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カテゴリー「仕事」の記事

2019年6月17日 (月)

日本ではS級が今後生まれるだろうか (書評: 中国S級B級論 ―発展途上と最先端が混在する国)

中国ウォッチャー的には、twitterとブログで中国政治を解説している水彩画@suisaigagaga が書籍デビューすると言うことがおそらく一番の楽しみであったであろう本書。とはいえ、話題性だけの数多ある色物中国本ではなく、本作の執筆陣はいずれも実力派揃いである。それぞれの領域で積極的に発信をされている方々ばかりなので、常日頃から発言をチェックしている人にはやや物足りないかもしれないが、いわゆる「遅れてて笑える中国」から「最先端のIT活用大国である中国」まで日本人がもつ中国のイメージが変化していく中で、実態として彼の国はどのような状態にあり、どうしてそのような進化と並存が可能になったのかを解説するのが本書の狙いである(詳しくはここをご参照のほど)


● S級が生まれる前の中国と、サービスの萌芽 ●517yla18bwl_sx342_bo1204203200_


2007年〜2013年という自分が大陸に住んでいた時期は、本書で取り上げられたS級はちょうどサービスの芽が生まれた頃にあたる。Wechatはすでに存在していたが、まだpayment機能は実装されていなかったし、Alipayはweb上では利用可能だったが、今のように広くどこでも利用できるものではなかった。4Gは商用化されていたが、アプリによる様々なサービスが実現する直前という時期だったと言えるだろう。当時使っていたスマホはHTC製、いまではすっかり存在感を失ってしまったが当時はトップメーカーだった。


一方で、S級が産まれるような土壌というのはすでに十分に育まれていたように思える。米国のTopスクールをでた中国系の人間が大陸に移ってきてビジネスに参加するということも普通にあったし、TencentやAlibabaは積極的に中国国内の理系トップを高給で採用をするようになっていた。給料が高いが仕事は激務・・・というのが、当時の中国国内におけるこれらの企業のイメージだ。
また、スタートアップの成長スピードもかなりのもので、中国における食べログのような存在であった大众点评は、私が最初に務めた企業で上海に赴任した時に作ったサービスをわずか数ヶ月でコピーしてリリースし、営業体制もあっという間に構築してしまった(今では合併して美团大众点评という会社)。この会社とはその後数年経ってビジネススクール時代に訪問することがあって、「あの機能を実装したのは、自分なんだよ」と話したら、驚かれて色々と深い話をすることができた。


デジタルの世界では、そのころはアプリというよりもWEBサービス全盛だったし、さらにWEB上のサービスといってもFlash利用がものすごく多かったのだが、それでも当時のデザインレベルやゲームアイデアなどは急速に改善しており、遠からず米国にキャッチアップすることは容易に想像される未来だった。本書で取り上げられる企業のいくつかはまだほとんど世界に知られていなかったが、それでもS級への揺籃期にあたる時期に僕は上海にいたのだろう。


 


● S級は屍の上に ●


本書の主要テーマではないのでそれほど深堀はされていないテーマの一つに、中国における猛烈な競争環境があげられる。シェアサイクルが一つの例としてあげられているように、中国では新しいサービスが生み出されると、雨後の筍という言葉ではとても生易しいぐらいのスピードで猛烈な速さで次々と類似サービスが産まれてくる。さらに、そこに豊富な資金が提供されることで、広大な国内展開と国際展開が同時行われ競争環境は加速されるという構造にある。


この過酷な競争環境は猛烈な勢いで製品の改善を促す一方で、投入された資金があっという間に消費されていくという状況もうみだし(中国語では焼銭と呼んでいる)、資金が尽きた企業は市場から退場をしていくことになる。さらにこれらの新興企業に加えてAlibaba, Tencent, Baiduなどの既存プレーヤーが時に投資を行い、時に類似サービスを立ち上げて市場を加速させる。


 


そういって競争の末に本書でS級と呼ばれるサービスが立ち上がるのだが、その裏には膨大な数の屍(退場した企業と実を結ばなかった投資)が並ぶことになる。中国のように成長が早い市場では、新興企業での失敗自体は必ずしもキャリアでマイナスになるわけではないし、個々の人間にとっては有意義な経験となることも多いはずだが、それでも投資側からすると投下資金が溶けてしまうという現実には変わりがない。
中国のイノベーション議論ではその社会実装の柔軟性が取り上げられることが多いが、資金投入側のリスク許容度という意味においても日本との違いは大きい。


 


● 今後日本でS級はうまれるだろうか ●


本書を読んでいてずっと自分の頭の中にあったのは「中国ではS級が”新しく"産まれた。では、日本はどうだろうか・・・?」という疑問である。自分もプレーヤーの一部であるだけに、あまり悲観的な話をすべきではないが、この疑問に対する答えは残念ながらNoだ。
完全に整理しきれていないものの、中国においてS級が産まれ、日本において産まれないであろうと想像されるのは主に以下の理由だ。



  1. 人材の高い流動性
    中国国内において問題とされていることの一つに「人材がなかなか一つの企業に定着しない」というのがあげられるのだが、ことイノベーション関連に関して言えば、この流動性の高さは武器になっている。特に「立ち上げ → 撤退」が繰り返される分野においては、人材流動性が高い社会では前職の失敗が必ずしもキャリアの停滞を意味しない。人材が常に撹拌されているような状況においては、「過去の経験」をすぐに最前線や高い地位で使うことができる可能性があり、社会全体としての活力を生み出している。


  2. 国際展開のスピード
    中国のS級と呼ばれるスタートアップは、国内に広大な市場を持つにも関わらず、創業当初からすぐに国際展開を狙っている。確かにAlibabaやTencentといったプレーヤーは非関税障壁とも言える国策によって守られていたが、今ではそういった保護が必要ないぐらい、圧倒的なスピードで国際展開が行われる。これは、一つには中国人のハイレベル人材は英語を苦にしないこと、もう一つには各国に中国系人材(中国語を話せる人材)が多くいるということが要因としてあげられるだろう。確かに中国においても「まずは中国市場で成功して・・・」という考えはあるが、そもそものスピードが違うので、日本から見るとあっという間に国際展開が行われているように見える。


  3. 投入資金の柔軟性
    成長中の今だから出来ることという気もするものの、上述したように中国における投資熱というは凄まじいものがある。明らかに技術的にはおかしいもの、あるいはコンセプト自体がずれているものであっても、とりあえず派手で成長感が出ていればお金が集まるという状況も一部にはあるようだ。社会全体としては壮大な丁半博打をしているようなものだが、国全体を一つのVCとして見てみれば、どこかが当たれば他の損を十分にカバーできるわけで、このような(ある意味向こう見ずな)ダイナミズムが成長のスピードを押し上げているように感じる。


本書はそれぞれの分野における入り口を提供するという趣があるので、中国についてすでに一定の知識がある人には物足りないかもしれないが、全体を通して読むことで週刊誌やWEBメディアで得る断片的な情報では描けない中国像の一部を提供することができている。もちろん、これで全てだ・・という気は毛頭ないが、最初の一歩として手に取るにはかなりのおすすめである。

2019年3月 5日 (火)

今年最初の本社出張

一ヶ月ほど前になってしまうが、2月第1週に今年初めての本社(シリコンバレー)出張に行ってきた。入社前のインタビューで1回、2018年は合計で4回出張にいったので、今回は6回目ということになる。さすがにこれぐらい出張に行くと体も慣れてきて、時差ボケは依然としてあるものの体の疲労はかなり少なくなってきた。その要因の一つとしては、行きと帰りの便を固定にしたこともあると思う。行きは羽田を19時過ぎにたつJAL02便、帰りはサンフランシスコを午後に出るJAL01便だ。これだと、向こうに着くのは昼過ぎなので、ちょっと眠気を我慢して夜に早めに眠ってしまえば時差関係なく眠りにつくことができるし、帰りは日本につくのが夜なので、家に帰って洗濯物を片付けたり旅装を解いて寝るとちょうどいい感じになる。おかげで、到着2日目の時差ボケは如何ともしがたいものの、それ以外はかなりスムーズに向こうでも業務に入れるようになった。

