勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第6章(生活費の測定)
第5章で「国民所得」の測定について記述がされたことを受けて、この第6章ではより詳細な情報である「生活費」の測定方法の紹介が行われる。経済学が究極的には国民(あるいは人類)の厚生を高めることを一つの目標とするのであれば、人間にとって重要な指標となる生活費について、正しく理解することが重要だということだろう。同時に一章を割くということは、それだけ生活費という身近な要素をしっかりと測定することは難しいということも意味している。
マンキュー経済学 マクロ経済 第6章: 生活費の測定
● 消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数は、消費者が購入する財・サービスの総合的な費用を計測することを目的としている。消費者は日々色々なモノ・サービスを購入しているし、その購入する内容は変わっていく。そのため、CPIの計測の際には基準となる財の組み合わせ(バスケット)を設定する必要がある。
一旦このバスケットが設定されれば、そのバスケットに含まれる財とサービスを購入するための費用を計算し、基準年と比較することで(あるいは前年と比較することで)インフレ率の計算を行うことができるというわけだ。
この消費者物価指数(CPI)と似たような概念として、コアCPIと生産者物価指数(PPI)という概念も紹介されている。
コアCPI: CPIから食料とエネルギーを除いたもの。食料とエネルギーに関する費用は短期的に変動が大きいのが理由。
生産者物価指数(PPI): 消費者ではなく企業が購入する財・サービスのバスケットの費用を測るもの
● 生活費測定の問題
消費者物価指数(CPI)を測定するにあたっては、いくつかの問題が存在する。この章ではそのうちの技術的ではない、原理的に内在する問題をいくつか提示している。
その一つ目が代替バイアスだ。これはある財の価格が変化した時に、消費者は代替的なモノやサービスの購入を変化させるという行動を指している。CPIはバスケットを設定しているため、もし代替財の購入が量が変化すると、実際の生活費を正しく評価することが出来なくなる(過大に評価してしまう)。
二つ目が新しい財の導入による価値変化だ。技術発展などにより新しい財が導入されると、消費者は選択肢が増える、あるいは単に新しい財の機能や価値により、同じだけの厚生を得るための価格が下がる。本書ではiPodの例が上がっているが、例えば動画配信サービスなどはその際たるものだろう。
三つ目はそもそも測定できな品質の変化をどのように考慮するかだ。本書では例としてガソリンの燃費が上げられているが、燃費が向上すれば同量のガソリンでも得られる厚生(距離)は増加する。
上記を見れば明らかな通り、消費者物価指数を計算する際には単に機械的に計算を行うだけではなく、消費者が得る厚生(economics welfare)を考慮することが重要になるということだ。言い換えれば技術革新により1ドルあたりのeconomics welfareが向上すれば、それだけでも人間は”体感的には”豊かになったということが出来るということだ。
● GDPデフレーターとCPI
これまでの章で学んできたGDPデフレーターとCPIは、その計算式を見れば似たような概念を測定しているように見えるが、その計測する対象(行為)が大きく異なっている。
GPD デフレーター: 国内で生産される財とサービスの価格
CPI: 消費者によって消費される財とサービスの価格
● インフレ影響と変数の補正
CPIが変動する(多くの場合は+の値をとる)ということは、ある異なる時点での貨幣価値も異なるということを意味する。この「貨幣価値」の比較を行うためには、以下のような計算式により計算を行うことが可能となる。
現在の貨幣価値 = T年の貨幣価値 × (現在の物価水準/T年の物価水準)
この貨幣価値の違い(インフレ率)に合わせて給与や支払いが変わる制度のことを、物価スライド制と呼ぶ。インフレ率に合わせて、給付水準をずらす(スライドさせる)ことから、この名前がついたのであろう。
● 実質利子率と名目利子率
最後にこれらの考え方の派生の一つとして、本章では利子率に注目する。
利子率とは文字通り銀行に預金することによって得られる利子の割合だが、仮に貨幣価値が下落しているとすると、得られた利子の価値(厚生)を測ることが出来ない。そこでインフレ率を考慮しない利子率を名目利子率とよび、インフレ率を考慮した利子率を実質利子率と呼び、近似式として以下の式が成り立つ。
実質利子率 = 名目利子率 - インフレ率
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