本気の人材獲得 -CEOプログラムセッションに参加-
多くのMBA学生にとって、就職活動というのは最大の目的であり、短期的な(卒業時の)ゴールである。学校側も入学初日から就職活動の話をしているし、ほぼ全ての活動が就職からの逆算で計算されている。
■ MBA生の就職活動 ■
MBA生の就職活動はざっとわけると二通りある。
一つは夏休みに実施されるインターンで優秀な成果を出して、そのままオファーを勝ち取るというもの。インターンは自分が行きたい業界とは「あえて違う」業界を選ぶツワモノもいるので、インターン → そのまま就職というのはそれほど多くはないが、ある意味理想のプロセスである(そこで就職が決まれば、2年目は超楽ちん)。
もう一つは二年目が始まると本格化する、一般的な就職活動である。多くの会社がMBA向けのフローを用意しているので、そこに応募をして面接に臨むのである。一方、会社側もこの時期はMBA生を採用しようと、リクルーティングチームがMBAを訪れてセッションを開いていく。
CEIBSのようにリージョンTOP校の場合はなかなかこのセッションが難しくて、本当にMBA生に人気の会社というのは、あまりセッションを開いてくれない(戦略コンサルとか欧米系投資銀行・ファンドなどのこと)。このような会社はグローバルのTOP校から主に採用するので、自分がいるような学校はメインのチャンネルではないのだ。
一方「MBA生を採用したいが、人気があまりない」会社の場合、セッションを開いてもほとんど人が集まらないということがある。学生側としては貴重な時間を振り分けているだけなのだが、人数が少ないとなんだか申し訳ない気持ちになるのも事実である。
■ 「本気」のCEOプログラム ■
そんな微妙なポジションにいるCEIBSではあるが、時々欧米系のTOP企業の「本気の採用」チームが来ることがある。今週僕が参加したのも、そんなセッションの一つだった。
この企業はヨーロッパに本社がある会社で重電からITまで幅広い分野をカバーしている超巨大企業である※1。売上高はもちろん兆円規模であるし、従業員は数十万規模である、ただ日本には強力な競合がいるためあまりメジャーではない。
その企業が今回CEIBSの学生向けに開いたセッションで募集したのは「将来のCEO候補プログラム」である。CEOといっても、数年間のプログラムの後、合格者はまずは膨大な子会社の中のどこかの企業のCEOになるのだという。
このCEOプログラムは正真正銘のエリート養成プログラムで、全世界のMBA学生(またはPh.D)からわずか6人しか選ばれない。倍率は当然100倍以上である。
まず応募の方法からして、ちょっと想像を超えている。
まずこのプログラムに応募するためにはWEBサイトにアクセスしなければならないのだが、このサイトにアクセスするためには専用のパスワードが必要で、そのパスワードはセッション参加者に配布されたUSBの中にしか入っていない。つまり、そもそも応募することすら出来ない学生がほとんどなのである。もし日本でこれと同じようなことをしたら、相当批難されるだろう(学卒とMBAは違う・・というのはあるけれど)。まずTOP MBAでないと応募することすら認められないのだ。
面接も当然複数回行われ、最終面接は本社にいるプログラム責任者と1対1の直接面接が行われる。ちなみにプログラム責任者は本社の取締役である。
リクルーターも欧米系戦略コンサルタントを渡り歩いたあと、ラインマネージャーとして活躍した一線級のビジネスパーソンがヨーロッパから直接プレゼンをしていた※2
正直なところCEIBSが「応募するにあたる」学校であるのかは、在籍している自分でも悩ましい。なにせ昨年度の合格者はIMD・ハーバード・INSEAD・MITとランキングベスト5だけである(ちなみにCEIBSはFinancial Timesランキングでグローバル8位。ただ、上位三校のLBS(ロンドンビジネススクール)・INSEAD・IMDとは相当の差があるはず)。
それでも『もしかしたらいるタレント』を求めて上海まで足を運ぶのである。
■ まだ見ぬツワモノ達 ■
こういうセッションに参加すると、タレントの獲得と言うのは企業にとって死活問題なのだな・・ということを改めて感じることが出来る。良いか悪いかは別として、そういった「特別コース」を作ってでも、より優秀な学生を手に入れたいとしているわけだ。
日本の競合企業のうち一社はボストンで開かれるボストンキャリアフォーラムには参加しており、MBA生へのニーズはあるように見える※3。それでも、これはあくまで日本人向けであり、世界中のMBAを回って採用活動をしている・・という話は聞かない。
