだ低いこと。高くなった学費の元をとるためには給与の高い環境にいかなければならないが、CEIBSだとまだちょっと難しいように思う。


上記を見てもらえばわかるように、もし後輩がMBAを取るということにフォーカスをしているのであれば、他の選択肢も検討すべきというのが僕のスタンスである。一方で、もし中国ビジネスにかけたい、なんとしても中国で成り上がりたいのだ・・・という人がいれば、依然としてCEIBSはトップの選択肢の一つとして検討されるべきだと思う。Rankingがいいという理由でCEIBSを受けてくれる学生もいるだろうし、実際にそういう学生を拒否する必要は何もないのだが、単純にRankingという視点だけで選ぶとやはり米国の名門スクールとは、まだ日本における機会というのはかなり差があるというのが現実だ。
なので、CEIBSを検討する人は、rankingだけではなく「なぜ中国でMBAを撮りたいのか」をぜひ真剣に考えてから入学をしてほしいと思っている。自分が中国で何かを見つけたいと思うのであれば、きっと素晴らしい体験ができるはずだ。・・・・でも、何かの間違いでRankingが1位になったりしたら、やっぱり嬉しいよねぇ。

※1・・・なんだかんだいってもビジネススクールに行く最も大きな理由は、自分のキャリアをよくすること ≒ 収入を上げることである。世界を変える前に、まずは自分の生活の改善を願うのは人として当たり前だ。。

2019年3月 5日 (火)

今年最初の本社出張

一ヶ月ほど前になってしまうが、2月第1週に今年初めての本社(シリコンバレー)出張に行ってきた。入社前のインタビューで1回、2018年は合計で4回出張にいったので、今回は6回目ということになる。さすがにこれぐらい出張に行くと体も慣れてきて、時差ボケは依然としてあるものの体の疲労はかなり少なくなってきた。その要因の一つとしては、行きと帰りの便を固定にしたこともあると思う。行きは羽田を19時過ぎにたつJAL02便、帰りはサンフランシスコを午後に出るJAL01便だ。これだと、向こうに着くのは昼過ぎなので、ちょっと眠気を我慢して夜に早めに眠ってしまえば時差関係なく眠りにつくことができるし、帰りは日本につくのが夜なので、家に帰って洗濯物を片付けたり旅装を解いて寝るとちょうどいい感じになる。おかげで、到着2日目の時差ボケは如何ともしがたいものの、それ以外はかなりスムーズに向こうでも業務に入れるようになった。

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今回も、日本から連れて行くお客さんと2日間のワークショップをはじめとして予定がぎっしり詰まっているので、シリコンバレーを観光することはほとんど出来ない。もう6回も行ってるのに、AppleもFacebookもGoogleも見たことがないのだ。だいたい、毎回メンローパークにある本社周りの極めて小さい範囲で出張が終わってしまう。下手するとスタンフォードに足を伸ばす時間もないぐらいだ。

そんな感じで予定が詰まっていたので、今回唯一行けたのは、メンローパークのダウンタウン(と呼んでいいものか悩ましいが・・・)にあるTrader Joe's。行けたと行っても、ホテルからは10分もしない距離にあるので、ちょっと買い物にきたという感じである。
Img2167 日本ではなぜかトレジョのトートバックが人気というと、毎回本社の人間がばかウケするのだが、確かに実際に足を運んでみると何がそんなにいいのかよくわからないというのが正直なところ。確かに食べ物は近くにあるSafewayと比較すると新鮮だな〜という感じがするけど、トートバックがブランド化するほどのものだろうか・・。旅人的にはSafewayのほうがデリや食事がある分便利という気がするのだが・・。
そういえばSafewayには、Amazonのロッカーが置いてあった。楽天のロッカーが日本にあるようなものなんだろうけど、なんというかネット小売の受け取りロッカーがリアル店舗にあるというのはちょっと不思議な気もする。

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シリコンバレーというと基本的に常に晴れで、雨が足りないために水圧が足りない・・・みたいな話をホテルの人とすることが多いのだけど、今回はずっとグズグズとした天気で、最終日は大雨になってしまった。飛行機に登場してから、大雨のために滑走路が閉鎖になったという情報が流れてきて、結局1時間半ほど離陸が遅れてしまった。最初のアナウンスで1時間ぐらい遅れる・・・とあったので、"そうか、3時間ぐらいは遅れるのかな・・・”と頭の中で計算したのだが、ほぼアナウンス通りに動いてくれた。この辺りはまだまだ頭が中国で止まっているという感じがする。

2019年3月 4日 (月)

