第48週目終了 -MBA生活最大のプロジェクトは無事に終了 -
一瞬だけ日本に帰ったり、Term3後半授業科目のテストがあったりと、これまたあわただしく過ごしていたらあっという間に一週間が終わってしまった。本来は一番大きいイベントになるはずであったプロジェクトのクライアント向け発表は、日本にいたためFacetimeを通じての参加となってしまったが、今回もチームメイトに助けてもらい問題なく終了。ということで、Term3最後の48週目も無事に乗り切ったのでした。
僕が通っているCEIBSではTerm2の終わりからTerm3いっぱいを使ってIntegrated Strategy Project(ISP)というプロジェクト型授業がある。建前としてはこれまでに授業で習った知識を利用して、実際の企業をクライアントとして戦略的な提案をするプロジェクトということになっている。この授業はCEIBSのウリの一つ・・・ということで、Term3のメンバーはこのプロジェクトのメンバーと同一になるように決められているし、Term1・2とは違い「自分たちの意思」でチームメンバーを決定できることになっている。
チームメンバーはschool側からの説明では、まず自分がやりたいテーマを決めてからそのテーマに合うようなメンバーを探してチームを作る・・・ということになっているが、Term1・2の経験から「何をやるかよりも誰とやるかのほうがはるかに重要」とほぼ全ての学生が理解しているので、まずは気があうメンバーに声をかけることからスタートする※1。
このチーム結成はある意味でいままのMBA生活が問われるもので、これまでの行いが悪かったりあまりにも能力がないと思われているとチームを組もうというお声掛けがかからない。あるインド人学生などはギリギリまでチームが決まらずに「俺はまだフリーだぞ!」というメールを全生徒に投げていた・・・。先週も書いたように僕は幸運にも、チーム結成が始まった日にコリアンチームから声をかけてもらったので、この「誰とチームを組むか?」という問題に悩むこともなく、さらにメンバーが非常に優秀だったのでその後の作業もスムーズに進めることが出来た。
チームが結成されると、次はプロジェクトトピックを決定しなければならない。決定方法はいたって簡単でMBA Officeが交渉して獲得してきた案件一覧についてそれぞれのチームに配分された持ち点をbidしていくというものである。基本的には一番多い点数をbidしたチームにプロジェクトが割り振られるのだが、それぞれのチームの過去のバックグラウンドも一部考慮されているようである。難点としたは、実際にプロジェクトが割り当てられるまでは会社名がわからないので、特定の会社を狙い撃ちしたい場合などは、発表後想像と違う会社名が出てきてがっかり・・ということがあったりもする。
我々のチームはメンバー全員がMarketing志向で「絶対に中国系企業にはbidしない」という固い決意を最初に決めていたので、特に議論になることもなく粛々とbidした結果「金融機関の中国における一般顧客へのブランディング」というトピックを割り当てられた※2。
学生の立場からいえばはっきり言ってこのISPというプログラムは運の要素が非常に大きくて、クライアントの熱意・対応・期待値によって負荷が大きく変わる。あまり熱意がないのも困りものだし(全然プロジェクトが前に進まないから)、かといって熱意がありすぎるのも負担が大きすぎて困る、というのが本音。我々のクライアントは初めてうちのschoolと組むということで、熱意はかなりないほうでなかなか我々に会う時間をくれなかったのだけど、一回目のMTGに向けて全力で準備をした結果、プレゼンで好印象を与えることが出来たらしく、その後はスムーズに物事が進むようになった。ちなみに最も運がなかったチームは、なんとクライアント企業の担当部署全員が解雇されるという洒落にならない事態が発生したりもしていた。。
我々のプロジェクトは最初は「一般顧客へのブランディング」という壮大なテーマだった上になかなか実際に会うことが出来ずにいたためどれだけの作業量になるのか想像もつかなかったのだが、実際にあって見るとかなりfixされたゴールを持っていることがわかり、しかも期待値もそれほど高くなかったため、作業量が爆発するということもなかった。school側からは各人が4カ月で180時間ぐらいを使うことを期待する・・というイントロがされていたのだけど、たぶんその7割ぐらいでうちのチームの作業は終わったのではないだろうか・・・。
このプロジェクト型授業はクライアントがいるとはいえ授業の一環ではあるので、外部からメンターがついたり教授がプロジェクト担当としてつくのだが、その人選にも、まあ恵まれていたほうだった。外部メンターはすこぶる気のいいコンサルタントの方々で我々の説明に対して控え目なフィードバックをくれたし、担当教授のほうは正直イマイチだったのだが、彼の授業を僕が受講していたのでその内容をプロジェクトに反映させてみたら俄然評価があがるという戦略的ゴマスリが功を奏して、無事に口頭試問も乗り切ることが出来た※3。
■ MBAでプロジェクトをやる意味 ■
このようにうちのチームは非常な幸運とチームメンバーに恵まれて、楽しくこのプロジェクトを終えることが出来たのだが、チームによってはクライアントがいなくなったり(前述の全員解雇・・)、Goサインを出したCEOが退任してしまったり(プロジェクトオーナーがいなくなるわけですね・・)、社内担当者が中国語しか話せなかったり(外国人学生はただの置き物に・・)やるべきはずのプロジェクトがすでに社内で解決済みだったりと波乱万丈だったりする。そして運不運はMBAにおいては「Life is not fair」ということで無視されるのである・・・。
