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2024年2月

2024年2月28日 (水)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第9章(ファイナンスの基本的な分析手法)

第8章「貯蓄、投資と金融システム」では、家計と企業をつなぐ金融システムの基本的な考え方を学んだ。本章ではその金融システムがどのように投資の意思決定を行っているのかについての基本的な考え方を学ぶ。 現実の世界では投資を行うのは必ずしも企業だけではなく、家計も常に何らかの金融的に決定を行っているが、モデル化されたこの世界では、まず企業が投資意志決定の主催者であると仮定しているのだ。

マンキュー経済学 マクロ経済 第9章: ファイナンスの基本的な分析手法

”ファイナンス”という単語を聞くと、どうしても日本語では「財務」 という言葉を当てたくなる。ちょうど経理が”アカウンティング”と英語で呼ばれているのと対比しての理解だ。
まず本章ではこのファイナンス(Finance)という単語の誤解について説明がされている。マンキューによれば、ファイナンス(Finance)とは” 人々が時間を通じて資源を配分しリスクをコントロールするにあたって、どのように意思決定を行うかを研究する学問”である。この定義を見ればわかる通りファイナンスと言う語源そのものは「財務活動」とは関係がない。あくまで異なる時間軸上で、どのように資源を配分しリスクをコントロールするかを研究するのがファイナンスなのだ。このように書くと一般的なファイナンスの概念と言うのは、かなり狭い領域にとしてということがわかる(この定義を学生時代に知っていたら、もっと楽しくファイナンスを勉強できたんではないかと思う)。


● 現在価値(時間価値を測る)⚫️

このセクションでは、いわゆる割引率を用いた「現在価値」と「将来価値」の考え方を学ぶ・・・のだが、 さすがにこの辺はビジネススクールで学んだ内容をしっかり覚えているのでノートは省略。ある資産が二倍になるまでに必要な年月は70/x(xは利子率)というところは実用的で面白い。

 

● リスク管理⚫️

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このセクションではまず基本的な前提として人間はリスク回避的な存在であるとする。これは行動経済学などでも明らかになっていることだが、経済学的に言えば効用関数が凸型をしているということだ(あるいはlog型関数と言ってもいい)。効用関数がこの形である場合、ある地点Xから正負それぞれの絶対値が等しいα移動した場合には、|X-α| > |X+α|が常に成り立つ。

人間はこのリスクを回避するための知恵として、保険という考え方を進化させてきた。この保険というのは本質的には「リスクを低減させる」のではなく、「リスクを分散する」ということに意味がある。
例えば火災保険は「火事にあうリスク」を低減してはくれないが、 実際に価値が発生した場合の負担を軽減してくれる。なので、多くの火災保険では多くの人が一斉に火事の被害に合う可能性がある地震による家事は免責事項となっているのだ。

この考え方は 投資行動にも適用することができ、例えば株式を購入する場合には、多くの会社の株式を購入すれば、それだけポートフォリオの リスクを軽減することができる。ただし、それでも市場リスクと呼ばれるすべての企業が等しく負うリスクを軽減することはできない(例えばコロナによる経済活動のスローダウンが良い例だ)。


● 資産評価⚫️

この辺りはいかにもアメリカの教科書という感じなのだが、このセクションでは資産評価の方法、もっと言えば株式価値の評価方法についても触れている。資産評価においては多様な考え方があるので、この章では多くは触れられていないが基本的な考え方として「ファンダメンタル分析」の考え方が触れられている。

また、株式市場における価値評価の方法において重要な考え方である。効率市場仮説についても説明がある。この効率市場仮説と言うのは一言で言ってしまえば、株価はその瞬間に利用可能なすべての情報を反映していると言う考え方である。利用可能なすべての情報が株価に反映されているのだから、効率市場仮説を正とするのであれば、 市場に対して有利なポジションを取る事は誰もできない。結果として、株価は確率的な動きをするはずであり、この考え方に沿った株価の動きをランダムウォークと呼ぶ。

