【映画紹介】GW武狭映画 関雲長(关云长) -髭がバッサバッサと敵を倒します-
今年第二回目の武狭映画紹介でございます(武狭映画とは何ぞや?
という方は、以前書
いたこちらのエントリーを参照のほど)。今回紹介するのは中国の労働節(劳动节)向けの大作である「関雲長」(关云长)。文字通り三国志で有名な関羽が主人公のアクション大作である。
三国志は日本でもいろんな作家が書いているが、ストーリーを最初から最後まで追うとするととても映画では収まらないので、だいたい映画になる時にはどこか一部を切り取って映画化する(ドラマでは演義を全部やったりする)。今回は関羽が曹操の元から劉備のところに戻る五関六将の場面を映画化している。中国人はほとんどすべて(と思う)の人がストーリーを大まかには知っているので、どこかの名場面を切りだしたとしても問題がないのかもしれない・・・。
■ ストーリー概要 ■
時は三国時代。劉備配下の関羽は訳あって曹操が納める魏にいた。有能な人材を愛し、特に関羽を愛する曹操は何とか関羽を自分の配下にしたいと考えていたのだった。しかし、関羽は度重なる勧誘を振り切って、劉備の妻を連れて劉備の元へ戻る決断をする。
関羽の要望を受け入れた曹操は各関所に無事に通すように通達を送るのであるが、一方皇帝は曹操を殺すように命令を下すのであった。関羽は無事に劉備のもとに戻ることが出来るのであろうか・・・。
これがストーリー概要である。ちなみに毎度のごとく上記ストーリー導入は映画冒頭で文字で紹介されるので、中国語がわからないと何が何だかさっぱりわからない。今回は100分と短い中に原作にはない恋愛模様を入れてしまっているので、さらにストーリーがわかりづらくなっている。繰り返して言うがアクションを見るものなので、深いことは二回目以降に考えればよい(と個人的には思っている)。
■ 配役と見どころ ■
今回の映画の見所は何と言っても中華圏のアクションスターの中ではNo.1である甄子丹(ドニー・イェン)演じる関羽と、性格俳優である姜文(ジャン・ウェン)演じる曹操とのやり取りにある。あとは、いつもはカンフーで闘う甄子丹が今回は関羽らしく武器を使って闘うというところであろうか。
甄子丹は以前もちらっと紹介したが、とにかく彼のカンフーアクションは「本物」であることに
特徴がある。大陸にある武術学校(体育学校)でしっかり基礎を勉強しているため足運びや体の使い方が理にかなっているのだ。
今回は武器を使って闘うシーンが多いので、彼の得意技である高速回転の蹴り+突きのシーンがほとんどないのだが、武器を持った状態でも細かなステップを踏んでいて、ちゃんと格闘になっている。ちなみに彼は監督をしたり演技指導もしたりするのだが、今回は絶対に自分が関羽を演じている絵を取りたかったに違いない・・と想像している。一戦終わるたびに一々見栄を切るシーンが挟まれており、京劇を思い出した。
曹操役の姜文は、個人的に中華圏の俳優の中でbest3に入る好きな俳優だ。彼は性格俳優という言葉が似合う俳優で、とにかく黙っていても変態オーラがほとばしるところがいかにも曹操らしくて、映画を観る前から期待していたのである(今回は彼を見に行ったようなものである)。
今回も「(性的な意味ではなく)男として男が好き」な曹操を好演している・・・というか、自分の場合彼が好きでしょうがないので冷静には語れない。。本来の曹操はもう少し冷酷なんじゃないかと思うし、彼はそういう演じ方もできたと思うのだが、今回はややわかりやすく人情に厚い役を演じている。
武狭映画に必ず一人はある「アイドル枠」は今回は孙俪(ソン・リー)。貧乏な街娘だったところを劉備に見染められて側室になるという設定の役どころで、確かにそういう役割だったら彼女の雰囲気にはあっている。なぜか関羽とも以前から知り合いで・・という設定にしてしまったため、ストーリーが散漫になってしまったのは否めないが、出ている以上は意味づけをしなければならないので、これはいたしかたないと思う。
これまで孙俪の出ている映画を画皮しか見たことはなかったのだが、アイドルというイメージが強かったので、今回はステップアップになればよいな・・と思っている。・・・と思ってちょっと調べたら既に大陸ではベスト10に入るmoney making starらしい。そこまで可愛いとは思わないのだが、なんでなんだろう・・・幼い感じがうけるのかしら(次は頑張ってアクション映画の主役を張ってイメージを変えてほしい)。
今回の映画は完全にエンターテインメントに徹しているため、六将がなぜ闘っているのかがよくわからないシーンがあったり、そもそも人間関係がおかしい部分があったりするのだが、個人的にはあまり気にならない。とにかく甄子丹が武器を持って戦っていればそれでいいのである。
WEBの評を見ていると「演義から離れ過ぎている」という批判があったのだが、そもそも演義だって正史とは相当異なっているわけだし、こういう作品に時代考証を求めるのはちょっと違うな、と常々思っているのだ。そもそも日本の時代劇だって本気で時代考証やったら話し言葉が聞き取れないだろうし、人にはそれぞれ許せる範囲がある中で、自分は無茶苦茶範囲が広いのだろう。「時代考証をしっかりやりました」と宣言している映画ならともかく、自分にとっては武狭映画はファンタジーなので特に問題はないのである(ファンタジーじゃないならワイヤーアクションも駄目だろう・・)
最後に一言だけ。この映画でもそうだったのだけど、近頃の三国志関連の実写作品は服装がドンドン派手になっている。これは明らかに日本のゲームメーカーであるKOEIの影響。本家にも影響を与えてしまうほどの破壊力があるということで、これからも不況に負けずKOEIにはドンドンアホな三国物を制作してほしい。
(※文中の写真はすべて百度百科のものを利用しています)
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関雲長を検索してたどり着きました。
マレーシアで先日この映画を観たのですが、中国語はおろか、英語すらままならない状態でして、三国志の話だということになかなか気がつかなかったものです。
紹介文のおかげで、いろいろわかり参考になりました。
DVDでもう一度観たいなと思っています。
投稿: | 2011年5月15日 (日) 05時35分
マレーシアでもやっているんですね~。
あの映画は中国語で見たとしてもかなり難しいので、僕も事前に内容知らないとしんどかったと思います・・。
コメントありがとうございます。
投稿: Matthew_GP | 2011年5月16日 (月) 00時20分