こういったクライアント参画型のプロジェクト型授業というのはかなりのMBAで採用されていてどこのMBAでもウリとしているのだけど、一学生から見ると運営体制に問題があるよな~と感じるとも非常に多い。
- クライアントのヤル気は低い
- 教授のヤル気も低い
- MBA Officeは案件獲得で手いっぱい
こちらが学生ということもあるのだけど、基本的にクライアント側のヤル気は低い。うちのschoolではお金をとっていないということも理由の一つだが、企業側も「いざとなれば適当にやればいいや・・」と思っているところもあるようである(ただしこれはお金を取るschoolでも同じような問題があるらしいので、お金の問題ではないのかもしれない)。
企業側としては「プロジェクトを一緒にやる」と決めた段階で、海のものとも山のものともわからない学生に対して時間と人を割かねばならないというだけで負担感はあるし、熱意をもってもそれに答えるだけのクオリティが発揮できるかどうかは不明なので、これはある意味いたしかたないのかもしれない。
この問題は教授たちも認識しているようで「クライアントのヤル気がないのは普通です」とか「コンサルティングプロジェクトでは相手の協力を勝ち取るのも仕事のうちです」という説明がなされる。確かにそれはその通りなのだが、普通のコンサルティングで行われるはずのピッチ(最初の提案)がなされないうちにとりあえずクライアントになることだけが決定されてしまう、というのはやっぱりちょっと状況が違うのではないの・・と思ったりするのである。
うちのschoolの場合でいえば全部で30チーム以上のプロジェクトが一気に走ることになり、教授たちも分担してそのチームの進捗を評価することになるのだが、基本的に教授たちからヤル気を感じることがなかった。なにせ、うちの担当教授に限っていえば、我々が適宜送っていた資料を一度も目を通していなかったのだから・・・。
冷静に考えれば各教授は10チーム以上を担当している上に、それぞれのトピックは全然違うし、必ずしも本人の専門と一致しているわけではないので、手をぬいてしまうのは仕方がない・・・ともいえるのだが、それだったらもっと大勢の教授を割り振ればいいわけで、どうもカリキュラムディレクターが言ってることと現場の対応が違うように見えてしまう。この「上の言ってることと現場の対応は全然違う」というのは中国のあらゆるところで見られるし、うちのschoolも基本そういう感じなので皆慣れっこになってしまってるけど、そういう諦念が(特に)外国人に平まってしまう現状と言うのはいいことは何もないと思うのだが。
よくあるアフターセールスが悪い会社みたいだが、案件を取ってくるMBA Officeは当然のように、その後の対応まではしてくれない。我々のクライアントの場合は、NDAを期限までに返送してくれなかったので担当教授にその旨を伝えたら、はるか彼方までたらいまわしされている間に、クライアントの事務担当が送り返してくれたのだった。
うちのschoolの場合ランキングはそれなりに高いとはいえ、企業側からお願いして仕事をしてもらおう・・と思うほどのレピュテーションはないので、どうしてもMBA Officeはお願い営業になってしまうのだろうと思う(事実、毎年案件獲得はかなり苦戦しているらしい)。さらに中国人のホワイトカラーというのは良くも悪くも自分の評価に直轄することしかしないので、その後に学生がどのように苦労するかにはたぶんあんまり興味がないと思われる※4。
ということで色々と駄目な点を書いてきたのだが、それでも個人的にはこのプロジェクト型授業で学ぶものは多かったので、来年以降に少しずつでも改善をしていってほしいと思う。事実多くのプログラムで少しずつ改善が行われているので来年はもっと良くなると思う。本当はこういうことを言うためにstudent committeeの委員がいるのだが、ここら辺はそもそもの問題意識のすり合わせから始めないといけないし、そもそもそこにこだわる学生いもあまりいないだろうし・・他のschoolはどういうように運営をしているのかをぜひ知りたいところ。
※1・・・フリーライダーと組んだ時の面倒くささは体験したものでないとわからない・・が、ほぼ全てのMBA生が体験するものであろう。。文句(意見・自己主張)が多すぎる学生とも正直言ってチームを組みたいとは思わない。
※2・・・NDAを結んでいるので会社名を書くことはできません・・・。大陸学生が一人しかいないチームだったので中国系企業を決めないというのもすぐに合意できたのであった。
※3・・・どのくらいイマイチだったかというと、先週のエントリーで書いた親友の韓国人は第一回の彼のフィードバック面談での会話に失望して、彼の授業をキャンセルしたほどである。広告系の授業だったので、僕には大変楽しかったのだが・・。でも、内容が面白かっただけで、彼が良かったわけではないという話もあるが。。
※4・・・なので、中国人と交渉する時に、もしあなたが上役を知っているのであれば「そこまで仰るのであれば、あなたの公式回答をもってあなたの上役に相談しなければなりませんが、それでもよろしいですか?」と言うと、かなりの確率で物事が動く。だいたい、彼らは面倒くさくて仕事してないだけのことが多いので。
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