金正日死亡報道で思い出した、MBAのケーススタディ
今は冬休みということで午前中はゆっくり眠る時間を確保できているので、今日もいつも通りゆっくり目を覚ましたのだが、目を覚ますとまさに大事件でTwitterのTime Line(TL)が埋まっていた。ここ数カ月は極端に中国関連のニュースから切り離されているせいもあって、まったく予兆をキャッチできていなかったのだが、北朝鮮の金正日主席が死亡したのだ※1。
しばらくは頭がボーッとしていてなかなか考えを巡らせることが出来なかったのだが、しばらくTLを眺めているといろいろ論点が提示されていることがわかってきて、少しずつ自分の意見を書き込むようになった(僕の本日のTwilogはこちらから見れます。どうでもいい内容もたくさん呟いていますが・・・)。
僕はこのblog上・Twitter上では政治関連のことを述べないことにしているのだけど、今回の出来事は純粋にビジネスのこととしてとらえても、いろいろと影響があると予想されるので、主に中国ビジネスの観点から考えをめぐらした結果を呟いたのだ。
その際に、頭にあったのはこれまでの中国生活から手に入れた知識に加えて、この短いMBA期間で読んだ一つのケースのことだった。
■ Harvardではドイツ統一を「教材」としている ■
我々のschoolに限らず、多くのBusiness schoolではHarvard Business school(HBS)の作成したCaseを利用している。特にCEIBSはHBSと提携している・・というか設立時にサポートをしてもらっているので、特に利用が多いのかもしれないが、とにかくとりあえずここまでの教科でHBSのケースを使っている※2。
HBSのケースが凄いと思うのは、例えばMarketingやStrategyのようにケースで勉強するのがある意味「当たり前」と言えるような学科だけでなく、経済学(Economics)や統計学(Statistics)などのような学科にもしっかりケースが用意してあることだ。
CEIBSではこういう学科は宿題+座学という形を取っているのだが、経済学向けに準備された数少ないケースの中には、まさに今回の出来事を考える上で一つの参考となるようなケースがあった。
そのケースが取り上げているのは「東西ドイツの統一とその経済的影響」である。
(東西ドイツ統一時の教訓はこちらに簡単にまとめられておりました。豊かで、健康で、活動的な、人生を目指して:春山昇華)
もちろんケースで学んだ内容が今回の出来事にそのままあてはまるわけではない(あまりにも諸条件が違いすぎる)。しかし僕が大切だと思うのは、MBAで学ぶことによって何かこういう突発的なことが発生した際に「考えるための手掛かり」を自分のなかから引き出してこれるようになる・・ということだ。
確かにこのケースを読まずとも興味がある人は自分で勉強することはできるだろうし、大学や大学院でより詳しく学んだ人もいるだろう。ただしMBAに来ない限り、こういった枠組みに触れない人もいることは事実であり、MBAはそういった人(僕も含む)に一つのパッケージを提供しているということだ。
■ ざっくりと大枠をつかむことが出来るという強み ■
今はそれこそ世界中の人が自分の意見を述べることが出来るし、コメンテーターというか、とにかく「ある分野に詳しい人」が自分の専門外の分野についても、極めて正しく「聞こえる」話しをすることが簡単にできるようになった。言いかえれば、僕たちは自分でどの情報が正しいのかを判断しなければならなくなってしまった。
こういう状況にあって、何かしらの「考える枠組み」が自分の中にあるというのは、瞬時に判断をしなければならない時に強みを発揮するのだと感じている。例えば、ドイツ統一の事例を知っていれば、統一においてどのような経済問題が発生するのか、それに対して周辺国家がどのような対応を立てるのか、そこにビジネスの機会やリスクが発生するのかということを何となくは判断できるようになる※3。
もちろんこういった「マクロ」の情報を知らなくても日々のビジネスをする上では何の問題もないし、マクロ経済よりも目の前の顧客の反応の方が大切というのが一般的な意見だろう。だが、少なくとも自分が中国にいるこの4年と少しで感じるのは、こういった色々な出来事 -それは大なり小なり- 必ずビジネスに影響しているということである。
また自分がいずれ大きな判断を任せられるようなポジションにつきたい・・と思うのであれば、いずれこういう知識や視野の広さは必ず必要になってくる※4。MBAにはそれこそ色々な価値があるのだが、少なくともこういった「色々な引き出しを身につけることが出来る」というのは極めて実務的な意味で有用な一面だと感じている。
※1・・・深夜の段階でニュースを追っている限りでは、どうも今回は事前の情報はほとんどなかったようで、たぶん世界中の人が驚いたのだろう。
※2・・・HBSのケースは内容も当然ながら、その英文自体も非常に面白くて読み応えがあるものが多い。HBSに比べると、CEIBSのケースは英文も内容もまだまだ修行しなければならないと感じる(特に読ませる・・と言うことに関してはHBSは凄く面白い)。
※3・・・経済的なファクターだけで政治が決定されるわけではないので、事態が発生する確率を判断できなくても、複数のシナリオを設定することは可能。
※4・・・僕は以前の職場で明らかに需要-供給曲線を無視した商品計画を見たことがあり、それ以来少なくともミクロ経済はたとえWEBやITであっても判断をする上で重要であると信じている。
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