January 2025
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 救急車で運ばれたら、なかなか体が戻らない | トップページ | Audibleで自伝を聞くのがとても楽しい: ボブ・アイガーの自伝本 »

2020年8月15日 (土)

Epic Gamesのやり方に三戦を見る

全世界で2億人を超えるユーザーを抱えるゲームであるFortnite(フォートナイト)がAppleとGoogleの運営するアプリストアから削除されたというのがSNSで話題になっていた。ゲームを愛している自分だが、基本的にはコンソールゲームしかやらず、かつオンラインゲームはやらない・・という主義でプレイをしているので(※1)自分自身はFortniteをプレイしたことはない。ただ、世界中で人気のゲームがいきなり目の前から消える悲しみというのは理解できるので、経緯をざっと調べてみた。

SNS上ではかなり極端な意見が流れていたが、自分がみた中では西田宗千佳さんがBusiness Insiderに書いた記事が経緯と論点を一番綺麗にまとめているように感じた。

アップルと「フォートナイト」全面戦争の行方…“落とし所”はどこなのか(Business Insider)

今回の動きがSNSで一斉に騒がれたことの一つに、Epic Games側が用意周到な準備していたことがあげられる。彼らの活動は主に3つにまとめられる。


  1. Appleをカリフォルニア州で訴える
  2. かつてAppleがIBMとの戦いを描いたCMのパロディを作成して、全世界のFortniteプレイヤー向けに流す。(ここで見ることができる)
  3. #freefortniteのタグを利用してSNSでバズを起こそうとしている

この動きなんとなくみたことがあるな・・・と考えていたところ、中国の情報戦の方法である三戦に近いんじゃないか・・・と思い至った。Epic Gameには中国の騰訊の資本が40%入っており、彼らが騰訊から学んだところがあるんじゃないかと想像している。・・・ということで、戯言に近いのではあるが、あまりに見事な準備だったので、三戦とかけあわせてEpic Gameの今回の取り組みを捉え直してみた。



三戦とは何か

三戦というのは中国(および中国人民解放軍)が採用していると言われている方法論の一つで、敵との戦いにおいて輿論戦・心理戦・法律戦を組み合わせて戦うという戦略だ。

輿論戦というのは簡単に言えば、「自軍の敢闘精神の鼓舞、敵戦闘意欲の減退を目的とする内外與論の醸成をいう」という取り組みになる。ようは、様々なコンテンツやメディアを組み合わせて、自陣営の士気をあげ、相手のやる気を削ぐということだ。

心理戦というのは、簡単にいうとプロパガンダだ。輿論戦と違うのは、もっぱら相手に対して焦点を絞っているということだろう。
そして法律戦というのは自陣営の動き(想定されているのは軍事行動だ)を合法的なものとし、一方で相手を非合法とするという取り組みである。

日本の防衛省に詳細を解説した資料があったので、詳細を知りたい方はこちらを参照いただきたい。この資料にも解説がある通り、3つを明確にわけることは難しい。説明を読んでも輿論戦と心理戦は結構似ているんじゃないのという気がするし・・・。



三戦の概念とEpicの活動

この三戦の概念を、今回のEpicの戦い方に(無理やり)当てはめると以下のような感じになる。


  • 輿論戦・・・AppleがIBMとの戦いを描いたCMのパロディを作成して、全世界のFortniteプレイヤー向けに流す
  • 心理戦・・・ #freefortniteのタグを利用してSNSでバズを起こそうとしている
  • 法律戦・・・Appleをカリフォルニア州で訴える

重要なのは、三戦というのは長期的な戦いを想定した考え方であるということだ。軍事行動に関連して事前事後に行う一連の活動の枠組みを提示しているものなので、短期決戦を想定しているわけではないのだ。
ということで、今回の戦い方にこの考え方を応用しているのならば、この先に二の矢・三の矢が待っているはずなのだ。ただし、それは今回のアプリストアからアプリが削除されたかどうか・・というレベルの話ではない。もう少し先を見据えた戦略が準備されていると考えた方がいいだろう。



今後の動きの予測


今回のEpicの動きは、明らかに「過剰」だ。Appleと戦いたいのであれば、Appleに対して訴訟を起こせばいいだけだし、わざわざ映像やハッシュタグなどを準備などしなくてもアプリストアから消えた段階ですぐにマスコミが騒ぎ出しただろう。Appleの手数料が安くなればそれだけプレイヤーにも還元できる・・・というのは理屈としては成り立つが、プレイヤーを大規模に巻き込んだからといってAppleやGoogleが動揺するということはないだろうし、訴訟が有利に運ぶわけではない。


こういった「過剰」な動きをするのであれば、そこには少なくともEpic側が合理的であると感じるだけのロジックが存在するはずだし、そこにはその合理的なロジックを成り立たせる世界観が存在する。
中国を近くに見ていた自分にとっては、このロジックと世界観というのが、極めて大陸にあるものと似ているように感じるのだ。自分たちが正義と考えるロジックを振り回し、戦い抜くだけの物量を準備し、大衆を動員して勝利に持ち込む・・・というのは、大陸で政治が主導する動きによく似ている。



ビジネスとしての落とし所は西田さんの記事に書いてあるような方向性で進んで行くだろうし、このままずっとFortiniteのアプリが削除されたままというのは考えづらい。だが、外野にいる自分でさえ”三戦”とのアナロジーに想像が至ったのだから、AppleやGoogleの中でも間違いなく同じ想像をする人間はいるはずだ。もちろん、それは最初に言ったように戯言に近いものかもしれないが、おそらくもう少しは真面目に検討されることだろう。ただでさえ、アメリカでは「対中」という意識は日本人が考えるよりもずっと強いのだ。


こういうことから、Apple側はEpicに対しては騰訊との関係についても今後は攻撃してくるのではないかと予想している。Epic側もそれをわかっていてSonyからも資本を入れていたりするのだろうけど、GoogleとAppleが組んだ時にどのように政治的な手を打ち出してくるかというのは、予想がつかないだけに興味を持って見ている。



※1・・・人間世界の煩わしさをわざわざゲームに持ち込みたくないという気持ちと、オンラインゲームをしてしまったら廃人になってしまう可能性があるという二つの理由だ。

« 救急車で運ばれたら、なかなか体が戻らない | トップページ | Audibleで自伝を聞くのがとても楽しい: ボブ・アイガーの自伝本 »

Off」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 救急車で運ばれたら、なかなか体が戻らない | トップページ | Audibleで自伝を聞くのがとても楽しい: ボブ・アイガーの自伝本 »