「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」 を御恵投いただきました
日経BP社より10月16日に出版される「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」を御恵投いただきました。誠にありがとうございます。
著者の前田さんとのお付き合い
本書の著者である前田徹哉さんとは、beBitでお仕事をご一緒させていただいた間柄だ。ただ、実はbeBitでご一緒する前から前田さんのことは存じ上げていた。
初めて前田さんにお会いしたのは、CEIBSを卒業してIBMに入社したばかりの2013年の春になる。マネージャーの師匠に当たる方と食事をご一緒するという機会があり、そこで師匠として参加されたのが前田さんだった。本書でも主要なテーマとなっている顧客勘定の考え方を会議室で教えていただき、その後食事をご一緒するという場だったと記憶している。その時は大先輩ということもあり、あまりお話しを深くすることもなく、”なるほど小売インダストリーのコンサルティングというのはこういうことを考えるものなのだな・・・”と素直に勉強をさせていただいた。
その後、自分がIBMの中で仕事をする中で、お客様である前田さんにご提案にお伺いしたことが何度かあった。前田さんがオンライン事業本部長としてEC成長を牽引されていた企業は、IBMのマーケティング・オートメーション(MA)ツールを最もうまく使いこなしている企業の一つだったのだ。前田さんはコンサル時代に開発された手法を活用して、当時すでにAmazonの強烈な圧力を受けていたマーケットで継続的な成長を実現されていた。その頃の取り組みは本書でも詳しく書かれている。
その後、自分は社内異動によりお客様と会うことはほとんどなくなってしまい、前田さんとも接点はなくなってしまった。しかしその後数年立って、私がbeBitと新たに接点を持ち始めたころに、USERGRAMの拡大を担う役割として前田さんがbeBitに入社をされて、そこからはご一緒させていただく機会が増えたという次第である。
初めて前田さんにお会いしたのは、CEIBSを卒業してIBMに入社したばかりの2013年の春になる。マネージャーの師匠に当たる方と食事をご一緒するという機会があり、そこで師匠として参加されたのが前田さんだった。本書でも主要なテーマとなっている顧客勘定の考え方を会議室で教えていただき、その後食事をご一緒するという場だったと記憶している。その時は大先輩ということもあり、あまりお話しを深くすることもなく、”なるほど小売インダストリーのコンサルティングというのはこういうことを考えるものなのだな・・・”と素直に勉強をさせていただいた。
その後、自分がIBMの中で仕事をする中で、お客様である前田さんにご提案にお伺いしたことが何度かあった。前田さんがオンライン事業本部長としてEC成長を牽引されていた企業は、IBMのマーケティング・オートメーション(MA)ツールを最もうまく使いこなしている企業の一つだったのだ。前田さんはコンサル時代に開発された手法を活用して、当時すでにAmazonの強烈な圧力を受けていたマーケットで継続的な成長を実現されていた。その頃の取り組みは本書でも詳しく書かれている。
その後、自分は社内異動によりお客様と会うことはほとんどなくなってしまい、前田さんとも接点はなくなってしまった。しかしその後数年立って、私がbeBitと新たに接点を持ち始めたころに、USERGRAMの拡大を担う役割として前田さんがbeBitに入社をされて、そこからはご一緒させていただく機会が増えたという次第である。
顧客勘定という考え方
本書のキーとなる考え方は、売り上げを顧客別に分解して考えるという「顧客勘定」という考え方だ。
例えば小売業であれば、商品ごとに売値と個数があり、それを全て合計したものが企業の売り上げとなる。これを提供側の勘定、商品勘定と呼ぶとすると、顧客勘定というのは「顧客ごとの売上」を記録したものだと考えれば良いだろう。もちろん売上だけでなく、顧客ごとにかかっている経費や利益なども計算することが出来る。端的にいえば企業活動を提供側ではなく、それを購入する顧客から構築し直す、これが顧客勘定の考え方だ。
売上を顧客側から考える・・ということ自体は、それほど珍しい考え方ではない。例えば売上の8割は2割の顧客からもたらされるという「パレートの法則」を知らない小売関係者はほぼいないといいだろうし、RMF分析も多くの小売業で採用されている。顧客をクラスター分析する、あるいはセグメント化して把握して、それぞれの嗜好に合わせてメールを送ったりクーポンを送る・・・といったことも、マーケティングオートメーションの世界では当たり前のように行われるようになった。
しかし、本書では「勘定」というだけであって、そういった顧客を”塊”として捉えることでは満足しない。9種類のセグメントに4つの特性/嗜好を掛け合わせた36種類の顧客クラスターを基本としつつ、必要であれば顧客ごとのローデータを分析して、売上拡大や利益向上のための施策立案を行なっている。
また、著者は実際に自分が組織をマネジメントした経験から、短期・中期・長期の管理を行うための「3つの帳票」という考え方を提示する。この帳票の考え方を取り入れることで、今月の売上に一喜一憂するだけでなく、半期や年度単位で自分達の取り組みが正しいかどうかを把握することが可能となるのだ。
例えば小売業であれば、商品ごとに売値と個数があり、それを全て合計したものが企業の売り上げとなる。これを提供側の勘定、商品勘定と呼ぶとすると、顧客勘定というのは「顧客ごとの売上」を記録したものだと考えれば良いだろう。もちろん売上だけでなく、顧客ごとにかかっている経費や利益なども計算することが出来る。端的にいえば企業活動を提供側ではなく、それを購入する顧客から構築し直す、これが顧客勘定の考え方だ。
