で、結局MBAはいくらかかったの?
日本に帰ってきて早くも三か月。巷で言われるアベノミクスのおかげですっかり円安に振れてきた為替を見ると、自分が(結果として)絶妙なタイミングで留学をしていたのだな~と思わずにはいられない※1。「グローバルエリート」とか「グローバル人材」とかいろいろ言っても、実際に海外で学ぶとなれば先立つものは金である。特に私費学生にとっては、留学期間中はほとんど収入はなくなるわけで、資金計画というのは非常に重要になってくる。
ということで、今回はCEIBSに在籍してどれくらいの費用がかかったのかということを、お伝えしたいと思う。
■ 生活費は予想外にかかる
MBAでの生活にかかる費用というのは、ざっくり分類してみると以下のようになる。
- .学費
- 住居費
- 日々の生活費
- その他
この中で1は自分の工夫ではどうにもならないので、そのほかの部分で「自分の期待値」と「手持ちの金」を見比べながら日々工夫していく必要がある。まあ、MBA生活ではいきなり出費が必要なイベントが発生したりして工夫も泡に消えることになるのだが・・・。
まず話を始める前段として、僕が留学生活でかかった費用を出してみよう。話の前提として、僕はMBA学生の中ではかなり倹約して生活をしているほうだった・・というのを覚えていただきたい。
- 学費 → 50,000ドル(日本円で約400万円:80円/ドル)
- 住居費 → 約36,000元(日本円で約50万円:14.5円/元)
- 日々の生活費 160万円(18ヶ月・一ヶ月約9万円)
- その他 100万円
合計してみると710万円前後である。
当初留学を始めるときに考えていたざっくり予算がだいたい700万~750万円だったので、
だいたい計算通りに収まったといえる。それでは各項目を少し詳しくみてみたい。
まず、1の学費は自分でどうすることも出来ない固定部分なので、受け入れるしかない。
仮に奨学金をもらうことが出来ればこの部分を減らすことが出来るのだが、奨学金はいろいろな要素が絡んで支給が決まるので、個人的にはそこをあてにして計算をするのはお勧めしない。
ちなみにこの金額、毎年上がっていて今年は380,000元になっていた。ドル換算は書いていなかったのが、現在の為替基準でいうと61,000ドルぐらいである。これは高い。。
2は上海という立地のおかげで(というかschoolの安いドミトリーのおかげで)随分と低く抑えることが出来ている。僕の場合はドミトリーの一人部屋に住んでいたのでこの金額だが、二人部屋での生活を受け入れることが出来れば、さらに半額にすることが出来る。
米国留学組に聞くと、最低で1,000ドル/月は見なければならないという話だったりするので、やはりこの部分ではCEIBSはお徳である。
3に関しては前半はかなり低めで月5万円ぐらいで後半になるにつれて金額が上昇するというわかりやすいカーブを描いた。自分は中国生活が長いせいか、他の留学組からは不平がかなり出ていた学内食堂も特にあきることなく食べ続けることが出来たし、最初のほうはかなり忙しく外に出ることがなかったのが、だんだんと外に出る時間が増えて・・・という感じで出費が増えたという結果になった※2。
自分としては最大で月10万円、少なくて5万円ぐらいと見込んでいたのだが、4とあわせれば月10万円を超えているわけで、予想よりも金額がかかっているという感じだ。
4は金額だけを見ればかなり使った感じがするが、これでも他の海外学生に比べればはるかに抑えられている方だと思う。なにせ、MBA期間と言うのは人生でもしかしたらとれる最後の夏休み(引退後は夏休みというより第二の人生なので・・・)なので、みな時間があればいろいろなところに旅行に行く。自分も各休みで旅行には行っていたが、お金はなるべく安く、かつ時間的にもそれほど厳しくないところ・・という感じで選んでいたので、個人的にはすごく節約感がある。
・・・とここまでは予定通りに計算は進んだのだが、実際にはこれに加えて「MBA中に現在の妻と生活を始める」と「日本に帰国して就職する」という二つの想定外のイベントが発生したので、いわゆるMBA生活中にかかった費用はもっと増える。
- 生活費の増額(6ヶ月):約60万円
- 日本への帰国費・住居費(初期費用):約110万円
これを足すとだいたい総額で900万円で、想定よりも約150~200万円は増えている。