CEIBSが提供する1+1 lecture Tokyoに行って来た

少し前になってしまうが、2月の上旬は母校であるCEIBSが日本で課外講義+ネットワーキングパーティーを行うということで、久しぶりに卒業生(Alumni)として参加をしてきた。Global MBA rankingの上位にそれなりに安定的に入るようになって来たCEIBSだが、依然として日本人の入学生は少なく、プロモーションのためにこういったイベントを初めて数年(今回が5回目とのことであった)。数年間はほとんど結果が出なかったものの、2018年度入学生は5名と過去最高の日本人学生数となったとのことで、さらなる学生増を狙っているようである。

今回のイベントはCEIBSの教授が東京で現在ホットなトピックのレクチャーを行うということで、テーマは「米中貿易戦争と日本への影響(US-China Trade Conflicts and the Impact on Japan)」。授業を行うのは、我々の時代には全員必修だったマクロ経済を教えているXu Bin先生である。
マクロ経済はおそらく日本の大学の学部レベルにも満たない授業内容ではあったと思うのだが、授業は今回来日したXu BinとBalaという屈指の人気教授の二人でわけあって授業が行われていた。


ものすごく情熱的な授業を提供し、またフィランソロピーにも積極的に参加するということで学生の間でも人気の高かったBalaと比べると、当時のXu Binはより学者肌という感じでいかにも大学の先生という感じだったのでそれほど印象には残るタイプの教授ではなかった(ただし中国人の先生にしては、恐ろしく親しみやすかったらしく、中国人の間で人気は高かった)。
また、英語のアクセントが微妙にわかりづらいため、一生懸命話してくれてもよく内容がわからないということが時々あり、個人的には授業中にどうしてもわからなかった内容を偏微分方程式を使って議論をしたことを覚えている(それにより、同級生からはMath Masterというあだ名をいただいたのも懐かしい思い出である)。

今回は、そのXu Bin先生が提供する1時間半のプロラグムがメインコンテンツだったわけだが、久しぶりに話を聞いて、いい意味で驚きがあった・・・というか、Xu Binこんなに授業うまかったっけ?という感じで、聞き入ってしまった。CEIBSは世界TOPクラスのビジネススクールになるという目標を明確にしているだけあって、結構指導側の入れ替えも激しいのだが、さすがに長年生き残っているだけのことはあると感心した。というか、気がついたらAssociate Deanにもなっているし、偉くなったんだなぁ。

先生の話の中で面白かった内容を箇条書きするとこんな感じ。もともとCEIBSは中国にありながらもかなり「気を使わずに発言をする指導陣」が多かったのだが、今回は日本にいるということで、さらに積極的に自分が思っていることを話してくれたのではないかという気がする。
  • 政治的な意思決定は常に国民の動向を意識して行う必要がある。これは米国側のリーダーであるトランプだけではなく、中国側の習近平も同じである。共産党による一党独裁であっても、なんでも自分の思い通りにできるわけではない。
  • 現在の米中貿易紛争は、イデオロギーの戦いではなく、形の違う資本主義同士の戦い。なので、米国にとっては冷戦とは異なる側面がある一方で、かつての日本との戦いから学んでいる点がある。
  • 中国の資本主義は米国の資本主義と異なるというのは事実。一方で、中国経済が成長しているのは「共産党による管理・指導」があったからという認識は間違い。政府による介入や管理がなければ、中国経済の発展はもっと加速するはず。
  • 今後10年以内に、中国のGDPは米国を抜くと予想するが、それが真の意味での経済的な優位性や国の優位性を意味するわけではない。例えば、米国のパスポートとと中国のパスポートを比較した時に、どちらを取得したがる人が多いかで、国の優位度が計られたりもする。
  • 中国は中成長の罠から抜けられるかまだわからない

に気になったのは、ここ数年International Student(中国籍以外の学生数)の数が一貫して低下していること。データ上では自分がいた2011年入学組がピークでその時はだいたい45%が外国籍だったのだが(台湾籍、香港籍含む)、今はそれが30%程度に低下していた。DiversityはMBA rankingの評価要素の一つで、CEIBSも積極的に外国籍の学生を採用しようとしていたが、最近は少し戦略が変わったのかもしれない。
学費も上がって来たことでCEIBSのコスト上のメリットが薄くなったということもあるだろうし、中国が成熟して来て、外国人を「中国国内で採用する必要」がなくなって来たということかもしれない。いずれにしても、現在スクールにいったらかなり雰囲気が違っているんだろなぁ・・・。

2019年1月21日 (月)

