閉じて、縮み、そして止まる世界
1-3月の経済統計はまだ出ていないが、世界中で過去に例がないほどの落ち込みがあることが予想される。グローバリズムによって繁栄した経済は逆回転を起こして、一度は底まで行くしかないのかもしれない。
今の会社は脚の長いB2Bのビジネスがメインなので、いきなりレイオフを行うということはないが、資金の流れが詰まる可能性があるということで(職場に人がいけないことで決済が滞るとか、取引先が潰れるとか・・・)保守的な運営を行うという連絡が入ってきている。Goldman Sachsは6月までは経済がおちこみ、その後に急激に回復するという予想を立てていただが、感覚的にはもう少し長くかかるかもしれない。
この40人という人数は過去2週間〜10日間での拡散が今になってみえてきたということであり、だからこそより事態は深刻であることを物語っている。2週間前はまだここまで弛緩した雰囲気はなく、まだ自粛ムードが強かったのだから。
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これから2週間の間に検査により陽性であると判定させる人が増えていくのは、ほぼ「確定された未来」だ。今の段階でより強い取りくみをしないということは、意思決定の遅れを甘んじて受け入れるということと、残念ながらほぼ等しい。本当は1日でも早く封鎖をすべきなのだろう。
2020年3月10日 (火)
アメリカでもパンデミック対策が本格的に始まった(うちの会社含めて)
一週間ほど前に、アメリカでもようやくコロナ対策が本格的に始まったということを書いたが、この一週間で一気に活動が真剣になってきた。うちの会社でも、本社にいる全社員の在宅勤務開始の可能性を考慮しての準備が始まった。すでに本社近くにあるスタンフォード大学はクラスでの授業は行なっていないし、多くの企業が在宅での勤務を行うようになっている。
うちの会社の場合は国家機密クラスの情報を扱う可能性もあるので、すぐに全社員をリモートワークにするというわけにはいかず、影響範囲やシステムの堅牢性などをテストして、可能であればいつでもリモートワークにうつることができるようにするようだ※1。
「アメリカでは家での業務が認められているので、日本のような通勤ストレスはない」という話を時々ネット上で見るが、実際は全然そういったことはない。もちろん日本に比べればはるかにリモートワークへの理解は進んでいるし、週3回しか出勤しない人・・というのも普通に見るのだけど、「全社員が長期間(一週間以上)一斉にリモートワークで対応する」ということは、普通は行われない。
・・・・というわけで、日本よりも準備は進んでいるとはいえ、それなりの期間は必要なるのだ。
世界的な拡散と日本の現状と
正直にいうと、前にコロナウイルスについて書いた時(一週間前)には、ここまで欧米でいきなり感染が広まるとは想像もしていなかった。いずれ広まるだろう・・というのは確信していたが、イタリアをはじめとしてヨーロッパでの拡散速度は想像をはるかに上回っていた。アメリカでも感染者数が急拡大しており、ニューヨークでは日本人は事実上入国後の隔離政策がとられているようだ。
コロナウイルスだけではなく、およそ下の絵のような感染症は次のようなプロセスで広がっていく(あくまでメチャクチャ単純化した図)。
すごく単純化すると、世界各国が頑張るのは「コミュニティ内で感染が広まることを防ぐこと」だ(目的変数を「感染者数」と置くと言ってもいいだろう)
一方で、これまでの日本が力を入れているのは「重症化した人を治療し、できる限り死亡する人を減らす」ということだ(目的変数を「死亡者数」と置くと言ってもいいだろう)
これまでの推移を見ると、この戦略はかなりの部分でうまく行っているように見える。医療リソースが限られている状態では、今回のコロナウイルスの特徴を踏まえた上での最適解の一つであるように見える。
しかし、その一方でこの戦略は無視している、あるいは諦めているものも存在する。そういったものがあるからこそ、まさしく戦略なのだが。
一つは、「ピークを低く」「遅らせる」という戦略をとっている以上、コロナウイルスに対して耐える期間というのは必然的に長くなってしまい。リソース以上の発症者数を出さないというのが目指すべき状態なのだから、最初からこの戦略は長期戦なのだ。
こういった状態が長くなると、当然のことながら経済は疲弊していく。どこかでこの制約を緩めなければならないのは明らかだ・・一方で、緩めた瞬間にピークが一気に膨らむと言う可能性もゼロではない(なぜなら、そもそもの感染者数が正確に把握できていないのだから)。