もちろん企業文化の差というものはある。そして日本企業も最近は報道されるように、新卒採用の軸を海外に移す企業も現れてきた。ただ、この流れはまだまだ始まったばかり。グローバルで戦うということは、タレントをグローバルに探すということも意味するのだが、日本企業はまだそこまでは行っていないようには見える(ちなみにCEIBSに採用希望を送ってきた日本企業は0。もちろんMBA生向けの給料を用意できない・・ということもあるのだけど)。
優秀な人間は世界中にいて、MBA生は -自分も含めて- そのマーケットの中で戦っていかなければならないのだ・・と改めて気が付いた、そんな一日だった。ちなみに昨年度のCEOプログラム合格者6名の国籍にはコートジボワール・ルーマニア・チェコといった国も含まれる。世界は本当に広い。
※1・・・スクールの内容を全てオープンにしてよいわけではないので、会社名は一応伏せておきます。バレバレだと思うのですが・・。
※2・・・セッションの翌日に、たまたま学内でインタビューをしている場面を見たのだが、迫力がすごくて勝負にならないと感じた。同じ部屋にいたら窒息しそうだ。
※3・・・ボストンキャリアフォーラムは主に米国に留学している学生向けに行われる日本企業の就職展示会。多くの学生がここで就職を決めるらしい。中国で仕事をしたい自分にはあまり縁がなさそうだが。。
« 「僕たち」という言葉 -「グループでいる」事の意味- | トップページ | 第10週目終了! 課題の山とフリーライダー »
「仕事」カテゴリの記事
- Amazonの人事政策と自らの仕事を結びつける「構成の巧さ」: (書評)テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法 (その2)(2024.05.07)
- 結局は人間関係こそが命になる: (書評)テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法 (その1)(2024.05.05)
- SNSで話題になっている『鬼時短』を読んでみた: 文化を変えないといいつつも神輿の動き方は変える必要あり(2024.03.11)
- 巨大企業は国を守るための盾となれるのか: 書評 半導体ビジネスの覇者 TSMCはなぜ世界一になれたのか?(2023.11.16)
- [書評]仮説とデータをつなぐ思考法 DATA INFORMED(田中耕比古)(2023.10.19)
「MBA」カテゴリの記事
- CEIBSが今年のFT MBA ranking5位に(2019.03.06)
- CEIBSが提供する1+1 lecture Tokyoに行って来た(2019.03.04)
- MBA留学時の借金返済完了(2018.01.29)
- このごろ何勉強してるの?と聞かれて(2017.06.11)
- [書評]対中とか反日とかワンワードではない中国 -「壁と卵」の現代中国論(2013.10.15)
「On」カテゴリの記事
- (勉強内容備忘録): Next 教科書シリーズ 国際関係論[第3版] 第II編 国際関係の現状分析(2024.05.09)
- Amazonの人事政策と自らの仕事を結びつける「構成の巧さ」: (書評)テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法 (その2)(2024.05.07)
- 結局は人間関係こそが命になる: (書評)テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法 (その1)(2024.05.05)
- (勉強内容備忘録): Next 教科書シリーズ 国際関係論[第3版] 第I編 序論と歴史分析(2024.04.15)
- 勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第11章(貨幣システム)(2024.03.14)
コメント
« 「僕たち」という言葉 -「グループでいる」事の意味- | トップページ | 第10週目終了! 課題の山とフリーライダー »
中国は大学院卒でも就職難と聞きますが、先輩のいらっしゃるMBAはそういうことはないんでしょうか?
いずれにせよ、言語・文化・思想の異なる地で勝ち上がるのは大変ですよね。
それを目指す先輩はすごいと思います。
頑張って下さい!
投稿: | 2011年10月14日 (金) 22時44分
すいません。
名無しで送ってしまいました。。。
先ほどのコメントはきじまでした。
投稿: きじま | 2011年10月14日 (金) 22時45分
応援ありがとう。
一応大陸ではNo.1のMBAなので選びさえしなければ就職はできるよ。ただ、やっぱり学費も高いしいいところに就職したいので、結局は競争になるんだけど。
引き続き頑張るので、時々でいいからメッセージ頂戴な!
投稿: GP | 2011年10月19日 (水) 03時54分