2019年が始まりました

2019年が始まりました‥と言っても既に3週間が終わってしまい、すっかり通常運転。今ぐらいの年齢になると一週間が立つのが早くて、土日は子どもと遊んでとしている間にあっという間に時間がたってしまう。昔ほど夜遅くまで起きていたいという気もしくなったし、子どもの寝かしつけをしていると自分の方が先に寝てしまうことの方が圧倒的に多いくらいだ。

昨年は1月に転職をしてキャリアという面でおおきな変化があり、家庭生活でも子どもが幼稚園に通うようになりとこちらも大きな変化があった1年だった。そして幸運なことに、両方ともに2017年と比べても良い方に進むことが出来た。


まず、仕事面では新しい会社に移った。今勤めている会社、SRI Internationalは知名度こそ日本ではほぼないが、現在の生活にかかせない技術の多くを作って来た世界最大の非営利の研究組織である。非営利といってもNPOではなくて、運営はいかにもアメリカ企業という形で行われている。一方で、これまでに勤めていた会社に比べれば圧倒的に小さな会社になったわけで(前職は世界全体で数十万人を抱えていて、こちらは全世界で2,000人いない)、小ささゆえのアットホームさや風通しの良さを感じている。また、仕事面では営業・・・というか顧客対面職に戻り、それなりに楽しい毎日を過ごすことができた。おかげさまで日本の景気もまだ悪くなる一歩手前で、目標にも達成することができて、立ち上がりの1年は総じてとてもpositiveだった。

家庭生活では子供が幼稚園に入園して、ようやく「規則正しい生活」というのが家庭にやってきた。もともと、規則正しい生活なんて全く向いていなかったので、「戻って来た」というよりも「やって来た」という感じだ。2017年の幼稚園選びの時は大変な思いもしたが、実際に幼稚園に通い始めると、親も驚くほどに毎日成長してくれていて、我ながらいい園を選ぶことができたという自画自賛である。通っている園は「子供の凸凹した成長をしっかり受け止めてくれる」園なので、子供が背伸びをしてできないことをする必要がない。それがうちの息子にはとてもあっていて、できないことには参加をしないという選択肢を選びつつ、少しずつできることを増やしてくれている。来年度以降は公立幼稚園に移るという選択肢もなくはなかったのだが、通い始めて数ヶ月で今の園に3年間お世話になることにした。


こういった非常に良い感じで終わった2018年から引き続いて、2019年もよりよい方に向かっていきたい。 まず子供が規則正しい生活をするようになったおかげで、だいぶ個人の時間を持つことができるようになって来たので、それをうまく活かしていきたい。1日で見れば1時間から2時間程度の時間なのだが、それでもそれまではほぼ全ての生活が仕事と子育てにつかっていたので、それに比べれば大きな違いである。惜しむらくは、この時間は子供を寝かしつけた後の時間が当てられるので、寝かしつけ時に自分が寝落ちしてしまうとなくなってしまうことで、しかもその可能性はかなり高いということだ。まあ、無理はせずにこの時間を使って、もう少し仕事というかlifetime workに関連のあることをしていきたいと思っている。

一方仕事という観点から見ると、今年はそれほど大きな変化はないだろうと感じている。昨年よりは出張は増えそうだが、役割は変わるわけではなく、2018年後半からタネを蒔いたことが少しずつ形になってくるのを期待している・・・というところだろうか。今の会社は焦って辞めるという気持ちはないので、少し長期的に何かに取り組んでいきたいと考えている。それはきっと自分が「どのようにいきて、どのように死ぬか」を考えるきっかけになるのだろうと期待している。


そして、最後に家庭面・・というか私生活では、これは有無を癒さず減量に取り組まなければならない。中国帰国時は健康診断の項目がほぼ全て再検査という状況だったのだが、日本帰国から6年が経ちすっかり健康を取り戻すことができた。一方で、出産直後に激減した体重(自分が産んだ訳でもないのに、激減した)は、子育てのストレスと運動をする時間が全く取れなかったことで、増加の一途をたどり、体重は人生最大値を更新し続ける羽目になっており、ついには医者からも減量勧告が出るほどになってしまった。今年は何をおいても、この減量問題にしっかり取り組んで、完全な健康体を取り戻したいと思っている。

2018年9月14日 (金)

AIの"A"は何という単語の頭文字なのか

Artificial(人工)だというツッコミはあると思うのですが、本日は最後までお付き合いください。

最近すっかり日本では次のビッグウェーブとしてのAIという単語は定着あるのだが、このAIという単語、何の略なのかはご存知だろうか・・?ほとんどの方は「Artificail Intelligence(人工知能)の略である」と答えると思う。


