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2014年1月 9日 (木)

[書評] 中国を学ぶためにこんな本を読んでみた1 -中国共産党の経済政策 & マオ・キッズ-

中国にいたのに中国のことはあまり知らない・・という人は結構多いと思う。ここでいう知らないというのは、もちろん自分の周りについてではなくて、中国の歴史・経済・制度・文化といったいわば「教科書で学ぶことが出来る知識」を知らないという意味だ。

こう書くと「やっぱり中国にいるぐらいだから、中国に興味があったんじゃないですか?」という質問をされることが多い。確かに音楽が好き・・とか、中国はビジネスの場として昔から注目していた・・・という人もそれなりにいるのだが、実際には駐在で向こうに行ったりする人の多くは「なんとなく中国に来てしまった」という人が多い※1。実際に赴任するまで知っているのは三国志だけでした、という人も中にはいるくらいだ(というか、自分が実際にそれに近かった)。


僕自身もそういう人間だったので、帰ってきてからは真面目に中国を勉強しようと心に誓って帰ってきたのだが、なんだか色々あってちっとも実際に勧めることが出来なかった。とはいえ帰国二年目にして、このごろようやくその時間をとれるようになってきたのも事実なので、数カ月前に一念発起して読んだ本をWEB上のサービスであるブクログで管理を始めた(ここが僕の本棚)。
すでに歴史については第一回を先日書いたのだが、これからは出来る限り中国に関しても同じように書いていこう、ということで今回から自分が読んだ中国関係の本を少しずつ紹介していこうと思う。乱読だが、とりあえず中国関係であればオッケーぐらいのスタンスなので、つまらない本に関しても紹介はするのですが。


■ 中国共産党の経済政策 ■

2013年から始まった中国の習近平・李克強指導において中国経済がどのようになっ
ていくか、 31syr7dfcwl_sl500_aa300_ あるいは日 本(企業)がそのマーケットにおいてどのように戦っていくか、を論じた本。

上記のような問題意識のもとに書かれたのであろうことは容易に想像できるのだが、内容は表題からうける印象とは異なり、特に前半は中国における政治経済体制 の入門編と言う感じである。中国の政治体制がどのようになっているか、その政治体制が経済に対してどのように影響を与えているか・・という点から、いわゆ る西欧諸国との経済政策の違いを論じている。

後半は18大以前からの中国の経済問題を提示したうえで、今後の経済体制がどのようになるの かという予想も含めて論じている。後半は実際に中国に赴任経験がある著者の本領発揮というところだが、一方で中国経済にそれなりに興味をもって接している 人間からすると、ほとんどの内容が既知であるように感じる(少なくとも僕はそうだった)。著者の業務の関係上書けないこともあるとは思うし、新書という形 から専門的すぎる内容はかけないところもあるので、仕方ないとはおもうがこの点で評価がちょっと下がる。


中国経済に既に触れている人間には物足りない内容だと思うが、これからかの国について勉強したい、あるいはニュースの背景を知りたいと思う人にはお勧め(僕の評価は★3つ)。

中国は日本の近くにあるし歴史的な問題を抱えているために、どうしても見る目がPositive・Negativeのどちらかに触れてしまうことが多いのだが、客観的に見れば国としての経済レベルが第二位にある国がビジネスとして対象にならないわけがない(ようはすごく大きいマーケットだということ)。

確かに政治も経済も、国の運営制度も異なるので簡単に入るということが出来ないのは事実だけど、それでも目をそらすわけにはいかない・・ということを前提とすれば、やっぱり基本的なことを勉強するというのは重要だよね、ということでこういった本からスタートするというのは決して悪くはないと思います。


■ マオ・キッズ ■

死後30年以上たっても未だに現代中国の意思決定に影響を与える存在であり、
51luftjowl_sl500_aa300_ 現代中国建国の父(といってもいいと思う)である毛沢東。彼の建国思想は
マオイズムという形で、革命の思想的根拠として世界 中に広まっていった。

