勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第3章
第1章・第2章に続いてイントロダクションと位置付けられている第3章では、「相互依存と交易(貿易)からの利益」というタイトルが付けられている。この章ではこのタイトルの通り、第1章で提示された十大原理の一つ”交易(取引)は全ての人々をより豊かにする"について詳細を説明している。少しずつ日本人がイメージする経済学っぽくなってきた。
マンキュー経済学 マクロ経済 第3章: 相互依存と交易(貿易)からの利益
●単純なモデルによる説明
本章では交易(取引)により取引に参加する人々が豊かになるという命題を示すために、まず2人の取引主体者が2つの財を生産しているというモデルを考える。ここで重要になるのが、第2章で出てきた生産可能性フロンティアの概念で、2人の主体者は個別の生産可能性フロンティアを持っている。
ここでもし2人が個別に生産活動と消費活動を行おうとすると、効率を最大化した場合には、2人の生産量(消費量)は線上のどこかの天になる。しかし2人は交易を行うことで、この線上の外側(原点とは反対側)の点を選べるようになるのだ。これはそれぞれの主体者の機会費用が異なるからだ。もっと言えば、得意なことが違うので、得意な方に特化したほうがよりリソース(この場合は時間)を有効に使えるのだ。
● 比較優位の考え方の導入
ここで当然出てくる疑問が、主体者AとBを比較した場合にAが2つの財を作る時に両方とも得意であっても、この取引による効果は発揮されるのか?ということだ。例えばAが1時間あたりにジャガイモを10トン・肉を5トン作れる時に、Bがそれぞれ8トンと2トンしか作れないとすると、Aの方が両方で得意ということになる。
経済学ではまずこの2人を比較するのに絶対優位という概念を導入する。これはある財を作る時により投入量(リソース)が少ない場合に絶対優位があると定義するもので、上の例でいえばAはジャガイモでも肉でも絶対優位にあるということが出来る。
ここで問題はAが両方の財の生産において絶対優位であるとした時に、交易はAにとっても有益であるか?という問いに置き換えられる。そして、答えは(当然ではあるが)有益なのだ。それは絶対優位ではあっても、機会費用がAとBでは異なるからだ。
上の場合にAはジャガイモ10トンを作るのに、肉5トンを諦めなければならない。言い換えると、ジャガイモ1トンの機会費用は肉1/2トンだ。一方でBはジャガイモ1トンを作るのに、肉2/8=0.25トンを諦めなければならない。つまりジャガイモ1トンあたりの機会費用はAの方が大きい。この時Bはジャガイモ生産において比較優位にあるということが出来る。
このような時に、AとBは比較優位にある財の生産により注力し、交易を行うことで全体の生産数を増やすことが出来る。ただし生産総数が増えたとしても交換が適切に行わなければ両者が利益を得ることは出来ない。この両者が利益を得ることが出来る値段は両者の機会費用の間になる・・というのが本章で述べられている。
文字で書くとわかりづらいのだが、実際の教科書では表が提示されているので理解をするのはそれほど難しくない。ただこのエントリーを書くために少し数値を変更してみたところ、頭の中だけではうまく整理が出来ず自分で表を作ってみないといけなかった。
この程度のものでもやはり手を動かすのと、頭の中だけで考えるのでは全然理解度が違ってくるわけで、そう考えるとこのエントリーを作るのも決して無駄ではなかったと妙に満足してしまったのだった。
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