正解は‥‥その通り、”ほとんど”の場合においてAIのAはArtificialの略と言われている。ただ、ほとんどと書いた通り、例外もある。例えば、日本のAIソフトウェアとしては最もブランド力があると思われるWatsonは、かつてはAugumentated Inteligence(拡張知能)の略でAIであると言っていた。結局この言葉とIBMが進めていたコグニティブ(Cognitive)という言葉は市民権を得ることなく、ほぼ消えてしまったのだけれれども・・。。

当時IBMにいた時の私はこの言葉を聞いた時には「何を独自性を出そうとしてるんだ、素直に普通と同じ言葉を使えばいいのに」と思っていた。以前はe-businessとか、Smarter Planetといったマーケティングワードで世の中の流れを決めるようなことが出来ていたように見えるIBM(これをアジェンダセッティングと言います)だけど、既にAIやクラウドの世界で流れを決定できるほどの力はないのに・・・と。
ところが、今の会社に移って毎日米国の研究者と会話したり、米国での研究のトレンドを勉強するようになると、IBMが提唱していたAugmentationと言う概念は正しかったのではないかと言うようにあらためて感じるようになった。


● 人間の能力を拡張する ●

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AIだけでなく様々な分野で未だに先端を走っていると言われているシリコンバレーで技術の話をすると、よく出てくる言葉が「Augment」だ。例えば、AR(Augmentation Reality)はまさにこの言葉が入っているが、これはリアルな情報と電子情報を重ね合わせることで、人間の視覚や情報処理能力を増強する/拡張するという取り組みをさす。 例えば、人間がパッと見ただけではわからないような複雑な設計をした構造物に対して、データベースに格納された設計情報を付加することで、人間が付加情報と実際の建築物を同時にみることが出来るようになる。これは「視覚」を増強したものだということが出来るだろう。

これだけでなく、ロボットやハードウェアを開発する際にもAugmentationという概念は常に意識されている。日本でもサイバーダイン社などが開発している体につけて人間のサポートを行うようなロボットは開発されているが、人間が装着することにより能力を増強することが出来るようなロボットは「筋力」を増強したものだと言えるだろう。 かように、シリコンバレーで開発されている技術の多くは「人間の能力を高めて、新しいものを生み出そう」という発想がそこかしこにみることが出来る。


一方で日本で技術の話をすると、まずAutomationによる「コスト削減」という話がメインで出てくる。現状で人間が行なっている作業を機械にすると、だいたい何人の労力をロボットがカバーすることが出来るので、だいたい○○円コストを削減することが出来るということである。こういった発想は確かにビジネスにとってはすごく重要だが、これだけでは全体としてビジネスの規模を拡大することは出来ない。いわば、この発想は現在のパイの中で、どれだけ旨味のある部分を取るか・・といった発想に近いのだ。

もちろん米国でもコスト削減のためのAutomationというのは重要なテーマだし、日本のように人口減と労働コスト増大という問題に直面すれば、必ずコスト削減のための技術利用というのはもっと積極的になるだろう。私もAutomationによるコスト削減に意味がないというつもりは毛頭ない。それでも基本的にAutomationというのは「引き算」の発想である。「Automationにより、XX人の仕事を自動化することができるので、YYのコスト削減を測ることが出来ます」というのが、こういったアイデアを検討する際に必ず出てくるビジネスケースというやつである。


● 人間がAIや機会と共存するために ●

日本で多くの企業と話していると、ほぼ必ずといって出てくるのは「人間にしか出来ないことがある」「人間ならではのものを求めている」という単語である。確かにそういうものは今後も相当の期間は消えないだろうし、当面のところは人間のみができること、を、売りにしていくのも一つの戦略だといえる。

一方でそういう主張をする多くの方が「人間にしか出来ないものがある」というバイアスで物事を語っている、もっというと「人間にしか出来ないものがあってほしい」という願望を込めて話しているということもかなり多い。それは時には自社の雇用を守らねばならないという使命感かもしれないし、あるいは機械に自分たちの仕事を奪われてしまうという漠然とした恐怖感かもしれない。具体的に、「何を」「どこまで」「どのようにすれば」機械と人間の仕事を切り分けられるのか・・・ということを考えずに、まず否定の感情から入ってしまい、詳細な分析を行うことが出来ないのだ。


こういった議論をする時に重要なことは、我々人間自体も周囲に存在するテクノロジーによって進化/変化していかという視点を持つことである。例えば、コンピューターが生まれるまで、長い間計算には算盤が必要だったが、今では趣味や教育効果を狙っている以外で算盤を使うことはほとんどないといっていいだろう。あるいは我々の世代にとっては「学ばねばならなかった」タイピングは、1世代下の人間にとっては当たり前の作業となったし、もっと下の世代ではフリック入力が当たり前になってしまって、逆にまたタイピングは「学ばねばならない」ものになった。これを進化と呼ぶかどうかを別として、このようにわずか10年単位で多くの人間が平均的に持つであろうと思われる能力は変化してしまっているのである。