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今回も、日本から連れて行くお客さんと2日間のワークショップをはじめとして予定がぎっしり詰まっているので、シリコンバレーを観光することはほとんど出来ない。もう6回も行ってるのに、AppleもFacebookもGoogleも見たことがないのだ。だいたい、毎回メンローパークにある本社周りの極めて小さい範囲で出張が終わってしまう。下手するとスタンフォードに足を伸ばす時間もないぐらいだ。

そんな感じで予定が詰まっていたので、今回唯一行けたのは、メンローパークのダウンタウン(と呼んでいいものか悩ましいが・・・)にあるTrader Joe's。行けたと行っても、ホテルからは10分もしない距離にあるので、ちょっと買い物にきたという感じである。
Img2167 日本ではなぜかトレジョのトートバックが人気というと、毎回本社の人間がばかウケするのだが、確かに実際に足を運んでみると何がそんなにいいのかよくわからないというのが正直なところ。確かに食べ物は近くにあるSafewayと比較すると新鮮だな〜という感じがするけど、トートバックがブランド化するほどのものだろうか・・。旅人的にはSafewayのほうがデリや食事がある分便利という気がするのだが・・。
そういえばSafewayには、Amazonのロッカーが置いてあった。楽天のロッカーが日本にあるようなものなんだろうけど、なんというかネット小売の受け取りロッカーがリアル店舗にあるというのはちょっと不思議な気もする。

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シリコンバレーというと基本的に常に晴れで、雨が足りないために水圧が足りない・・・みたいな話をホテルの人とすることが多いのだけど、今回はずっとグズグズとした天気で、最終日は大雨になってしまった。飛行機に登場してから、大雨のために滑走路が閉鎖になったという情報が流れてきて、結局1時間半ほど離陸が遅れてしまった。最初のアナウンスで1時間ぐらい遅れる・・・とあったので、"そうか、3時間ぐらいは遅れるのかな・・・”と頭の中で計算したのだが、ほぼアナウンス通りに動いてくれた。この辺りはまだまだ頭が中国で止まっているという感じがする。

2019年3月 4日 (月)

CEIBSが提供する1+1 lecture Tokyoに行って来た

少し前になってしまうが、2月の上旬は母校であるCEIBSが日本で課外講義+ネットワーキングパーティーを行うということで、久しぶりに卒業生(Alumni)として参加をしてきた。Global MBA rankingの上位にそれなりに安定的に入るようになって来たCEIBSだが、依然として日本人の入学生は少なく、プロモーションのためにこういったイベントを初めて数年(今回が5回目とのことであった)。数年間はほとんど結果が出なかったものの、2018年度入学生は5名と過去最高の日本人学生数となったとのことで、さらなる学生増を狙っているようである。

今回のイベントはCEIBSの教授が東京で現在ホットなトピックのレクチャーを行うということで、テーマは「米中貿易戦争と日本への影響(US-China Trade Conflicts and the Impact on Japan)」。授業を行うのは、我々の時代には全員必修だったマクロ経済を教えているXu Bin先生である。
マクロ経済はおそらく日本の大学の学部レベルにも満たない授業内容ではあったと思うのだが、授業は今回来日したXu BinとBalaという屈指の人気教授の二人でわけあって授業が行われていた。


ものすごく情熱的な授業を提供し、またフィランソロピーにも積極的に参加するということで学生の間でも人気の高かったBalaと比べると、当時のXu Binはより学者肌という感じでいかにも大学の先生という感じだったのでそれほど印象には残るタイプの教授ではなかった(ただし中国人の先生にしては、恐ろしく親しみやすかったらしく、中国人の間で人気は高かった)。
また、英語のアクセントが微妙にわかりづらいため、一生懸命話してくれてもよく内容がわからないということが時々あり、個人的には授業中にどうしてもわからなかった内容を偏微分方程式を使って議論をしたことを覚えている(それにより、同級生からはMath Masterというあだ名をいただいたのも懐かしい思い出である)。

今回は、そのXu Bin先生が提供する1時間半のプロラグムがメインコンテンツだったわけだが、久しぶりに話を聞いて、いい意味で驚きがあった・・・というか、Xu Binこんなに授業うまかったっけ?という感じで、聞き入ってしまった。CEIBSは世界TOPクラスのビジネススクールになるという目標を明確にしているだけあって、結構指導側の入れ替えも激しいのだが、さすがに長年生き残っているだけのことはあると感心した。というか、気がついたらAssociate Deanにもなっているし、偉くなったんだなぁ。

先生の話の中で面白かった内容を箇条書きするとこんな感じ。もともとCEIBSは中国にありながらもかなり「気を使わずに発言をする指導陣」が多かったのだが、今回は日本にいるということで、さらに積極的に自分が思っていることを話してくれたのではないかという気がする。
  • 政治的な意思決定は常に国民の動向を意識して行う必要がある。これは米国側のリーダーであるトランプだけではなく、中国側の習近平も同じである。共産党による一党独裁であっても、なんでも自分の思い通りにできるわけではない。
  • 現在の米中貿易紛争は、イデオロギーの戦いではなく、形の違う資本主義同士の戦い。なので、米国にとっては冷戦とは異なる側面がある一方で、かつての日本との戦いから学んでいる点がある。
  • 中国の資本主義は米国の資本主義と異なるというのは事実。一方で、中国経済が成長しているのは「共産党による管理・指導」があったからという認識は間違い。政府による介入や管理がなければ、中国経済の発展はもっと加速するはず。
  • 今後10年以内に、中国のGDPは米国を抜くと予想するが、それが真の意味での経済的な優位性や国の優位性を意味するわけではない。例えば、米国のパスポートとと中国のパスポートを比較した時に、どちらを取得したがる人が多いかで、国の優位度が計られたりもする。
  • 中国は中成長の罠から抜けられるかまだわからない

に気になったのは、ここ数年International Student(中国籍以外の学生数)の数が一貫して低下していること。データ上では自分がいた2011年入学組がピークでその時はだいたい45%が外国籍だったのだが(台湾籍、香港籍含む)、今はそれが30%程度に低下していた。DiversityはMBA rankingの評価要素の一つで、CEIBSも積極的に外国籍の学生を採用しようとしていたが、最近は少し戦略が変わったのかもしれない。
学費も上がって来たことでCEIBSのコスト上のメリットが薄くなったということもあるだろうし、中国が成熟して来て、外国人を「中国国内で採用する必要」がなくなって来たということかもしれない。いずれにしても、現在スクールにいったらかなり雰囲気が違っているんだろなぁ・・・。

2018年4月19日 (木)

[書評] なぜ「戦略」で差がつくのか(著:音部大輔)

ビジネススクールの卒業にあたっても書いたが、Strategyというのは大変難しい。この難しいというのは色々な理由があって、まずもって「戦略」という概念が対象としている事象が難しいということがあげられる。「戦略とは何か?」という問いに対して研究者ですら統一的な回答はないであろうし、戦略という言葉をなんでもかんでもの対象に使ってしまっているために、語っている階層(レイヤー)が異なってしまい、同じ「戦略」を会話しているはずが気がついたら全然違うということもよくある。

また、経営学の範囲で取り扱っている「Strategy」にしても、マイケル・ポーターを嚆矢とするポジショニングに重きを置く学派もあれば、組織内のCapbailityに重きをおく立場もあるし、組織学習や進化により注目する立場もある。近年ではそのハイブリッドな考え方も出てきているし、デジタルによって変化する部分・しない部分を議論したりと、とにかく議論の幅が広い。さらに、「戦略」を語るにあたっては、例えばプログラミングのようなスキルや、数学・工学などに求められるような専門的な知識が必要ないと"思われている"せいで、誰でもとりあえず何かを語れてしまうという状況にある(※1)。

