午後まるまるGE Session、人材採用本気モードらしい(後編)
(昨日からの続き)
後半のセッションは、わずか40分(Q&A込みで55分)という短さにもかかわらず、色々なキーワードがちりばめられており、内容は盛りだくさん。かなりの早口ということもあるのだけど、色々とGEについて示唆にとんだ話だった(早口のため一部聞き取り損ねた・・のだけど・・)
■ Innovation、アジア、そして日本 ■
セッションの内容を、自分なりにまとめると大体4つの内容になると思う。全体を貫いていたテーマはInnovation。
① Reverse Innovationについて
GEの現在の戦略の一つとして、先進国(主に米国)で開発された新商品やサービスを発展途上国に展開するだけでなく、逆に途上国で生まれたサービスをその他に展開するという戦略があり、これをReverse Innovation(以下RI)と呼んでいる。このRIは外部からはあまり上手く言ってない・・とも言われているのだが、彼女によるとそもそもReverse Innovationという呼び方自体がGEの意図したことを正確に反映していないとのことである。
"Reverse"という単語は、まるである場所(主にアメリカ)からわき出したInnovationの流れに対して新興国側から逆流するというイメージを与えてしまうが、実際には各国で生まれたInnovationを横串で流通させることを意図しているとのこと。具体的には中国の地方医療機関向けに開発した製品をインドで利用した例を取り上げていた。
確かに中国の技術開発部隊は一部発展途上国に特化した新商品の開発(例えば純水製造装置)の基礎研究も行っているが、基本的にはローカライズに取り組んでいる。いわば、この戦略は「発展途上国には、国の発展段階においてほぼ共通の課題が生まれる」ということを利用した、ビジネスのスピードUP戦略とでもいったほうがよいのではないかと思う。世界中で展開しているMNC(multinational company:多国籍企業)だからこそ出来ることである。
② Vast Dataの利用
実際にVast Dataという単語を使ったわけではないが、GEのMarketing業務の中心は「データ分析」であることを繰り返し強調していた。
Vast Dataというのは、どちらかというと僕の以前のフィールドでバズワードとなりつつある単語だが、ようするに消費者の行動をものすごい量のデータで取得できるようになったことでデータ分析の密度と精度が高くなり、これまでよりも遥かにデータから多くのことを読みとることが出来るとともにカスタマイズでサービスを作ることが出来るようになる、という状態のことである。
僕は前提としてこの主にIT系の話しを知っていたので、B2BがメインのGEであってもそういう取り組みを行っているのだな・・というのを妙に新鮮に感じた。逆に言うと、現在GEの販売している商品・サービスはそういう「データ」を取得可能な機能をあらかじめ入れ込むようになっているということなのだろうと想像できる。
僕はB2Bビジネス -特にGEが取り組んでいるような機器系のビジネス- は全くの素人なのだが、今のIT技術を利用すれば、販売した機器の故障をクライアントよりも早く察知することなど簡単に可能であるし、おそらく実際にそういうことをやっているのであろう(授業でロールスロイスはそういうことをやっているという例もあったし)。
何というかうちのMBAにはデータ嫌いな人間が結構いるのだが、今後はこういう分野は限りなく数学と近づいていくんじゃないか・・と思うにつれて、もう少しデータドリブンな授業をやってもいいんじゃないかと思ったりもする※1。
③ Marketing業務の変遷について
「中国やインドなどの発展途上国とのビジネスでも今後重要になるのだが・・」と前置きをしたうえで説明していたのが、GEのMarketing業務のうちかなりの部分が「提携先」とか「技術を持っているベンチャー企業」の探索に当てられているようになったのこと。
仮想例として挙げていたのは、次世代の小型ジェットエンジンの開発ではHONDAと組む可能性だってあるということ(ここでHONDAの名前が出てきて、うお~っと盛りあがってしまった)。
もちろん現実的にはGE + HONDAが明日明後日に実現するわけではないのだが、ようするにGEとしては技術の自前の開発だけではなく、ビジネスのスピードを上げていくためにMarketing業務の分野でも外部リソースを常に探しているということを言いたかったのだと思う。
GEといえば「GEの仕事は会社の売買です」と社員の方がジョークを言うくらい、M&Aを活発に行う企業で、その業務を主に担当しているのはBusiness Developmentという部署なのだが、Marketing業務でもそういう機能をもっているのだな・・というのはちょっと驚いた。本当はこの辺りのすみ分けをどうやっているのですか?と質問したかったのだが、おそらく地域とビジネスユニットごとに違うであろうと思い、断念。
■ 中国でのInnovationはBig Challenge ■
そして最後の内容は中国のInnovationについて(これが④です)。
今回のテーマはInnovationだったので、終始一貫そのキーワードに絡むように話しをしていたのだが、GEのブランドがまだ中国では十分浸透しているわけではない・・と言う前提のもとでの話だったので、Q&Aでは結構そのことに質問が入っていた。