これと同じことはAIがより社会に入ってきた際にも、間違いなく起こる。人間はその裏側のブラックボックスを理解せずとも、慣れとともに納得して利用する生き物なので、今の人間にとって奇異に思えることが、次もずっとそうではないとは言い切れない。
テクノロジーに向かい合う人間や日本企業は、「テクノロジーによって何を実現できるのか?」「それは今の我々の作業(仕事)のどこまでを代替するものなのか」、そして「私たち人間はその変化をどのくらいのスピードで受け入れるのか?」を常に問うべきだと思うのだ。

2018年4月19日 (木)

[書評] なぜ「戦略」で差がつくのか(著:音部大輔)

ビジネススクールの卒業にあたっても書いたが、Strategyというのは大変難しい。この難しいというのは色々な理由があって、まずもって「戦略」という概念が対象としている事象が難しいということがあげられる。「戦略とは何か?」という問いに対して研究者ですら統一的な回答はないであろうし、戦略という言葉をなんでもかんでもの対象に使ってしまっているために、語っている階層(レイヤー)が異なってしまい、同じ「戦略」を会話しているはずが気がついたら全然違うということもよくある。

また、経営学の範囲で取り扱っている「Strategy」にしても、マイケル・ポーターを嚆矢とするポジショニングに重きを置く学派もあれば、組織内のCapbailityに重きをおく立場もあるし、組織学習や進化により注目する立場もある。近年ではそのハイブリッドな考え方も出てきているし、デジタルによって変化する部分・しない部分を議論したりと、とにかく議論の幅が広い。さらに、「戦略」を語るにあたっては、例えばプログラミングのようなスキルや、数学・工学などに求められるような専門的な知識が必要ないと"思われている"せいで、誰でもとりあえず何かを語れてしまうという状況にある(※1)。

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そういった状況なので、戦略のことを一般の人が学ぼうとすると、やたら分厚い教科書を全体像がよくわからないまま読み始めるか、著者の経験+ちょとした理論(+自慢話)がさらっとまとめられた本を手に取るか・・という2択を迫られてしまうことが多い(※2)。そんな人にお勧めできるのが本日とりあげる"なぜ「戦略」で差がつくのか"である。

本書の著者である音部大輔さんは、P&Gをはじめとしてダノンや日産などの様々なB2C企業でマーケティング畑で経験を積まれ、直近は資生堂のCMOとしてマーケティング組織をデータを用いて学習し続ける組織に変革されようと活動されていた。現在は独立されて、Coup Marketing Companyという会社を立ち上げられている。神戸大学で経営学の博士号も取得されており、いわゆる「すごい人が自分の経験をもとに書いた」本とは一線を画している。


私は前職(IBM)で最後のほうにお仕事の関係で音部さんとお会いする機会があり、著書にサインもいただくことができた。なので、全く接点のない方の本を紹介するわけではない・・・ということは最初にご了解をいただきたい。

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● 本書で定義する戦略と、その実現方法 ●

本書では、議論する戦略の定義を「戦略とは目的達成のための資源利用の指針」であると定義する。これは、音部さんのこれまでの組織人としての実務経験が強く反映されていると個人的には感じている。一般的に、極めて高いポジションにおりかつ大企業でもない限り、自社のポジショニングや組織的Capabilityを深く考察して戦略を構築するということはないと思う。むしろ日々の業務に求められるのは、"達成すべき目的とは何か?”を明確にして、"(普通は)足りないと思われるリソースでどのようにそれを達成するのか"ということである。

本書は第1章で上記のように戦略を定義した後は、一貫してその戦略をどのように実現するかについて筆を費やしている。音部さんの経歴から、主に取り上げる範囲はマーケティング分野を対象とされており、マーケティングや営業などの戦略を考える立場にいるであろうミドルマネージャーには役に立つ内容となっている。第1章以降の内容をざっとまとめると下記のようになる。


  • 第2章:戦略の構成要素①
    「目的」を解釈する 目的を「いい目的」と「そうでない目的」に分類した上で、いい目的を設定するための考え方としたSMACとSMARTという概念を紹介する。

  • 第3章:戦略の構成要素②
    「資源」を解釈する 目的の達成のために必要となる資源(リソース)を、「内部資源」「外部資源」「認識しにくい内部資源」「認識しにくい外部資源」に分類して、それぞれの内容や効率的な運用方法について解説する。

