第57週目終了! - 長かったInternも無事に終了-
9月に入ると上海も随分と過ごしやすくなってくる。今年は例年に比べてそれほど暑いというわけではなかったが、やはり朝晩の風に秋を感じてくるとようになると、少しホッとしたものを感じる。上海は春と秋が短いので、ここからはじわじわと涼しくなっていき、11月に一気に寒さがますというのが例年のパターンで、毎年その時期には風邪気味になるのだが、今年は就職活動もしなければならないし、何とか無事に乗り切りたいな~と、そんなことを考えるようになったMBA生活57週目も無事に終了。9週間という長きにわたったInternと早起き生活もようやく終わりを迎えたのであった。
■ Internの締めはCEO向けプレゼン ■
これまでも二回ほどエントリーを書いてきたが(こことここ)、僕はこの夏、schoolから大層離れた製造業の工場でInternをしていた。テーマとしては日本マーケットの可能性をリサーチするというもので、なにせその会社で日本語を読めるのは僕だけなので、自然と放置と言うか自分でスピードをコントロールするような形になっていった。
B2Bのマーケットリサーチをするのは初めてだったのだが、授業で学んだことやとりあえず一通り準備をするために読んだ本から、ある程度のレベルまで調査を終えたら実際のお客さんにあって話を聞かなければならないことがわかっていたので、9週間のうちの前半を使ってマーケットの調査を行い、後半は有望そうな企業にInterviewを行うという計画をたてたのだった※1※2。
実際の調査では有望企業の選定までは比較的スムーズに進んだものの、そこから先はどうしても一人では進めることが出来ないので、現場の営業担当者とチームを組んで作業をすることになった。
僕がInternをしている企業は(もしかしたら製造業というのはどこもそういうものなのかもしれないが)購買部のマネージャーは大変押しが強く、正直仕事がしづらい・・と感じたのだが、営業部の方はみな大変フレンドリーで、こちらが出した要望にあわせて積極的にお客様にコンタクトを取ってくれたのであった。
ただ、さすがにフレンドリーといっても日々のルーチンワークもある中での、まだ見込みのないような新規開拓作業であるし、特に会社に格別売るものがないという中で見ず知らずの企業にアポイントを取るのはなかなか難しく、結局数社しかアポイントをとることが出来なかった。まあ、これはある意味最初から予想通りだったので、仕方ない・・・。という感じで、やたら調査資料だけがたまったままInternも終わるのかなぁ・・と思っていたところ、人事から声がかかり、やはり最後ぐらいはしっかりしよう(いや、自分はいつもしっかりしてたんだけど・・)ということで、最終週には僕が属している子会社のCEOへのプレゼントなったのであった。
プレゼンといっても基本的に工場の一角にあるオフィスでの作業なので、それほど立派な会議室があるわけでもないし、参加者もCEO、営業マネージャー、それに今回のInternのパフォーマンスを確認するという観点から、人事マネージャーの三人が参加することになった。
プレゼンではこちらのCEOは本気で参加する時には、基本的にプレゼン形式で最後まで通す時間をくれることはない・・・というのはこれまでの経験からわかっていたので、なるべく数ページごとに隙間をあけるようにして、質問を受け入れられるようにしたのだが、実際にプレゼンが始まってみると、こちらが内容を伝えるというよりもなんというか口頭試問のようにちょっと説明しては突っ込みが入り、その場で決めたことを営業マネージャーに伝達するというような形になったのであった。
最終的に報告書用に用意していた相当量のPPTはほとんど見られることなく、要点の説明と営業マネージャーへの伝達・・ということを繰り返して、プレゼン(というか試問)は40分ほどで終了。おかげさまで『今まで知らなかったことをずいぶんと理解できた、大変
よかった』とおほめの言葉をもらうことが出来たのだが(日本語が出来るのは僕だけなのだから、それはそうだ)、面倒を見てくれていた営業マネージャーが今までちゃんと調査をしていなかったと叱責を受けていたのは、なんというか恩を仇で返すような形になってしまい大変申し訳なかった。報告書には各企業のコンタクト情報なども含まれているので、ぜひ利用してCEOを見返してほしいな・・と思っていたりもする。
■ 初の製造業で学んだこと ■
さて今回のInternではこれまで経験のなかった製造業の実地経験を踏むということを体験してみたのだが、授業ではならっていたり本を読んで知っていたことでも、実地で体験するのは大切なのだな・・というのを、いくつかの点で改めて感じることが出来た。
- 生産活動は本当に大切
- 取引の仕方が全然違う
- B2Bのリサーチは結構面白い
