第39週目終了! - 働くのは観光とは違います in 上海 -
上海に短いとはいえGWがあり、また自分は学生ということで若干休みも長かった第39週目も無事に終了。例年通りこの時期はお客様(友人や紹介)が多く、ほぼ毎日どこかしらに出かけていたので、あまり休みという感じもしなかった。基本的に訪問いただけるのは大歓迎なので、事前にご連絡をいただければ時間が空いていれば会うことは出来るし、気分が乗ればアテンドもしている。
一方でこのごろ中国で働きたい、それも現地採用でも良いという人が少しずつ増えてきており、その下見とかまずは住居をこちらに移して・・という方からの連絡も増えてきていて、そういう方との連絡ではちょっと言いたいことがある・・という状況にあるのもまた事実である。ということで、今やすっかり「お手軽海外」とかしてしまった上海での現地採用について今日は書いてみたい。
■ 観光気分では働けない街 ■
僕は幸運にも(あるいは不幸にも)赴任前に上海に一度も来ていなかったので、事前情報が全くないまま上海での生活を始めたわけだが、普通は一度は確認してから実際にすめ羽化どうかを確認するものだと思う。そのこと自体は、僕もそうすべきだと思うしそのほうがよいとは思うのだけど、一方で観光で来てみて気に入ったからと行ってそれで働けるかどうかというのはまったく別のことである。
まず観光で来る際には、こちらで日常生活をしていると感じる面倒くさいことほとんど体験しなくてもよい。食事は、まあ外国人向けのレストランですますことは多いだろうし、家を借りて、大家と何が壊れた~とかネットがつながないのでなんとかしろ~という交渉もしなくてよいし、病気の心配も普通はしないだろうし、ビザの問題も簡単にクリアできる。実際にすむと、そういうこまごまとしたこと、例えば公共料金を払いに行くとかそういう一つ一つの事をさばいていかなければならない。
二つ目には、こちらに住んでいる人間からすれば下見にこようが旅行だろうが、お客様には変わらないので少なくとも不快な思いをしてほしくはないと思っている。だから、汚すぎて歩きづらい(上海ではほとんどないが・・)ところには行かないようにしてもらうし、チケットの手配なども出来る限りするようにする。なにより「日本での収入があればこそ行ける場所」にも案内する。
そういったところを見て「上海はなんて良い街なんだ!」と思ってもらえれば、ある意味アテンドする側としては冥利に尽きるのだけど、さて実際に働き始めればもう我々にとってもお客様ではないので、そこまでの気を使うことはないし、基本的にすべて自己責任である。だって、自分で選択してきたんだから。
そういう意味で、観光に来て良いと感じるということと住むということにはすごいギャップがあるものだ・・ということはぜひ知ってほしい。
■ 個人的に嫌いなこと3つ ■
僕はこの街に住んでもう5年がたつし、駐在という立場も現地採用(正確にはちょっと違うが、少なくとも駐在ではない)での体験もしたので、両方の立場から感じたことを書いても許されると思うのだが、こちらで住んでいて、特に日本人がこちらに来るときに嫌なことはだいたい3つある。
- すぐに「中国のこういうところは××だ」と論評する
- 日本語や英語で何とかなると思っている
- とりあえず人に聞く
典型的なのが、行政手続きとかサービスの手続きについてである。日本では「中国というのは人治で、いろいろなことがプロセス通り進まない」と言われていて、一面ではそれは真実ではあるのだけど、一方で少なくとも上海にいて、普通に暮らしたり働いたりするだけならば、かなり法律面やその運用は整備されつつある。
確かに朝礼暮改というか、とにかくルールがコロコロよく変わるのでわかりづらい部分も多いのだが、少なくとも『ルールに則って』運営されているところが多いし、少なくとも上海においては「プロセスは明確だが、判断基準がよくわからない」ことはあっても、「プロセス自体が不透明」というのはあんまりない※1。
はっきり言えば、わからないことのほとんどは単に準備不足なだけであって、別にどこの国に行っても同じぐらい面倒であると思う(少なくともビザに関して言えば、上海の基準は米国よりずっとゆるいし、わかりやすい)。
それに自分がこれから住もうと思っている街とか国に対してすぐに論評するような態度をとるのであれば、個人的には街に溶け込むというのは難しいと思う。そういう態度って自分で気付かないところですぐに出るし。嫌なら帰ればいいんでは?と結構みな思っていたりするのである。
こちらで長い人間はレベルの差はあれ、中国語を話して生活している。一方で、海外に来る日本人というのはなぜか「外では英語が通じるもの」と思っている節があり、がんばって英語で話そうとするのをよく見かける。
僕は昔から不思議なのだが、日本の現状を見るに英語でコミュニケーションできる人がそれほど多くないのに、なぜ海外では英語で通じると思っているのであろうか・・・。別に「中国語を話せるようになるべきである」とは言わないが、中国語でないと出来ないことがたくさんある、というのは当たり前の事実として知っておいてほしい。
何事も知っている人に聞くのが一番・・・というのはわかる。確かにそう。ただ、数分検索すればわかるようなことを聞かれるのは、正直イラッとする。一応このblogはMBAに関することをかくことが(現在は)メインになっているのだが、たとえば「CEIBSに入るためにはどうすればいいですか?」という質問をもらうことがある。きびいしいようで申し訳ないが、このメールをもらった時点で、この人に何かを教えようという気はゼロになる。だって、そういう情報はすべてHPに書いてあるから。
人に聞いたほうが早い、というのは「聞く側にとっては」時間の節約になるけど「答えるほうにとっては」コストでしかない。いわんや知らない人からの突然の連絡など特にそうである。
海外にいて同じ日本人を助けないとは冷たい奴だな・・と思うかもしれない。ただ、たぶんこれは僕以外の多くの海外に住む人が経験していると思うのだが、おそらく海外情報については「同じ日本人」という理由で、検索すれば数分でわかるようなことをメールで聞いてきたり、自分が情報を必要としているのに人を呼びつけたりということが実に多いのだ。
なるほど、聞いてくる人にとっては初めての経験かもしれない。だが、提供するほうについては毎回毎回同じことを聞かれているのだし、少なくとも働きたいと思うのであればそれなりに覚悟を持ってくるべきなのではないかと思ったりする。
おそらく海外で長く住む人と日本で暮らしている人の中で最も認識が違うのは「海外に出れば日本人同士助け合うのが当たり前」と思っているかどうか、ではないかと個人的には思ってる。良かれ悪しかれ海外で長い人というのは現地に溶け込んでいるわけで、そりゃ母国語が使えればうれしいには違いないが、相手が思っているほど誰にでもwelcomeではないと思う。どちらかといえば、「自分にとって興味があるか/時間を割いてもよいか/メリットがあるか」ということをよりシビアに見ているのが現地に住んでいる人間であるというのが僕の印象だ※2。
いろいろ厳しいことを書いたが、僕は基本的に日本人(特に若い人)が海外に来るのは大賛成である。ただ、どれだけ海外勤務がポピュラーになろうとも、そこにはそれなりの準備と覚悟が必要であるということは全く変わらないというのはぜひ覚えておいてほしいな・・と思うのである。
※1・・・店を出すとか、会社を作るとかいうのであればそれなりの交渉が必要だが、日常生活レベルではプロセスはかなり明確になっている。
※2・・・さらに言えば話を聞いてくる方は何かしらの経済的な動機で来ているのに、ただで情報をもらって当たり前だと思っていたりするので、毎回対応してくると(別にその当人が悪いわけではないが)「またただ働きか・・」と思ったりもする。
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