一方で、 現実には市場は非効率であり時には投機的バブルと呼ばれるように「買いが買いをよぶ」という状況を生み出す。 少しそのような状況もいつまでも続くわけではないことは自明であり、歴史上これまでも何度となくバブルは弾けてきた。 言い換えれば、市場は完全に効率ではないが、一方で完全に非効率なわけでもないと言うのがマンキューの述べるところなのだ。

2024年2月25日 (日)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第8章(貯蓄、投資と金融システム)

第7章「生産と成長」では、家計における貯蓄が投資に回ることによって経済が成長するという議論が展開された。本章ではその議論における疑問点である”貯蓄はどのような経路で投資に向かうのか“に関して学ぶことになる。そしてその経路において重要な役割を担うのが、金融システムである。

マンキュー経済学 マクロ経済 第8章: 貯蓄、投資と金融システム

本章ではまず金融システムを学ぶためのとっかかりとして、アメリカにおける金融システムの紹介からスタートする(本書は当初はアメリカの学生に向けて書かれたのだから当然だろう)。日本の読者にとっては必ずしも必要な情報とはいえないので、ここでは金融市場において代表的なものとして「債権市場」と「株式市場」の2つがあるということを把握しておけば良いと思う。
ただここでサラッと実務上の基礎知識として重要なこととして、以下の2点が書かれていることは記録しておきたい。

  1. 債権市場においては、長期債の方がリスクが高く、その結果として利子率が高く設定される
  2. アメリカの株式市場の典型的なPERは15となる。


● 国民所得勘定における貯蓄と投資 ●

このセクションでは貯蓄と投資の関係を学ぶにあたって、閉鎖経済における国内総生産の恒等式を用いる。

まず、閉鎖経済においては以下の恒等式が常に成り立つ。
 Y = C + I + G  (Y:GDP, C:消費, I:投資, G:政府支出)

この式を変形して投資のみを右辺におくと、以下の関係が成り立つ。
 Y - C - G = I
左辺は国民所得から消費と政府支出を引いたものだから、貯蓄(S)とみなすことが出来て、次のように変形できる。
 S = I (貯蓄と投資は一致する)

次に国民貯蓄(S)の意味をより深く理解するために、税金から社会保障などの”移転支払”を差し引いたものをTとおく。このTは定義から、”政府が支出に利用することが出来る額”ということが出来る。ここでTを用いた、国民貯蓄(S)を変形してみよう。

 S = Y - C - G
      = (Y - T - C) + (T - G)

右辺の第一項は民間貯蓄と呼び、「家計から税金Tを支払い消費をした後の額」を意味する(Tは税金から移転支払を引いたものであるので、いわば真水の税金と言える)。また第二項は政府貯蓄とよび、「(真水の)税収から政府支出を引いた額」になる。もしT-Gが正であれば財政黒字であり、負であれば財政赤字だ。

上記の式の変形から、貯蓄と投資の関係においては以下の2つをいうことができる。

  1. 経済全体においては貯蓄と投資の金額は等しくなる。
  2. 貯蓄は民間貯蓄と政府貯蓄の二つに分けることが可能である。

● 貸付資金市場 ●

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上で書いたように貯蓄が投資に回るためには、何らかの仕組み(システム)が必要になる。この仕組みを単純化して説明するために、このセクションでは貸付資金市場という概念を導入する。この市場では全ての預金者がこの市場に貯蓄を提供し、全ての借り手はこの市場で資金を借り入れる。

ここで資金の需要量と供給量を決定するのは、利子率となる。ちょうど市場においては価格がシグナルとなったように、この資金市場では利子率が価格と同じ役割を果たすのだ。そして政府がとる政策は、この資金需要曲線、あるいは供給曲線をシフトさせる効果がある。