そもそも中国のMBAを選んだのも、中国大陸で働き続けたかったからで、日本に帰ることなど想定はしていなかったし、BAが始まったばかりのころはまだ現在の妻と出会ってもいなかったわけで、さすがにこの状況を予想するのは無理だった。
結局この予想外の出費もあって、日本で働き始めたときの手持ちの現金の状況はお寒い限りになってしまい、入社した会社の初回の給与が3月になるか4月になるかで精神をすり減らしたのも、まさにこの予想外の出費のためである※3。
■ 資金面での優位性は消えつつあるアジアMBA
ちょっと前まではアジアのMBAというのは「欧米MBAに行くよりも資金的なハードルが低い」というのが一つの売りになっていたのだが、上の金額を見ればわかるとおり、それでも働き始めて数年で上記の金額を準備するというのは決して楽な話ではない。
さらにいえば円安・・というのはどこに留学するにしても変わらず影響を与えるのだが、中国の場合は、学費の急激な値上がりとインフレによる生活費の上昇というのも考慮しなければならない。ためしに、今の円相場(わかりやすく1ドル100円、1元=16.7円)で計算をしてみよう(僕の場合は平均で1元=13円程度)
- 学費 → 380,000元(日本円で約630万円)
- 住居費 → 約36,000元(日本円で約60万円)
- 日々の生活費 200万円
- その他 → 約130万円:日本への帰国費(就活用に2回)、旅行代(東南アジア、香港など+ジャパントリップ)、中国語語学学校代、スマホ購入など
なんとざっくりの計算で1,000万円を超えてしまう。。。
もちろん円安が進んでいるのは全ての通貨に対してなので、一概にこの結果を見てCEIBSの価格競争力が下がったとは言いがたいのだが、それでも1,000万円という金額はインパクトがある。。。(何度も繰り返すが、他のschoolの金額も上がっていることはわかっていても)もし自分の時にCEIBSに入るのに1,000万円かかると知っていたら、間違いなく他の欧米系のschoolにいったであろう。
MBAへの投資は30前後の私費留学生にとってはすさまじく大きい投資だ。投資である以上当然リターンを求めるわけだが、今の自分に「CEIBSに1,000万円の価値がありますか?」と聞かれると非常に難しい。正直にいえば2-300万ぐらいしか違わないのであれば、(よっぽど強いモチベーションを大陸や中華圏に感じないのであれば)欧米系にいったほうがいいですよ・・と思ったりもする。
長い間アジアMBAの優位性は「MBAを比較的安価でとれて、かつ欧米では出来ない経験が出来る」というところにあったのだが、少なくとも金額面ではあまりメリットを感じない状況になってきたのだな、というのが今の率直な感想である。これまでは国の経済に成長にあわせて学費も右肩上がり、ランキングも上がりといういいサイクルを描いていたアジアMBAもこれからはいよいよ「提供できる価値」で勝負する時代が来るのかもしれない。
※1・・・その前から中国で長く働いていたので、働いている時期にはもっと円安になってくれれば、円ベースの給与は増えるのにな・・と思っていたのだが。
※2・・・といっても学内食堂は食事を楽しむというよりも、エネルギーを体に取り込むという感じで食事をしていたのは否めない。
※3・・・幸いなことに3月から給与が支払われたので事なきを得た。
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アジアMBA説明会で、倫理についての説明を希望した者です。
私は以前からこのブログを拝見しておりまして、初期の段階で私がMBAを目指すきっかけとなったブログです。
そのような思いもあり、先日はお会いできてうれしかったです。
この内容が公開されるのかどうかよくわからないので名前は控えさせてください。
どちらにメッセージを入力すればよいかわからず、申し訳ないです。たちまちこちらに入力させていただきました。
ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: | 2013年7月 8日 (月) 20時13分
ご連絡をいただきありがとうございます(返信遅くなり申し訳ありません)。このBlogがMBA受験の一つのきっかけとなったとのことで嬉しいです。もしご連絡をとのことであればmashあっとまーくgakushikai.jp (受信専用)にご連絡をいただければと思います。
あまり更新が出来ていませんが、これからもよろしくお願いいたします。
投稿: GP | 2013年7月13日 (土) 21時33分