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2020年3月

2020年3月25日 (水)

閉じて、縮み、そして止まる世界

一ヶ月ほど前にオリンピックがどうなるかという予想を書いた時には想像も出来なかったのだが、「世界の人の往来が止まる」ような事態が発生してしまい、オリンピックは延期になってしまった。コロナ(今ではCOVID-19と呼ぶようになった)について記録し始めてから一ヶ月ぐらいの間に世界は大きく変わってしまった。


閉じて縮む世界と経済

グローバル化が進んだ現代において、感染症を運ぶのは「人」だ。当初は中国武漢で広まった今回のCOVID-19はまずは東アジアで広がり、その後にヨーロッパが中心地になり、そしてアメリカも対応に苦しんでいる。
見ることが出来ず、発症前であれば検知すら不可能な感染症を人が運ぶのであれば、まず人の移動を抑えるというのはものすごくわかりやすい打ち手だ。日本も含めて世界各国が、航空便の数を減らし、人の往来を一気に減らしていった。

国家間の人の往来が減り、そして都市間の移動が減るということは、かつての社会がそうであったように、一種の都市国家のような状態になってしまったということだ。歴史では「世界がつながることで市場が拡大し、経済が繁栄する」ということを習うのだが、現在進んでいるのはその逆回しのようなものだ。
1-3月の経済統計はまだ出ていないが、世界中で過去に例がないほどの落ち込みがあることが予想される。グローバリズムによって繁栄した経済は逆回転を起こして、一度は底まで行くしかないのかもしれない。


勤めている会社の本社があるアメリカでは、猛烈な勢いでレイオフが始まっている。感染の中心地であるニューヨークではもちろんのこと、西海岸でもいわゆる「予防的なレイオフ」があるようだ。
今の会社は脚の長いB2Bのビジネスがメインなので、いきなりレイオフを行うということはないが、資金の流れが詰まる可能性があるということで(職場に人がいけないことで決済が滞るとか、取引先が潰れるとか・・・)保守的な運営を行うという連絡が入ってきている。Goldman Sachsは6月までは経済がおちこみ、その後に急激に回復するという予想を立てていただが、感覚的にはもう少し長くかかるかもしれない。

一足早く危機を脱したように見える中国の景気が急速に戻っているのが唯一の救いだが、パンデミックが再発すればあっという間に戻ってしまうわけで、綱渡りであることにはかわりがない。2020年代の始まりは各人が生き延びるのに必死にならざるを得ない環境になってしまったというわけだ。


東京はどうなるか?

これを書いている3月25日の段階では、これまでのところ日本国内で実質的に封鎖のアクションをとったのは北海道だけだった。その効果があったかどうかはわからないが、北海道は急速に沈静化に向かい、次に危険なのは東京だと言われている。25日は過去最高の感染者数40人が発覚しており、沈静化する様子は見られない。
この40人という人数は過去2週間〜10日間での拡散が今になってみえてきたということであり、だからこそより事態は深刻であることを物語っている。2週間前はまだここまで弛緩した雰囲気はなく、まだ自粛ムードが強かったのだから。
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25日20時からの都知事記者会見では「週末の不要不急の外出は避けるように」との呼びかけがなされるらしい。いきなりの非常事態宣言は難しい・・・という判断のもとにされるのだろうが、おそらくあまり効果はないだろう。この週末に活動を自粛したとしても、効果がわかるのは2週間後。
それまでの間に、今日までの緩みの結果としておそらく感染者はまだ増えると予想される(このblogは25日の19:30ごろに書いている)

おそらくその増加を見て、ロックダウンと呼ばれる事実上の外出禁止命令が出されるに違いないと、予測する。実行されるのはGWを含む形での3週間ぐらいではないだろうか・・・。早くて13日ぐらいからだろうか。


最初に書いたように今回の感染症は人から人へ感染る病気だ。そして、感染する期間は潜伏期間も含めてだいたい3週間以内と見積もられている。この感染期間に正確な知見がないのが痛いところだが、例えば3週間の間に「人 → 人」の感染をゼロにすることができれば、理論的には感染者をほぼゼロに抑え込むことができる。