次の正念場は、色々なイベントの自粛ムードがとける、あるいは学校が再開する頃だろう。この結果がどうなるかは今の所、全く予想できない。正確にいえば、ピークは高くなるだろうけど、どのくらい高くなるかは想像が出来ない。
もう一つは、この戦略は「重症化しないコミュニティ内の感染は許容する」という戦略なので、「感染自体を極小化する」という戦略をとっているコミュニティとは相入れないと言うことだ。言い換えると、他の国(中国も含めて)のように感染者数を追い続けている国から見ると、日本だけその戦略に協力していないように見える。なにせ、感染しているかどうかは把握していないのに、移動は制限していないのだから「感染を輸出している」と言われても不思議ではない。
これが、日本からの渡航制限を行う国が増えていくからくりだ。
オリンピックを開きたいであろう今の政府がこういった打ち手をとっているのは、ちょっとアイロニカルであるとは思う。
実経済への影響
ここ一週間ぐらいの間に世界各国で株式市場の下落がかなり進んでしまった。
報道ではこれをコロナと結びつけているところが多いが、この"全てを"コロナウイルスの影響にするというのは間違いだ。協調減産がうまくいかなかったことによる原油価格の下落という影響は大きく、アメリカの株価も石油関連は大きく下げている。
一方で、この下落の"全てを”原油価格のよるものだとするのも大間違いだ。
今回のコロナウイルスの影響は、間違いなく企業の投資意欲を下げるだろうし、消費にも悪影響を与える。そもそも、消費しようにも外に出かけることすら禁止される国が出てきているわけだから。
例えば急速に感染者が増えているように見えるカリフォルニアでは観光業に影響が大きいという報道がなされていた。
The Orange County Register: How coronavirus burst California’s tourism bubble
一週間前には「日本に不況がくる」と書いたけど、日本だけでなくもしかしたら世界中が厳冬期に入るのかもしれない。
僕も危機モードになって準備を進める必要があるようだ。
※1・・・ある意味で常にリモートワークをしているような東京オフィスに関しては、特に対応する必要はない模様。もともと少人数なので、必要に応じて、自宅作業も対応可能だし。
2020年3月 6日 (金)
2020年: 2月後半と3月前半で読んだ本
2020年3月 3日 (火)
外資における「公正な評価」という幻想と、一発逆転の可能性
日系企業に勤めている人にきくと、外資(この場合はほとんどが米系)の評価は日系企業よりも公正であると期待している人が多いようだ。確かに、少なくとも年功序列的な考え方は日系企業よりも少ないし、給与のアップサイドは多くの日系企業よりも大きいというのは事実だろう。
ただ、人間が人間を評価する以上は、誰もが納得する形で「公正」な評価するというのはありえない。外資系でも好き嫌いによる人事は普通にあるし、ダメな上司というのも日本企業と同じくらいいる(私の実感値)。
また、いわゆるアメリカの大企業ではFast trackと呼ばれる幹部候補生枠の選抜がかなり早く行われる。そこに選ばれるとあまり良い業績を出すことができなくても、一定レベルまでは自動的に昇進していくことが出来る。あるいは、家族が業界の著名人であったり、会社の偉い人だったりすると、異常な早さで出世をしていくということがある。
例えば、セールスフォースの創設者であるマーク・ベニオフはオラクル時代に異常な早さで出世し、失敗があってもそのスピードが落ちることがなかったため、ラリー・エリソン(オラクルの創業者)の隠し子に違いない・・・と言われていた等等。
これはアメリカ式に言えば、リーダーシップの経験を早期に積ませて幹部を育成する・・ということになるらしいのだが、そこに公正性があるかというと甚だ疑問だ。ある意味でどんな方法であろうとそのFast trackに選ばれてしまえば、ある程度は昇進が約束されているのだから※1。
そういった選抜がなされない人は、辛抱強く業績を上げ続けるしかない。しかも普通に目標をクリアし続けるぐらいでは、なかなか偉くなることはできない。周りの目をひくぐらいの成果を出す必要があるのだ。
そのあたりは、ハードルをクリアし続ければある程度までは偉くなることが出来る日系企業とは異なる部分かもしれない。
そのかわり、業績を上げることさえできれば、学歴などに関係なく昇進することが出来る。
年始に前職の同僚や元上司と新年会をした時に、ある中堅社員がDirectorに昇進をしたという話を聞いた(ここでいうDirector というのは職級の一つで、グローバルの人事評価対象となるということ。報酬の一部を株で受け取るようになる)。彼は、高校卒業後に一度自衛隊に入り除隊、大学をあらためて卒業したという経歴の方で、いわゆる「コンサル業界」ではまずみることがないような経歴の持ち主だ。
