[書評] 中国を学ぶためにこんな本を読んでみた1 -中国共産党の経済政策 & マオ・キッズ-
中国にいたのに中国のことはあまり知らない・・という人は結構多いと思う。ここでいう知らないというのは、もちろん自分の周りについてではなくて、中国の歴史・経済・制度・文化といったいわば「教科書で学ぶことが出来る知識」を知らないという意味だ。
こう書くと「やっぱり中国にいるぐらいだから、中国に興味があったんじゃないですか?」という質問をされることが多い。確かに音楽が好き・・とか、中国はビジネスの場として昔から注目していた・・・という人もそれなりにいるのだが、実際には駐在で向こうに行ったりする人の多くは「なんとなく中国に来てしまった」という人が多い※1。実際に赴任するまで知っているのは三国志だけでした、という人も中にはいるくらいだ(というか、自分が実際にそれに近かった)。
僕自身もそういう人間だったので、帰ってきてからは真面目に中国を勉強しようと心に誓って帰ってきたのだが、なんだか色々あってちっとも実際に勧めることが出来なかった。とはいえ帰国二年目にして、このごろようやくその時間をとれるようになってきたのも事実なので、数カ月前に一念発起して読んだ本をWEB上のサービスであるブクログで管理を始めた(ここが僕の本棚)。
すでに歴史については第一回を先日書いたのだが、これからは出来る限り中国に関しても同じように書いていこう、ということで今回から自分が読んだ中国関係の本を少しずつ紹介していこうと思う。乱読だが、とりあえず中国関係であればオッケーぐらいのスタンスなので、つまらない本に関しても紹介はするのですが。
■ 中国共産党の経済政策 ■
中国は日本の近くにあるし歴史的な問題を抱えているために、どうしても見る目がPositive・Negativeのどちらかに触れてしまうことが多いのだが、客観的に見れば国としての経済レベルが第二位にある国がビジネスとして対象にならないわけがない(ようはすごく大きいマーケットだということ)。
確かに政治も経済も、国の運営制度も異なるので簡単に入るということが出来ないのは事実だけど、それでも目をそらすわけにはいかない・・ということを前提とすれば、やっぱり基本的なことを勉強するというのは重要だよね、ということでこういった本からスタートするというのは決して悪くはないと思います。
■ マオ・キッズ ■
マオイズムというのは不思議な思想である。思想的にどのような点が特徴的であるのか、ということを抜きにしても、最も不思議なのは毛沢東自身も恐らくマオイズム等と言うのは信じていなかったであろう・・というのが何よりも不思議な点だ。言い換えれば、共産主義とは違ってマオイズムというのは「毛を見た他人が(勝手に)解釈した」思想なのだ。
カンボジアに行った時には、その不思議な思想が引き起こした惨事(あるいは愚行)でも最大のものの一つであると思われる、クメール・ルージュのキリング・フィールドに行ってきた。その時の感想はここにも書いてあるのだが、やりきれない想い・・というか、もっとはっきり言えば人はここまで愚かしいことが出来るのか、というある種のこっけいさを感じた(もちろん悲劇なのだが、なぜそういった行動が出来るのか・・というのがシステムとしてどうしても許容不可能だった)。
そういった悲劇を引き起こしたマオイズムが未だに残っており、しかも現在でも活動を続けているというのは、未だにそういうことを引き起こすメカニズムが解決されずに残っているということに他ならない。
中国で働きそしてMBAで学ぼうと思ったことの大きな理由の一つが、こういったメカニズムを買える力がビジネスにはあると感じられたことだというのを読んでいてあらためて思い出した。本書にもあるとおり、革命というのは例えそれが成就しても、結局はおいしいところを持っていくのは「上の人間」であり、一般の生活レベルはなかなか上がらない※2。
であればこそ、政治ではなくビジネスを広めることで働きかけを行うべき・・・そんな風に考えていたことをあらためて思い出した、そんな一冊。
※1・・・僕のMBAの同級生は中国文化にはあまり興味はないが、中国ビジネスは面白いとおもって10年近く中国語を勉強していた、というツワモノである。自分だったらとても根気が続かない。。。
※2・・・中国も最初の数年間を除いて、生活レベルがあがったのは改革開放が始まってからだ。
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