スタートアップ雇われ役員が感じる信託SOの税制判断と影響(その1)
先週末に日経新聞に信託型SOに関する税制判断の記事が載っていた。世の中のほとんどの人にとってはどうでもいい話なんだけど、自分も片隅にいるスタートアップ界隈ではかなり話題になった記事だった。
株式報酬で税負担増も、税率最大55%に 国税庁が見解(日本経済新聞)
ここで話題にされているのはいわゆる信託型SOというスキームで、これまでも税制的にはグレーとされていたものだった。日本のストックオプション制度というのは付与する側の会社側の問題や制度の不備もあってあまり使いやすいとは思えないのだが、一応は「税制適格型」と呼ばれる形や「有償SO」と呼ばれるスキームが存在する。この信託SO型はこれらの形では答えられないニーズに応える・・という形で生み出されたものだ。
信託型SOの最大のポイントは「配布対象を事前に決定せずに、上場後にポイントの形で配布可能となる」という点にある。SOは大体の企業で発行上限の割合が決まっている。その割合の中で社員に不満のないように配布をするというのが重要なのだが、これはそんなに簡単なことではない。一般的には立ち上げ期からいる人がより多くもらえるようにするのだが、「立ち上げ期からいる人」と「上場に重要な人物」が必ずしも同じであるとは限らない。また、上場に向かってはバックオフィスのリーダーに経験のある人を迎えたいという企業は多く、その人向けのSOを残しておくということもしなければならない。
信託型SOはそういったSO配布の問題を「後から」解決できる方法として、多くの会社で採用されている。今回はその信託型SOを「給与扱い」にするということが示されて、スタートアップコミュニティでは話題になっていた。これまではSOはあくまで金融所得扱いだったので、一律で税金は20%だったのだが、これが給与扱いだとすると55%になる。この差は大きい。しかも、すでに配布及び売却をした企業・個人は「遡及して」納税が必要になるとのこと。これはかなりダメージがある。
個人的には、信託型についてはSOという思想からはかなり外れているために、あまり好きではなかったし、給与(というよりも賞与)扱いと言われれば、その運用上は否定は難しいと思っている。また雇用される側から見ても、信託型SOのポイント設定もかなり経営陣が恣意的に決められる上に、上場に向けての貢献度を一元的な指標に落とし込むのは難しいため、どうしてもそこには不透明さが残る。契約書内に最低条件として記載されている方が、優秀な人材がスタートアップコミュニティに流れ込むには良いと思うのだ。
・・・とここまでを書き終わったところで、税制適格SOの評価額についての見解発表があり、話題はそっちに移ってしまった。こちらについても備忘録がわりに記録しておこうと思う(続く)
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