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そういった状況なので、戦略のことを一般の人が学ぼうとすると、やたら分厚い教科書を全体像がよくわからないまま読み始めるか、著者の経験+ちょとした理論(+自慢話)がさらっとまとめられた本を手に取るか・・という2択を迫られてしまうことが多い(※2)。そんな人にお勧めできるのが本日とりあげる"なぜ「戦略」で差がつくのか"である。

本書の著者である音部大輔さんは、P&Gをはじめとしてダノンや日産などの様々なB2C企業でマーケティング畑で経験を積まれ、直近は資生堂のCMOとしてマーケティング組織をデータを用いて学習し続ける組織に変革されようと活動されていた。現在は独立されて、Coup Marketing Companyという会社を立ち上げられている。神戸大学で経営学の博士号も取得されており、いわゆる「すごい人が自分の経験をもとに書いた」本とは一線を画している。


私は前職(IBM)で最後のほうにお仕事の関係で音部さんとお会いする機会があり、著書にサインもいただくことができた。なので、全く接点のない方の本を紹介するわけではない・・・ということは最初にご了解をいただきたい。

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● 本書で定義する戦略と、その実現方法 ●

本書では、議論する戦略の定義を「戦略とは目的達成のための資源利用の指針」であると定義する。これは、音部さんのこれまでの組織人としての実務経験が強く反映されていると個人的には感じている。一般的に、極めて高いポジションにおりかつ大企業でもない限り、自社のポジショニングや組織的Capabilityを深く考察して戦略を構築するということはないと思う。むしろ日々の業務に求められるのは、"達成すべき目的とは何か?”を明確にして、"(普通は)足りないと思われるリソースでどのようにそれを達成するのか"ということである。

本書は第1章で上記のように戦略を定義した後は、一貫してその戦略をどのように実現するかについて筆を費やしている。音部さんの経歴から、主に取り上げる範囲はマーケティング分野を対象とされており、マーケティングや営業などの戦略を考える立場にいるであろうミドルマネージャーには役に立つ内容となっている。第1章以降の内容をざっとまとめると下記のようになる。


  • 第2章:戦略の構成要素①
    「目的」を解釈する 目的を「いい目的」と「そうでない目的」に分類した上で、いい目的を設定するための考え方としたSMACとSMARTという概念を紹介する。

  • 第3章:戦略の構成要素②
    「資源」を解釈する 目的の達成のために必要となる資源(リソース)を、「内部資源」「外部資源」「認識しにくい内部資源」「認識しにくい外部資源」に分類して、それぞれの内容や効率的な運用方法について解説する。

  • 第4章:戦略の効用
    戦略を持つことはどのような意味があり、具体的にどのような意義を組織に持ち込むことができるかを説明する

  • 第5章:戦略を組み立てる
    実際に戦略を構築する立場になった際に、どのように戦略を構築していくとよいのかをとく。また著者の経験から、避けるべきポイントや、戦略をブラッシュアップするための方法論を紹介する。

  • 第6章:戦略を管理する、第7章:戦略的に考える、第8章:「戦略」をより深く理解する 実際に立案した戦略をどのように組織の中で管理し、実現するのかについて説明する。また最終章では、様々な本書の考え方を様々な戦略論の中で位置付け、今後さらに学習をしたい方向けのガイダンスを提供する。


● 本書をよりうまく活用するために ●

あらためて本書を読み直してみると、一貫して「資源」ということに注目をしていることに気がつかされる。これは考えてみれば当たり前で、どのような戦略論であっても「リソース」を最大限効率よく利用することが重要であることに加えて、マーケティングというのはまさに「資源(特に金)」が勝負を決める重要なファクターになるからだ。

どのような組織にいたとしても「資源がありすぎてどのように使うか」といった悩みを抱えている人間はほとんどいないだろう。普通は「溢れる要求を足りないリソースでどのように処理するか」について悩んでいることだと思う。そういった人に向けて、まさに本書は適切な考え方を提示する本と言えるだろう。逆にいうと、比較的フリーハンドで全社の経営企画を考えるとか、マーケティングでもリサーチ領域にいるような人は本書は物足りないかもしれない。現場で勝つための方法論を学びたい人向けの本であると言えると思う。


また、もう一つ本書が現場で優れているのは「様々な人間を巻き込むことを前提として考え、そのための様々な方法論を提示している」ことだ。特に私が優れていると思ったのは、"5年後の未来から逆算して考える"という方法論だ。中期経営計画のようなものを読めばわかる通り、どれほど考え抜かれていても、ただそれが分析結果として提示されるだけでは戦略は胸踊るものにはならない。理性だけでは人は動かないのだ。

そういった落とし穴を避けるためにも、「成功をイメージした5年後から逆算する」というのはとてもよい方法だと思う。確かに、あまりに想像が高すぎると絶望感が増してしまうが(※3)、多くの人はチャレンジが明確になるにつれてやる気が増してくるものだと思う。
現場で、エキサイティングな仕事をして勝つためのお供、として本書を読んでみるのがよいのではないだろうか。


※1・・・ちなみに個人的には「戦略」という概念や理論を研究するという観点からは、軍事・戦争について専門的に研究している方のほうがより精緻に議論を展開しているというイメージがある(あくまでイメージかもしれないが)。

※2・・・過去に戦略に関する体系的な勉強をしたことがない人は、三谷宏治さんの「経営戦略全史」を最初に読むと全体感が掴めて良いと思う。

※3・・・そういうことを避けるために、まず「いい目的」を選定することが重要であると著者は述べている。

2018年4月 2日 (月)

イノベーションを少しでも高い確率で起こす方法

私が1月末から勤めているSRI (Stanford Research Institution)は、受託研究開発を主なビジネスとしているのだが、最終的にはお客様と社会のイノベーションを支援するということを目標として掲げている(ビジョンでは、「世界を変えることができるソリューションを生み出す」ことを掲げている)。米系企業というのは、このイノベーションという言葉が大好きで、例えばSRIの前に勤務していたIBMでも、「IBMはクラウドとコグニティブによりお客様のイノベーションを支援する」企業である、といっていた(※1)。

このイノベーションという言葉、日本ではよく技術開発と同義語で使われたり、一方では、技術開発がなくてもイノベーションであるという主張を極端にして「既存の要素を組み合わせて新たな価値を生み出す」のがイノベーションであるという人がいたりと、人それぞれの定義があるようで中々議論が噛み合わない領域だというのが、多くの人が持っている印象ではないだろうか。特に日本においては「カイゼン」の文化が広く浸透しているため、カイゼンとイノベーションは違う/同じだという議論がなされたりする。

イノベーションを研究する学者や学会によっても微妙に定義が異なるので「これが正しいInnovationだ!」という主張をぶつけあうことは宗教論争みたいなものになってしまうためここでは避けるとして、SRIではイノベーションを「新たな顧客価値(==市場価値)を作り出し、市場に送り届けるプロセス」として定義している。ここでいう顧客というのは狭い意味の「製品・サービスを有償で買ってくれる」顧客だけではなく、「自分がしている仕事の成果を利用する人」ぐらいの意味で使っている。なので、いわゆる企業のコストセンターや内部部門にも顧客はいるというように定義している。


● イノベーションを起こすためのフレームワーク ●

先ほど"イノベーションを支援するということを目的としている"と書いたが、ただ闇雲にそういうことを言えば実現するというわけではないし、また、SRIの場合には何かしら特定の製品やサービスを用いて「イノベーションを支援する」というわけではない。むしろSRIは顧客とのプロジェクトを通じて、「顧客の内部でイノベーションを起こすためのきっかけとなる」ことをビジネスとしていると言うほうが適切かもしれない。そのための、フレームワークについて詳細に記述されているのが、本日紹介する「イノベーション 5つの原則」だ。

