May 2024
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »

2022年3月

2022年3月18日 (金)

高層マンションは停電にメチャクチャ弱いことを再実感

昨日の夜(16日)、ちょうどそろそろ寝ようと思った23:30頃に、かなり大きな地震があった。自分は東日本大震災の時には日本にいなかったので東京がどのくらい揺れたかの比較はできないのだが、ネットを見ると同じくらい揺れたといっている人もいたのでかなり大きな揺れだったのだろう。自分はなぜか地震をあまり怖いと思うタイプではないので、結構長くゆれるな〜と軽く考えていた。

地震自体はおそらく1分ちょっとで終わったので、一応寝ていた妻を起こして一声かけてから寝ようと思ったところ、リビングの電気が「すう〜っ」という擬音が出そうな感じに消えてしまった。我が家は夏も冬も冷暖房の使い過ぎでブレーカーが落ちることがたまにあるので停電自体は珍しくないのだが、その時の消え方とはちょっと違う。ブレーカーを見に行ったところやはり全部綺麗に上がっていたので、マンション自体が停電したと言うことがわかった。もうパジャマだったが内廊下に出てみると、廊下も真っ暗でエレベーターも一機しか動いていない。やはりマンション全体で停電したようだ。
外はどうなっただろうか・・と見てみると、通りに面したビルやマンションは停電しているが、ちょっと遠いところにあるオフィスビルは普通に電気がついている。遠くに見える東京タワーも変わらず光っていたが、あれは自家発電かもしれない。・・・そう言うことを考えながら、Twitterを開くと都内の色々なところで停電しているらしい(電気が来ないので、テレビで情報を手に入れらないのだ)。

地震の影響で送電線が切れたとすると復旧までに時間がかかってしまうが、過負荷を避けるための系統からの切断であれば数時間で回復するだろうと思ったので、とりあえず家でおとなしくしていることにした。たまたまその晩は暖かいのでよかったものの、もし真冬だったらかなり辛いことになっただろう。・・・と呑気に構えていたのだが、時間が経つにつれて今回の件でタワマンは停電にメチャクチャ弱いことに気がついた。理由は大きく2つ。

1. 水が出ない
なんといってもこれが一番困るのだが、停電になると揚水ポンプが止まってしまうので水が出なくなってしまう。飲み水は備蓄があるので問題ないが、問題なのはトイレだ。我が家のように小さい子供がいる家では、トイレを長い間我慢すると言うのはなかなか難しい。自分のように中国での経験が長い人間は「いざとなればどっかでする(外で)」と割り切れるが、都会育ちの息子は多分そんなことは出来ない。

今回の場合は、停電したとわかった妻がすぐに簡易トイレを設置してくれたし、復旧までに2時間程度だったので実害はなかったのだが、トイレは思った以上に重要だと言うことを痛感した。


2. 上下移動がしづらい

停電するとテレビがつかないし、夜という時間もあって携帯もバッテリーが少なくなっていたので、情報を得るには管理人のところに行くのが一番早かった。ただ実際には、エレベーターが一機しかないと動かないということもあり、不測の事態(余震とか)のために家族から離れるのは得策ではないと思い、外に出ることはなかった。

今回のように数時間で復旧するのであれば問題はないが、停電が長くなり避難をしないとなると、この上下移動の不便さはジャブのように効いてくる。我が家はそもそも高いところが好きではないので中低層に住んでいるのだが、今回の地震と停電を受けて、改めて高層は停電リスクがお大きいことを再確認した。


こういったことは、防災の話で嫌というほど見ていたはずなのだが、実際に体感してみるまでは実感出来ない類の話でもある。我が家は今回の停電を受けて、大容量の非常用バッテリーを家に常備することに決めた。かなりの場所をとるし、定期的に充電をしないといけないという面倒さもあるが、今回の一件で「準備がないことこそがやばい」と言うことを家族で感じたのだった。

2022年3月15日 (火)

