欧米IT三大企業の採用活動と戦略の違い -Apple, Google, そしてMS その2-
前回に続き今回はGoogleとMicrosoftの採用活動について書いていこうと思う。
(前回は欧米IT三大企業のうちAppleの話を書いた)
■ 欲しいのは「素のタレント」: Google ■
世界中で存在感を発揮しているGoogleだが、中国ではアメリカや日本と同じような位置を勝ち取ることが出来ずにいる。もちろん、百度という強力なライバルがいるからというのが大きな理由だが、もう一つの大きな理由は2010年に中国政府の検閲を避けるために、メインとなる検索サービスを香港に移したということがあげられる。
CEIBSにリクルーティングに来た際にも当然その話しが話題に上がったわけだが、Googleとしては「検索サービスの入り口を香港にリダイレクトしているだけであって、会社としては中国の法律にのっとっているし、法人としても存在している」とのことであった※1。確かに3年ほども前に卒業したAlumniがセッションに訪れていたので、会社としては継続的に採用を続けていくようである。
さて、そのGoogleの採用活動だが、いい意味でも悪い意味でもAppleとは真逆で、全くポジションの話などはなくひたすらgoogleのビジョンを語るものだった。しかも、そのビジョンと言うのが中国向けのものではなく、全世界を対象としたものだったので、我々としてはほとんど知っている話しを延々と聞き続けることになったのであった※2。
学生側としては就職の情報が欲しいので、例えばどういうポジションが空いているのか?というような質問をするのだが、答えは「採用HPを見てほしい」というもの。正直言ってせっかく来ていただいたのに、お互いにとってあまりHappyではない時間を過ごすことになってしまった。
Googleとしてはまずは「中国でもビジネス活動を行っている」ということを言いたかったと思うのだが、もう少し情報を準備してくれてもよかったのではないかと思う。ただ、彼らが言うには「GoogleとしてはポジションというよりもTalentを求めている」ということだったので、とにかく自分の能力に自信があるならGoogleを受けてください・・ということを言いたかったのだと思う(好意的に見て)。
質疑応答では多くの学生がとGoogleと中国の関係について質問をしていたのだが、Googleとしては「Don't be evil」と「中国の法律にのっとる」ということの間でバランスを取りながら事業を進めていくという趣旨の回答を繰り返していた。個人的には「evilではないというがGoogleに”中国”と入れるだけで、検索結果が切れることについてはどう思うか?」という質問をしたかったのだが、周りに中国人が多いということもありやめておいた。いくらMBAといえども、公の場で聞けることと聞けないことは、やはりある。
■ まるで日本企業!手厚い教育体制:MicroSoft ■
さて、三大企業のトリを締めるのは中国ではコピー版との戦いをず~~っと繰り広げているMicro soft。Apple、Googleのプレゼンにがっかりした学生が多かったのか、前の二つに比べると若干参加人数は少なかった・・・・のだが、MBA学生的にはこのセッションが一番良かった。
まずMicrosoftの最も良かった点としては、MBA学生専門の育成コースを準備していることがあげられる。MBA学生というのは、まあ高い学費を払っているということもあるし、「それなりに」勉強をしているという自負があるのでこういう「特別扱い」に非常に弱い※3。この段階でまずポイントUP。
さらにこのプログラムは「中国でビジネスをするためのトレーニングに特化」しているにも関わらず、世界中で研修を受けるチャンスがあるということで、中国人としてはグッとくる内容である(昔に比べれば随分楽になったとはいえ、中国人が海外で働くのはなかなか大変)。そしてこのプログラムが終わると中国でmanager以上からスタートすることが出来る。
そして、おそらくこれが最もアピールしたと思うのだが、Microsoftとしては潜在力に期待するので過去経験はプラスになることはあったとしてもマイナスを見ることはしない・・・とのことだった。これは、MBA生にはかなりデカイ。
MBA生というのはかなりの割合でキャリアチェンジを狙っているのだが、人気のFinanceやBuiness Developmentというのは、結局schoolの勉強だけでは足りなくて、過去経験が求められることがかなり多い。多くのMBA生がこういう現実に入学してすぐに気付く羽目になるわけで、Micro softのように「どんな経歴でもWelcome」というのは本当にありがたいのである※4。
セッションでMicrosoftが強調していたのが、「Microsoftはビジネスモデルの会社である」ということ。IT企業であることはもちろんであるが、それ以上にビジネスにフォーカスしているということを強調しており、MBAの経験が「そのまま生きる」職場であると繰り返していた。確かにMicrosoftってIT系なのにダークスーツが似合う会社ってイメージがあるし。
■ 採用戦略は事業戦略に直結する ■
まるで僕の元職の営業用セリフのようだが、MBA学生としてリクルーティングの話しを聞いていると、採用戦略というのは事業戦略に直結しているというのを強く感じる。
MBA学生というのは基本的にプライドが高く、給料への執着もあり、さらにせっかちにキャリアを求める・・という非常に扱いづらい存在である。そのくせ、過去の経験を捨てて新しいキャリアをスタートしたい・・と思っている人間が多く即戦力になりづらい(立ち上がりは新卒学生よりはもちろん早いだろうが)。
そういった学生をどのように取るか・・というのは、その企業の中期的な(だいたい3年~5年)の事業戦略がモロに反映してくる。ある程度事業の絵が描けていないと、MBA生をどのように活用するかを決めることが出来ないからだ(そういう意味で、歴史の長い会社がMBA採用に積極的になるのは論理的であある)。
繰り返しになるが、こういったリクルーティングに日本企業が来ることはほとんどない。もちろん欧米TOPスクールで採用活動している企業もいるだろうし、日本人採用ではボストンキャリアフォーラムというプラットフォームもある。
確かに中国人は日本人に比べれば転職意向も高いし、せっかく育てていってもすぐに去っていってしまうという危険性を感じるのもわかる。しかし、それは他の欧米企業にとっても条件は全く同じである。もし本当に日本企業が中国を「長期的にコミットメントする場所」だと思うのであれば、事業戦略と強く結びついた採用をするのもアリなんではないか・・と思ったりもする。実際、卒業後に中国で日本企業に入ろうと思っても、可能性はほとんどないしね。
※1・・・ここでいう中国の法律に則っているというのは、中国でWebサービスを行うためのICPを取得しているということ。またGoogleのサービスは全てが香港にリダイレクトされているわけではなくて、google mapはcn配下で運営がされている。
※2・・・とはいっても、Googleがモバイル(狭義の携帯ではなく、androidがインストールされるであろう全ての機器)について積極的な戦略を取っているという話を聞くことが出来たので、そちらの面では十分満足した。
※3・・・Fortune 500に入るような会社は結構こういったMBA生向けプログラムと言うのを準備していて、一般的にはLeadership programmeと呼ばれている。
※4・・・ちなみに全く過去経歴に関係なく採用してくれるのがコンサルタント。これがMBA生がコンサルタントを受けたがる理由の一つ。
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