この曲線のシフトは 市場におけるシフトと考え方は同じなので再度記載はしない。ただ面白かったのは政府の財政赤字と財政黒字の考え方だ。

前のセクションで見た恒等式からは、 財政赤字は政府貯蓄のマイナスを意味するので、左辺である国民貯蓄も減少する。 つまり財政赤字は供給曲線を左にシフトする効果があり、資金需要は低下し、利子率が増加する結果を生む。
この効果は言い換えれば「 本来は民間に回るはずだった資金を政府が吸収してしまった」ということを意味しており、経済学の用語ではクラウディング・アウトと呼ぶ。 この効果は政府貯蓄の減少によってもたらされるので、減税にによっても生じることとなる。


本書ではこの部分で日本の財政赤字のグラフと米国の財政赤字のグラフが載せられているのだが、一貫して財政赤字が増加し続ける日本と言う国にいるとこの議論はかなり新鮮に感じる。 日本では失われた30年と言われているが、この単純化したモデルからだけ考えれば、景気対策のために行った財政赤字が結果として投資の減少をうみ、成長率を抑えていたことになる。
もちろん実際の経済においては財政政策だけではなく金融政策を組み合わせて行っているのでこのような単純な結論を導くことができないであろうと思うただこういった式を学ばなければ、財政赤字と景気の関係などを考えることもなかったわけで、ようやくマクロ経済学が面白いと感じられるようになってきた。

 

2024年2月23日 (金)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第7章(生産と成長)

第6章「国民の生活費」に続いて、一国の成長に関する基本的な知識を学ぶ。マクロ経済学は究極的には「長期の成長と短期の不景気の循環(サイクル)の理由を説明する」ことが目的であるとマンキューは定義しており、そのためにはまず成長をもたらす要因を探る必要がある。

マンキュー経済学 マクロ経済 第6章: 生産と成長

● 生産性の決定要因 ●

一国の経済的な厚生(あるいは単純に国民の所得)を決定するのは、一人当たりの生産性だ。閉じたモデルを考えれば、一国の消費は全て自国内で生産されたものであり、消費が多いということは生産が多いということを意味している。
そしてこの生産性を決定するのは、大きく分けると4つの要因となる。

  1. 物的資本: 過去に生産された資本のうち、再度生産に回される資本
  2. 人的資本: こちらは人間に関する資本だが、過去に教育などにより生産されている
  3. 天然資源:
  4. 技術知識: 人的資本との区別に注意(技術知識は社会全体の教科書のようなもの・・と説明がある)

● 経済成長と公共政策 ●

上記のように、一国の経済レベルは一人当たりの生産性によって決定されるとすると、政府は政策により経済成長を実現しようとするのであれば、一人当たりの生産性を向上させることが必要になってくる。本章ではこの「生産性を向上させるための政策」の代表的なものが挙げれている。

  • 貯蓄と投資: 貯蓄により生産材への投資が増えることで、資本ストック(物的資本)が増加し、その結果として生産性が向上する。ただしこの生産性の向上は、生産材が増加するにつれて増加率が減っていく。これを限界生産力逓減と呼ぶ(数学的に言えば、微分した際の傾きが小さくなっていくということ)
  • 外国からの投資: 対外直接投資であれ、対外証券投資であれ、海外からの投資は上と同じく資本ストックの増加をもたらし、生産性を向上させることもある(必ずするわけではない)
  • 教育: 人的資本の増加
  • 健康と栄養: 同じく人的資本の増加を結果としてもたらす
  • 所有権と政治安定性: 自分の財産が取り上げられるかもしれないような環境で、誰が労働をするだろうか?
  • 自由貿易: 内向き政策は長期的には国の生産性を下げる
  • 研究開発: 技術知識の向上をもたらす
  • 人口成長: これは+と-の効果があるため、一概には成長に寄与するとは言えないところがある

「所有権と政治的安定性」「自由貿易」の2つは、最近の中国経済を見ていてもなんとなく理解できるところがある。ただし中国の場合は、今は経済成長を第一の目標としているわけではないだろうし、まだ国内市場が十分に大きいことから、おそらく今の成長のスピードダウンは織り込み済みなのだろう。

2024年2月13日 (火)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第6章(生活費の測定)