戦場としての世界(1) - アメリカはロシアをどう見ていたか-

昨日紹介した小泉先生の「現代ロシアの軍事戦略」は、日本における研究者が近年のロシアの振る舞いをどのように捉えているのかを知るのに役に立った。こういった研究が日本で主流になることはなかなかないかもしれないが、日本のように友好的とは言えない国家が近くにある状態では、実務的な平和研究(軍事研究)がアカデミックなポジションにあることは重要だと思う。

世界中を見渡してみると、平和に関する研究という名のもとに軍事研究をしている国は多くある。学問としてズバリ戦争学と言う名前がついているロンドン大学キングス・カレッジのような存在は珍しいが、国際関係論や地域政治論の一部として軍事研究が行われているのは特別なことではない。しかしなんといっても戦争研究に関して言えば、軍隊そのものが一番の研究現場となっているのは間違いない。

全世界で最大の軍備を持ち、かつ最大の軍事費を維持しているのはアメリカだ。その結果というべきか、あるいはそれゆえにというべきか、軍事や戦争に関する研究もアメリカでは大変力が入れて行っている。名門大学からののリクルーティングも積極的に行っているし、アメリカのアカデミアらしく、民間との共同研究も多くなされている。自分がかつて在籍していたSRI Internationalの最大のスポンサーであるDARPAも、広い意味では軍事研究に対して資金を出している組織であると言える。

本作の著者であるマクマスターは、米軍に20年以上在籍した軍人であると同時に文学修士号と軍事史の博士号というアカデミアとしての背景を持っている人間である。こういった人材がゴロゴロ・・・とは言えなくても、豊富にいるのがアメリカ軍の強さの一端であるのは間違いない。その彼が日本でも広く知られるようになったのは、軍の退役後にトランプ大統領時代の国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したからだ。任期はわずか1年程度であったとはいえ、長い軍歴を誇り、かつ政治にも関与したということで極めて特異な経験を持った人間であると言えるだろう。

その彼が補佐官辞任後に出版したのが本書だ。タイトルの通り、我々一般人が知らないところで繰り広げられている戦い(必ずしも軍事的なものだけではない)や、力と力の激突を描いている。長く現場で働いている彼のような人間にとっては、世界がどのように見えているのかを知るための貴重の一冊でもある。
本書は本文だけでも600ページを超える大部なので、読み切るのも容易ではない。そこで自分の学びも含めて、章ごとに簡単に感想を書いておこうと思う。


常に視線の先にはプーチンがいる

ロシアのウクライナへの侵攻を知ってからだと極めて示唆的だと感じるのだが、本書では最初の章をロシアに割いている。一般的には米中冷戦時代と言われて、アメリカにとって最も強敵となるのは中国だと考えがちだが、彼のような軍人から見るといまだに最も注意すべき対象はロシアであるということだ。

本書に書いてあるロシアの特徴、あるいは攻勢というのは昨日の記事で取り上げた"現代ロシアの軍事力"とほぼ一致している。端的に言えば、以下のような特徴にまとめられるだろう。

  • ロシアは通常戦力の劣勢をカバーするために核兵器を活用すると同時にサイバー空間での攻勢を強めている
  • 彼らの戦略は西側の結束、あるいはアメリカの分断を強めることに使われている。いわば、ロシアは「自分を強くする」のではなく、「相手を弱める」ことに力を注いでいる。
  • プーチンは長期的にロシアの勢力圏を復活させることを考えている。

一方で本書ではその視点が対象となるロシアだけではなく、それに対する西側にも向けられている。マクマスターによれば、ロシアにここまでの攻勢を許してしまったのは、彼らが優れているだけではなく、アメリカをはじめとする西側に傲慢と油断があったからだというのだ。既に軍と政治生活を引退しているという理由もあるだろうが、彼の批判はアメリカだけではなくヨーロッパに対しても向けられるし、国内においても共和党・民主党に関係なく向けられる。
彼のような軍事的な実務を大切にする人間からすると、トランプのようにインテリジェンス情報を重視しなかった大統領と、化学兵器を使用しても断固たる介入を行わなかったオバマ大統領は同じようにミスを犯したということになる。