  • 第4章:戦略の効用
    戦略を持つことはどのような意味があり、具体的にどのような意義を組織に持ち込むことができるかを説明する

  • 第5章:戦略を組み立てる
    実際に戦略を構築する立場になった際に、どのように戦略を構築していくとよいのかをとく。また著者の経験から、避けるべきポイントや、戦略をブラッシュアップするための方法論を紹介する。

  • 第6章:戦略を管理する、第7章:戦略的に考える、第8章:「戦略」をより深く理解する 実際に立案した戦略をどのように組織の中で管理し、実現するのかについて説明する。また最終章では、様々な本書の考え方を様々な戦略論の中で位置付け、今後さらに学習をしたい方向けのガイダンスを提供する。


● 本書をよりうまく活用するために ●

あらためて本書を読み直してみると、一貫して「資源」ということに注目をしていることに気がつかされる。これは考えてみれば当たり前で、どのような戦略論であっても「リソース」を最大限効率よく利用することが重要であることに加えて、マーケティングというのはまさに「資源(特に金)」が勝負を決める重要なファクターになるからだ。

どのような組織にいたとしても「資源がありすぎてどのように使うか」といった悩みを抱えている人間はほとんどいないだろう。普通は「溢れる要求を足りないリソースでどのように処理するか」について悩んでいることだと思う。そういった人に向けて、まさに本書は適切な考え方を提示する本と言えるだろう。逆にいうと、比較的フリーハンドで全社の経営企画を考えるとか、マーケティングでもリサーチ領域にいるような人は本書は物足りないかもしれない。現場で勝つための方法論を学びたい人向けの本であると言えると思う。


また、もう一つ本書が現場で優れているのは「様々な人間を巻き込むことを前提として考え、そのための様々な方法論を提示している」ことだ。特に私が優れていると思ったのは、"5年後の未来から逆算して考える"という方法論だ。中期経営計画のようなものを読めばわかる通り、どれほど考え抜かれていても、ただそれが分析結果として提示されるだけでは戦略は胸踊るものにはならない。理性だけでは人は動かないのだ。

そういった落とし穴を避けるためにも、「成功をイメージした5年後から逆算する」というのはとてもよい方法だと思う。確かに、あまりに想像が高すぎると絶望感が増してしまうが(※3)、多くの人はチャレンジが明確になるにつれてやる気が増してくるものだと思う。
現場で、エキサイティングな仕事をして勝つためのお供、として本書を読んでみるのがよいのではないだろうか。


※1・・・ちなみに個人的には「戦略」という概念や理論を研究するという観点からは、軍事・戦争について専門的に研究している方のほうがより精緻に議論を展開しているというイメージがある(あくまでイメージかもしれないが)。

※2・・・過去に戦略に関する体系的な勉強をしたことがない人は、三谷宏治さんの「経営戦略全史」を最初に読むと全体感が掴めて良いと思う。

※3・・・そういうことを避けるために、まず「いい目的」を選定することが重要であると著者は述べている。

2018年4月 2日 (月)

イノベーションを少しでも高い確率で起こす方法

私が1月末から勤めているSRI (Stanford Research Institution)は、受託研究開発を主なビジネスとしているのだが、最終的にはお客様と社会のイノベーションを支援するということを目標として掲げている(ビジョンでは、「世界を変えることができるソリューションを生み出す」ことを掲げている)。米系企業というのは、このイノベーションという言葉が大好きで、例えばSRIの前に勤務していたIBMでも、「IBMはクラウドとコグニティブによりお客様のイノベーションを支援する」企業である、といっていた(※1)。

このイノベーションという言葉、日本ではよく技術開発と同義語で使われたり、一方では、技術開発がなくてもイノベーションであるという主張を極端にして「既存の要素を組み合わせて新たな価値を生み出す」のがイノベーションであるという人がいたりと、人それぞれの定義があるようで中々議論が噛み合わない領域だというのが、多くの人が持っている印象ではないだろうか。特に日本においては「カイゼン」の文化が広く浸透しているため、カイゼンとイノベーションは違う/同じだという議論がなされたりする。

イノベーションを研究する学者や学会によっても微妙に定義が異なるので「これが正しいInnovationだ!」という主張をぶつけあうことは宗教論争みたいなものになってしまうためここでは避けるとして、SRIではイノベーションを「新たな顧客価値(==市場価値)を作り出し、市場に送り届けるプロセス」として定義している。ここでいう顧客というのは狭い意味の「製品・サービスを有償で買ってくれる」顧客だけではなく、「自分がしている仕事の成果を利用する人」ぐらいの意味で使っている。なので、いわゆる企業のコストセンターや内部部門にも顧客はいるというように定義している。