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本書ではSRIが実践している、SRI内部、および顧客とのプロジェクトにおいてイノベーションを起こすためのフレームワークの詳細が記述されている(※2)。詳細な内容についてを語るには、結局本書と同じだけの分量が必要となってしまうが、簡単にいうとイノベーションを高い確率で起こすためには、以下の5つの要素を考慮し、それぞれの値を引き上げていく必要がある。


確率 = ① ニーズ ✖️② 価値創造 ✖️③ チャンピオン ✖️④  チーム ✖️⑤ 組織化


上記の式を簡単に説明すると、それぞれの要素は以下のような内容となる。


  1. ニーズ:市場や顧客にとって「重要度の高い」ニーズを明らかにする
  2. 価値創造:「重要度」と「満足度」に注目して、打ち手が生み出す価値を試算する
  3. チャンピオン:イノベーションを内部で推進するリーダー(チャンピオン)を見つける
  4. チーム:イノベーションを完遂させるための人材を集め、適切なコミュニケーションルールを設定する
  5. 組織化:イノベーションを支援する組織体制や文化を醸成する


本書ではそれぞれの要素について、より詳細な内容やどのようにして「要素が高まっているか」を判断するための方法論が提示されているのだが、イノベーションを自分のビジネスで起こしたいと考えている人間にとって参考になるのは、前半部分だろう。イノベーションに結びつくようなニーズの見極め方や、価値創造を行うための理論的な枠組みが提示をされている。

● イノベーションは人が引き起こす ●

一方で、後半になるにつれて「人」の要素が増えていき、勉強して学ぶことができる「フレームワーク」的な考え方は少なくなっていく。例えば、上記にあるようにイノベーションを起こすためには、困難な時にも情熱を持って進めることが出来る「チャンピオン」が必要であるとしているのだが、"どのようにチャンピオンを作るのか"というノウハウのようなものは一切提示されない(※3)。

また、チームの部分についてもイノベーションを促進するため(あるいは阻害しないための)のコミュニケーションについての簡単なノウハウは提示されるのだが、日々どのようなコミュニケーションを行うと、どのくらいイノベーションが促進される・・・といった定量的なデータはない。


結局のところ、本書を読んで最終的にわかるのは「イノベーションをある組織(社会)で起こすためには、人が決定的に重要である」ということだ。どのようなレベルの(あるいは大きさの)組織でも構成員は複数おり、また極めて論理的な人間が多い組織であったり、知性が高い組織であったとしても、イノベーションに対応する反応というのは、最初から全ての構成員が諸手をあげて賛成するということはないと言っていいだろう。 だからこそ、そういった人によって発生する摩擦を乗り越えていくためには、人のパワーが何よりも必要になるのだということを、本書は声高ではなくても強く言っている。

本書に紹介されている方法、あるいはSRIが提供するソリューションというのは確かに「イノベーションを少しでも高い確率で起こす方法」であることは間違いがない。一方で、あるレベルまで論理的に物事が積み上げられていったら、最後の部分はその組織に属している「人」の力になる。であるならば、そういった「人」を探し出すこと、そういった「人」が前向きに進んでいけること、あるいはそういった人に火がつく瞬間を生み出すことが出来るような組織や社会こそが、これからのイノベーションの時代を勝ち抜いていくということなのだと思う。


※1・・・ビジネススクールの笑い話として教授が紹介していたのが、『ビジネススクール出身の人間の描く文書から"Innovation"と"Strategic"を除くと分量が1/3になるというのがある』くらい、Innovationというのは「意味はわからないがなんか凄そう」という言葉の典型だったりする。ちなみに、IBMの時には意味のない言葉として他にも"World class"という単語があげられており、マーケティングではそういう単語を使うのをやめよう・・・という運動がなされていたが、全く定着しなかった。

※2・・・こういったフレームワークを紹介する本の場合、記述していることと社内で実践されていることに大きな乖離があるということがしばしばあるのだが、実際に入社して見て驚いたことに、本当にこのフレームワークを活用してSRIでは仕事を行なっている。

※3・・・本書は米国を主な対象として書かれているので、外部から人材を調達することを除外していない。そういう意味においてはチャンピオンを探す自由度というのは日本のほうが難しいかもしれない。一方で、日本の場合、社員が短期的な業績のみを追わなくてもよいということで、じっくり腰を据えて物事を進めていくチャンピオンを探しやすいという可能性もある。

2018年2月14日 (水)

Global企業という夢と幻想

先日転職した米系の研究開発企業は全世界でプロジェクトを行なっているものの、支社と呼べるものは日本と米国にしかないため、自社のことをGlobal企業であるといったりはしていない。そもそも雇用契約自体は全て米国の会社と直接行なっているので、今の自分の身分としては100%米国企業の社員である。

一方で、これまで所属していた組織は自社のことをGIE = Globally Integrated Enterpriseと称して明確にGlobal企業であるとしていたし、全世界で40万人以上の社員を雇用していた。一方で、米系らしく意思決定は基本的に米国本社で行い、海外は「現地販売法人」という位置付けであった。確かにこの形は1990年代以降一貫してうまく行く方法であったし、Cloud時代になることで、IT業界はますます開発・生産と販売が分離するように思えるけど、果たしてこれがベストな形なのだろうか・・・ということは、ずっと考えていた。もっと端的にいうと、「Global企業と呼ばれる企業は、本当に"世界で統合された存在"なのだろうか?」という疑問である。


● Global企業とは......? ●

結論から言ってしまうと、現状でGlobal企業と呼ばれている企業のほぼ全ては「Globally operating XXX Enterprise」だと思っている。少なくとも、IT業界においてはほぼ全ての企業がそうだ。XXXには企業の本籍地というか発祥の地名が入ってくる。例えば、米国資本の会社であれば"American"が入るし、"Japanese"が入るというわけだ。

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確かに世界中で操業をしている企業は、人種も多様であるし、多くの国籍の人間が働いている。複数の「国家」を市場としているし、情報も常に世界中で共通化されている。それでもほぼ全ての企業は、やはり自分たちが操業された地域というアイデンティティを忘れることは出来ないし、社内の文化も操業された地域の文化を継承するような形で進化をして行くように見える。これ税務対策の面で本社を別の地域に移したとしても変わらないし、数人の幹部を外国人にしたとしても変わらない。システムと文化の相互作用により構築されたアイデンティティはそう簡単に変更されないというのが、自分がこれまで米系企業にいて感じた実感だし、日系企業を調査しても同じような結論となった(※1)。

例えば、日本企業でも代表的なグローバル企業であると言えるだろう「日立」に関しても、経営幹部が日本国籍を持っていない人間になる可能性があると書いている一方で、人材育成に関しては本社人材を優遇するということが、ほぼ無意識的に行われている。日立再生について当事者であった河村元社長・会長の著書"ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」"を読むと、若手に修羅場を経験させるために海外に送り出すようにしている・・・という部分があるが、この著書を読む限り日本本社に入社した人間のみを対象としているように見える(※2)。


● コストの最適化か、それとも人材の最大活用か●

世界中でビジネスを行なっている米系企業であれば、そこで働いている社員は程度の差こそあれほぼ英語を話すことが出来る。日系企業でも現地法人の幹部クラスになるとある程度の日本語が話せるというのも、普通に見られる話である。なので、少なくとも言語という観点からは、本社の人間を優遇する必然性というのはどこにもない。


では、なぜ本社の人間のみを優遇するようなシステムが出来上がるのか・・・というと、最も合理的な回答は単純に「自国民でない人間を大量に活用すると財務・経理面でも、法律面でもコストがかかる」ということがあげられる。まず単純に違う国の人間を働かせようとすると、移動費やら保険やら、その他生活面でのサポートということで追加のコストがかかることが多い。完全に同じ条件を提示したとしても、ビザ取得というコストがかかる。そもそも、日本はもとより、移民に極めて寛容と思われる米国でも、ビザ取得というのはそれなりに大変な手続きが必要なのだ。やはり、雇用を守るというのは極めて重要な問題なのだ(主に政府にとって)。