本書の指摘で面白かったのは、西側のエスタブリッシュあるいは政治的リーダーがロシアに対して親しみを感じることがあり、それこそが過ちであることを指摘していることだ。マクマスターによれば、少なくともプーチンを筆頭とする現在のロシアの政治的トップは価値観を共有できる相手ではなく、そこには互いに異なる国益が存在しているのみなのだ。ここでいう価値観というのは民主主義といった政治的なものだけではなく、例えば第二次世界大戦で共通の敵としてドイツに戦ったというノスタルジーや、ソ連崩壊時にアメリカの援助で崩壊寸前の帝国を支えたという歴史観なども含まれる。

そのような厳しい指摘をする一方で、彼はそれでも少なくとも補佐官を務めている間には、より高いレベルで何らかの合意に至る努力を試みる。普通の人間であればそこまで敵を信じられないのであれば会話をすることすら難しいのではないかと思うのだが、戦場においてはそのような単純な判断は許されないということなのだろうか。

 

2022年3月14日 (月)

”現代ロシアの軍事戦略”(小泉悠)を読んで

2週間前に発生したロシアのウクライナへの侵攻は、文字通り世界の形を1日して変えてしまうインパクトがあった。この領域をしっかり見続けている人にとっては予想できる事態だったようだし、インテリジェンスの世界に親しい人にとっても”不意打ち”と呼べるような状況ではなかったようだが、自分も含めて一般人にとっては予想もしない出来事だった。

SNSが当たり前になってから、こういった社会性の強い出来事に対して訳知ったことを世界に発することがひどく簡単になった。誰でも自分の意見を述べることができるのは大切なことだし(そういうことが出来ない国はたくさんある)、何かいいたくなる気持ちもわかる。ただ、自分個人としては何も分かっていない状況で気持ちが先走った発言をするのは好きではないし、そうすべきではないとも思った。
むしろ、こういう自分ではほとんど何も出来ない時こそ、情報を咀嚼するために必要な知識を貯めることが必要なのだ。そういうわけで、今回の戦争が始まってから多くのメディアに出るようになった小泉さんの本を手に取ってみた。

ちなみに自分は小泉さん(先生と呼ぶべきだろう)が所属している東京大学先端科学技術研究センターの池内先生をTwitterで長くフォローしていることから、今回の戦争が始まる前から小泉先生のことは知っていた。2022年3月中旬ではしょっちゅうTwitterのアカウント名を変えているのでどう呼ぶべきかが難しいが、彼が長くイズムィコを名乗っていた時からのフォロワーだ。さらにいえば、彼は松戸市出身ということで自分と同郷でもある。彼が通っていた松戸国際高校は、かつての自宅からわずか2kmちょっとという距離にあった、まさにご近所さんだ。


ロシアの軍事力の変遷とその戦略思想

本作は「ロシアの軍事力を(本人曰く)軍事オタクの観点」から分析したものになる。もちろんこの「軍事オタク」というのは謙遜ではあるが、本人の興味や志向を表してもいるだろう。小泉先生はその分析を、ウクライナ危機(今回のではなく2014年の紛争)から始めて、やがて現代ロシアの軍事戦略全体を描き出す。

第1章: ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
第2章: 現代ロシアの軍事思想 - 「ハイブリッド戦争」論を再検討する
第3章: ロシアの介入と軍事力行使の実際
第4章: ロシアが備える未来の戦争
第5章: 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略

本作がカバーする内容は基礎的なものとはいえ、多岐にわたっているので理解するのは簡単ではない。専門用語も頻繁に出てくるし、ロシアという国に対して何らかのイメージがないと理解が難しいと感じる部分もある。とはいえ、自分は過去の数冊ほどロシアに関連する国際政治の本を読んだことがある人間なので、本書がイメージする一般読者とほぼおなじ程度の前提知識しかないと言えると思う。その自分が、本書を読んで理解した要素を簡単にまとめてみよう。

  • ロシアはそのイメージと異なり、通常戦力は決して強くない
    自分のようにまだ冷戦があった時代に生まれた人間にとっては、ソ連とロシアというのは軍事大国というイメージがあるかもしれない。しかしそのイメージとは裏腹に、実際のロシアの通常戦力はそれほど強力ではない。それは軍事能力を支える経済規模が驚くほど小さいからだ。現代のハイテクを活用した軍事領域では、資本力はそのまま戦力に直結するのだ。

