飛行機を近くで見るために、会社訪問イベントに参加してみた
昨日はschoolのTravel industry club主催の会社訪問を利用して、虹桥空港近くにある中国東方航空傘下にあるメンテナンス専門子会社(中国語名:东航工程技术公司、英語名:China Eastern Engineering and Technology)を訪問してきた。Travel Industry clubというのは中国の旅行関連業に就職したいと考える学生が加入しているclubで、主に航空業界が対象である。
広大な中国ではサプライチェーンは非効率の塊なので、今後最も発展が期待される分野の一つだと思うのだが、何せ莫大な資本が必要、規制ががんじがらめ、給料が安い(profit marginがそもそも低い)ということで学生陣には不人気な業種。それでも、こういうイベントに協力してくれるのだから、少なくともMBAには好意的なのだろう。思いの深さが一致しない気もするが、ありがたい話である。
■ とにかく飛行機を近くで見たかった ■
さて、今回このイベントにclub memberでもないのに参加してきたわけだが、はっきり言うと航空業界には全然興味がない(サプライチェーンには多少興味がある)。じゃあ、なんでこのイベントに参加したかというと、いたってシンプルで「近くで整備中の飛行機を見る」ことが出来るからだ。
僕は工学部出身なのだが、だいたい僕ぐらいの年で工学系に進んだ人間と言うのは宇宙・ロケット(飛行機)・車・兵器のどれかに一度は魅せられた経験を持つはず(と信じている)。ちなみにPCが好きで・・というのはもう少し後の世代になるかもしれない。
東大では航空工学系は建築系と並んで最も点数が高く、教養時代には部活と酒に時間を費やした自分が届くはずもなく、そこで憧れみたいなものは消えたわけだが、やはりこういうメカを近くで見るのは大好きだし、あの整備中のオイルのも好きだ。ということで、浦东にあるschoolからみんなでバスに乗って虹桥空港に向かったのであった。
東方航空はれっきとした国営会社なので、施設に入るのはそれなりにセキュリティーも厳し
い。事前に本人チェックのためにパスポート番号を伝えなければならなかったし、当然当日もパスポートは持参。写真撮影もハンガー内は禁止である。しかし結局パスポートはチェックされなかった。こういうところも中国である。
到着するとまずは会議室に通されて、いかにも中国らしい会社紹介ビデオを見る。ちなみに中国らしいビデオというのは大体次の3点を満たしている。
- ビデオの最初か最後には意味なく鳳凰とか龍が出てくる。
- やたらと現場の人が頑張っているシーンが出てくる。しかし、一つの問題に5人で取り組んでいるシーンとか出てきてしまうので、外人的には「非効率じゃね?」と思うこと甚だしい。
- 音楽の容量がやたら大きくて、常に重厚な音楽が流れてくる。そこにメリハリという言葉はない。
ビデオ終了後も業界の説明があるのだが、申し訳ないが担当者の英語がイマイチな上
に、業界知識が全然ないのでさっぱり頭に入ってこない。おまけにschool側の担当学生(ひとつ上の学年でシンガポール人。英語があまり上手くない)が「複雑なところは俺が訳します」と言っていたのだが、
質問者が英語で質問 → 会社側が英語で回答 → 担当学生が英語で説明、
とまったく意味がわからない。そこは会社側に中国語で説明してもらって、担当学生が英語に訳すところじゃないのか・・?と思いながらもお茶を飲んでいた。
そんな中でもかろうじて話を拾うことが出来たのは以下の二つ。
① 中国の航空機整備業界(MRO業界と言うらしい:M=maintenance, R=repair, O=overhaul )の市場規模は500億元(約6000億円)ある。
個人的にはこれは結構デカイ業界なんじゃないか・・と感じたのだが、帰ってきて日本の市場規模を調べようと思ったら、日本にはそもそも市場がないらしい。世界規模ではどのくらいか・・と調べたら、2012年予測52billionドル(約4兆円ぐらいか・・)とあるので、結構大きいマーケットである。しかも、これストックじゃなくてフローで入ってくるのでそこそこいいビジネスなのではないだろうか。