第5章で「国民所得」の測定について記述がされたことを受けて、この第6章ではより詳細な情報である「生活費」の測定方法の紹介が行われる。経済学が究極的には国民(あるいは人類)の厚生を高めることを一つの目標とするのであれば、人間にとって重要な指標となる生活費について、正しく理解することが重要だということだろう。同時に一章を割くということは、それだけ生活費という身近な要素をしっかりと測定することは難しいということも意味している。


マンキュー経済学 マクロ経済 第6章: 生活費の測定


● 消費者物価指数(CPI)

消費者物価指数は、消費者が購入する財・サービスの総合的な費用を計測することを目的としている。消費者は日々色々なモノ・サービスを購入しているし、その購入する内容は変わっていく。そのため、CPIの計測の際には基準となる財の組み合わせ(バスケット)を設定する必要がある。
一旦このバスケットが設定されれば、そのバスケットに含まれる財とサービスを購入するための費用を計算し、基準年と比較することで(あるいは前年と比較することで)インフレ率の計算を行うことができるというわけだ。

この消費者物価指数(CPI)と似たような概念として、コアCPIと生産者物価指数(PPI)という概念も紹介されている。

コアCPI: CPIから食料とエネルギーを除いたもの。食料とエネルギーに関する費用は短期的に変動が大きいのが理由。
生産者物価指数(PPI): 消費者ではなく企業が購入する財・サービスのバスケットの費用を測るもの


● 生活費測定の問題

消費者物価指数(CPI)を測定するにあたっては、いくつかの問題が存在する。この章ではそのうちの技術的ではない、原理的に内在する問題をいくつか提示している。

その一つ目が代替バイアスだ。これはある財の価格が変化した時に、消費者は代替的なモノやサービスの購入を変化させるという行動を指している。CPIはバスケットを設定しているため、もし代替財の購入が量が変化すると、実際の生活費を正しく評価することが出来なくなる(過大に評価してしまう)。
二つ目が新しい財の導入による価値変化だ。技術発展などにより新しい財が導入されると、消費者は選択肢が増える、あるいは単に新しい財の機能や価値により、同じだけの厚生を得るための価格が下がる。本書ではiPodの例が上がっているが、例えば動画配信サービスなどはその際たるものだろう。
三つ目はそもそも測定できな品質の変化をどのように考慮するかだ。本書では例としてガソリンの燃費が上げられているが、燃費が向上すれば同量のガソリンでも得られる厚生(距離)は増加する。

上記を見れば明らかな通り、消費者物価指数を計算する際には単に機械的に計算を行うだけではなく、消費者が得る厚生(economics welfare)を考慮することが重要になるということだ。言い換えれば技術革新により1ドルあたりのeconomics welfareが向上すれば、それだけでも人間は”体感的には”豊かになったということが出来るということだ。

● GDPデフレーターとCPI

これまでの章で学んできたGDPデフレーターとCPIは、その計算式を見れば似たような概念を測定しているように見えるが、その計測する対象(行為)が大きく異なっている。

GPD  デフレーター: 国内で生産される財とサービスの価格
CPI: 消費者によって消費される財とサービスの価格

 

● インフレ影響と変数の補正

CPIが変動する(多くの場合は+の値をとる)ということは、ある異なる時点での貨幣価値も異なるということを意味する。この「貨幣価値」の比較を行うためには、以下のような計算式により計算を行うことが可能となる。

現在の貨幣価値 = T年の貨幣価値 × (現在の物価水準/T年の物価水準)

この貨幣価値の違い(インフレ率)に合わせて給与や支払いが変わる制度のことを、物価スライド制と呼ぶ。インフレ率に合わせて、給付水準をずらす(スライドさせる)ことから、この名前がついたのであろう。


● 実質利子率と名目利子率

最後にこれらの考え方の派生の一つとして、本章では利子率に注目する。
利子率とは文字通り銀行に預金することによって得られる利子の割合だが、仮に貨幣価値が下落しているとすると、得られた利子の価値(厚生)を測ることが出来ない。そこでインフレ率を考慮しない利子率を名目利子率とよび、インフレ率を考慮した利子率を実質利子率と呼び、近似式として以下の式が成り立つ。