  • ロシアを特別な存在とするのは核の存在
    決して通常戦力に恵まれているとはいえないロシアを独自の存在としているのは、ソ連から引きつぎ、その後も資金を投じていた核兵器である。特にロシアは戦術核兵器を実戦に利用することを想定した訓練を行なっており、核を単なる抑止力を生み出す神輿ではなく、実際的な兵器であると捉えている。

  • ロシアはサイバーや宇宙空間における争いといった「ハイブリッド戦争」に力を割いている
    通常戦略での劣勢をカバーするためにロシアはサイバー空間における情報戦や、宇宙空間における衛星の利用の阻害、PMCなどの非正規軍などを活用したハイブリッド戦争を戦うことをその戦略に組み込んでいる。特にプロパガンダやSNSなどを使った情報戦はロシアにとって大きな武器となっており、さまざまな方法を用いて日常的に攻撃(ロシアからみると、西側の攻撃への対抗)を行なっている。

  • 戦争の物理的な勝利ではなく、状況をコントロールすることを目的とする
    戦略核兵器を撃ち合うような最終戦争を意図することは出来ないロシアは、物理的に相手を屈服させるような戦争における勝利を目指してはおらず、自分たちが状況をコントロールすることが可能な状態を目指している。これはエスカレーション抑止という考え方に反映されている一方で、絶え間ない闘争状態が続くことを意味している。

  • ロシアの目的は大国としての勢力圏の維持
    ロシアは既存の国際秩序の中で役割を担うのではなく、自ら国際秩序を生み出しコントロールすることが可能となる「大国」であることを目標としている。そのためには、特にかつてはソ連の一部であった東欧を、自らの勢力圏とすることが重要であると考えている。また東欧を自らの勢力圏としておくことは、ロシアの首都を含めて主要都市の戦略縦深を確保するためにも重要である。


今回の戦争に見る戦略の不整合

2022年のロシアによるウクライナへの侵攻というのは、国際法上も倫理的にも許されない暴挙であることは言うまでもない。全世界・・ということは難しくても、大多数の国がロシアへの制裁を支持しているのも、この行動が既存の国際秩序を破壊するということを理解しているからだろう。

一方で本書を読んでみると、今回の戦争が筆者がこれまで想定していたロシア軍の戦略からやや外れているように見えるというのも事実だ。本書でも記載されているように、ロシアにとってウクライナは自国の勢力圏であるべきであり、NATOへの加盟というのは許されないものであったのだろう。しかし、そういった国家政策の方向性(プーチンの意思も含めて政策の方向性と呼んでいる)と、軍事戦略というのは別に議論されるべきでもある。

(もしかしたらロシアという国は機会主義の面もあるかもしれないが)これまでのところ、少なくともウクライナへの侵攻というのは、とても状況をコントロールしているとは言い難いものがある。その兵力の違いからロシアが圧倒的に優勢であるとはいえ、おそらく想定されていたスピードではウクライナへの侵攻は進んでいないし、結果的に東欧の国家群がロシアへの警戒心を飛躍的に高めることになってしまっている。

また、彼らが得意であるとされているハイブリッド戦争も、今回の侵攻では十分に発揮されているとは言い難い。本書でも繰り返し触れられているように、戦争というのは最終的には意思のぶつかり合いであり、兵力・暴力が用いられることは間違いない。しかし、今回の戦争では例えばウクライナ国内の反政府組織を活用したり、サイバー攻撃が十分に効果を発揮したという事実は見られていない。むしろ、今回の侵攻は古典的な暴力がむき出しになった戦争だと見られている。


こういったこれまでの戦略との凸凹の整合性/非整合性は、おそらく世界中の研究者が同時進行的に分析を進めていることだろう。もしかしたら、巷間言われているように、そこにはプーチンという個性やその情報収集のメカニズムが極めて強く影響をしたのかもしれない。何れにしても、まさに展開されている悲劇を1日でも早く止めるということと同時に、何故にこのような意思決定に至ったのかを分析することは、”次の戦争"を防ぐためには必須なのだろうと感じる。

« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »