勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第9章(ファイナンスの基本的な分析手法)
第8章「貯蓄、投資と金融システム」では、家計と企業をつなぐ金融システムの基本的な考え方を学んだ。本章ではその金融システムがどのように投資の意思決定を行っているのかについての基本的な考え方を学ぶ。 現実の世界では投資を行うのは必ずしも企業だけではなく、家計も常に何らかの金融的に決定を行っているが、モデル化されたこの世界では、まず企業が投資意志決定の主催者であると仮定しているのだ。
マンキュー経済学 マクロ経済 第9章: ファイナンスの基本的な分析手法
”ファイナンス”という単語を聞くと、どうしても日本語では「財務」 という言葉を当てたくなる。ちょうど経理が”アカウンティング”と英語で呼ばれているのと対比しての理解だ。
まず本章ではこのファイナンス(Finance)という単語の誤解について説明がされている。マンキューによれば、ファイナンス(Finance)とは” 人々が時間を通じて資源を配分しリスクをコントロールするにあたって、どのように意思決定を行うかを研究する学問”である。この定義を見ればわかる通りファイナンスと言う語源そのものは「財務活動」とは関係がない。あくまで異なる時間軸上で、どのように資源を配分しリスクをコントロールするかを研究するのがファイナンスなのだ。このように書くと一般的なファイナンスの概念と言うのは、かなり狭い領域にとしてということがわかる(この定義を学生時代に知っていたら、もっと楽しくファイナンスを勉強できたんではないかと思う)。
● 現在価値(時間価値を測る)⚫️
このセクションでは、いわゆる割引率を用いた「現在価値」と「将来価値」の考え方を学ぶ・・・のだが、 さすがにこの辺はビジネススクールで学んだ内容をしっかり覚えているのでノートは省略。ある資産が二倍になるまでに必要な年月は70/x(xは利子率)というところは実用的で面白い。
● リスク管理⚫️
このセクションではまず基本的な前提として人間はリスク回避的な存在であるとする。これは行動経済学などでも明らかになっていることだが、経済学的に言えば効用関数が凸型をしているということだ(あるいはlog型関数と言ってもいい)。効用関数がこの形である場合、ある地点Xから正負それぞれの絶対値が等しいα移動した場合には、|X-α| > |X+α|が常に成り立つ。
人間はこのリスクを回避するための知恵として、保険という考え方を進化させてきた。この保険というのは本質的には「リスクを低減させる」のではなく、「リスクを分散する」ということに意味がある。
例えば火災保険は「火事にあうリスク」を低減してはくれないが、 実際に価値が発生した場合の負担を軽減してくれる。なので、多くの火災保険では多くの人が一斉に火事の被害に合う可能性がある地震による家事は免責事項となっているのだ。
この考え方は 投資行動にも適用することができ、例えば株式を購入する場合には、多くの会社の株式を購入すれば、それだけポートフォリオの リスクを軽減することができる。ただし、それでも市場リスクと呼ばれるすべての企業が等しく負うリスクを軽減することはできない(例えばコロナによる経済活動のスローダウンが良い例だ)。
● 資産評価⚫️
この辺りはいかにもアメリカの教科書という感じなのだが、このセクションでは資産評価の方法、もっと言えば株式価値の評価方法についても触れている。資産評価においては多様な考え方があるので、この章では多くは触れられていないが基本的な考え方として「ファンダメンタル分析」の考え方が触れられている。
また、株式市場における価値評価の方法において重要な考え方である。効率市場仮説についても説明がある。この効率市場仮説と言うのは一言で言ってしまえば、株価はその瞬間に利用可能なすべての情報を反映していると言う考え方である。利用可能なすべての情報が株価に反映されているのだから、効率市場仮説を正とするのであれば、 市場に対して有利なポジションを取る事は誰もできない。結果として、株価は確率的な動きをするはずであり、この考え方に沿った株価の動きをランダムウォークと呼ぶ。
一方で、 現実には市場は非効率であり時には投機的バブルと呼ばれるように「買いが買いをよぶ」という状況を生み出す。 少しそのような状況もいつまでも続くわけではないことは自明であり、歴史上これまでも何度となくバブルは弾けてきた。 言い換えれば、市場は完全に効率ではないが、一方で完全に非効率なわけでもないと言うのがマンキューの述べるところなのだ。
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