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2011年3月

2011年3月 9日 (水)

中国で報道用短文作成配信業務のアウトソーシングは可能か?

※今回のエントリーはTwitter上での@Lilaclogさんとのやり取りから生まれたものです。@Lilaclogさんには始めに御礼申し上げます。またエントリーが遅くなり申し訳ありません・・・。

世界的に見て新聞という業種が衰退産業であるということは、もうだれの目にもはっきりしている思う。今後も言論という意味では何かしらの価値を持つ可能性もあるけれど、少なくとも広告収入に依存している以上、売上が劇的に回復するということはないだろう。
アメリカではこの新聞の衰退という現象はずっとドラスティックに起きており、休刊している新聞も後をたたない。当然コスト削減も行っており、単純な配信記事も外部へのアウトソーシングを行っている。フラット化する世界(※1)でも、ロイターも単純なニュース配信をインドの会社にアウトソーシングする、ということが取り上げられている。

今回のエントリーのきっかけは、日本の新聞も同じような事態に直面しており、日本の新聞も例えば日本語学習者が多い大連に単純記事の配信をアウトソーシングをすればよいという意見について、現地在住者としては直観的に非常に難しい・・・と僕がreplyしたことです。140文字だとあまりに直観的にすぎるので、ここにもう少しまとめて僕の意見を書いてみようというわけです。

◆議論の前提◆

私が新聞社内での実務に詳しくないため的外れな部分があるかもしれませんが、議論の前提として以下を設定しました。

①アウトソーシングする業務は、「海外報道(英語のみ)の日本語短信ニュース作成」「日本の多媒体配信ニュースの短信ニュース作成」の二つとします。要するにあまり複雑な記事は作成しない・・・という場合の議論です。

②中国で会社を行う場合には色々な手続きが必要なのですが、それはいったん無視して論を進めます。現実的にも咨询免許(コンサルタント)で対応可能だとは思います。

③今回の議論では、供給者側(中国側)と発注側(日本側)の事情のみ考えています。コスト面でどのくらいメリットがあるかはいったんおいておきます(※2)。また時差の問題(1時間ですが・・・)、商習慣の違い(春節=旧正月は稼働しなくなる)、システム面(アクセスが不安定)など問題はいろいろありますが、クリティカルではないと考えますので、ここでは無視します(※3)

◆供給側の観点◆

アウトソーシング業務を安定的に中国側で回すためには、アウトソーシング業務を実行できる人材を安定的に確保できるかどうか?というのが最も大きいと考えます。その点で、中国がふさわしいか・・というと、かなり難易度が高い、というのが僕の意見です。

① ニュース配信をこなせる人材を安定的に調達できるか?
中国では日本語を話すことができる人間はたくさんいる。学校での日本語講座もあるし、日本文化(だいたいドラマ・アニメ・ゲームのどれか)が好きで自分で勉強している人もたくさんいる。

じゃあ、こういう人間を採用すればいいじゃないか?となるけれど、実際にはそうは単純にはいかない。まず、話せる人間==定型文をしっかり書ける人間ではない。私の周りにも日本文化が大好きで日本語は全く問題なく話せるという人間や、日本で半年間業務研修をした後こちらの日系企業で働いている、という人間がいるが、それでも書き言葉はやはり難しい。特に中国語にはない、助詞や「っ」の表現は100%理解してもらうのは期待しないほうがよいだろう。

一方中国人は検定や資格が大好きなので、日本語検定というものもあり、1級はそれなりに難易度が高いとされている。だが、実務の観点からみるとこれはほとんど使い物にならない。(勉強自体はかなり大変なのだが)学校でテスト向けに勉強した程度では、やはり生きた日本語を使うことは難しい(これは日本語だけではないと思う)。

結論としては、学校で勉強しただけでなくある程度文化などを理解している人材を採用し、半年ほど教育をしてようやく実用に耐えられるようになるだろう、というのが僕の意見である。これ自体は難しいがクリア不可能ではない課題だと思う。

② 教育した人間が定着するか?
では、実際にそうやって教育した人間がアウトソーシング先で活躍してくれるか・・・というと、これは①よりもさらに難しいと感じている。若者の就職難が言われている中国ではあるが、それでも平均勤続年数は実は1年程度である。つまり、職にありつけない学生がたくさんいる一方、職をドンドン変えている人間がいるのだ。

①で述べたような、日本が好きで日本語を使って仕事をしたい中国人がさらに半年ほどみっちり教育を受ければ、その市場価値はかなり高くなる。職種にもよるが、彼らが望むならおそらくアウトソーシング先の給与よりはいい条件での転職は容易だろう(そもそも給与を高く設定してしまったら、アウトソーシングをする意味がない)。
研修期間が終わってから○年間は転職は禁止・・みたいな契約書を結んだとしても、中国では労働者側に有利な裁判結果が出るだろうし、そもそも裁判を起こすこと自体が非常に面倒くさい。

