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2013年12月23日 (月)

[書評] 歴史を学ぶためにこんな本を読んでみた1 "大国の興亡"

日本に帰ってきたことの一番のメリットは何か・・と言えば、もう本を大量に読むことが出来る、に限る。最後の1年半はiPadの購入とKindle Appのおかげで上海でもかなり日本語の本を読むことが出来るようになったが、それまではたまの帰国に買いこんでいくぐらいしか日本語の本に触れる機会がなかった※1
Kindleも売れ筋のラインアップは充実しているのだが、僕が読みたいような本だったり中国関係の本はあまりなかったりで、そういったいつかは読もうと思っている本と言うのはむなしくAmazonのWishListにたまっていったのだった。特に中国に行ってからは自分の本の嗜好が変わってしまったので余計読みたい本が読めない・・という状況になっていた。

ということで、日本に帰ってきてようやく読めるようになった本のうち、中国関係とか中国「との」関係を考えるための本は少しはblogで紹介していきたいと思っている。
ということで、今日はその第一回目。


決定版 大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争〈下巻〉Pic1


昔からいつかは読もう読もう・・と思っていて、全然機会がなくてようやく読むことが出来た。 まず何が大変ってとにかく長い・・・上下巻

あわせて参考文献を除いても700ページを越えている。前半は1500年以降から第一次世界大戦前までの歴史で、ヨーロッパが中心に取り上げられる。正直この時代の歴史を全く知らないと読んでいて話についていくこともできないし、ここでギブアップした人は結構いるのではないかと思う。

後半は「これからの予想」に割かれる分量が多く、読んでいてさらに息切れ感が募る。正直この本が大ヒットしたというのが信じられない。。。日本のことが凄まじくよく書いてあるので、とりあえず買ってみたはいいが、途中で息切れした人が多いのではないのだろうか。


この本、発売当時は日本で大ヒットしたらしいんだけど、その理由は「日本がやたら良く書かれている」から。執筆当時は日本がバブルが終わったころで、景気は一息ついたとはいえ、誰もがこれは一時の休憩と思っていた時期だからか、日本はさらに経済的に拡大していくという論調で書いてある。
しかし15年ちょっと前までは、こういった感じで日本がまだまだ伸び続けると思っていた人は多かったんだよね・・と嘆息せずにはいられない。2000年といえば僕は大学生でいわゆる「不況しか知らない世代」だったので、こんな感じで海外から見えていたのかと思うと、不思議な感じがする。

この本のテーマは、国際関係(特に外交と軍事)について著者の理論に基づいて歴史的な戦争と時代時代の覇権国家(あるいは大国)について分析を行うということにあるのだが、これが中国に関係していると思うのは、当然中国が「次の大国」だからだ※2


この本でも、著者は中国を取り上げていて、-地政学的にも人口と言う意味においても当たり前のように予想可能な話なのだが‐、執筆段階でも将来の大国候補として「中国」は取り上げられている・・・というか、ここで書かれた段階では既にある程度力を持ってきているという位置づけ。やはり見えている人には、当たり前のように見えているのだな、と今の日中間の力を見て思ったりする。

著者のポール・ケネディはいわゆる「ハードパワー」派の人で、この本の主張をざっくり一言で言ってしまえば「国力(特に軍事力)は経済力による支えが必要」ということ(こういう風にざっくり切ってしまうと筆者は間違いなく怒るだろうけど)。もちろん経済力をどのように定義するのか、という話や、経済力を支える諸要素間の相互作用をどのように評価するのか・・・ということで、歴史上で「覇権」を握った国家は違った道のりを歩む。


この本の理論によれば、経済力と軍事力というのは相関関係にあるのだけど、軍事力というのは経済力よりも「やや遅れて」ピークに達するものとしている。拡張期にある時は経済力の伸びが軍事力の伸びを上回るので問題はないが、衰退期に入ると権益を保護するために「経済力の伸び以上に」軍事力に力を注がれる・・というわけだ。

この理論をそのまま今の東アジアにあてはめるというのは出来ないのだけれど、こういった考え方の補助線を持って現状をみるというのは決して無駄にはならない。中国に関して言えば過去30年にわたって10%近くの経済成長を成し遂げてきていて、今でも日本に比べればはるかに経済成長の度合いは大きいが、それでも彼らからみたら「安定期」に入っている。一方軍事費に関して言えば、ここ数年はずっと経済成長以上の伸びを見せてきたし、今後もすぐにその流れが変わるとは思えない。


一方で日本(日本の場合は米国の影響も含むが・・・)ようやく経済が少し上向いたとはいえ、長期的には人口の問題もあり、少なくとも「パイの大きさ」に関しては大きな伸びは期待できない。そういった環境で周辺の軍事力が増大している状況では自国もそれと無関係にいるわけにもいかず、負担も少しずつ大きくなり・・ということが予想されたりもする。

本書でも著者が最後に触れている通り、結局国家にとって重要なのは「軍事」と「経済」のバランスであり、伸びている国と経済的に衰退していく国では当然その平衡点も異なる。今の政治状況は「やり方」や極めて短期的な話にフォーカスしがちだけど、人口減という見立てはもはや変わらないと前提を置くと、これからどのような国家になるべきか・・・というのはもう少しちゃんと議論をされなきゃいけないな、と。

誰でも読める本ではないけれど、既に古典となっている書だけに、国際関係に興味ある方は是非。



※1・・・その代わり中国語の新聞や雑誌を読むようにしていたので、語学面ということでは日本語の本がないほうが良かったわけだが。
※2・・・次というよりも、既にある大国・・という気もするが。

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