実質利子率 = 名目利子率 - インフレ率

 

 

2024年2月12日 (月)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第5章

マンキューによる「経済学のイントロダクション」は第4章で終わり、この章からはいよいよタイトルにもあるとおりマクロ経済学の内容に入ってくる。人間を含む経済主体の意思決定を扱うミクロ経済とは異なり、マクロ経済は一国の経済全体を扱うのがカバー範囲になるので、マクロ経済学を取り扱う最初の章は国民所得という概念からスタートする。

マンキュー経済学 マクロ経済 第5章: 国民所得の測定

● 国内総生産の測定

本章では国内総生産(GDP)の概念について詳しく説明が行われるが、その前提として一国の経済においては「所得」と「支出」が同値になるということが説明される。これはイントロダクションのモデル図でも説明されたように、最終的に家計と経済主体(企業)の間での財とサービス、および支払いは一致するからだ。

その前提を踏まえた上で、本書ではGDPの定義を以下のように説明する(本当は映画があった方がより厳密になったと思うのだが、教科書内には英語での説明はなかった)。

GDPは、一定期間において、一国内で生産される全ての最終的な財・サービスの市場価値である。

上記を提示した上で、本書では「市場価値である」「一定期間において」「一国内で」「生産される」「全ての」「最終的な」「財・サービスの」の意味をより正確に説明していく。この辺りの説明はこのエントリーには書いておかないが、特に重要なのは「最終的な」であると、個人的には感じられた。
この「最終的な」というのは中間財を含まないということであり、統計上は中間財は計算から除外をしなければならないということを意味している。なんとなく実務上のイメージが湧かないのだが、一体どうやって計算を行っているのだろうか・・。

 

● GDPの構成要素

GDPをYで表すとすると、GDPは以下の恒等式により記述される。

Y = C + I + G + NX

C:消費(ただし住宅購入は除く)
I:投資 (住宅購入はこちらに含まれる、また在庫もこちらに入る)
G: 政府支出(年金などの財・サービスの生産を含まないものは、移転支払とカテゴリーされる)
NX:純輸出


● 名目GDPと実質GDP

この辺りはMBAでも勉強しているところなので、さらりと流して進むことができた。簡単に言えば名目GDPはインフレ率を考慮しない場合のGDPであり、実質GDPはインフレ率を考慮した場合のGDPとなる。財・サービスの生産という観点からは、当然実質GDPの方が重要になる。名目GDPだけを考えれば、極端に言えば生産能力が全く変わらない場合でも、貨幣価値が下がるだけでGDPは増加してしまうからだ。

・・・とここまで書いていた思ったのだが、実質GDPの方が重要であるというのであれば、なぜ経済を成長させるためにはマイルドなインフレの方が良いのであろうか。おそらく本書ではその辺りのこともちゃんと後の方で説明してくれると思うのだが、一応自分の備忘録として書いておこう。

2024年2月 9日 (金)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第4章

第3章まで続いてきたイントロダクションもこの第4章で終了となる。「市場における需要と供給の作用」とタイトルがあるように、この章では日本で経済学を学ぶのであれば最初の方に出てくること間違いなしの、需要曲線と供給曲線について学ぶ章となる。さすがにこのあたりは大学時代に学んだことを覚えていたということもあり、あっさりと流していこう。ただおそらく経済学をしっかり学ぼうとする人間には、ここで出てくる概念は重要になる。

マンキュー経済学 マクロ経済 第4章: 市場における需要と供給の作用

● 市場と競争 

経済学における「市場」の概念は、ほぼ一般の理解と変わらないと思われる。ただし経済学の場合では、いわゆるメルカートのようにたくさんの種類を扱っているものを「市場」と呼ぶのではなく、一つ一つの財とサービスごとに市場があると考える。そしてこの前提の上で、競争市場という概念が重要になってくる。競争市場とは一人の売り手/買い手が価格に影響を与えることが出来ない市場のことだ。

