勉強が出来ないと嘆く前に、ちょっと振り返ってみると良いこと。
先週末に授業が無事に終了し、今週はStudy weekと称して一週間のお休み期間である。完全にイベントがなくなったわけではないのだが、とりあえず朝早く起きなくてよいというのが最もうれしいことで、午前中の学内は実にひっそりしている(EMBAの学生はいるのだが、EMBA学生は学内に住んでいるわけではないのでやはり雰囲気が違う)。
一応は夜遅くまで起きていていてStudy weekらしく勉強をガリガリやろうという気持ちはあっても、何となくふんわりとした空気が流れていて、イマイチ身が入らないという学生が多いように思う。かくいう自分も月曜・火曜ぐらいは気が付くと寝ているということが多くて、これまでの疲れをとるほうに時間を使っていた。
ようやく昨日ぐらいからエンジンがかかりだしたのだが、そうなるとあれがわからない、これがわからないという学生がそこかしこにいて、それぞれの得意分野を教えている学生の時間がなくなるということになっている。ちなみに自分の場合は統計学を教えている。なんせ10週間で教科書一週間分をまるごと終わらせるわけでかなりスピードが速く、全然ついていけない学生もいるので、何度も同じことを伝えることになる※1。
つたない英語で統計学を教えるというのは結構しんどいのだが、話していると、結局「勉強する」というのは国が変わってもあまり変わらないものだな、と痛感する。ということで、今日は(ずいぶん偉そうだが)どうやったら「学ぶこと」がちょっとだけ得意になるのか・・という話を書きたいと思う※2。
■ 自分の学びのパターンを知ろう ■
まずいろんな同級生と話していて思うのは、だいたい人間が学ぶパターンと言うのはおお きく分けて二つに分かれるということ。ずいぶん適当な図だが、ざっくり言うと人間は、
- 先行ダッシュ型:最初から答えがすっきりはいってくるタイプ
- 後半まくり型:原理がわかるまでなかなか前に進めないタイプ
「先行ダッシュ型」の人と言うのは、授業とか説明を聞くと似たような問題であればすぐに解けるようになるタイプで、聞いた話がすっきりと頭に入ってくるような人だ。ただ、立ち上がりは早いので最初はいいのだが、理解が浅い時には応用問題が難しくなると全然手がでない・・ということが多い。
「後半まくり型」はその反対で、とにかく最初は新しい概念とか言葉が全然頭に入ってこないので全然手がでないのだが、いったん頭の中に「考えるためのセット」が出来るとドンドンと前に進んでいけるタイプだ。こちらは一週間で結果を出せ!みたいな課題ははっきりいって苦手。ちなみに僕はこのタイプ。
この曲線は何も勉強だけでなくて、あらゆる学びに適応できると思う。少なくとも僕は社会人になってからの仕事もこの曲線通りに学んできたし、大学時代の少林寺拳法も同じようなイメージで練習していた。
■ 自分が出来ない所は、人もできない所 ■
こうやって自分のタイプを分けることができれば、少なくとも自分が「上手くいかないな」と思った時に、焦ることはなくなるはず。とはいえ、グラフにある通りどちらのパターンの人間でもいずれは成長が鈍化するのも事実である(プラトー状態という)。
だいたい「学び」においては、ここを超えることができれば二回目の波に乗ることが出来る・・という場所があって、結構多くの人間はこの突っかかりで諦める。それなりにできるようになったので次にいこう!というわけだ。だが、はっきり言うと大体の人は最初のつっかかりの段階までは来ているので、ここで止まるとほとんど他の人とは差がつかない。
じゃあ、ここを超える方法というのはどうすればいいのか・・・というと、もうこれは人それぞれで一概に言うことはできない。僕の友人の中には、とりあえず一週間はその問題から離れてみて、ある程度時間をおいてから少し前からやり始めると突っかかりが亡くなるという人間もいるし、それこそ夜中に吐くまで考えてみると朝方5時ぐらいに神が舞い降りるという人間もいる※3。