まずMarketingの観点からは、今後も大規模な企業広告をするようなことをは考えておらず、現在コーポレート戦略であるEcomaginationとHealthymaginationを中国国内でも推進していくとのこと。この時点でBig Challengeではある・・と認めていたのだが、当然のようにさらに質問は続く。
中国ではこういうEco(環境・エネルギー)とかHealth(医療・健康)という分野は政府の規制が非常に厳しいが、どうやってそこを突破していくのか?という質問が、CEIBSのスタッフから出てきた。個人的には、そういう聞きづらい質問はStaffからしてもらえると非常にありがたい※2
この質問は真正面から答えるのはやはり難しいらしく、中国は今後成長するにあたって外部からのInnovationも必要としているだろうし、その流れに協力していきたい・・という、他の企業でも答えられそうな内容だった。ただし、その後になぜかいきなり日本の名前が出てきたのでびっくり。
何でもGEによるとInnovationというのは「国民が自国の未来へ楽観的」であるほど、実現がしやすいらしいのだが、中国と言うのはアジアでは上位(世界では中くらい)で、何と日本はアジアで最下位です・・とのこと(ちなみに次に低いのが韓国・・本当か?)。
そもそもそういうデータはどこから出てくるのよ、という気もしたのだが、こうやって断言されてしまうとちょっと悲しい気もする。CEIBSは大陸のMBAで、比較対象は日本か韓国、あるいはシンガポールぐらいしかないのでよく話題になるのであるが、だいたい「会社として取り上げられる時は良い話し、国として取り上げられる時は悪い話し」と相場が決まっていて、なかなか歯がゆいものを感じてしまったりする。
とはいっても、少なくとも現在中国で学んでいる身からすると、たとえGEが仮に「世界一Innovartionを生み出せる企業」であったとしても、中国国内でそれを生み出し拡散するのは容易ではないと思う。それは国の規制やマーケットの問題というわけではなく、それをどうManagementしていくか・・という人の問題に落ちてくる気がするのだ※3。
最後に、本日改めて先日の話しをまとめていてふと、GEは戦線の拡大に対して人材供給がおいついていないのではないか・・ということを感じた。昨日のカウンセリングセッションでも社員の方が言っていたように、グローバルに対応するためにはローカル人材の採用が非常に重要になる。
しかし過去30年と比べれば、発展途上国の「国自体」の成長・先端技術の発展スピード・人材の情報取得のスピートの3つのギャップが大きくなっているため、発展途上国での速やかな人材補給が上手くいかなくなっているのかもしれない。なにせ、発展途上国から優秀な人が輩出されてきても、ドンドンベンチャーや金融で活躍できてしまう時代なのだ。
GEとして昨年よりもローカルリーダー育成プログラムを拡充させる予定と言っていたし、今後中国においても西部に市場が移っていくことを考えれば、人材獲得・育成は急ピッチで行わなければならないのだろう。個人的には、正直言ってカウンセリングプログラムで話した方々の「官僚的な側面」が非常に気になっているのだが、innovationを中国で展開したい!中国はアジアでNo.1の有望マーケット!と言い切る企業であることだし、引き続きウォッチしたいな・・と思っている。
個人的には夏のinternも受けたいのだけど、なにせ中国語がかなり高いレベルで要求されるんだよね。。
※1・・・個人的には僕のような理系院卒+MBAというのは最強の組み合わせなんじゃないかと思うのだが、大学院に二回入る時間を惜しいと考える人もいるかもしれない。
※2・・・いくらMBAと言っても、外部の人間やEMBA学生がいる中で日本人が規制の厳しさについて質問するのはなかなか難しい。そもそも「いやお前は外人だから欲しらんだろ」という雰囲気になったら意味ないし。実際はほとんどの中国人も知らないわけだが。
※3・・・Innovationという単語は欧米のゲストスピーカーからは本当によく聞くのだが、定義がイマイチ腹に落ちていないため、僕の理解が間違っている可能性もある。
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コメント
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>主に担当しているのはBusiness Developmentという部署なのだが、Marketing業務でもそういう機能をもっているのだな・・
去年にBDの中国M&Aヘッドが来た時に質問したら、BDは新卒は一切入れず、Marketing部門や財務部門で企業買収の一部をやらせて様子をみて、素質ありそうな人を一本釣りしてるって言ってたわ。
米国本社に企業情報データセンター(世界中の企業データを集めた書斎みたいな部屋らしい)があって、一本釣りした若手に3,4時間でバリュエーションさせて、イメルトCEOへの説明は4分間(?)だったかなんだか。とにかく、統率のとれた組織だなと思ったわ。
投稿: UK | 2011年12月 9日 (金) 04時42分
BDは精鋭ぞろい・・というのは社員の方も言ってました。こちらの方は戦略コンサル等から引き抜いた人を使ってるんだよ~と仰ってましたが・・・。
イメルトへの4分間のプレゼントか、心臓が破裂するかも知れん。統率が取れている上に緊張感があふれている組織なんですね。。
投稿: GP | 2011年12月 9日 (金) 13時22分