第58週目終了! -ちょっと不穏な中劇場に行ってきた -
ここ数日は日中関係がかなり緊張しているということで、結構個人としては心配(ビビっている)のだが、そのような心配とは無縁に上海はかなりいつもと同じような雰囲気を漂わしている。もちろん領事館がある虹橋地区ではデモが発生しているし、日本人が街中で殴られたり物をかけられたりするという情報も入ってきているけど、少なくとも浦東にいる限りには特に「身近」にそのような危険を感じる・・・ということはない。といことで、ドキドキしながらも授業あり、就職の準備もありというMBA生活第59週目も無事に終了。
■ 街中での移動はドキドキ(することもある)■
今週はこんな時にも関わらず日本から「上海のフィールドワーク」をしにくるという勇気ある方がいらっしゃったので、その方をところどころアテンドすることになった。別に浮世離れをしているとは思わないのだが、普通はこの時期に『上海にある昔の日本関連の建物を調査する』ということをやらないのではないか・・とも思ったりもする。一方で、やはり研究者はこうでなければ、とも思ったりする※1。
先生がお越しになった時には、すでに中国全体で不穏な雰囲気になっていたし、領事館からはタクシーで乗車拒否にあいました、という話も流れてきていたので、一緒に街を歩く時にもそれなりに警戒をしていた。こちらに住んでいる人間としては場所と発生時間がわかっているデモなんかよりも、街中でよくわからない人間にいきなり因縁をつけられるほうがはるかに怖いので、とにかく街中での警戒心を抜くことはできないのだ(大げさだが)。
- 田舎から出てきてそうな人がきたら避ける
- タクシーは大手しか使わない
- 人が多い中では日本語を大きい声を話さない
上海では服装の雰囲気、言葉の訛り、それから肌の色で上海で生まれ育った人間(上海人)かそれ以外の都市から出てきた人間かを、かなりの確率で判断することが出来る。差別と言われるかもしれないが、今回のようなデモが上海で起こると、基本的に参加する人間は田舎から出てきた人間か学生・・というのが一つの定番となっているので、そういった人が近くにいる場合にはなるべく距離をとるようにしていた。だいたい普通に仕事をしている上海人は、わざわざリスクを冒して街中で暴力をふるったりをしないし、そもそもそんな暇もない。
上海では日本と同じように複数のタクシー会社が営業をしているのだが、その会社間でも一応格の違い・・というか序列づけがある(金額が違うわけではなく、あくまで対応が丁寧かどうかのざっくりとした目安と言う感じ)。今回は乗車拒否にあったという話が流れてきていたし、タクシーの中はある意味密室になっているということで、出来る限り格が高いタクシー(大衆や錦江というブランド)を利用することにしていた※2。逆に日ごろから対応が悪い個人タクシー(的)である紅い色のタクシーは避けるようにした。
これも領事館の通達の中でふれられていたのだが、やはり人が多い中で大きい声で日本語で会話をするのは回りを刺激する可能性がある。ただ、街中をアテンドする必要がある以上、タクシーか地下鉄での移動は避けられず、地下鉄の中では日本語を聞きとめられるとジローーッと見られたりもした。そういう時は逆に見返すと余計緊張が高まるので、だまって横を見るのが正しい対応方法。
こういった感じで街中でのアテンドだけでも緊張するのに、お越しになった先生は観劇が趣味ということで、なんと街のど真ん中にある劇場に中国語劇を見にいったのであった。ちなみに先生との移動中含めて一週間で明らかに日本人であることを確認する視線を感じたのは数回。幸運にも乗車拒否に会うことはなかった。
■ 歴史がない・・・といっても100年!■
今回見にいったのは市内のど真ん中福洲路にある、逸夫舞台という場所である。これまでも前を通ったことは数えきれないほどあるのだが、中を見たことがあるのは一回だけだし、観劇するのはもちろん初めてである。今回見に行った劇は中国語劇の一つで越劇という女性のみで行われる劇。女性のみといっても登場人物が全員女性と言うわけではなく、ちょうど宝塚のように女性が男性も演じるという劇である。ちなみにこういった情報は全て先生から教えていただき、とにかくデモの情報チェックに忙しかったこの一週間は自分で情報をチェックすることが出来なかった。
劇場はざっと見た感じ300人以上入ることが出来る結構大きめの劇場。周りにいるのはほ とんど一般庶民・・・というか普通の上海人のおじさんおばさん方で全然緊張感はない。事実劇が始まってもしゃべっている人もたくさんいたし、写真をとったりするのも全く問題ないという状況だった。
今回はまったく事前に情報を調べずに観劇にいったのだが、今回のストーリーは実在の唐代の人物である李商隠という人物をトピックにした恋愛劇だった。越劇は台詞の合間に歌が入る、ミュージカルのような構成の劇で笑いあり涙ありの総合エンターテイメントという感じの劇である。上映は6幕物で休憩なしで2時間半と結構長い。最初の頃はしっかり見ていた中国人もだんだんとだれ初めて、後半は話声もかなり大きく、移動も自由にしてしまうという日本からするとちょっと考えられない感じになった。今回が越劇を見るのは初めてだったわけだが、劇のレベルもかなり高く、もっといいお客さんの前で演じさせてあげたいな・・・ と思ったぐらいである※3。
この劇、一応中国語で行われているのだが発音が呉音(だと思う)で行われているので、台詞を聞くだけではさっぱり聞き取ることが出来ない。これはおそらく他の中国人であっても同じ状況のようで、舞台の両側には普通語で書かれた文字がスクリプトで写されるようになっていた。それでも、唐代の詩なども取り入れているということで、意味がわかったのは8割と言うところだろうか。とり あえず中国人と同じタイミングで笑うことが出来ていたので、たぶんだいたいの理解はあっているのだと思う。
知り合いの中国人に聞くとこの越劇は「まだ100年ちょっとの歴史しかない」とのことだが、100年も続けば立派な伝統だと思う一方、たった100年ではひよっこなのがこの国の歴史感覚なんだよな、とも妙に納得してしまった。
劇場の中でも終了後には多少「お、こいつ日本人」という目線で見られたりもしたものに、さすがに劇場でもめ事を起こすような人はおらず、無事に帰宅することが出来た。もう少し上海が落ち着く時期になったら、もっとしっかり予習をして見に行きたいと思っている。
※1・・・僕は結構保守的な人間なので、出来れば研究と言うのは政治とは切り離して行われるべきだと考えている。まあ研究といっても国際政治とか戦略の研究とかあるわけで、一概に切ることはできないのだけど。
※2・・・上海のタクシーはブランドごとに色が塗り分けられているので、初めて来た人でも色を見ればブランドを識別することが出来る。
※3・・・僕はもともとミュージカルが大好きなので、多少ひいき目が入っているかもしれない。
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