もちろん中国人といえども、金銭的な条件だけで転職を決定するわけではないが、重要なファクターであることは変わらないし、日本文化に興味を持って自分で勉強を進めてきたような人間が長い期間ニュース配信という作業をし続けると考えるのは難しい。

③ 管理を誰が行うか?
どんなに日本語がうまくても、固有名詞をどのように訳すか(カタカナの発音)といった問題や、各媒体によって規定されている表現方法などを完全に満たすことは難しいとすれば、やはり日本側と中国側をつなぐような管理者が必要になる。

この管理者にどのような人間をおくかということも解決すべき課題である。簡単に言って、以下のような条件を満たしている必要がある。

  (1) 日本側と口頭で十分なコミュニケーションがとれる
   (2) 中国側で中国語で指示を出したり、業務管理が行える
  (3) 配信内容・配信業務に責任を持って対応を行える

上記条件を満たすような人材といえば「日本に留学してしっかり学び+業務経験がある中国人」か「中国の大学レベルから留学し、日本企業で働いたことがある日本人」くらいしか現状では想像ができない。

そして、上のようにスペックの人間、特に前者が記事配信管理という業務に魅力を感じるか…というと甚だ疑問である。このレベルのスペックを持っていれば上昇志向もかなり強いだろうし(中国では发展空间といい、要するに給料があがるかポストがあがるかということである)、実際より魅力的な仕事を見つけることも可能だろう。
現実的には現在も中国のメディアで見られるように、中国の大学を卒業した日本人が管理を行うというのが一つの解だろう。給与もそれほど高くなく採用可能であり、かつ今後も供給は増えることはあっても減ることはない。

以上、概観すると供給側の問題は「雇用条件・環境に満足するような人材は能力が足りず、能力が足りる人間は雇用条件・環境に満足しない」ということに尽きる。実は、これはほとんどの日本企業は大なり小なり現在も抱えている問題でもある。

◆発注側の視点◆

アウトソーシング業務は発注側も一部業務フローの見直しや、品質の再定義を行う必要がある。当然こちらの観点でも課題は存在する。

④ 発注側はアウトソーシング先の品質を受け入れられるか? (※4)

日系企業が中国へのアウトソーシングを発注することを躊躇する理由のひとつとしてよくみられるのが「中国側の品質管理が十分でない」というものだ。確かに大前提として中国側の品質は日本側よりも低くなりがちである。ただ、同時に日本側が「中国側に発注する」ことに過剰に反応して、不必要なまでに品質にこだわる場合もしばしみられる。

今回の議論のようなメディア関連の場合、懸念されるのは発注側の社内が「中国人が作成する文の品質は低いに違いない」という色メガネで見てしまうことだ。例えば意味が十分に通じるものであっても「俺ならこういう表現はしない」という理由でリジェクトしてしまう、句読点の打ち方が自分の考えているものと違う・・・といった些細なことで中国側を貶めるということが想定される。

もちろんアウトソーシングとして出す以上、品質は現状のままであることが望ましい。一方で、文言という定義がしづらいものであるがゆえに、定義があいまいなまま品質問題を取り上げることも可能である。この問題に関しては社内でしっかりと議論の上で「受け入れる土壌づくり」が必要であると考えるが、これまでの取り組みを見ていると簡単に越えられるハードルではないと考える。


⑤ 教育段階において正しい指示を出すことができるか?

供給者側の視点で触れたように、今回の業務のような場合、発注側と供給側がコミュニケーションをとった上での教育が不可欠であると考える。しかし、これまでのオフショア開発やアウトソーシングを見る限り、発注者側が適切に教育をできるのか?というと、疑問をもたざるを得ない。

これまで日系IT企業の多くがオフショア開発に取り組み、期待した成果をあげることができずに撤退していった。もちろんその理由は複合的であるが、中国側駐在員が必ずあげる理由の一つが「日本側の指示があいまい・不適切」というものである。
言語的な問題なのか、それとも訓練が足りないのか確定できないが(個人的には後者だと考えているが・・・)オフショアのようにface-to-faceのコミュニケーションが出来ない場合に、日系企業では伝達効率が大きくおちる傾向にある。

この問題をしっかりお互いが理解していれば、出来る限り明確な指示書を作成したりSKypeでのMTGを繰り返し行うといった対応を取ることが出来るが、ひどい場合には「あの部分をもっとよくしてください」といったメールを送りつけてくるだけの発注者もいる。下請けを使っているという意識もあってのことだと思うが、なるべく言葉を使わないのが得と考えている発注者もまだまだおり、この点が改善されない限り教育効率もあがらず、また中国側の安定稼働も望めないだろう。