次に予想される回答としては、外国人が大量に意思決定レイヤーに入ってくることは、組織の文化として難しいということだ。日本でも一時上級幹部クラスに大量の外国人(日本国籍以外)を採用しようとした会社があったが、やはり文化や慣習が違うということで頓挫してしまった企業があった。どんな開かれた会社であったとしても「XXという国から生まれた会社なのだから、XX人以外から命令を受けるのは嫌だ」と思う人間は一定数いるだろうし、個人としてはそれは自然な感情だと思うので、組織の維持という観点からはそういった文化的な慣性が存在するということを無視しないのは合理的であると感じる。


一方で、ある企業に所属している人材の能力を最大活用しようとすれば、海外現地法人にいるような人間を積極的に登用することは理にかなっている。スタートアップ企業やハイスピードで成長を続けている企業の場合には当てはまらないが、いわゆる大企業と呼ばれる企業の場合、実感値としては新興国で入ってくる人材のほうが、本国で入ってくる人材よりもレベルが高いということは普通に起こり得るだろうと思っている。

日本でもそうだが、本当に優秀な層というのは給与が極めて高い職業やスタートアップといった職場を選択する傾向にあり、大企業がなかなかそういった尖った人材を採用することは難しい。一方で、新興国では国内産業が弱かったり、地縁血縁が求められて実力だけではのし上がっていくことができない場合があり、優秀な人材がGlobal企業を選択することは普通にある。そういった場合に、本社で採用された普通の人間よりも、現地の最優秀層のほうが優秀であるということは特別驚くようなことではないと思う。


そもそも環境的にチャレンジングな場所で、かつ語学の壁を超えて学んできただけあって、新興国の優秀層というのはポテンシャルも非常に高い。そういった人間により挑戦的な場所を提示するというのは、人材活用の最大化という観点からは合理的と思えるが、これまでそういった実例というのはほとんど聞いたことがない。


私も前の米系企業を選択するには、GIEというコンセプトに惹かれ、また面接においても繰り返しone firmであるということが言われていたために、実際に入ってみるとそのスローガンと実際の運用の差にじぶんとがっかりしたものだ(今から考えると随分青臭いな・・・と思うのだけど、こういうことは経験しないとわからないので仕方ない面もある・・・はず・・・)。

テクノロジーが進化してどんどん世界は小さくなる一方で、まだまだこういった職場における人材活用というのはそれほど変化がないように見える。これまで、本日取り上げたような「多国籍企業における人材マネジメント最大化」といった文脈での研究や、うまくいっている事例というのはあまり見たことがないのだけど、日本人の労働人口が減り、相対的なポジションが弱くなっている現状では、他国の優秀な層を積極的に「本社で」活用するというのは一つの方法論になるのではないかと思っている。本当は10年前ぐらいに始められればよかったのだが・・・・。


※1・・・もちろん企業ごとに濃淡というのは当然あって、例えば米系IT企業でも東海岸にある企業よりは西海岸の方がより多様性があるという印象を受けたし、インフラ企業よりはWEB・アプリ企業のほうがより多様性が大きいという気がする。
※2・・・よく知られている例でいうと、GEのLeadership programは世界中から優秀な人間を選抜して数年間かけて育成を行う。ただ、各国から選抜されて育成された人材は基本的には各国に戻り、そこでリーダーとなることを期待されているようだ。

2018年2月 9日 (金)

MBA卒業後では初の転職

2018年1月を持って、MBA卒業後から勤めていた米系IT企業である日本IBMを退職して、2月より新しい職場にうつった。IBMにいた期間は4年11ヶ月で、実は人生で属した会社の中では最長となった。就職した時には、まさかこれほど長くいるとは思わなかったのだけど、辞める理由が特にないな・・・と考えていたり、中国にいる同期はほとんど複数回の転職をしているが、日本ではあんまり転職回数が多いのはマイナスになるので、時期としては標準的な期間ではないかと思う。

MBAではよく「まずは学費を返すためにコンサルをやって、返済が終わったら本当に好きなことをやる」ということが言われるのだが、狙ったわけではないが、自分もちょうど借金を返済し終わったタイミングでの転職をすることとなった。新しい会社は米系の研究開発に特化した非営利組織で、役目としては日本企業や大学、政府系組織との共同研究プロジェクトを立ち上げることを目的とした事業開発担当という感じである(詳しくはプロフィールページをご参照のこと)。


● 同業他社には行かない:転職の際に考えたこと ●

自分ぐらいの年齢になると、これまで経験がしたことがない業種や職種に移るというのはできなくはないけど、非常にチャレンジングであるのは間違いない。取る側もそれなりの期待をして採用をするので、全く経験がない人間を取るという意味はほとんどないし、移る側の人間としても家族がいるとそんなに冒険は出来ないものである。・・・ということで、転職する際に最もわかりやすい方法は「強豪である同業他社に行く」というものだ。特に自分がいたIT業界、かつクラウド事業というのは、使っている技術もほとんど変わらないし、古くからいる人間が幅をきかせているという業界ではないため、実力があれば同業他社転職は容易である。そもそも、最後の一年半取締役が同業他社からヘッドハンティングしてきた人だった。


ただ、個人的には今回の転職をするにあたって、よっぽどのことがない限り同業他社にいくことはしないでおこうと思っていた。
一つは、少なくとも前職ではそれなりに評価をされていたので、何も同業他社に移る必要はないと考えていたからだ。IT業界というと「若い人間がドーンと偉くなって、マネジメントをしている」みたいなイメージがあるが、クラウドはまだまだ成長領域とはいえ成熟してきているし、そもそもB2BのIT領域というのは重厚長大な雰囲気があるので、駐在員でもなければいきなり30代でExecutiveというのは、ほとんどない。そういうことであれば現職にいて順番を待っていればよいと考えるのが合理的な判断だと思う。

もう一つは、単純に同業他社に行くのはかっこ悪いと自分で思っていたことである。自分でも青臭い意見だと思うのだけど、IBMでは取締役の側で色々な仕事をやるというポジションにおり、なんというかそういうようなポジションにいる人間が、ちょっと給料上がる(かもしれない)という理由で同業他社にいくのは、なんとなく義理がないというか、自分の生き方に反しているように感じた。IBMはクラウドではマーケットTOPではないし、正直なところあまりブランドイメージがよくなかったので、同業他社に転職するというのは、ある意味で「マーケットポジションをあげる」ことになるのだけど、一回弱いところにいたのであれば、そこを強くする方が面白いのではない?というのが僕の持っている感覚だった。


● 転職を考えた理由 ●

これまで4年11ヶ月在籍したIBMは、日々仕事をしていれば色々不満はあったものの、基本的にはとてもとても良い会社である。昔からいる人に言わせると福利厚生がかなり減ってしまったと嘆いていたが、社食はあるし、社内にジムも出来た。フレックス制どころか、E-Workと呼んで会社にいかなくてもよいという制度のおかげで、必要がなければ家でダラダラ過ごすことも出来る。お客様も優しい方が多くて、子供が産まれる時や産後数ヶ月は実質産休状態になることを許可いただいたということもあった。

社内で部署移動してからは季節労働者のように異常に忙しい時期と、全然暇な時期が交互に来ていたのだが「忙しい時期があれば、暇な時期もあるのがちょうど良い」という感じで巷間言われるようなブラック企業だという感じはしなかった。有給使うのも全く問題がなく、息子の幼稚園選びの月など多分出勤率は4割以下である。