この概念をさらに厳しくしたものが完全競争市場で、完全競争市場が成り立つためには2つの条件が成立していなければならない。

  1. 全ての財は全く同じである(差別化要素は全くない)
  2. 市場価格を決めるプレイヤーは存在せず、全てのプレイヤーは決められた価格を受け入れている。

一般的なビジネスをしていると、こんな市場は存在しないよ・・と思ってしまうところだが、本書では小麦の例を挙げている。小麦市場はほぼ単一の財を扱っており、小麦の価格を決めることができるプレイヤーは存在しない(実際にはXX産小麦みたいなブランドは存在するが)。

もちろんこの完全競争市場の反対の極地にあるのが、独占市場ということになる。

需要と供給

ここは流石に慣れ親しんだ概念なので、さらっと箇条書きにしておこう(経済学を専門にしている人には怒られそうだが)。

  • 価格の上昇に対して、需要/供給が減る/増えることをそれぞれ需要/供給法則と呼ぶ。
  • 価格と需要/供給の関係をグラフ化したものを、需要/供給曲線と呼ぶ。
  • 需要/供給曲線は、価格以外のさまざまな要因により動く(シフト)する。

需要と供給を組み合わせる

需要曲線と供給曲線が交わる点は均衡(equilibrium)と呼ばれ、市場における需要と供給が満たされた状態にある。この状態から、価格が変動すると需要と供給は変化するが、常に超過需要/供給や不足が発生しているため、自然と(誰が操作することなく)価格が変化し、需要と供給は一致するのだ。

この均衡点は需要/供給曲線がシフトすると当然変化する。経済学の概念においては、「需要/供給曲線上の移動」と「需要/供給曲線のシフト」を区別することが重要である。
また最も重要なことは、繰り返しになるが価格を唯一のシグナルとして、市場においては需要と供給が自ずから一致するということだ。結局のところこの効果が経済学の十大原理の一つである”通常、市場は経済活動を組織する良策である”を導くのである。

2024年2月 5日 (月)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第3章

第1章・第2章に続いてイントロダクションと位置付けられている第3章では、「相互依存と交易(貿易)からの利益」というタイトルが付けられている。この章ではこのタイトルの通り、第1章で提示された十大原理の一つ”交易(取引)は全ての人々をより豊かにする"について詳細を説明している。少しずつ日本人がイメージする経済学っぽくなってきた。

マンキュー経済学 マクロ経済 第3章: 相互依存と交易(貿易)からの利益

●単純なモデルによる説明

本章では交易(取引)により取引に参加する人々が豊かになるという命題を示すために、まず2人の取引主体者が2つの財を生産しているというモデルを考える。ここで重要になるのが、第2章で出てきた生産可能性フロンティアの概念で、2人の主体者は個別の生産可能性フロンティアを持っている。

ここでもし2人が個別に生産活動と消費活動を行おうとすると、効率を最大化した場合には、2人の生産量(消費量)は線上のどこかの天になる。しかし2人は交易を行うことで、この線上の外側(原点とは反対側)の点を選べるようになるのだ。これはそれぞれの主体者の機会費用が異なるからだ。もっと言えば、得意なことが違うので、得意な方に特化したほうがよりリソース(この場合は時間)を有効に使えるのだ。

比較優位の考え方の導入

ここで当然出てくる疑問が、主体者AとBを比較した場合にAが2つの財を作る時に両方とも得意であっても、この取引による効果は発揮されるのか?ということだ。例えばAが1時間あたりにジャガイモを10トン・肉を5トン作れる時に、Bがそれぞれ8トンと2トンしか作れないとすると、Aの方が両方で得意ということになる。

経済学ではまずこの2人を比較するのに絶対優位という概念を導入する。これはある財を作る時により投入量(リソース)が少ない場合に絶対優位があると定義するもので、上の例でいえばAはジャガイモでも肉でも絶対優位にあるということが出来る。

