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2020年10月13日 (火)

大学院でビジネス開発の講義を行ってきた

もう4週間ほど前の話になるが、大学時代の恩師の縁で事業構想大学院大学でビジネス開発に関する講義を行う機会をいただいてきた。中国でスタートアップをしていた経験や、現在の仕事でシリコンバレーに触れている(片足突っ込んでるとも言えないほど浅い付き合いだが・・・)ということから、新規事業を立ち上げる際の日本・中国・米国における違いを話して惜しいというオーダーをいただいたのだ。

こういった機会は、この歳になるとむしろ積極的にお受けするようにしている。なかなか新しいことを経験するチャンスも減ってきてしまうし、アウトプットをすることで自分が新たに学ぶことも出来る。日常の業務で話していることであれば資料をそのまま流用することも出来るが、今回のように「自分の専門に近いが、完全に重なっているわけではない」テーマの場合には、自分の知識の棚卸しをした上で新たな情報を集めなければならない。

実は今回の講義は元々は4月に予定されていたのだが、コロナの影響で9月にずれ込んだため、"コロナ以降による変化”も新たにテーマとして付け加えた。コロナのような世界的に同時に発生するインシデントは、各社会や組織の違いを明確にする貴重な機会であると捉えて、スタートアップや新規事業開発という観点からその違いを述べてきた。


講義内容の準備

講義の準備をするにあたっては、まずは情報とデータの収集を行った。
依頼時にAppleの創業話やGAFAがどれほど凄いかという話はすでにたくさん溢れているので、現場にいる人間ならではの話をして欲しいといわれたものの、まずは全体感をつかむ必要があるからだ。そしてその収集自体こそが、自分の学びになったのだった。

まず驚いたのは、中国のスタートアップ投資の規模だ。景気が落ちつつある現在は投資がしぼみつつあるが、最大で年間12兆円もの資金がスタートアップ市場に流れ込んでいた。「お金を燃やすように使う」ということで烧钱と言われるような状況にあった中国のスタートアップ投資だが、その投資は人材育成や技術開発に使われているわけで、確実に事業開発の人材層を厚くしただろう。ちなみに、12兆円というのは同時期の米国のスタートアップ投資とほぼ同額だ。GDPの違いを考えると、いかに大きな資金がスタートアップに費やされているかどうかわかるだろう。
ちなみに、その時期の日本のスタートアップ投資は約2,000億円だ。その規模の違いに頭がクラクラしそうである。

中国の調査ではこの規模の違いに驚いたが、米国側の調査では投資における「ヘルスケア」領域の大きさに驚かされた。業界別カテゴリーではIT/Internetにつぐ第2位に位置しているのだ。
ヘルスケア領域と一口で言っても、ハードウェア開発もあればアプリもあるし、新薬開発/創薬もある。なので、このカテゴリーだけではどのような方向に投資が行われているかを明確に判断することは出来ない。ただ、それでも米国ではコロナ後にものすごい勢いでワクチン開発が進んでいるように、ヘルスケアというのは米国経済において大きなポーションを占めているし、今後もそれはしばらく続くということを痛感させられた。

 
ちなみに米系企業に勤めてマーケティングをやっていると、国別の各業界別のレポートというのを作成させられるのだが、日本の医療保険制度を理解していない人間が米国側担当者にいると、なぜ日本ではヘルスケア産業がこんなに小さいのか?という質問を受け取ることになる。
そもそもの産業の違いから説明しないといけないのだが、その度にいかに日本のヘルスケア(医療)が産業として小さいかを感じる。

 

 
ハイブリッド講義の実施

当日の講義は、現地で参加する生徒とリモートで参加する生徒がいる、いわゆる”ハイブリッド式"で行われた。自分は資料を準備しておくだけだったのだが、準備の状況や当日の運営を見ると、いかにハイブリッド式は労力がかかるかということを痛感した。
まず、講演者と資料が同時に見られるように大きなビデオカメラが用意されていた。今回はMBA方式といえばよいのか、講義中に教室の中を動く方法で講義をしたり、講義中に質問を受け付けたので、そのたびにカメラを動かす必要があった。このために専属で1名の方がカメラに張り付いていた。

また教室で質問が行われた場合にはリモートで参加している学生が聞こえないので、その度に事務の方がマイクを渡してくれていた。これも、負荷としては小さいが重要なことで、リモートで参加している人が疎外感を感じないためには、こういった配慮が必要なのだ。このためにも1名が教室で控えてくれていた。

つまり、講義開始前にカメラと大きなスクリーンの準備と接続状態を確認を事務員の方2名が行い、そのまま講義中にはアシスタント業務をしてくれており、講義後には片付けまで対応をいただいたということである。
SNSでは大学でハイブリッド型の講義を求められているという話がよく出てくるが、自分が実際に参加してみた感じだと、これはものすごく負荷が高い。事務員がついておらず一人で講義をしなければならない場合、相当の準備と設計が必要であることは間違いない。

別に大学の先生をかばうつもりはないが、現実的にハイブリッド講義を行うのであれば大学側が標準的な方法を準備する必要があるだろうと強く感じた。


成長をしないのか?という質問
 
上にも書いたように、当日はなるべく生徒の人にも参加してもらいと考えて、いつでも質問が可能な形とした。全く質問が出なかったらどうしよう・・と事前は危惧していたのだが、かなり活発に質問が出て、こちらとしては大変嬉しい気持ちになった。ただ、この形式だと時間管理が難しく、結局自分の持ち時間を20%(15分)ほど長く使ってしまった。この辺りは、もし次回どこかから声がかかったら改善したいポイントだ。

色々出た質問の中で特に面白かったのが「アメリカとか中国を取り上げたが、そういった国ではなく、日本はヨーロッパのオランダとかドイツみたいな国を目指した方がいいのではないか」というものだった。こういう質問は、一般の人を対象にした時には予想できるのだが、大学院レベルでの講義で出てくるというのは少々意外だった。
 
 
その場ではあまり刺激的なことは言いたくなかったので「ベストプラクティスとして二カ国を取り上げた。また、そういう国を目指したとして長期的には日本は今の生活レベルを維持できなくなるので、全体としては負の方が大きいだろう」と回答したのだが、こういった質問というのは、なかなか回答が難しい。
 
まず個人的な信条としてワーク・ライフ・バランスを保ちたいという気持ちは理解できるし、その道を選択するのは個人の自由だ。ただし、国レベルというと日本のGDP成長率は既に例とした二カ国よりも低いのだ。そこを目指そうが目指さなかろうが、すでに成長という観点では負けているのだ。
また、現在の日本人の生活を維持する様々な要素、例えば国民皆保険に代表される医療レベルや食料の安さというのは、全体としての国富に依存している部分が大きい。今よりも低い位置を積極的に目指すというのは選択肢としては存在するが、確実に今よりも平均寿命は短くなり、今よりも貧しい生活が待っていることは間違いない(あくまで相対的な話なので、絶対的な利便性は向上し続けるだろうが)。

 
授業の目的の一つとして、米国や中国という例を通じて日本のポジションや強み/弱みを相対化して理解するということを置いていたので、それが伝わりきらなかったというのが少し残念ではあった。

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