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2021年11月

2021年11月29日 (月)

日本の伝統的大企業からお誘いがあった時のこと

現在の会社ではやるべきことが道半ば・・・というか20%ぐらいしか進んでいないので、今のところは転職活動ということは全く考えていない。しかし、一方でLinkedInで具体的に企業からのお誘いがあった場合には、必ず一回はお話を聞くようにしている(転職エージェントの仕込みの場合には、話を聞かないことが多い)。転職の面談から得られる情報というのは非常に多いし、世の中がどのように動いているかを判断する一つの材料になるからだ。

そういうわけで、9月の頭にとあるグローバルに展開している日系の兆円企業からお誘いを受けた際にも、お話を聞いてみることにした。流石にこの規模の会社になるとダイレクト・リクルーティングはやっておらず、エージェントからのお誘いだったのだが、企業名も案件内容も明確だったので、話を聞いてみることにしたのだ。
話を聞いてみると、もし自分が今の会社にいなければ非常に興味を持つようなテーマであったし、自分に声をかけたという理由も明確だった。転職に興味がないとはいえ、”プロフェッショナルとして断れないぐらいのオファー”が出たら、転職をする可能性が全くのゼロというわけではないということもり、とりあえず話を聞いてみることにした(例えば非現実的な話だが、年棒1億円で5年契約・・と言われたら、大いに心が動くだろう)。


エージェントの話によると、面接回数はなんと1回でいいらしい。それなりに重要なポジションという話だったのだが、1回でいいというのは随分あっさりした面接だなと思ったら、なんと初回から4人も参加されていて素直にびっくりした。しかもポジションの説明もそこそこに、これまでのキャリアやら職業観など色々な質問がされたので、流石大企業は違うな・・と感じてしまった。 
積極採用を掲げて今期50人近くを採用した我が社の場合、面接過程のうち7割ぐらいが”口説き”である。自分のような経験を持つ人は(少なくとも外形的には)あんまりいないので、もう少し丁寧に仕事内容を説明したり、ポジションの話をした方がいいんじゃないだろうか、と面接されている方が心配になってしまったくらいだ。
一応こちらの質問も受け付けてくれるのだが、数字の部分などは教えてくれないので、やりたいことの全体像が見えない。この辺りも自分が今いる会社の場合には、事前にNDAを結んでいるので結構積極的に開示しているのだが、進め方は違うらしい。

結局、1時間で面接が終了し、その後数日経って「合格だったのでオファーを出したい」という連絡をもらった。正確には違うポジションをやって欲しいので、もう一回説明の時間を挟んだ上で・・ということだった。この2回目の話では、もう少し事業の内容がわかりやすくなっていたので、1回目の面談終了後にエージェントに伝えた「よくわからなかった」というフィードバックに対応してくれたのかもしれない。


そういうわけで、オファーが出るということになったのだが、そこから先はかなり想像の斜め上をいく展開になった。まず、現在の収入(給与+ストックオプション)の給与は出せないので、有期雇用で給与が出せそうか検討します・・という連絡があった。収入は最初から伝えてあるのだから、そういう話は先に社内でして欲しかったな・・・。

次にオファーを出すために、現在の給与明細を提供してくださいという依頼が来た。念の為に今いる会社の人事に聞いたところ、決して珍しい話ではないらしい。しかし、自分にはさっぱり理由がわからなかったので、これはキッパリと拒否した。どうやら現職給与が伝えた通りの金額なのかを確認するのが主な目的らしいが、そもそも自分は面談の時に「オファー金額への希望は特にありません。このポジションでふさわしいと思う金額をオファーいただければ、それで検討します」と伝えていたので、現在の自分の給与はどうでもいいはずなのだ。・・・というか、最初のエージェント面談から給与は伝えているし。


そういうやりとりをして二週間ほどが経ったところ、エージェントから連絡があり「給与を出せなそうなので、オファーお見送る」とのことだった。集めた情報はどこにいってしまうのだろうか・・と一瞬思ったが、大した情報は渡していないので、流石に腹を立てる権利はないだろう。
話としてはこれでおしまいなのだが、個人としては今回のやりとりを通じて日本の伝統的企業は長い時間かけてさらに悪くなるっていくのだろう‥と、再確認をした気がする。

一つは給与レベルが想像以上に低いということ。今の自分は役員待遇とはいえスタートアップにいるということもあり、決して同じようなキャリアの中で飛び抜けて給料が高いわけではない。転職する時には給与をかなり下げたし、同様のキャリア・経験を持っている人間を採用しようとすれば、今の給与では採用することは難しいと思う。その人間に対して「通常の給与テーブルでは対応不可能」な上に、「有期雇用でもオファー不可能」となると、これはもう絶望的に採用が難しいと言うことになってしまう。別にお金が全て・・・とは言わないが、これからの日本の状況を考えると、お金は働ける今のうちに貯めておくに越したことはない。若いうちに飛び抜けた蓄財でもできていない限り、外資系でキャリアを積んだ人間を日本企業が採用することはほぼ不可能になってしまっている。


もう一つは、一度オファーを出すと言っておいて様々な情報を収集しておこうとしてから、あっさりと前言撤回をしてしまう日本企業の体質だ。自分だけでなく海外経験を持っている人間の多くは、契約には信頼関係が重要であることを肌感覚として知っている。もちろん契約書には日本企業よりもはるかにこだわりを持っているわけだが、それでもその根底にあるのは信頼関係なのだ。

今回のプロセスでは、その信頼関係を築こうという態度が全く見えなかった。何せ「オファーを出すから情報をよこせ」と言っておいて、「やっぱりオファーはしません」と一方的に連絡してきたのだ。こういう対応を行うというのは、ある部門だけではなく人事部やファイナンスなどのバックオフィスも、そういう対応をしても仕方ないと考えているということだろう。彼らのこの”人材獲得における信頼関係の重要さ”への鈍感さというのは、かなり絶望的だとも言っていいだろう。


素材や産業機器など日本企業でもまだ強い分野はあるが、これからサービスのデジタル化やソフトウェア化が進む中で優秀な人材獲得ができない組織は滑り落ちるようにポジションを下げていくだろう。今回連絡をくれた企業も、もう数え切れないくらい何度目かの「改革」の最中であるとメディアでは言われているが、少なくとも当該分野では復活は無理だろうと確信した。一消費者としても、今後購入することは2度とないだろう。

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