僕が働いていた工場は基本的に24時間休みなしで稼働している場所なのだが、季節がら何度か台風が来てしまったため製造計画にずれが発生してしまったりすることがあった。そういう状態になるとSupply Chain全体に影響が出るので、各部門が一斉に調整を行い、納期遅れを無いように各部門(違う地域の工場)で協力をする。
また毎日生産 → 毎日出荷というような企業なので、各担当社員も毎朝きちっと同じ時間に出勤してくる。
僕がこれまでいた業界と言うのは、良くも悪くもノリと最後の追い込みが非常に重要な業界だったので、フレックスタイムであったし、毎日の成果物の量がかなり変動するような業界だった。今回働いた企業のように「毎日変わらぬ成果物を出し続けることが重要」という生産活動の現場は初めてだったし、こういう変動がない生産活動と言うのはとても重要なのだな・・ということを初めて実感することが出来た。
今回インターンをした企業はこれまで日系企業とは基本的に取引をもったことがない企業で、プロジェクトは全て受注型で取ってくる形であった。言い換えると、売り物となるような商品は自分ではほとんどもっておらず、ソリューションと言うか「こういうことが出来ます。過去にはこういった実績があります。」といって案件を取ってくるというスタイルである。こういうスタイルはIT系や広告系では普通に行われるものなので、僕にとっては「これが普通」と呼べるようなスタイルである※3。
一方で今回実際に営業に伺った日系企業からは「まずは複数のサンプルを作って持ってきてください。よければその中の一つを選んだ上で、さらに改良をお願いします」と言われたので、これは正直言ってかなり驚いた(その業界にいる方からすれば何言ってるんだ、と言う感じだと思うが・・)。事前に試作品を作らなければならないということは、それだけの投資を自社で行わなければならないということであり、その後に改良を求められるということは一方で完成品としては売り込みをすることが出来ないということである。
極端にいうと会社のビジネスサイクルが全然違うということで、こういうように顧客の要求が完全に二種類にわかれるというのは、なかなかsupplierにとっては辛いのでは、と思ったのだった。
今まで僕はB2Cのマーケットにいて商品企画をやっていたこともあるので、マーケットリサーチというものにはそれなりの経験があるつもりなのだが、B2Cというのは基本的にマーケットリサーチが駆動力となって商品開発が行われるということはあまりない。というのは、消費者というのは移り気なもので、マーケットリサーチ「だけ」の結果で商品開発を始めると、それが完成したころにはすでにマーケットの方向性がずれている可能性もあるし、何より消費者は自分が心のそこで欲しいと思っているものをリサーチで教えてくれはしないからである※4。
一方で、今回働いた企業では最終的な僕の報告を見てすぐにCEOが次の行動を決定して、組織が動き出し始めた。簡単にいえば、たかだかMBA学生が2カ月間つかって調査した程度のデータでも、組織を動かすような原動力となったということである。これは自分のように「実行できてナンボ」と思うような人間にとっては非常に面白い動きだった。僕は正直いってあんまりリサーチが好きではないのだが、こういうようにすぐに組織の動きに直結するのであれば、B2Bのリサーチと言うものも結構面白いものだ・・と考え直したのだった(もちろん会社や人の性格にもよるだろうが)。
振り返ってみれば、途中で幾分中だるみがあったり体を壊してスピードダウンしたところもあったけど、当初の目的であった「製造業を体験する」ということもできたし、想定外だったが限りなく「中国企業で働く」という経験をすることが出来たので、全体としては非常に満足できるインターンだったと言える。
この結果を受けて僕が製造業に進むかどうか・・というのは全然わからないのだが、人生で一回しかない『MBAの夏休み』をうまく使うことが出来たな~という満足感とともに、Intern生活を終えることが出来たのであった。
※1・・・僕が今回Internをした業界は日本企業が非常に強力なため、欧米のビジネススクールでもこの業界を専門に研究したいる人がたくさんおり、文献は非常に充実している。今回はこのインターンのために久しぶりにこのような専門書を読んでみたりもした。
※2・・・今回は僕へのサラリー以外は一切の予算がなかったため、必然的に調査用のリソースはWEBから集めるか、schoolの図書館で拾ってきた情報ということになった。本気で利用してみると図書館のデータベースがかなり充実していることに驚いたものだ。。。
※3・・・もちろん広告やITでも受注前にスクラッチを作ったり、デザインを作ったりすることはあるが、あくまでそれは顧客がイメージを持つことが出来るようにするためで、受注前に作りこんだりすることはない。
※4・・・マーケットリサーチを軽んじるというわけではなくて、B2Cの場合、その他の要素も考慮して商品開発がおこなわれるという言うことである。
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