MBA受験の道のり -なぜMBAを受けるのか その1-
前回のエントリーでは、自分がMBAに行った理由を書き始める前に、一般的に思われている理由に対して自分の考えを書いておいた。
今回は「なぜMBAを受けるのか その1」として、それでは一般的なMBA受験者はどういったメリットを求めてMBAに進むのか・・ということを簡単にまとめておきたいと思う。ちょうど自分も選択肢に入れていた香港科技大(HKUST)を卒業された方のblogに良いまとめがあったので、そちらを元に簡単にメリットをまとめておこうと思う。なお究極的には進学理由は個々人が決めるものなので、あくまで一般的にこーゆーメリットがありますよ・・ぐらいに理解していただければと思う。
1.給与面でのメリット
MBAを取ることで給与面がUPするという期待を持っている学生は多い。実際、MBAランキングの中には入学前の給与と卒業後の給与の比較(UP率)をランキング決定の要素としているものもある。
ただし、会社派遣の場合には派遣元の会社に戻ればあがらないだろうし、MBA前には高給の職についていて、終了後にキャリアチェンジをした場合にはそれほどあがらない(むしろ下がる)可能性もある。卒業をしたから単純に上がる・・というものではなくて、その他のさまざまな要因によって結果として上がることが多い、ととらえるほうがよいかもしれない。
ただし、MBA取得費用(勉強期間中の給与がないことも含む)を考えれば給与面がまったく変わらなければガッカリする・・・と個人的には思う。
2.スキル習得
MBAではビジネスに関する基礎的なスキルを広く浅く取得することができる。もちろん多くのスキルはMBAに来なくても取得可能なものだが、短時間に(失敗してもよい)練習問題に多く取り組んだり、同級生と議論をすることで短い時間で効率的に、多くのスキルを取得することができる。
ただどうしてもファイナンスや会計などのスキルや、マーケティングがメインになるので、全てのスキルを取得できるわけではない(当然プログラム技術などは取得できないので、エンジニアにはなれない)。また、コンサルタントや投資銀行出身だと既に実務で鍛えられているので、伸び率という意味では僕のように実業出身と比べると低いかもしれない。
3.経営一般の知識習得
2に近いのだが、もう少し広い意味で『知識』を習得できるのもMBAである。例えばマクロ経済学、行動経済学、ゲーム理論などの経済学の領域や、人事に関する体系的な知識、あるいはアントレプレナーシップなどを学ぶことができる。だいたい選択授業において個々の興味に応じて選択するということが多いようだ。
こちらもMBAでなくても勉強できることがほとんどだが、実際に関係する機関や会社で働いている人を授業に読んだり、ケーススタディを入れることで、オリジナルの価値を提供するようにしている(と思われる)。
4.キャリアチェンジ
MBAでは2・3のように、これまでの職歴の延長線上では学ぶことが出来ないような知識やスキルを学ぶことが出来るので、卒業後のキャリアチェンジを望む学生が非常に多い。ただ、新卒学生のように何でも好きな職種に就けるか・・・といえばそんなことはなく、これまでの職歴も加味されて、キャリアチェンジが可能になるというのが正確な表現。
ただ実際には1の「給与UP」と併せて、金融(投資銀行、PE、ヘッジファンドなど)やコンサルへの転職を希望する学生が多い※1。
5.個人的価値(ブランド)の向上
これははっきり言えば「自分の学歴に箔がつく」ということだ。大学における「東大卒」とか「早慶卒」みたいなものと同じだと考えればよいと思う。もちろんMBAに入学するのは大学受験より大変(かもしれない・・断言はできない)で、授業も結構ハードなので卒業生には一定のクオリティがあると言えるかもしれないけれど。
これまで活躍をしてきた先輩たちのおかげで、「○○スクールを卒業しています」といったことで一定の期待値を持ってもらえるということが大きいということであり、MBAを選択する際に学校の歴史や卒業生が重要なファクターになる理由でもある。
6.人脈づくり
MBAはその学費の高さもあり、将来はそれぞれの業界でリーダーとなると期待されるような人材が進学している。特に留学生にとってはそういった場所で1年から2年、同じ場所で集中的に勉強することでよい人脈を獲得することができる。
また歴史があるMBAでは卒業生が各業界で豊富におり、そういった卒業生との関係作りを期待することが出来る。一般的にいえば(実力があることを前提として)どのようなビジネスにおいても「知っているか、知らないか」ということは非常に重要であり、この人脈の力は強い。
7.長期的視点の獲得
6にも関係しているのだが、MBAでは実に多くのリーダーたちが講演をしたり、授業に参加したりする。その中にはこれまでの人生で出会うことのできないような人達も含まれており、そのような生き方を学んだり、話をすることで自分の人生を見つめ直すことが出来る・・・らしい。
そんなに難しく考えなくても、新卒でず~っと働いている人がほとんどだと思うので、1年から2年、勉強しながら自分の人生について考える時間をもつことができる・・という理解でよいと思う。
他にも「語学を覚えることが出来る」とか単純に「プレッシャーの強い生活を抜け出して羽を伸ばせる」とか、個々よって感じるメリットは違うと思うが、一般的にMBAに行くメリットや目的は上のどれかであることが多い。実際にschoolで他の学生と話している時もだいたい上記のどれかの理由がほとんどだ※2
ただ、日本人の、特にTOPスクールに行く人の場合、実はもう一つの理由があると思っている。
8. 自分よりすごいヤツに会いに行く
日本人でMBAを取りに留学する人達、特に欧米TOPスクールにいく人達は、学生時代から勉強もできてビジネスでもいい仕事をしている人が多い。そういう上昇志向の強い人にとっては、欧米TOPスクールという世界中のエリートが集まる場所は「まだすごいやつと戦える場所」と感じられるのではないだろうか。僕はこういう『健全な競争意識』というのはとても大切だと思う。
ということで、今回はMBAに行く「一般的な目的・メリット」を簡単にまとめてみた。次回 -その2-では、僕個人のMBA進学の理由を書く予定です。
※1・・・コンサルや金融だと、MBAで勉強する内容の延長線上で仕事をすることができるというのもこういった業界への転職を希望する学生が多い理由である。
※2・・・他には、これまでプレッシャーの強い生活をしてきたから、1年半ほど勉強しながら休憩したい・・という中国人が思ったより多いのが印象的。確かにプレッシャーは強いと思うのだが、一方で同じ年代の米国人や日本人と比較した場合には、同じぐらいの強度だとは思う。
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