東京において、「人 → 人」の感染をゼロにするというのは現実的には不可能だろうが、これからやろうとすることは、究極的にはそういうことだ。
これから2週間の間に検査により陽性であると判定させる人が増えていくのは、ほぼ「確定された未来」だ。今の段階でより強い取りくみをしないということは、意思決定の遅れを甘んじて受け入れるということと、残念ながらほぼ等しい。本当は1日でも早く封鎖をすべきなのだろう。

どうかこの予想が外れますようにという淡い期待をいただいているが、個人としては来るべきタイミングに備えて準備を進めるほかない。

2020年3月10日 (火)

アメリカでもパンデミック対策が本格的に始まった(うちの会社含めて)

一週間ほど前に、アメリカでもようやくコロナ対策が本格的に始まったということを書いたが、この一週間で一気に活動が真剣になってきた。うちの会社でも、本社にいる全社員の在宅勤務開始の可能性を考慮しての準備が始まった。すでに本社近くにあるスタンフォード大学はクラスでの授業は行なっていないし、多くの企業が在宅での勤務を行うようになっている。

 

うちの会社の場合は国家機密クラスの情報を扱う可能性もあるので、すぐに全社員をリモートワークにするというわけにはいかず、影響範囲やシステムの堅牢性などをテストして、可能であればいつでもリモートワークにうつることができるようにするようだ※1

「アメリカでは家での業務が認められているので、日本のような通勤ストレスはない」という話を時々ネット上で見るが、実際は全然そういったことはない。もちろん日本に比べればはるかにリモートワークへの理解は進んでいるし、週3回しか出勤しない人・・というのも普通に見るのだけど、「全社員が長期間(一週間以上)一斉にリモートワークで対応する」ということは、普通は行われない。
・・・・というわけで、日本よりも準備は進んでいるとはいえ、それなりの期間は必要なるのだ。

 

世界的な拡散と日本の現状と

正直にいうと、前にコロナウイルスについて書いた時(一週間前)には、ここまで欧米でいきなり感染が広まるとは想像もしていなかった。いずれ広まるだろう・・というのは確信していたが、イタリアをはじめとしてヨーロッパでの拡散速度は想像をはるかに上回っていた。アメリカでも感染者数が急拡大しており、ニューヨークでは日本人は事実上入国後の隔離政策がとられているようだ。

 

Busineee Insider: アメリカでも広がる日本人への「警戒感」 

 

コロナウイルスだけではなく、およそ下の絵のような感染症は次のようなプロセスで広がっていく(あくまでメチャクチャ単純化した図)。

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すごく単純化すると、世界各国が頑張るのは「コミュニティ内で感染が広まることを防ぐこと」だ(目的変数を「感染者数」と置くと言ってもいいだろう)

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一方で、これまでの日本が力を入れているのは「重症化した人を治療し、できる限り死亡する人を減らす」ということだ(目的変数を「死亡者数」と置くと言ってもいいだろう)

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これまでの推移を見ると、この戦略はかなりの部分でうまく行っているように見える。医療リソースが限られている状態では、今回のコロナウイルスの特徴を踏まえた上での最適解の一つであるように見える。

 

しかし、その一方でこの戦略は無視している、あるいは諦めているものも存在する。そういったものがあるからこそ、まさしく戦略なのだが。
一つは、「ピークを低く」「遅らせる」という戦略をとっている以上、コロナウイルスに対して耐える期間というのは必然的に長くなってしまい。リソース以上の発症者数を出さないというのが目指すべき状態なのだから、最初からこの戦略は長期戦なのだ。

