【書評】最後の授業 -生きることを欲する僕が、昔死ぬと思っていた年齢になって-
高校生のころ、僕の寿命はたぶん30歳ぐらいで終わるんじゃないかと思っていた。
というか、そうなることを願っていた。
それ以上長く生きていても何か面白いこともないだろうし、普通の人生を歩むだろうコトの退屈さに耐えられそうにもなかったし、何よりそのときもあまり生きていることが楽しくなかったから。
そして、30歳になる今年。僕はまだまだ生きていたいと思っている。まだまだ面白いことがこの世界には眠っているような気がする。何より、どれほど大変なことがあっても、それでも生きていることは素敵なことだと思えるようになっているから。
今日読んだ最後の授業 ぼくの命があるうちには米国カーネギーメロン大学のバーチャルリアリティ専攻のとある教授が、すい臓がんにおかされ余命半年を切った頃に大学で行った『最後の授業』をもとに書き起こされたものだ。
Amazonを見ると初版が2008年9月。たぶん僕が購入したのが昨年の9月ぐらいだから、ネットでの話題からはすっかり遅れていることになる。さらに、読むことの遅さといったら。
中国にいるとなかなか日本の本を、日本にいる時のようには購入することが出来ない。だから、どうしても一冊一冊を丁寧に・・というか、読み始めるのが遅くなってしまう。もっとはっきり言ってしまうと読み始めるのが怖いのだ。手元に「未読」の本が一冊もないなんてこと、人生で一度もないしそんなことがあると考えるだけで恐ろしくなる。
閑話休題。
彼の最後の授業のテーマは「子供のころからの夢を本当に実現するために」。でも、本当のテーマは違う。彼は「自分の子供のころから」を語ることによって、自分の子供達にメッセージを残すのだ。彼の視線の中にはいつも自分の妻と子供がある。
著者はまだ学生だったころには「とてもイヤな」やつだったという。本書の中ではそれがどのように変化していったのか、どのような影響のもとで変わっていったのかが描かれている。それはそれで一つの彼のストーリーではあるのだけれど、読んでいる僕の頭の中にはまったく別の疑問が浮かんでいたのだ。
「もし学生の時に彼が癌になったら、彼は何を思うのだろう?」
そんなの彼にもわからないし、考える意味もないと人はいうかもしれない。でも、僕には意味のある問いかけなのだ。僕にはまだ妻も子供もいないのだから。
まだもたない僕ですら生を愛しく思えるようになったのだから、持ったとき、僕はどんな言葉を伝えられる人間なのだろうか?
10年後までこのBlogが続いていたら、きっと笑って答えられる日がくるんじゃないかな、とちょっと自分に期待をしておきます。
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