● イノベーションを起こすためのフレームワーク ●

先ほど"イノベーションを支援するということを目的としている"と書いたが、ただ闇雲にそういうことを言えば実現するというわけではないし、また、SRIの場合には何かしら特定の製品やサービスを用いて「イノベーションを支援する」というわけではない。むしろSRIは顧客とのプロジェクトを通じて、「顧客の内部でイノベーションを起こすためのきっかけとなる」ことをビジネスとしていると言うほうが適切かもしれない。そのための、フレームワークについて詳細に記述されているのが、本日紹介する「イノベーション 5つの原則」だ。

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本書ではSRIが実践している、SRI内部、および顧客とのプロジェクトにおいてイノベーションを起こすためのフレームワークの詳細が記述されている(※2)。詳細な内容についてを語るには、結局本書と同じだけの分量が必要となってしまうが、簡単にいうとイノベーションを高い確率で起こすためには、以下の5つの要素を考慮し、それぞれの値を引き上げていく必要がある。


確率 = ① ニーズ ✖️② 価値創造 ✖️③ チャンピオン ✖️④  チーム ✖️⑤ 組織化


上記の式を簡単に説明すると、それぞれの要素は以下のような内容となる。


  1. ニーズ:市場や顧客にとって「重要度の高い」ニーズを明らかにする
  2. 価値創造:「重要度」と「満足度」に注目して、打ち手が生み出す価値を試算する
  3. チャンピオン:イノベーションを内部で推進するリーダー(チャンピオン)を見つける
  4. チーム:イノベーションを完遂させるための人材を集め、適切なコミュニケーションルールを設定する
  5. 組織化:イノベーションを支援する組織体制や文化を醸成する


本書ではそれぞれの要素について、より詳細な内容やどのようにして「要素が高まっているか」を判断するための方法論が提示されているのだが、イノベーションを自分のビジネスで起こしたいと考えている人間にとって参考になるのは、前半部分だろう。イノベーションに結びつくようなニーズの見極め方や、価値創造を行うための理論的な枠組みが提示をされている。

● イノベーションは人が引き起こす ●

一方で、後半になるにつれて「人」の要素が増えていき、勉強して学ぶことができる「フレームワーク」的な考え方は少なくなっていく。例えば、上記にあるようにイノベーションを起こすためには、困難な時にも情熱を持って進めることが出来る「チャンピオン」が必要であるとしているのだが、"どのようにチャンピオンを作るのか"というノウハウのようなものは一切提示されない(※3)。

また、チームの部分についてもイノベーションを促進するため(あるいは阻害しないための)のコミュニケーションについての簡単なノウハウは提示されるのだが、日々どのようなコミュニケーションを行うと、どのくらいイノベーションが促進される・・・といった定量的なデータはない。


結局のところ、本書を読んで最終的にわかるのは「イノベーションをある組織(社会)で起こすためには、人が決定的に重要である」ということだ。どのようなレベルの(あるいは大きさの)組織でも構成員は複数おり、また極めて論理的な人間が多い組織であったり、知性が高い組織であったとしても、イノベーションに対応する反応というのは、最初から全ての構成員が諸手をあげて賛成するということはないと言っていいだろう。 だからこそ、そういった人によって発生する摩擦を乗り越えていくためには、人のパワーが何よりも必要になるのだということを、本書は声高ではなくても強く言っている。

本書に紹介されている方法、あるいはSRIが提供するソリューションというのは確かに「イノベーションを少しでも高い確率で起こす方法」であることは間違いがない。一方で、あるレベルまで論理的に物事が積み上げられていったら、最後の部分はその組織に属している「人」の力になる。であるならば、そういった「人」を探し出すこと、そういった「人」が前向きに進んでいけること、あるいはそういった人に火がつく瞬間を生み出すことが出来るような組織や社会こそが、これからのイノベーションの時代を勝ち抜いていくということなのだと思う。


※1・・・ビジネススクールの笑い話として教授が紹介していたのが、『ビジネススクール出身の人間の描く文書から"Innovation"と"Strategic"を除くと分量が1/3になるというのがある』くらい、Innovationというのは「意味はわからないがなんか凄そう」という言葉の典型だったりする。ちなみに、IBMの時には意味のない言葉として他にも"World class"という単語があげられており、マーケティングではそういう単語を使うのをやめよう・・・という運動がなされていたが、全く定着しなかった。

※2・・・こういったフレームワークを紹介する本の場合、記述していることと社内で実践されていることに大きな乖離があるということがしばしばあるのだが、実際に入社して見て驚いたことに、本当にこのフレームワークを活用してSRIでは仕事を行なっている。