◆まとめ◆

以上5つの課題により、現状では私は記事配信業務のアウトソーシングが極めて難しいと考える。一方で、本当に自社単独では解決が困難な課題というのは②だけであり、腹決めさえできれば、取り組み次第ではかなりいいところまで行けるのではないかという淡い期待も(本当に淡い・・)ある。

個人的な正直な感想をいえば、中国にいる人間としてこのビジネスを立ち上げたいかというとNoである。上記課題に関して言えば、②も含めてチャレンジしがいがあると思うが、発注者側課題に関しては希望を持つことが出来ないでいる。
相手が中国人であるというだけで態度が横柄になる日本人をたくさん見てきたし、しかもそれが仕様にしづらい文というものであれば、なおのこと理不尽な要求が来るようなことも考えられる。
地方紙も含めて新聞業界が一括で発注をしてくれるならビジネスとしてはそれなりにうまみもあるかもしれないが、日本語という展開が難しい言語で、しかも個別の要求が強いであろうことを想定するとビジネスとしての旨みも感じられない。

日本人の私でもこのように感じるのであるから、中国人はより一層のことハードルを感じるのではないだろうか・・。こういった感情をもたれてしまうということ自体も、日系企業が中国で事業を展開していく上で解決していかなかればならない課題であるといえると考えるのである。

※1・・フラット化する世界自体は読んでいるが、手元にないため記憶があいまいであり、記述も曖昧になってしまった・・・。
※2・・一般的に新聞記者の給与は高いとされているので、コストメリットは出せると考えている。
※3・・春節と国慶節はほとんど社員がいなくなるという問題は十分にクリティカルだが、ここでは本筋には関係ないのでいったんおいておく。
※4・・課題番号は通し番号とした。

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ワンジーテクノロジーズ取締役退任のご報告

本日3月9日の株主総会をもちまして、ワンジーテクノロジーズ株式会社の取締役を任期満了(任期2年)により退任いたしました。在任中の皆さまの温かいご支援に御礼申し上げるとともに、株主の皆様におかれましては、十分な貢献ができなかったことをお詫び申し上げます。

また、2011年3月末をもって現在社員契約を結んでいる中国側子会社:网纪信息技术(上海)有限公司を退職することといたしました。今後はしばらく充電の後に、中国だけに限らずアジア全域でのビジネスに貢献することを目標として活動の幅を広げていく所存でございます。

多くの方の御支援により2年3ヶ月の在職期間を楽しく過ごすことができました。この場を借りて御礼申し上げるとともに、十分なお返しができぬまま去ることをお詫びいたします。もし面白いやつが上海で生きていると感じていただけたのであれば、今後も変わらぬご支援をいただければ幸いでございます。現在の会社にて学んだこと、考えたことは今後逐次このblogにてまとめた上で、次のステージで生かしていきたいと思います。

今まで本当にありがとうございました。
今後も何とぞよろしくお願い申し上げます。

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国際婦人デーは女性は半休休みです。

昨日3月8日は「国際婦人デー」ということで、女性は半日で仕事終了+お土産を会社からもらえるというありがたい日(お土産は会社によってそれぞれなので、現金をもらえる会社もあれば何ももらえない会社もある)。

この頃はもう悪いところばかりが報道されてしまうような中国ですが、もちろん良いところもたくさんあり、女性の権利が尊重されている(少なくとも尊重しようという姿勢がある)のは良いところです。農村部では残念ながら労働力+子供を産むということを期待されている地方もまだまだありますが、少なくとも大都市では女性の社会進出や権利尊重が進んでいます。これは、(いまや形骸化したとはいえ)社会主義の良い面ですね。

この国際婦人デーは法律によって決められている法定休日ではないのですが、メンバーは当たり前のように休みであると思っています。上海人のメンバーによれば「女性は外で働いた上に、家事もして大変なんです!休みがあってもいいじゃないですか」とのことです。上海では家事は男性がやることも多いのですが・・・。

大都市に限って言えば80年代以降生まれ、いわゆる80年后は、あまり家事をせず(家事は男性、阿姨と呼ばれるお手伝いさん、両親がやる)稼いだお金は自由に使うという女性も増えてきておりそこまで優遇する必要はないとは思うのですが・・・ただでさえ男性対女性が6:5の割合にならんとする中国では、今後も女性は強くなる一方です。

またこの時期はバレンタインデー(2月14日)とホワイトデー(3月14日)があり男性の財布が痛む時期なのに、さらにここでイベントがなくてもという気にもなります。中国ではここ数年でホワイトデーが浸透し、しかもなぜかホワイトデー「も」男性から女性にプレゼントをあげる日なので、一月に三回もプレゼントをあげる機会をいただけるというわけです。20110303212

ちなみに右の写真はちょうど国際婦人デーの日の地下鉄での一コマ。国際婦人デーは国連によると「女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に対し呼びかける日」とありますが、平等・・・というのは難しいものですね。

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