じゃあ、そういった会社をなんでやめようかと思っていたかというと、ものすごく単純な話で「自分がやっていることが本当に意味のあることだと感じられなくなってしまったから」だ。誤解がないように書いておきたいのだけど、IBMという会社が世界にとって有益であるという信念は、入社してから退社するまでの期間で全く変わらなかった。ただ、自分が日々やっていること、例えば本社に向けてレポートを書くとか、執行役員クラスの会話のメモをとるとか、そういったことがどれくらいの意味があるのかをうまく消化しきれなくなったのだ。

うちの息子は保育園に行っておらず毎日基本的に家にいるのだが、2歳を過ぎたぐらいから、会社に行こうとすると「会社行かないで〜」と泣くようになった。そういう時に、パパは会社にいかなければならないんだよ、と諭すわけだが、泣いている息子に対して「パパはお金を稼ぐ必要があるから会社に行くんだよ」とだけ思っているのは、なんとなく勿体無い気がしていた。せっかく子供と離れている時間を持たなければならないのであれば、ちゃんと自分が自信を持って"お金を稼ぐ以外の"理由を話せるようになりたいと、そういうように感じるようになった。ざっくりと言えば、これが転職をしようと思った一番大きな理由だ。


● 新しい会社で・・・●

新しい会社は自分が好きなアカデミックな雰囲気と、ビジネスを追求する感覚が程よく混ざっていて、まだ転職して2週間目だが居心地は大変よい。本質的には米系なので、いつLayoffされるかというのは誰にもわからないのだが、少なくとも今回の職場に関しては「あと何年いたら次にいこう」という気持ちを持たずに働けるのではないかと考えている。実をいうと、そう思うのは都合4社目にして初めての経験だ。

なにせ極めて在籍人数が少ない組織に入ってしまったので、これからは本名が少しずつ世の中に出ることもあると思うし、そういった時にはこのブログでも取り上げていこうと思っている。これまでは「調べようと思えば調べられる」ぐらいのところで素性を明かしていなかったのだが、今後は「ブログ読んでれば誰だかわかる」ぐらいの人にはなっていくんじゃないかな・・・と想像している。


長い間休んだり、いきなり書き出したりと安定しないブログではあるけれども、時々見に来てくれると大変嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします。

2014年4月27日 (日)

[書評] ビッグデータ分析に巻き込まれた時に読むとよい本

今の仕事はいわゆる「戦略コンサルタント」ともう少し業務よりの「ITコンサルタント」の間のような仕事をしているのだが、やっぱり世の中で言われるようなbig dataに関する問い合わせというのは特に昨年度下半期ぐらいからかなりある。
このbig dataという言葉、世の中に積極的に広めている会社の一つに間違いなく今自分が働いている会社があるので、功罪ともにあるというのは感じるのだが、実に曖昧かつ適当な使われ方をしているんだな~と感じる。

例えばお客さんのところにいくと「上司から○○分野でbig dataを使って、何か施策を考えろと言われまして・・・・」みたいな話をされるわけだが、だいたい7割ぐらいは「それってExcelでも十分Okですね」みたいな回答をしている※1。重要なのはデータの量ではなくて、何のためにどういったデータを利用するべきか・・・ということを考える必要があるんですよ~という話をするわけだが、だいたいの場合はお客さんは満足してくれない。なぜなら上司から求められているのは、「big dataで何かをすること」であって、今の技術で出来ることをするというわけではないのだから。


ちなみにこの傾向と言うのは何もお客さん側だけではなく、社内でも見ることが出来るのが結構厄介だ。さすがに、自分がいるような部署は実際にサービスを提供するほうなのでそういったことはあんまりおこらないが、営業のようにとにかくたくさんの商品を扱う側になるとイチイチ一つ一つの商品を詳しく勉強してくる時間もないので、とりあえずbig dataといって話を持ってきたりする(そこで修正するのが、自分がいる部署の役割だったりするわけだ)。

そんな感じで猫も杓子もビッグデータ状態なIT業界なのだが、実際に何が出来て、何が出来ないか・・ということを真正面からちゃんと解説した本と言うのは意外にない。だいたいの本は、「ビッグデータで○○が出来る」系のあおり本か、テクニカルな解説を行っていて数学に慣れていない人には開いた瞬間から眠くなってしまうような本だ※2。そういった「何が出来て、何が出来ない」という話に真正面から答えようとするのが本書だ。ただし、実際の内容の半分ぐらいは「ビッグデータでなくてもできることはたくさんありますよ」という内容なので、ビッグデータ真正面からの本というわけでもない(公平のために記しておくと、著者は僕の恩人というべき方)


会社を強くする  ビッグデータ活用入門  基本知識から分析の実践まで

Part1. 活用のための基本知識と計画41uasfh16ml
第1章 ビッグデータ活用の基本知識
第2章 ビッグデータを競争力強化に使う
第3章 事例から見る競争力強化のポイント
第4章 ビッグデータで事業構造を正しく知る
第5章 分析のための準備

Part2. 分析の実践
第6章 データ分析のステップ
第7章 事業構造の概要を把握する
第8章 顧客を軸に分析する
第9章 打ち手につなげる分析


Amazonを見ても章立てがなかったので書きだしたのだが、これを見るとわかるとおり本書は「どうやって」を追求するよりも、「何のために」を伝えるために書かれている。そして、そのメッセージはすごくシンプルで、要約してしまえば「ビッグデータを使って、顧客と自社の関係を正しく把握しましょう」ということに他ならない。

Par1では、ビッグデータを利用する前にまず最低限、自社の理解を行おうということを言う。ここで重要なのは「本当に把握をするためには、何もビッグデータである必要はありません」ということだ。著者は経営コンサルタントの経験が長く、すらっと書き下してしまっているが、まずはデータを使うためにはそれを理解するための構造を正しくイメージする必要があるということ、を伝えている。

ちなみに、この部分は「ビジネスに限っていえばそうだよな・・」とは思うのだが、研究生活の端っこをかじったことがあるぐらいの自分からすると、未知の分野では必ずしもそういうアプローチをする必要はない、とも思っている。例えば物性科学の世界では「論理関係はまだよくわからないけど、並べてみたらパターンが浮かび上がってきたので、空いているところをめがけて研究を行う」というアプローチがあり得る。論理的な関係性を作るというのは、多くの場合においては調査のための時間を削減してくれるし、アプローチの方向性を定めてくれるのでよいのだが、一方で認知バイアスになってしまう可能性があるということには注意が必要。


Part2では、一歩進んで実際にビッグデータを利用することが出来る事例について紹介している。ここで紹介されるのは基本的な方法論で、データに二次属性を追加して分析を行うという手法なのだけれど、これは実務の世界においてはかなり役に立つ。特にデータ量が少ない場合には全データ解析を行ってもあまり意味がないので、人の手を使ってしまったほうがずっと楽。少なくとも、この本を手に取る層にとってはまずこういった手法を身につけることは重要だろう。

ちなみに、この部分もビッグデータ分析をアカデミックに行おうとすると「邪道」な方法である(著者はそのことを自覚していると思うけど)。人の手を入れて二次属性を付与してしまうと、どうしても判断にばらつきが出てしまうため、本来であれば多次元空間上で距離を参考にしたり、参照データをもってきて分類学習用のデータセットを準備してあげるほうが、よりアカデミックなアプローチではある※3


繰り返しになるが本書は「まずビッグデータを使って何かやらなければ」となった企画部門の人が対象であって、本格的に統計解析を学びたいという人は別の本を読む必要があるし、自分のテーマにビッグデータがふさわしいかどうかを真剣に考えたいという人には、また別の参考書が必要となる。そういった「まずは何が出来るの」を考えたい人にとっては巻末に実際の事例があるというのはうれしい処で、とりあえず何か上司にレポートを出さなければいけない、という時にはここをまとめるだけでも、時間を稼ぐことができるのではないだろうか。

個人的には、このビッグデータ関連の話はデバイス側と組み合わせたり、いわゆる「モノのインターネット」と絡まないと活用できる領域は限定的なんだろうな・・と理解をしているのだが、否も応もなくこの世界に巻き込まれてしまった人には、本書のようなガイドブックがスタートを切るのに参考になるだろうと思う。