ここで問題はAが両方の財の生産において絶対優位であるとした時に、交易はAにとっても有益であるか?という問いに置き換えられる。そして、答えは(当然ではあるが)有益なのだ。それは絶対優位ではあっても、機会費用がAとBでは異なるからだ。
上の場合にAはジャガイモ10トンを作るのに、肉5トンを諦めなければならない。言い換えると、ジャガイモ1トンの機会費用は肉1/2トンだ。一方でBはジャガイモ1トンを作るのに、肉2/8=0.25トンを諦めなければならない。つまりジャガイモ1トンあたりの機会費用はAの方が大きい。この時Bはジャガイモ生産において比較優位にあるということが出来る。

このような時に、AとBは比較優位にある財の生産により注力し、交易を行うことで全体の生産数を増やすことが出来る。ただし生産総数が増えたとしても交換が適切に行わなければ両者が利益を得ることは出来ない。この両者が利益を得ることが出来る値段は両者の機会費用の間になる・・というのが本章で述べられている。

 

文字で書くとわかりづらいのだが、実際の教科書では表が提示されているので理解をするのはそれほど難しくない。ただこのエントリーを書くために少し数値を変更してみたところ、頭の中だけではうまく整理が出来ず自分で表を作ってみないといけなかった。
この程度のものでもやはり手を動かすのと、頭の中だけで考えるのでは全然理解度が違ってくるわけで、そう考えるとこのエントリーを作るのも決して無駄ではなかったと妙に満足してしまったのだった。

2024年2月 3日 (土)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第2章

第1章の経済学の十大原理に引き続きイントロダクションと位置付けられている第2章には”経済学者らしく考える”というタイトルが付けられている。自然科学ではない経済学という領域において、学問として経済を研究するとはどのようなことを行うのか・・ということを紹介するのが、この第2章の目的なのだろう。


マンキュー経済学 マクロ経済 第2章

この章は「経済学者とは何か」あるいは、「経済学者はどのように考えるかのか?」といったテーマを取り上げているため、ややエッセイ風の章となっており、章全体として大きな流れがあるわけではない。なので、内容をまとめるのもどうしてもテーマ別の記載になってしまう。


● 科学者としての経済学者

自然科学ではないとはいえ、経済学は「科学である」というのが、まず本章でマンキューが伝えたいことだ。ここでいう科学的というのは、観察をして、理論をたて、その理論の正しさを検証するという一連のサイクルが回るということを意味している。ただし、経済学は自然科学とは異なり実験を行うことが難しい場合が多いため、過去のデータを用いた検証が多くなる。
また自然科学(特に物理学)がそうであるように、理論を検証するために様々な仮定をおき、観察する事象をシンプルにする。これにより検証しようとする理論はモデルとして記述される。本章ではその例として「フロー循環図」と「生産可能性フロンティア(production possibilities frontier)」の二種類が例示されている。


● 政策アドバイザーとしての経済学者

アメリカでは日本よりもずっと経済学者の活躍の幅が広いということもあるのか、いわゆるエコノミストとしての考え方や働き方にもマンキューは触れている。彼がこの段落で強調しているのは、経済学者の主張には“実証的な主張“と“規範的な主張“があり、規範的な主張には価値観が反映されるということだ。
この違いをわざわざ強調しているということは、日本だけでなくアメリカでもこの二つの違いを切り分けることが出来ない人が多くいるということを意味しているのだろう。


この章では上の2つに加えて章の補論という形で、理論を可視化する/グラフ化するための基本的な考え方が示されている。驚くのは、この内容がおそらく日本であれば高校レベルで習うような初歩的なことであるということと、数式がほとんど使われていないということだ。
これは本題の部分でも同じで、モデルの説明をする時に“傾き“という言葉はあっても、“微分“という単語は全く出てこない。日本だと間違いなくこの部分は“微分“で説明されるはずで、この辺りも日本の教科書とアメリカの教科書のスタンスの違いがよく出ている。

 

 

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