僕は1年半ほど一緒に仕事をしたのだが、なるべくなら人がやりたがらない小売や消費財といった領域で、倦まず弛まずに営業を根気よく続けるような人だった※2。とはいっても、別に悲壮感があるわけではなく、いわゆる「コンサル」であれば話したがらないようなタイプの人とも問題なくコミュニケーションを明るくとれるタイプで、組織においては貴重な人材だった。
ただ、一度プロジェクトを獲得すると「格好いい資料とかいらないし」「ロジックとかいらないから効果出して」ということを平気でいう人だったので、やはり異色ではあったといえるだろう。コンサルからロジックを取ってしまったら、ただのうるさいおっさんである。
そういう感じである一定層からはあまり評価されないようなタイプではあったのだが、数年前に日系大手企業から数十億円を超えるような大型プロジェクトを獲得し、無事に完了させたことを評価されて、ついにDirectorにまで昇進をしたとのことだった。
僕はこの話を聞いてとても嬉しかった。彼は一緒に食事をすると、よく「自衛隊を出たような人間を取ってくれたのはこの会社だけだった」とこぼしていた。そこに何かしらの事情があったことは感じるのだが、詳しく話を聞いたことは一度もない。おそらく、彼からみたら全く環境の違う僕には話したくないこともあるだろうし。
そういった彼が、入社時にまずは皆が目標とするDirectorまで昇進したのだ。
これこそが外資における公正さの良き面の一つであると僕は思う。
それと同時に、彼の昇進は一つの事実を、改めて僕に教えてくれた。やはり何かしらで名前をあげるなり大きくジャンプするためには、ありきたりの成功ではダメなのだ。
70歳まで働かざるをえないとして、残り30年間で何かしらそんな大きなジャンプを見せる機会はあるのかしら。
※1・・・そして、大企業である程度偉くなると、しばらくの間は転職先に困ることはないのである程度は人生安泰感がある。
※2・・・小売領域はお金にうるさく、かついわゆる「ロジック」が通用しない人も多く、コンサル業界では避ける人が多い業界の一つである。
2020年3月 2日 (月)
アメリカ出張は取りやめになったけど、結果オーライかもしれない。でも、今年はかなりしんどいことになる。
お客様から連絡があった段階では自分だけいくというオプションもあったのだけど、あまり意味がないし、もし家族に何かあった場合には海の向こうから心配しないといけないし・・・ということで自分もキャンセルした。結果として、3月2日段階では正解だったと思っている。
週末である28日(日本時間では29日)は少しトーンが変わって、「風邪をひいてしまったようだけど、コロナではないと思うので心配しないでね」という感じで、まだジョークで話せるレベルだった。ただ、現地の社員が日本にくるのは避けた方がいいかもしれない・・というメッセージは出てきていた。
一つは日米間のUA便が減便になったこと。UA便は本数も多く日系の航空会社に比べて運賃も安いため、日本に来るアメリカ人はよく使っている。これが減便したということで、米国から日本への出張についても本格的にキャンセルが発生するようになった。
インフルエンザが猛威をふるっていようとあまり気にしないアメリカ人ではあるが、今回は予防方法が事実上なく、かつ誰がかかっているかがわからないということで、それなりに心理的に影響が出て来るようになった。うちの会社でも、会社に入る時には手のひらのアルコール消毒をしっかりするようにとの通達が出ている。
現段階ではまだ出国時の制限(といっても強制することはできないが)だけだが、入国時に隔離される可能性があるとなると大事だ。アメリカではこういった措置が一回発表されると、しっかりと運用がなされる。隔離措置により家族と会うこともできなくなるし、仕事にも大きな影響がある。これで、アメリカ側の雰囲気もだいぶ変わったようにみえる。
出張や会議が減ることは色々な方面に影響を与えるけど、それ自体が経済を冷やすことはあんまりない※1。インバウンドや旅行、イベント関連といったところは、現在も既に大打撃を受けているが、これもある意味で「コロナによる直接的な被害」ということで、コロナの問題が解決すれば少しずつ回復して来るだろう(とはいっても、いつまでかかるかわからないので、決して優しい問題というわけではない)。
少なくとも予算の組み換えが行われる可能性がある下半期(10月以降)までの6ヶ月はかなりの厳冬になるに違いない。
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