こういった状態が長くなると、当然のことながら経済は疲弊していく。どこかでこの制約を緩めなければならないのは明らかだ・・一方で、緩めた瞬間にピークが一気に膨らむと言う可能性もゼロではない(なぜなら、そもそもの感染者数が正確に把握できていないのだから)。
次の正念場は、色々なイベントの自粛ムードがとける、あるいは学校が再開する頃だろう。この結果がどうなるかは今の所、全く予想できない。正確にいえば、ピークは高くなるだろうけど、どのくらい高くなるかは想像が出来ない。

 

もう一つは、この戦略は「重症化しないコミュニティ内の感染は許容する」という戦略なので、「感染自体を極小化する」という戦略をとっているコミュニティとは相入れないと言うことだ。言い換えると、他の国(中国も含めて)のように感染者数を追い続けている国から見ると、日本だけその戦略に協力していないように見える。なにせ、感染しているかどうかは把握していないのに、移動は制限していないのだから「感染を輸出している」と言われても不思議ではない。
これが、日本からの渡航制限を行う国が増えていくからくりだ。

 

オリンピックを開きたいであろう今の政府がこういった打ち手をとっているのは、ちょっとアイロニカルであるとは思う。

 

実経済への影響

 

ここ一週間ぐらいの間に世界各国で株式市場の下落がかなり進んでしまった。
報道ではこれをコロナと結びつけているところが多いが、この"全てを"コロナウイルスの影響にするというのは間違いだ。協調減産がうまくいかなかったことによる原油価格の下落という影響は大きく、アメリカの株価も石油関連は大きく下げている。

 

一方で、この下落の"全てを”原油価格のよるものだとするのも大間違いだ。
今回のコロナウイルスの影響は、間違いなく企業の投資意欲を下げるだろうし、消費にも悪影響を与える。そもそも、消費しようにも外に出かけることすら禁止される国が出てきているわけだから。

 

例えば急速に感染者が増えているように見えるカリフォルニアでは観光業に影響が大きいという報道がなされていた。

The Orange County Register: How coronavirus burst California’s tourism bubble

一週間前には「日本に不況がくる」と書いたけど、日本だけでなくもしかしたら世界中が厳冬期に入るのかもしれない。
僕も危機モードになって準備を進める必要があるようだ。

 

 

 

※1・・・ある意味で常にリモートワークをしているような東京オフィスに関しては、特に対応する必要はない模様。もともと少人数なので、必要に応じて、自宅作業も対応可能だし。

2020年3月 6日 (金)

2020年: 2月後半と3月前半で読んだ本

2月後半ぐらいからコロナウイルスの影響で仕事が少なくなったのだが、その空いた時間は映画を見ていたので、あまり本は読めなかった。Kindleだとサンプルを送ることができるのだが、積ん読が溜まる一方だ。


デジタル・トランスフォーメーションで何が起きるのか?51xao8wjp7l

Twitterでも精力的に情報発信をされており、個人的に応援しているITジャーナリストでもある西田宗千佳さんの最新書籍。
タイトルは随分と大上段だが、主な内容はAdobe社の製品を採用している企業への取材とそこから読み取れる考察だ。若干Adobeのパブ本という感じはするものの(※1)、そこは経験豊富なジャーナリストらしく、Adobeわっしょいという感じではない。
本書で指摘されているいちばんん重要な点は、単にデジタルを使えばデジタル・フォーメーションであるというわけではないということ。デジタル化することで商流を変更し、データが取得可能なような形で「商流を再構成」することが重要なのだ。
僕は個人的にRPA(Robotics Process Automation)と呼ばれる技術が大嫌いなのだが、まさに理由はこれで、単なる自動化をデジタル・トランスフォーメーションと言って欲しくないのである。


二重国籍と日本415zhsdbuql

2018年~19年に4大大会を連覇した大阪なおみ選手の活躍をきっかけにした訳ではなく、蓮舫議員の二重国籍騒ぎをきっかけとして起こった議論を出発点とした新書。

台湾関連のジャーナリスムでは第一人者の野島さんが執筆陣に含まれていることから手に取ったのだが、残念ながら各執筆陣の記述内容を編集側がうまくコントロールできてないようで、同じような話しが延々続くという感じの内容になってしまった。