売上を顧客側から考える・・ということ自体は、それほど珍しい考え方ではない。例えば売上の8割は2割の顧客からもたらされるという「パレートの法則」を知らない小売関係者はほぼいないといいだろうし、RMF分析も多くの小売業で採用されている。顧客をクラスター分析する、あるいはセグメント化して把握して、それぞれの嗜好に合わせてメールを送ったりクーポンを送る・・・といったことも、マーケティングオートメーションの世界では当たり前のように行われるようになった。
しかし、本書では「勘定」というだけであって、そういった顧客を”塊”として捉えることでは満足しない。9種類のセグメントに4つの特性/嗜好を掛け合わせた36種類の顧客クラスターを基本としつつ、必要であれば顧客ごとのローデータを分析して、売上拡大や利益向上のための施策立案を行なっている。
また、著者は実際に自分が組織をマネジメントした経験から、短期・中期・長期の管理を行うための「3つの帳票」という考え方を提示する。この帳票の考え方を取り入れることで、今月の売上に一喜一憂するだけでなく、半期や年度単位で自分達の取り組みが正しいかどうかを把握することが可能となるのだ。
本書で書かれたこと、書かれなかったこと
上記の他にも、本書では著者が組織マネジメントで活用した様々な手法や考え方、あるいはbeBit時代にその効果を訴えていた「顧客の状況を理解する」ことの重要性を取り上げる。巻末には実際に顧客勘定に近い考え方を用いている企業の事例も提供されている。ちなみに本書でちらっと取り上げられている禁煙アプリを開発しているCureAppのCEO佐竹さんはCEIBSの一つ後輩だ。思わぬところで自分の人生の点が繋がったようで嬉しくなってしまった。
本書では前田さんがこれまでのビジネスで学び、育み、実践してきた考え方が惜しげもなく提示されている。読みやすい構成もあり、マーケティングに当て感のある人であれば、数時間で本書を通読することが可能だろう。数十年の経験をわずか数時間で追体験できるのだから、随分とお得な本であることは間違いない。
しかし、一方で本書には当然のことながら「書かれていない」こともたくさん存在する。そして、その書かれていないことにこそ、著者のビジネスパーソンとしての真骨頂・・・あるいは「価値の出し方」が潜んでいると僕は感じている。
例えば著者がさらっと書いている顧客感情の考え方を実際に経営に活用とすれば、B2C企業では少なくとも数十万の顧客データを整備し、そこから洞察を抽出するということを行わなければならない。実際のデータはDBから引き抜いてくればすぐに使えるというものではないし、当然様々なノイズが含まれている。そのようなデータを整理し、日々更新し、実際の経営に使えるようにするためには執念に近い意思がなければならない。
また経営管理のための方法として提示されている帳票に関しても、一回であればあのデータを作ることはそれほど難しいことではないだろう。しかしそれを定期的に更新し、メンバー間で考え方を共有し、データに基づいた改善サイクルを回し続けるのは容易ではない。「データは整備されているが、それが報告以上の意味を持たない」企業も多いし、それと同じくらい「データなど使わずカンで物事を進めている」企業も多い。こういったありがちな罠にハマらずに、辛抱強く改善を続ける強い意思こそ、本書で書かれていない著者の一番の強みなのだ。
そこまでのオペレーションを自分にも組織にも植え付けるのは容易ではない。しかし、少なくとも本書はその方向性を指し示してくれる1冊であることは間違いない。
本書では前田さんがこれまでのビジネスで学び、育み、実践してきた考え方が惜しげもなく提示されている。読みやすい構成もあり、マーケティングに当て感のある人であれば、数時間で本書を通読することが可能だろう。数十年の経験をわずか数時間で追体験できるのだから、随分とお得な本であることは間違いない。
しかし、一方で本書には当然のことながら「書かれていない」こともたくさん存在する。そして、その書かれていないことにこそ、著者のビジネスパーソンとしての真骨頂・・・あるいは「価値の出し方」が潜んでいると僕は感じている。
例えば著者がさらっと書いている顧客感情の考え方を実際に経営に活用とすれば、B2C企業では少なくとも数十万の顧客データを整備し、そこから洞察を抽出するということを行わなければならない。実際のデータはDBから引き抜いてくればすぐに使えるというものではないし、当然様々なノイズが含まれている。そのようなデータを整理し、日々更新し、実際の経営に使えるようにするためには執念に近い意思がなければならない。
また経営管理のための方法として提示されている帳票に関しても、一回であればあのデータを作ることはそれほど難しいことではないだろう。しかしそれを定期的に更新し、メンバー間で考え方を共有し、データに基づいた改善サイクルを回し続けるのは容易ではない。「データは整備されているが、それが報告以上の意味を持たない」企業も多いし、それと同じくらい「データなど使わずカンで物事を進めている」企業も多い。こういったありがちな罠にハマらずに、辛抱強く改善を続ける強い意思こそ、本書で書かれていない著者の一番の強みなのだ。
そこまでのオペレーションを自分にも組織にも植え付けるのは容易ではない。しかし、少なくとも本書はその方向性を指し示してくれる1冊であることは間違いない。
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