※1・・・最新のExcelは100万行を越えるデータを扱えるので、たいしてデータ量がないものに関しては十分に解析可能。
※2・・・理数系である自分にはこういう本も嬉しいのだが、なかなか実務イメージがつくような本がないというのも難点。
※3・・・とはいえ、こういう話をしだすといきなり「見た目上は」難しくなってしまうので、そんなのは蘊蓄を語りたい人だけが考えればよいのだ・・・というのが本書の眼セージだと思っている。

2013年1月23日 (水)

[ご報告]卒業後の進路について 

卒業後の進路についてこれまでチラチラと書いてきたのですが、ようやく物理的なオファーレターのやり取りも完結して、手続き上も次の会社への内定が確定しましたので、ご報告をいたします。MBA生活が始まった当初は考えもしなかったのですが、3月1日より日本に戻って働くこととなりました。場所は基本的には東京になる予定です。

前々職ではWEB周りのプロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーをしていたのですが、次は本格的にIT業界での勤務となります。過去記事にあるように今後ますますITというのは社会のあらゆる局面で関連してくるようになると思うし、中国だけでなく東アジアではまだまだ欧米系企業が出来ることがたくさんある、というのを感じるようになったというのが大きな入社の動機です。会社名や役職などは会社の人事規定がまだ不明なため、とりあえずはオープンにはしませんが欧米系企業の日本支社への就職という形になります。


■ 在学中の環境の変化 ■

今回の就職活動を始めるにあたっては、昨年起こった二つの出来事が進路決定に大きな影響を与えた。一つ目は、もちろん結婚である。MBA生活が始まる時には、まさか自分が在学中に日本人と結婚するなど想像もしていなかったのだが、実際に結婚をしてみると(あるいは実感を持ち始めると)、家族のことというのはどうしても考えなければならないな~と感じるようになった。

一人であれば中国での収入でも十分暮らして行くことは出来るし、上海以外の多少外国人が住みづらいような場所での勤務も何も問題がない※1。一方、中国語がそれほど堪能ではない日本人女性と結婚して、今後も家族を増やして行きたいと漠然とでも考えるのであれば、正直なところ中国での収入ではなかなかに厳しいものがある。そう考えると、目の前の条件がより良いところを探すというのはきわめて合理的だと思うし、またそれが自分にとっても幸せなことであると思うようになった。



もう一つは、これも以前に触れたことがあるが、昨年9月の反日活動である。僕はあれが起こる直前まで某米国系企業でインターンをしていたのだが、自分があのような会社で働いている時に反日活動が起こったら、たとえ米国系企業であったとしても100%安全であるとは感じられないだろうと思った。優れた企業ほどローカライズが進んでいるわけで、コンプライアンスの厳しい米国系企業といえども、日々の対応は現地社員が行うことを考えると、どうしても不安にならざるを得ない。

また現実的な仮定としても、仮に反日活動が長引いた時に「法人としての営業活動」は続けることが出来ても、個人としてのキャリアを継続できるかどうかというのは甚だ疑問である。「あなたの身の安全を保障することは出来ません」と言われるかもしれないし、ビザの継続が行われないかもしれない。そういった諸処の条件を考えると、日本人で一人で中国でキャリアを続けて行くというのは、なかなかリスクが高い・・と感じるようになった。



たぶんこのどちらかだけだったら、おそらく日本に戻るという選択はしなかったと思う。現地に根付いて長く中国で働いている人のほとんどは現実的に、中国人が配偶者のかたか、大企業から長期で駐在となっているかのどちらかなのだ※2



■ 中国で考えたこと ■

上の二つはいわば「外的な環境の変化」なのだが、それ以外にも日本への帰国を決めた理由がある。これは何年も中国ですんでいる方には何となく理解をいただけるだろうし、また「中国で働いた後に、CEIBSに来た同級生のほぼ全員」が感じたであろうことなのだが、1年半という期間、経済的にそれなりに上位層にいると思われる中国人(あるいは中国社会)と話してみて、結局自分は外国人であるという現実にあらためて気づかされたということにある※3



中国は長く続いた経済成長の結果、国も人も大きな自信を持つようなった・・というのは、日々いても感じることだし報道などでも基本的なスタンスの一つとして言及されたりする。しかし、一方で実際に中に入って働いてみようとすると、その反対の採用として急速に上位層は内向きになっているようにも感じる。「これまでは先進国に学ぶ必要があったが、今はその必要はない」というのは多かれ少なかれ感じる人も多いだろうし、もっと長い文脈で(時に政府が言うように)「中国の歴史的な立場を回復する時期が来た」と思う人もいるだろう。

ではその自信が国内の問題解決に向かって発揮されるかと言えば、それはそう簡単ではないわけで、依然として格差は大きなままだし、経済発展の方法も箱ものや不動産投資がまだまだ牽引している。何よりも急速な発展と同じスピードで教育の改善や、既存人員の再教育は進まないわけで、今後の成長については必ずしも明るい未来がまっているわけではない※4



自分も含む外国人の多くはChinese Dreamというのがあると思っていたし、また経済発展が進むにつれて「外への開かれ度合い」というのは深まってくるだろうと期待しているところがあった。だが現状ではむしろ中国は、「中国の、中国による、中国のための発展」というのを指向しているように感じるし、CEIBSという場でより深いところに触れた結果、逆にそういったことが見えるようになったともいえる。

こういうことを考えた結果少なくとも近しい未来においては、「中国という場」にビジネスという場から関わるには、外からの交流というのがベストであるというように考えるようになった。もちろん理解を進めるために勉強や交流はかかさないわけではあるが、いったんは自分の国籍のある場所に戻り体制を立て直す方がいいのでは・・と結論をつけたという感じである。



上海に2007年10月に来てからもうすぐ5年半がたち、自分が日本でとけ込むことが出来るだろうか・・といった不安も大いにあるし、もともと日本で働くことよりも海外で・・と思って外に来たんだったよね、と思ったりもするのだが、まずは自分の国に戻り、あらためてそこから次への展開を考えたいと思っている次第です。日本でお時間ある方、今までさんざん不義理をしておりましたので、ぜひお暇があればお会いするお時間をくださいませ~。



※1・・・CEIBSを卒業すると「中国基準」では高収入を得ることが出来るが、それでも日本で就職する金額よりも少ない金額になる。生活費のレベルが違う訳で単純に比較はできないし、中国で昇進した場合に給与所得者受け取られる金額というのは日本よりも遥かに高いところにあるのだが、少なくともMBA卒業直後でそうなることはほとんどない。
※2・・・日系企業の現地という選択肢もあるにはあるが、給与などを考えるととても現実的な可能性とはいえない。
※3・・・中国で働いたことがありかつ中国語もわかり、もっと中国を学びたいという同期でCEIBSに入ってきたメンバーとは少なくとも一度はこういった話題で盛り上がったことがある。
※4・・・こういうことを考えると、中国と日本というのは経済の発展についてはある程度同じような道を辿っているな・・ということを感じる。「旅行者にはフレンドリーだが実際に働くのは大変」というのは

2013年1月 1日 (火)

Happy New Year & プライベートのご報告

早いものでMBA生活にどっぷり浸かった2012年も終り、2013年を迎えることとなった。昨年は自分史の中でも結果的に1・2をあらそう激動の年になり本当に未来に向けてかなり方向性が見えた年になったな~ということを感じている。このblogも色々と宿題は積み残しているものの毎週の更新は何とか続けることが出来た。

MBA生活も残り実質的に二週間という状況になってしまったので、今年はMBAというよりは卒業後のことを考えているのだが、毎年続けている1年の抱負を今年も書いていこうと思う。