また、タイトルに「二重国籍と日本」とあるわりには主要な議論の焦点は台湾との二重国籍に絞られている。台湾は現在の日本では国として認められていないということから、様々な法的に難しい点が生まれているということは、本書から十分伝わってくる。だが、台湾との問題にこれだけページをさくなら、もう少しタイトルは工夫すべきだったのではないだろうか。


デジタル時代の競争戦略41gdrnwbhbl_sy346_

プラットフォーム事業者(一番イメージしやすいのは、いわゆるGAFAかもしれない)に関する規制当局の取り組みについて理解をしたいと思い手に取ったのだが、実際にデジタル関連の記述は全体の1/3にも満たなかった。内容自体は面白いのだけど、ちょっとタイトルに偽りありという感じだ。

全体としては3章構成になっており、第1章は独占禁止法と公正取引委員会についての総論。第2章は具体的な反競争的行為についての解説があり、第3章でようやくデジタル時代の規制についての記述になる。肝となるのは、これまでは主にB2B取引に使われて来た独占禁止法の考え方をB2Cにも応用するということと、消費者がプラットフォーム事業者に提供しているデータは「投入財」であると位置付けて、プラットフォームの利用についても財とサービスのやりとりであると見なすということだろう(私の理解が正しければ)。

150ページ程度の本書では精密な議論がなされないのは仕方がないのだが、上記の議論が正しいとすると「ユーザーがサービスを"利用すること"により発生したデータ」をどのように取り扱うのかは不明確だな・・・と感じた。プラットフォームを利用する時にはユーザーが明示的に「投入した」以上のデータが発生するわけで、これを全て投入財とするのはかなり無理筋だと思う。
また、仮にこういった取引に付随するデータに関して独占禁止法を適用しようとすると、B2BやB2Cでの通常の取引行為で生み出されるデータも同様の規制の対象となると思うのだが、そこは濫用がされていないと解釈をするのだろうか・・。

・・・という感じで、競争政策に関して知識がない自分のような人間が全体感をつかむのにはよいのだが、一方で深い議論はされていないので、本書を読んで興味をもった人間は、より専門的なトピックを取り上げている本を読む必要があると思う。


※1・・・Adobeに勤めている友人によると、Adobeが便宜をはかって描いてもらったとのことだが、本当かどうかは不明。便宜をはかったかどうかはわからないが、取材先の紹介はしているとは感じる。

2020年3月 3日 (火)

外資における「公正な評価」という幻想と、一発逆転の可能性

日系企業に勤めている人にきくと、外資(この場合はほとんどが米系)の評価は日系企業よりも公正であると期待している人が多いようだ。確かに、少なくとも年功序列的な考え方は日系企業よりも少ないし、給与のアップサイドは多くの日系企業よりも大きいというのは事実だろう。

ただ、人間が人間を評価する以上は、誰もが納得する形で「公正」な評価するというのはありえない。外資系でも好き嫌いによる人事は普通にあるし、ダメな上司というのも日本企業と同じくらいいる(私の実感値)。

また、いわゆるアメリカの大企業ではFast trackと呼ばれる幹部候補生枠の選抜がかなり早く行われる。そこに選ばれるとあまり良い業績を出すことができなくても、一定レベルまでは自動的に昇進していくことが出来る。あるいは、家族が業界の著名人であったり、会社の偉い人だったりすると、異常な早さで出世をしていくということがある。
例えば、セールスフォースの創設者であるマーク・ベニオフはオラクル時代に異常な早さで出世し、失敗があってもそのスピードが落ちることがなかったため、ラリー・エリソン(オラクルの創業者)の隠し子に違いない・・・と言われていた等等。

これはアメリカ式に言えば、リーダーシップの経験を早期に積ませて幹部を育成する・・ということになるらしいのだが、そこに公正性があるかというと甚だ疑問だ。ある意味でどんな方法であろうとそのFast trackに選ばれてしまえば、ある程度は昇進が約束されているのだから※1