僕の場合は、とにかく「やばい、ひっかかった!」と思ったらとにかく関係しそうな情報を頭に詰め込んで、そのまま即座にベッドに直行して寝るようにする。するとだいたい朝にはそれなりに答えが見えるようになっているということが多い。たぶん寝ている間に情報が整理されて、あるべき場所にスパッと入るのだろう。なので、僕はどんなに時間がつまっていても、答えが見えない時にはしっかり寝るということを心がけている。
日本にいた時にこの方法を友人に話した時に、何人か同じ方法を使っている人がいたので、少なくとも僕個人だけの方法ではないと思うのだが普遍性があるかというと、全くないような気もするので、あまりお薦めはできない。
大切のは「もし差をつけたい」なら、何でもいいのでこのひっかかりをこえる方法を早く見つけたほうがよいということ。同級生に教えていても、だいたい同じ場所でひっかかているので、たとえMBA生であってもそういう自分に合った発見をしている人間と言うのはそれほど多くないということだ。
■ スタートが早いに越したことはない ■
自分のタイプと学び方をある程度分かってくれば、少なくとも合理的な「学び」の期間を計算することが出来るようになってくる。例えば、自分の場合は立ち上がりが遅いことをもう身を持って知っているので、最初の2ヶ月ぐらいは集中的に負荷をかけることにしている。その期間と言うのは周りよりもうまくいかないことがわかっているので、それなりにつらい・・といっても自分をコントロールできるので、とにかく時間をかけるだけである。
ただこの分類も結局「自分がどのタイムスケールで、どこにいるのか?」がわかるだけなので、これだけで差をつけるのは難しい。とくに我々のMBAのように10週間程度でテストを迎えるとなると、もうスタートをどれだけ早くして時間を投入できるか・・にある程度依存してくる。
そもそもMBAではGrading curveを適用しているので、最後ににみんなと同じだけ勉強しても全体がスライドするだけで自分の位置は変わらない※4。なので差をつけようとすれば、人よりも成果を早く出すか、人よりも時間を投入するしかないわけだが、最後はみんな結構ギリギリまで頑張るので量では差が付かない。もちろん人よりも成果を出す方法もあるわけだが、だいたい成果を出す方法をわかっているという人間は最初から高めに出しているので、最後になってからまくるというのはとても難しい。つまり結局は早く始めた人が強いというわけだ。
最後は身も蓋もない結論になってしまったのだが、少なくとも自分のパターンを知っていれば「どうすれば伸びるか」を知ることが出来るわけで、それだけでも精神的な負担はかなり違うと思う。
「なかなか勉強(学ぶこと)が苦手でね~」と嘆く前に、こういう考え方もあるんだよ~ということを知っていただけたら嬉しいです。
※1・・・大学院まで理系にいたので、基本的なことを覚えているし読めばだいたい理解できるので、個人的には統計学は苦労していない。中にはΣが出てきた時点で諦めるような学生もいるので、確かに統計はしんどい学問かもしれない。
※2・・・実際、僕はこの方法でず~っといろんなことを学んでいて、まあそこそこはいい成果を出していると思うので、ちょっとは役に立つんではないかと思っている。ただし学問的な裏付けはまったくない。
※3・・・彼はそういう時間を週一回はとっていて、そこがわかると次の日はふぬけになるので見た目の生産性はあまりかわらんという人間であった。もちろん出てくるアウトプットは高いのだが。
※4・・・Grading curveというのは最初からA・B・Cの割合が決まるということ。日本語でいうと相対評価・・が近いかも。
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コメント
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Σが分からんと、その先のInvestment授業の相関係数の計算も、Marketing授業のデータ処理も出来なくなっちゃう笑。 そんな人のために会計と戦略論があるのかもしれない、、、。
投稿: UK | 2011年11月19日 (土) 03時44分
Term1の段階で完全に分業制が確立した感があるので、Term2以降も格差は広がっていく一方のような気がします。。
投稿: GP | 2011年11月20日 (日) 04時28分