■ 昨年の振り返り

毎年懲りずにかいていることのメリットの一つに、自分でも年明け二月ぐらいにはすっかり忘れている「一年の抱負」を振り返ることが出来るのがある。昨年も例年通り、書いた内容をすっぱり綺麗に忘れていたので、先ほど見返してみて「2012年の自分の抱負」に自分で驚いた。。ということで、恥ずかしながらの振り返りをしてみよう。

(1) 中国でHSKをとる! →  ×(結局何もできずじまい)
(2) 仕事の獲得!      → ○(2012年中に次の仕事の確定完了)
(3) 原点に戻る!   →  △(全体的にMBAっぽくはなったはず・・)


まず(1)の中国語のことだが、実際に生活をしてみるとTerm2は変わらず授業で忙しく、term3以降はず~っといろんな内容でインターンをやっていたので全然時間が作れず、実質的に時間が出来るはずの9月以降は後述する私的な理由で時間をとることが出来なかった。・・・非常にいいわけ臭いが、中国語に関してはこの1年間で想定の10%ぐらいしか進まなかったというのが正直なところだった。。

次に(2)。9月の反日活動以降で大きく方向転換をした就職活動だが、多くの方の支援をいただき、無事に12月までにいくつかの会社から内定をいただくことが出来た。現在は最終的なオファーレターにサインをするのみ・・という状況になっており、この目標に関しては自分で満点をあげてもよいのではないかと思っている。実際にどのようなところに就職するのかということに関しては、正式な入社内定通知書をもらった上で会社のソーシャルポリシーを確認しないといけないので、現時点では秘密ということでご了解をいただければと思います。

最後に(3)だが、これは非常に自分では判断が難しい。もともとYes/Noで答えることや、数値化できない目標を設定していたからというのが判断が難しくなってしまう一番の理由なんだけど、個人的にはTerm3のプロジェクトで同じグループのメンバーから学んだり、Internでいろいろなお仕事をして、だいぶ数字で考えるということについて慣れてきたんじゃないかというのは実感している。
Term1を終わっただけの段階に比べれば成績も少しずつ上昇していったし、レポートでもジャーナルを引用したりインタビュー結果をまとめたりということで自分らしさを発揮できたのか、高得点をもらうこともできるようになった※1。自分が描いていたMBA生活ほどには成果を出すことが出来なかったという点を割引くと、△というのが妥当なところだろうと感じている。


■ 今年の抱負

さて、続いて今年の抱負・・というところなのだが、正直言うと今年はあんまり具体的な抱負はないのである。。というのも、MBAというある意味短期的なプロジェクトは無事に終了を迎えつつあり、今年は遠からず次の仕事を初めていることを考えると、当然最初の抱負は「仕事を頑張る」以外ありえないからだ。

MBAはビジネスを勉強するといってもやはり広く浅くになってしまうし、現実のビジネスと比べた場合に「自分で自分の目標を設定できる」という大きな違いがある。また、現在方向性と考えている進路は、過去経験とは遠くもないが近くもないという領域なので、当然勉強しなければなららないことも非常に多い。新卒というにはかなり年をとってしまったし、いただく予定の給料も新卒の時よりはかなり多くなっているので、一刻も早く自分の場所を作るためにまずは全力で次の仕事に打ち込むつもりである(というかそうしないとクビになってしまう・・)。


また、もうひとつの理由としてはすぐ後述するように私生活が大転換を迎えてしまったので、とにかくまずは健やかに暮らすという、当たり前ではあるが自分には難しい目標が出来たからだ(ここまで書けばもうバレバレですね。。)。どのような生活になっても過去一年間の平均よりは睡眠時間は減るだろうし、プレッシャーも増えると思う。そうなった時に、どれだけ自分の心と体の健康を保てるかというのは一つの大きなチャレンジだと思うし、これからはそのことを常に念頭に置いて生きていきたいと思っている。


ただ、抱負というか方向性としては、今後の職場を念頭においた時により中国についての多面的な内容をもう一度勉強しなおしたいという気持ちはすごく強い。もともと「中国におけるビジネス」を学ぼうと思って今のschoolに入学したのだけど、昨年の反日活動にも見られるように『中国』という存在はビジネスを考えるのにあたりビジネス以外のことも考えなければならない国である、ということをますます感じるようになった。

そのためには歴史や思想、政治や外交関係、そして戦略(ビジネスにおける戦略ではなく、War study)も広く学ぶ必要があるのではないかと思っている。もちろん僕の生きていく場所と言うのはビジネスというのは変わらずに思っていることなんだけど、年齢的にもキャリアのステージ的にも業務では深堀を、それ以外の時間では意識的に広がりを・・というのを志向したほうがよいのではと考えるようになった。
具体的にどのような内容を学んでいくのか・・という点についてはある程度心の中にはあるのだけど、これも自分のキャリアを明確にして段階であらためて書くようにしたい※2



■ 私的なご報告

今回のエントリーでも書いてきたように、2012年というのは自分にとってとても大きな出来事があった年でもあった。あらためて書くと、上海で出会った日本人女性と結婚をすることになったのである。


実は8月には結婚を決めていて9月からは上海市内で一緒に生活を始めていたのだが、自分が学生の身であり少なくとも次の方向性が決まるまでは公にしたくなかったこと、上海で暮らしているために家族やお世話になった方々に報告をする時間をもてなかったこと等から今まで発表を控えてきた※3
今回自分の方向性がおおよそ固まったことと、授業の合間に自分の近しい人に直接報告をする機会をもてたことで、このように発表をすることが出来るという次第。

MBA生活を過ごす中で、次にどこで働くかわからないという感覚をずっと持っていたし、これからの長い人生をず~っと一人で頑張るほどキャリアへの執着心も強いわけではないということをなんとなく感じてくるようになった中で、ぼんやりと一生のパートナーを見つけられたら・・とは思うようになっていたのだけど、まさか自分が2012年中に結婚を決めるようになるとは思いもよらなかった。


妻となる女性とはMBA生活の初期に上海で出会い最初は遠距離での関係だったのだが、気が付いたら結婚まであっという間に決まったということで、つくづく人生というのはわからないものだと感じている※4。僕はこのblogでもわかるとおり、ダラダラと考えることも多いし一緒に暮らしやすい人間では決してないと思う。また学生と言うことで無職の上に就職先も決まっていなければ、働く場所も決まっていないという不安定な生活だし、何よりたんまりと借金も残っていて少なくとも数年間は裕福な生活はとても送れそうにない。

そういった色々なマイナスがあるにもかかわらず、一生をともにしたいと言ってくれた妻にはとても感謝をしきれないし、またこの広い大陸で自分を見つけてくれて本当にありがとうの気持ちでいっぱいである。自分がこれからどれだけのものを生み出し共有できるかはわからないのだけれど、自分の命が終わるまで出来る限り長く側にいられたらいいな、と思っている。今後もこのblogに登場することは恐らくそう多くはないと思うのだけど、自分に起こった大きな出来事として、このようにご報告をさせていただきました。


ということで、2012年は学業・仕事・私生活の全ての面で大きく動いた年になりました。2013年はその動いたことを一つ一つ固めていき、これからの長い人生を過ごす上での新しい基盤を作る年にしたいと思っています。あまり更新頻度も高くなく、ダラダラとした話を続けているblogではありますが、本年もよろしくお願い申し上げます。


※1・・・一方でやはりレトリックや表現能力という点においてはnativeにはどうしても勝てないな~と痛感した一年でもあった。英語能力はすぐには伸びないので、今後も継続的に勉強し続けるしかない。。
※2・・・我ながら奥歯にものが挟まったような書き方で切ないし申し訳ないと思っているのだが、ご了解いただけるとありがたいです。
※3・・・実際に生活拠点が変わったりしたので、MBAの同級生たちには早めに伝えていたし、直接顔をあわせることが出来る友人たちには個別にお伝えをしていました。
※4・・・書類などを準備しないといけないので、実際の入籍は卒業後を予定している。

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