 

そういった選抜がなされない人は、辛抱強く業績を上げ続けるしかない。しかも普通に目標をクリアし続けるぐらいでは、なかなか偉くなることはできない。周りの目をひくぐらいの成果を出す必要があるのだ。
そのあたりは、ハードルをクリアし続ければある程度までは偉くなることが出来る日系企業とは異なる部分かもしれない。

そのかわり、業績を上げることさえできれば、学歴などに関係なく昇進することが出来る。

 

 

年始に前職の同僚や元上司と新年会をした時に、ある中堅社員がDirectorに昇進をしたという話を聞いた(ここでいうDirector というのは職級の一つで、グローバルの人事評価対象となるということ。報酬の一部を株で受け取るようになる)。彼は、高校卒業後に一度自衛隊に入り除隊、大学をあらためて卒業したという経歴の方で、いわゆる「コンサル業界」ではまずみることがないような経歴の持ち主だ。

僕は1年半ほど一緒に仕事をしたのだが、なるべくなら人がやりたがらない小売や消費財といった領域で、倦まず弛まずに営業を根気よく続けるような人だった※2。とはいっても、別に悲壮感があるわけではなく、いわゆる「コンサル」であれば話したがらないようなタイプの人とも問題なくコミュニケーションを明るくとれるタイプで、組織においては貴重な人材だった。

ただ、一度プロジェクトを獲得すると「格好いい資料とかいらないし」「ロジックとかいらないから効果出して」ということを平気でいう人だったので、やはり異色ではあったといえるだろう。コンサルからロジックを取ってしまったら、ただのうるさいおっさんである。

そういう感じである一定層からはあまり評価されないようなタイプではあったのだが、数年前に日系大手企業から数十億円を超えるような大型プロジェクトを獲得し、無事に完了させたことを評価されて、ついにDirectorにまで昇進をしたとのことだった。

 

 

僕はこの話を聞いてとても嬉しかった。彼は一緒に食事をすると、よく「自衛隊を出たような人間を取ってくれたのはこの会社だけだった」とこぼしていた。そこに何かしらの事情があったことは感じるのだが、詳しく話を聞いたことは一度もない。おそらく、彼からみたら全く環境の違う僕には話したくないこともあるだろうし。

そういった彼が、入社時にまずは皆が目標とするDirectorまで昇進したのだ。
これこそが外資における公正さの良き面の一つであると僕は思う。

それと同時に、彼の昇進は一つの事実を、改めて僕に教えてくれた。やはり何かしらで名前をあげるなり大きくジャンプするためには、ありきたりの成功ではダメなのだ。
70歳まで働かざるをえないとして、残り30年間で何かしらそんな大きなジャンプを見せる機会はあるのかしら。

 

※1・・・そして、大企業である程度偉くなると、しばらくの間は転職先に困ることはないのである程度は人生安泰感がある。
※2・・・小売領域はお金にうるさく、かついわゆる「ロジック」が通用しない人も多く、コンサル業界では避ける人が多い業界の一つである。

2020年3月 2日 (月)

アメリカ出張は取りやめになったけど、結果オーライかもしれない。でも、今年はかなりしんどいことになる。

二週間ほど前に、「このままだと日本からの入国が制限されるという可能性もないとはいえなくなってきた」と書いた米国出張。今の所少なくともアメリカではそういった事態は起こっていないけど、出張はキャンセルになった。一緒にいくはずだったお客様が、2月25日から国内外の出張を一斉にストップさせたからだ。
お客様から連絡があった段階では自分だけいくというオプションもあったのだけど、あまり意味がないし、もし家族に何かあった場合には海の向こうから心配しないといけないし・・・ということで自分もキャンセルした。結果として、3月2日段階では正解だったと思っている。


