北京からの夜行列車で考えたこと
今回(4月3日~6日)の北京旅行では、帰りは夜行列車を利用した。今まで北京には仕事でもプライベートでも何度も行ったことがあったが、夜行列車を使うのは初めてだ。出張の時には当然飛行機を使った方が早いし快適なので列車を使うメリットはないし、プライベートでの移動も、翌日からの仕事を考えれば列車という選択はなかなかとりづらかった(なにせ乗車時間だけで10時間である)。
ただ今回は暇な時間が相当あるのと、風景を見てみたいと思っていたので夜行列車に乗ってみた。しかもベッドではなく普通の椅子席である(これは節約のため。ベッドだとほとんど飛行機と変わらなくて、さすがにバカバカしいと思った)。
椅子席だと隣の人によって快適度が大きく違う。中国では一般的に若い人のほうがマナーがいいので、できれば若い人がいいな・・と思っていたのだが、残念ながら中年のおじ様であった。かなり体が大きくドンドン横にはみ出てこようとしてくるのだが、何回か体を張ってブロックしたらそれ以上は寄ってこなくなった(何事も最初が肝心である)。
北京南駅を予定よりやや「早く」出発した列車はゆっくりと闇の中を進んでいく。夜になったら風景など何も見えないだろうな・・・と思っていたが、予想通り何も見えない。というか、予想以上に真っ暗で何も見ることが出来ない。
ときおり道路が平行して走っている時には、ポツポツと並んでいる街灯の光が見えるが、そうでない時には光すらない。こんなのって日本ではあんまり想像が出来ない(新幹線から光が見えない・・というのはあまり想像が出来ない)。時々光が見えると思うと、線路沿いにある工事中のコンクリートの打ちっぱなしを明るく照らす光だったり、半分時が止まってしまったような小さな街の入り口の光だったりする。
そういった光景を眺めていると、想像力ばかりが広がって行って色々なことが頭に浮かんでくる。コンクリートの建物を作っている工員達はおそらく小学校ぐらいしか出てないんだろう・・とか、安全管理が緩いから何人かはなくなっているんだろう・・とか、そもそもなんでこの建物を作っているかもわからない人もいるんだろう・・とか。
上海や北京のような大都市では、(曲りなりにも)個人のキャリア意識も強くなってきているし職業選択の自由もある。でも、ちょっと足を延ばせばまだまだ「(単純労働としての)人が国家発展のために労働する」という現実があるのだと思うと、改めて自分が日本人として生まれて、この国で自由に働くことを「選択すること」が出来るのは、幸運なことだと感じる(もちろんこれは自分の視点であり、それぞれの人生にはそれぞれの視点の幸せがあることは理解している)。
たくさんの選択肢があることが幸せにつながる・・・と思えるほど僕は人生に対して楽観的ではないし、走り続けることが苦痛である人が常に多数であるとも思う。それでも、自分としてできることを、と思いなおす、そんな光景だった。僕はまだまだこの国では経済の発展こそが、個々人の幸せに直結すると信じている。
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