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2021年9月 2日 (木)

[書評] トレイルブレイザー: 企業が本気で社会を変える10の思考 - Salesforceはマーケティングの会社だと再確認 -

517u5w0pcql SFA(Sales Force Automation: 営業支援ツール)と呼ばれる領域で世界最大の企業であるSalesforce.com(SFDC: セールスフォース)は実に不思議な会社だ。

SaaSビジネスというビジネス領域における最大の成功企業の一つであるのは間違いがないが、提供しているツールはお世辞にも「使いやすい」とは言えない。企業側が導入しようとするとほぼ100%導入コンサルティングを受ける必要があることを考えると、位置付けとしてはSAPのようなERPツールとあまり変わらないとも言えるかもしれない(※1)

テクノロジーの会社という見せ方をしているが、GoogleやAmazonといった会社と並び立つほどの技術レベルにあるかということ、これもかなり悩ましい。そもそもSalesforceの売り上げレベルだと、今の商用かつ汎用的なAI領域では投資必要金額をまかないきれないのだ。彼らがアインシュタインと名付けたAIも、裏側ではIBM Watsonの機能を活用している部分があるのが一つの証拠と言っていいだろう。

働きやすい会社・・・というのは確かに一面をよく表しているが、営業へのKPI管理や行動管理は世界でもトップクラスに厳しい企業でもある。これは創業者であるマーク・ベニオフがOracle出身であるという理由が大きいかもしれない。Oracleの営業は、IT業界の中でも最強の営業部隊を持っていると言われた時代があったのだ(業界を離れて数年たったので、今はちょっとわからない)。


そういうわけで、SFDCは「みんなが知っている割には捉えどころのない会社」というイメージだったのだが、本書を読んで見て、結局のところSFDCは自社(と製品)のマーケティングがメチャクチャうまい会社なのだな・・ということを実感 & 再確認した。

彼らのマーケティングの巧さを示す例でいうと、SaaSセールスの代名詞となったTHE MODELの考え方がある。マーケティングによるリード獲得から、インサイドセールスによるリードの見極め、そしてフィールドセールスによる刈り取りとカスタマーサクセスによる並走サポートというこのプロセスは「セールス強化」を測りたい伝統企業やスタートアップから強い支持を得た。
しかし、少なくとも日本においてはセールスフォース自体がTHE MODELの考え方を”限定的に活用している”ことはあまり知られていない。例を挙げれば、2021年の現在、THE MODEL的な営業フローは主に中小企業向けに使われており、大企業向けにはよりアカウントに近い営業体制が取られている。また、セールスフォースが日本に進出した際、アメリカでの営業方法がそのままでは上手く機能せず、結局日本IBMから営業系の幹部を引き抜いてきたというのはよく知られた話だ。

もちろんこれは、THE MODELという考え方が悪いわけでもなく、セールスフォースという会社が嘘つきだということでもない。外部環境に合わせてやり方を柔軟に変えることができるというのは、優れた組織には不可欠な要素だし、事業モデル自体も進化していくものだからだ。


本書を読むと、そういったマーケティングの巧さというのは創業者であるマーク・ベニオフの個性を反映したものだと思わずにはいられない。シリコンバレーの現役経営者の中でも、彼ほど出版や情報発信を好むCEOはいないのではないだろうか。実際に、本書も含めて彼は”読ませる” 文を書く。

私が以前勤めていた会社では、Oracle時代の彼と直接働いたことがある人間がいたのだが、彼は「どんなプロジェクトをやらせても失敗するが、なぜかその度に出世していく」とぼやいていた。もしかしたら、彼のやや誇大妄想的な部分とテクノロジーよりもマーケティングとビジョンに重きを置くスタイルがOracle創業者のラリー・エリソンに好かれていたのかもしれない。

ちなみに、彼はあまりにベニオフの出世が早いので「ベニオフは、ラリー・エリソンの隠し子なのでは?」と疑っていたようだ。自由奔放なラリー・エリソンならでは・・という気もするが、本書ではベニオフ家についてかなりの部分が割かれており、どうやら隠し子説は本当ではないらしい。


※1 ・・・SAPの導入は日本企業だと数年がかりになるのはザラなので、さすがにあれほど重いサービスではないが。

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