アメリカは2月28日までは対岸の火事だった

今回のキャンセルを伝えた時に、アメリカ側の最初の反応は「日本は大変だなぁ」だった。アメリカ側ではそれほど問題ないんだけど、お客さん側がそうやって決めてしまったなら仕方ないよねぇ・・という感じだったのだ。
週末である28日(日本時間では29日)は少しトーンが変わって、「風邪をひいてしまったようだけど、コロナではないと思うので心配しないでね」という感じで、まだジョークで話せるレベルだった。ただ、現地の社員が日本にくるのは避けた方がいいかもしれない・・というメッセージは出てきていた。


だが、この雰囲気も今週に入ってだいぶ変わってきた。
一つは日米間のUA便が減便になったこと。UA便は本数も多く日系の航空会社に比べて運賃も安いため、日本に来るアメリカ人はよく使っている。これが減便したということで、米国から日本への出張についても本格的にキャンセルが発生するようになった。

次に、アメリカでも感染者が少しずつ増えてきたこと。
インフルエンザが猛威をふるっていようとあまり気にしないアメリカ人ではあるが、今回は予防方法が事実上なく、かつ誰がかかっているかがわからないということで、それなりに心理的に影響が出て来るようになった。うちの会社でも、会社に入る時には手のひらのアルコール消毒をしっかりするようにとの通達が出ている。

最後は、もしかしたら本当に他国からの帰国後に隔離措置がされるかもしれないという雰囲気が出てきたことだ。
現段階ではまだ出国時の制限(といっても強制することはできないが)だけだが、入国時に隔離される可能性があるとなると大事だ。アメリカではこういった措置が一回発表されると、しっかりと運用がなされる。隔離措置により家族と会うこともできなくなるし、仕事にも大きな影響がある。これで、アメリカ側の雰囲気もだいぶ変わったようにみえる。


2020年は不況になる、少なくとも会計年度上半期は(9月までは)

それからもう一つ見えてきたのが、今回のコロナウイルスの問題は2020年度の予算設定に対してメチャクチャでかい影響を与えるということだ。
出張や会議が減ることは色々な方面に影響を与えるけど、それ自体が経済を冷やすことはあんまりない※1。インバウンドや旅行、イベント関連といったところは、現在も既に大打撃を受けているが、これもある意味で「コロナによる直接的な被害」ということで、コロナの問題が解決すれば少しずつ回復して来るだろう(とはいっても、いつまでかかるかわからないので、決して優しい問題というわけではない)。

これに加えてお客さんと話していると、この先行きの不透明感により2020年度の予算が影響を受けていることをヒシヒシと感じる。先ほどは「直接的な被害」という表現をしたが、こういった予算策定の問題 == 正確に言えば、保守的な予算計画による支出削減は「間接的な被害」ということができるだろう。

うちのような研究開発を生業にしているような業者は真っ先に影響を受けるし、成長戦略やデジタル・トランスフォーメーション系のB2Bも影響を受けるだろう。そして、そういった影響は回り回って消費者にも影響を与える。昨年の米中貿易摩擦や消費税増税で弱っていたところに、最後の一撃が加わった感じで、いよいよ不況が来ることがほぼ確定してしまったといっていいだろう。
少なくとも予算の組み換えが行われる可能性がある下半期(10月以降)までの6ヶ月はかなりの厳冬になるに違いない。

このコロナウイルスの影響がつらいのは、ある意味で世界同時に発生してしまうことだ。人口減と高齢化の影響で国内がしんどいから、インバウンドや海外展開で稼ごう・・というストーリーが使えなくなってしまった。もしかしたら中国は予想よりも早く立ち直るかもしれないけど、彼の国もこれから2022年に向けて、決して安定しているわけではない。

今から出来る準備などタカがしれているのだけど、想定していたよりも冬の寒さははるかに厳しくなる予感がしている。これが「終わりの始まり」にならなければいいのだけれども、とこの頃は真面目に心配している。


※1・・・「3月はじめに取締役への報告を行い、3月下旬に納品完了してください」みたいなプロジェクトは結構あると思うのだが、こういったものは今回の措置が直撃するけれど・・・年度内に締めたかったプロジェクトはどうすればよいんだろうね。。。

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