中国は今後飛行機の数も増えるだろうし、西部が活発化すれば飛行機移動もさらに増えるだろうから、意外と面白いビジネスなのかもしれない。
② MRO業界の最終利益率は15%。
これはびっくり。親会社の東方航空の利益率がだいたい2%強なので、超優良子会社である。これはつまりどういうことかと言うと、世界中(中国)にはまだまだ航空会社が多くて非効率があるということ。
これだけ利益が出るということは、内部でやるよりも外に出す(=assetを少しでも軽くしたいと考える)航空会社が多いということで、外部化によりスケールメリットが生きる・自社以外からもサービス受注が出来るというメリットがあるということだ。ちなみにこの会社はJALとANAも請け負っているらしい。ANAはCAと提携しているんですが、整備はMUなんですね。
と、それなりに勉強になることはあったのだが、やはり飛行機の魅力には勝てない。早く飛行機を見せてください・・・と祈りながら、お茶を飲み干していたら当然のごとくトイレに行きたくなったのだった。
■ 国営企業は副総経理が多くて、個室が多いんです ■
トイレに行くためには当然会議室を抜けなければならないわけで、ビル内をうろうろすると実に部屋が多い(ビル内の写真は禁止されたわけではないが、余計なことをして突っ込まれるのも嫌だったので写真は取っていない)。で、部屋の上を見ると副总经理(Vice president)と書いてある。う~ん、この会社にはVice Presidentが一つのフロアだけで3人もいるのか・・・。
というのはさておき、本当に個室が多い。廊下に面して扉が並んでいるのだが、これが全部個室! 日本や普通の私営企業でイメージするような大きな部屋は一切なく、全て個室である。さすが国営企業は違う・・と感心したのであった(もちろん皮肉)。あれじゃあ、国営企業が非効率・・というのもわかる気がする。
さらに1階入口の部屋割りを見ると4回は「党委書記」と書かれた部屋がある。「これ何?」と思わず同級生に聞いたのだが「いや~国営企業にはこういうのがあってね・・」と苦笑い。話にはもちろん聞いているし、知識としてもあるのだが、まさか子会社にまでこういうのがあるとは思わなかった。というか、実際何をやるところ部署なんだろうか。。もう5年目になるというのに、やはりまだまだ謎は多い。
と、本来の目的以外のいろんなところでやたら興奮をしたのであるが、もちろん近くで見る飛行機は格別。整備中の飛行機を見るのは初めてだったのだが、ペイントし直す時には普通にダンボールで目張りするのね・・とか、トイレの排せつ物を取り出す穴を見つけたりとかなり楽しむことが出来た。
本部側の偉い人がわざわざ気を利かせてくれて「それではプロジェクト管理について説明します(キリッ)」と言ったのに、現場側では「すいません、今はフローチャートありません」というそもそも整備の質として大丈夫なんでしょうか的なやり取りがあったりと、いろんな意味で非常に楽しむことが出来る会社訪問であった※1。
ちなみに中国東方航空と言えば、オリンピックの時に北京にいったらなぜか給与ストに巻き込まれて足止めを食ったり、シンガポールでは二台あるはずのコンピューターが二台とも故障し気合いで直したと思ったらクルーが全員帰ってしまい結局8時間も出発が遅れるという、安心と信頼の中国品質を保つお気に入りの航空会社である。マイルたまりやすいし、ホントに便利。
あとは・・これで冬じゃなきゃね・・ハンガーは広いし、周りには何もないしで、この冬一番の寒さの中で飛行機を見続けるのはそれなりにしんどかったのだった。。
※1・・・その後に「今ではフローチャートはPCで管理をしております!」と説明があったのだが、あれだけ部品類の受発注などを全て紙で管理しているのに、そこだけPCのみというのはあまり信憑性がない。
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