※3・・・本書は米国を主な対象として書かれているので、外部から人材を調達することを除外していない。そういう意味においてはチャンピオンを探す自由度というのは日本のほうが難しいかもしれない。一方で、日本の場合、社員が短期的な業績のみを追わなくてもよいということで、じっくり腰を据えて物事を進めていくチャンピオンを探しやすいという可能性もある。

2018年3月23日 (金)

光良第一次東京演唱会に参戦

 

この前の日曜日は東京で初めて開催される光良(Michael Wong)の演唱会(ライブ)に参加してきた。光良といえば、私のように2000年代に駐在していた人間はほぼ100%知っている歌手である。日本人がおそらく最初に歌えるようになる中国語の歌の1つは彼が歌ている「童話」だし、他にも「勇気」や「天堂」など数々のヒット曲をもち、かつどれもこれも歌いやすいと来ている。

一方であまりにも駐在員が童話ばかり歌うので、"童話はもういいよ" ==> "光良はもういいよ"となってしまい、いわゆるスーパースターという扱いではなくなってしまっているという歌手でもある。別に本人は悪くはないのだが・・・。生粋の中国人ではなく(彼はマレーシア人)、それゆえに発音がちょっと大陸とは違う・・・とか言われてしまったり、既に40代後半を迎えていることもあり「ピークは過ぎ去った歌手」と日本人には見られているかもしれない(※1)。


そんな感じの先入観があったので、今回のツアーの情報を知った時にまず最初に思ったのは「Zepp東京でやるなんて、売り上げ大丈夫なのかしら。動員する自信がないのかしら」だった。なにせ、すでに二回参戦して、今年も参戦する予定の五月天のライブ会場は日本武道館である。会場のキャパシティを考えるとZepp東京はいかにも小さいし、チケット代から考えても大きな売り上げになるとは思えない。
そもそもこれまで日本では一度もライブをしたことがないということで、これは少しピークをすぎた歌手が、いわば地方営業みたいな気持ちでくるのではないだろうか・・・という、失礼千万な気持ちを持ってしまった。

とはいえ、知っている中華圏歌手のライブを日本で聞くというのは常に貴重な機会である。今回もチケット発売日の発売時間にはしっかりとPCの前でスタンバイをして、確実にチケットを確保。申し込みタイミングが早かったおかげでかなり前の席を取ることができた。

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そして迎えた当日、会場では中華圏スターのライブらしく、言語は中国語が基本である。会場に着くまでは知らなかったのだが、MIFCと呼ばれるファンクラブがあり(Michael Wong International Fan Clubの略だろうか)、そのクラブが来日にもかなり力を尽くしたようである。席はちょうどその方々のすぐ後ろで絶好の場所。何から何までお世話になってしまった感があり、感謝感謝だった。



開場はギターから、ベース、キーボード、ドラムと演奏をしながら入ってくるというシンプルな構成で、最後に光良が入場。最初の感想は、歌手には失礼だが「歌がメチャクチャ上手い」!日頃聴いているデジタル音源に比べて、
声の張りも歌い方も段違い。一瞬でライブに来て良かったと
確信させるレベルだった。



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曲目も日本での公演は初めてということで新旧のヒット曲を満遍なくちりばめていて、一度も聞いたことがない曲はほとんどなかった。衣装替えやステージの変化などは一切なかったものの、ボサノバ風に編曲した如果你还爱我があり(これは途中で歌詞を飛ばしてしまい、歌い終わった後に気づいて再度歌い直すというサービス付き)、引き語りでの天堂と勇気ありと、シンプルながらもメリハリが効いており、全く飽きさせない。勇気は最も好きな曲の一つなので、本当に涙が出そうだった。



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クライマックスでは「日本でも舞台から降りて歌ってもいいかな?」と聴いた後に、無印良品時代の想見你客を歌いながら、何と客席の間を歩く!会場は盛り上がるが、みなこういった展開になれているのか混乱はなく、近づいて握手する人がいるのはもちろん、一緒に自撮りするカップルもいたりする。かくいう自分も、ファンクラブに向かって歩いて来た光良に向かってダッシュで近づき、握手をすることに成功!中華圏スタート最接近した瞬間であった。

最後はもちろん最大のヒット曲である童話で、合計2時間強のコンサートは全て終了。期待値以上の歌声に大興奮して、今後生涯通じて光良のファンであることを誓ったのであった(単純)。


※1・・・日本に帰ってきてからも継続的に中華圏ポップスを聴き続けているのだが、確かに近年は「大ヒット」と呼べる作品はなかったりする。というか、そういう作品がなくてもいまだに現役スター感がある張学友などがすごいのだ。

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