本 書はそのマオイズムが未だに生きている場所である、ネパール・フィリピン・カンボジア、そして日本を著者が実際に訪れ、話を聞くなかで感じたことをまとめ たルポルタージュである。革命思想を体現するのはいつの時代でも若者であり、マオの思想を引き継いでいるものといういみで、マオ・キッズ達の物語でもあ る。

中国に長く住んでいた自分にとっては、毛沢東というのは一つの政治的・文化的象徴(あるいはアイコン)であり、実際にいまだにマオイ ズムが現役であるというところのまず驚きを覚える。世界中にはまだまだ貧しい国があり、革命(というか反政府)の動きがある国もあれば、内戦が続いている 国もたくさんあるが、純粋な意味でマオイズムが生き残っているというのは(こういってはおかしいが)時代錯誤で非常に奇妙な感じだ。なにせ、マオイズムが 産まれた中国ですら既に共産主義も毛沢東思想は捨てられてしまっているのだから。

ただ、そういった非常に興味深い内容を取り上げているに も関わらず、著者の視点は常に外にある。もちろん現場に行って話を聞き、実際にマオイストたちがいる根拠地にもいくのだが、それでもそこでは常に淡々と話 を聞き、そこはかとないやるせなさを漂わせる文章を書くだけである。そういった姿勢は、僕にはそこにある「問題」(あるいは原因)に興味があるのではな く、ただ僕が感じる奇妙さと同根のものを見続けたい、という純粋な好奇心によるものだと感じられた(特に最終章を読んでその意を強くした)。

同じように先進国にいる自分、特に中国生活を終えて帰ってきた自分がなんとなく「逃げてきたのではないのか」と思ってしまうような自分、にはそういった好奇心が、先進国の残酷さではないかと感じられてしまい、率直にいえば好きではない。
テーマは面白いのに著者のスタンスと、掘り下げ不足が不満ということで★3つ。

マオイズムというのは不思議な思想である。思想的にどのような点が特徴的であるのか、ということを抜きにしても、最も不思議なのは毛沢東自身も恐らくマオイズム等と言うのは信じていなかったであろう・・というのが何よりも不思議な点だ。言い換えれば、共産主義とは違ってマオイズムというのは「毛を見た他人が(勝手に)解釈した」思想なのだ。

カンボジアに行った時には、その不思議な思想が引き起こした惨事(あるいは愚行)でも最大のものの一つであると思われる、クメール・ルージュのキリング・フィールドに行ってきた。その時の感想はここにも書いてあるのだが、やりきれない想い・・というか、もっとはっきり言えば人はここまで愚かしいことが出来るのか、というある種のこっけいさを感じた(もちろん悲劇なのだが、なぜそういった行動が出来るのか・・というのがシステムとしてどうしても許容不可能だった)。

そういった悲劇を引き起こしたマオイズムが未だに残っており、しかも現在でも活動を続けているというのは、未だにそういうことを引き起こすメカニズムが解決されずに残っているということに他ならない。


中国で働きそしてMBAで学ぼうと思ったことの大きな理由の一つが、こういったメカニズムを買える力がビジネスにはあると感じられたことだというのを読んでいてあらためて思い出した。本書にもあるとおり、革命というのは例えそれが成就しても、結局はおいしいところを持っていくのは「上の人間」であり、一般の生活レベルはなかなか上がらない※2
であればこそ、政治ではなくビジネスを広めることで働きかけを行うべき・・・そんな風に考えていたことをあらためて思い出した、そんな一冊。


※1・・・僕のMBAの同級生は中国文化にはあまり興味はないが、中国ビジネスは面白いとおもって10年近く中国語を勉強していた、というツワモノである。自分だったらとても根気が続かない。。。
※2・・・中国も最初の数年間を除いて、生活レベルがあがったのは改革開放が始まってからだ。

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