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2024年3月11日 (月)

勉強している内容の備忘録: マンキュー経済学 マクロ経済 第10章(失業)

第7章「生産と成長」から続いてきた第Ⅲ部 長期の実物経済も本章で終わりとなる。マクロ経済学の主要な論点の一つが景気循環とそれにともなう失業の発生であることを考えれば、本章はこの教科書の中でも主要な論点の一つと言えるだろう。この章では、そもそも失業とは何かという経済学的な定義から、失業が発生する理由、そしてその失業の痛みを減らすとは一般的に思われている各種政策の影響を網羅的に論じている。

マンキュー経済学 マクロ経済 第10章: 失業

● 失業を識別する ●

失業を問題として捉えるのであれば、まず「失業とは何か」と学問的に定義しなければならない。単に”働いていない”というだけでは失業ではないと言うのは、子供や専業主婦がいる家庭のことを思い浮かべればすぐにわかる。そこで経済学では失業を考えるにあたって、まず人間を以下のようにラベリング(カテゴリー分けする)。

  • 雇用者
  • 失業者
  • 非労働力

ここでいう失業者とは「働く意欲があり、働くことが法的に認められているのに仕事がない」人のことを指す。言い換えると、”仕事が見つからずに、働く意欲を失ってしまった人”は失業者には入らないというわけだ。そして失業率は労働力人口(雇用者と失業者)の合計で、失業者を割ったものとなる。

失業率 = 失業者/(雇用者+失業者)×100%

この失業率はさらに、自然失業率と循環的失業の2つに分けることが出来る。
自然失業率というのは失業率が上下する際の基準となっているような失業率であり、実際に計測される失業率とその自然失業率の差異を循環的失業と呼ぶ・・というのが定義だ。
ここで疑問になるのは、自然失業率がなぜ正になるのか、言い換えるとなぜ「常に失業は存在するのか」ということだ。この教科書では大きく2つの理由を挙げている。

一つは摩擦的失業(Frictional unemployment)と呼ばれている失業で、仕事を一度やめる/あるいは首になった後に、次の仕事を見つけるまでに時間がかかることから発生する失業のことだ。日本では一度働き始めたら、できる限り履歴書に穴を開けない方がいいと言われているが、レイオフがあるアメリカでは、そのような贅沢を言えないこともある。摩擦的失業というのはまさに、次の仕事を見つけるまでの一時的な(temporaryな)失業と言えるだろう。

一方で労働需要の方が供給よりも小さい場合に発生するのが、構造的失業で、これは一般的に長期間になってしまう。そもそも働き口が少ないがために発生している失業であるからこそ解決が難しいのだ。


● 職探し ●

摩擦的失業が発生するのは、次の仕事を見つけるまでに時間がかかるからというのが大きな理由となる。この次の仕事を見つけるという行為は、通常は雇用側の事由であることが多く、被雇用者側の問題であることはあまりない(被雇用者側は次の仕事が見つかってから、今の仕事をやめることができるから)。このような雇用側の労働需要の増減により働く場所が変わることは、雇用間の部門シフトと呼ぶ。

そして摩擦的失業が一定期間存在するのは、労働者が次の仕事を見つけるのがすぐにはできないからだ。昔はそもそも 仕事がどこにあるかもわからなかったし、応募書類を作るのも時間がかかった。そうであるが故に例えばインターネットの存在は摩擦的失業を減らす効果があると言える。

一方で公的な施策、例えば失業保険などは摩擦的失業にある期間を伸ばす効果がある。それは失業保険の受給期間中は一定の収入(働くよりも少ないが)が保証されているため、労働者は無理をして次の仕事を見つける必要がないからだ。

 

● 最低賃金法 ●

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多くの国で搾取的労働を抑えるという目的で設定されている最低賃金は経済学的な観点から言えば、労働需要を減らす効果があり、失業を生む必要の要因となる。それは右図の需要と供給の曲線を見れば明らかなように、最低賃金が均衡賃金より高いとすれば、供給と需要の間にギャップが生まれるからだ。

ただしこの最低賃金のによる雇用の減少は、賃金が最低賃金の付近にある職にのみ効果があると考えられる。

 

● 労働組合と団体交渉 ●

多くの国で認められている労働組合は、団体交渉を行い、時にはストライキを行うことで労働者の多くの権利を認めさせてきた。しかし経済学の見地からは、少なくとも労働組合の交渉の結果による賃金上昇は労働組合に参加している人員のみに恩恵があり、その分のコストを労働組合員以外の人員に支払われているとみなすことが出来る。

しかしそれでも、労働 組合が役に立つかどうかと言うのは、経済学者の間でも意見が一致していない。否定派は労働組合はカルテルと同じであり、水準以上の賃金が達成されたことにより労働需要量が減少してしまうと批判する。 一方で、肯定派は労働組合が存在することにより、企業の市場支配力への対抗策が生まれ、労働者全体の生産を向上させる可能性を指摘している。

 

● 効率賃金理論 ●

失業が発生する1つの理由として、効率賃金理論が存在する。これは企業が健康水準以上の賃金を支払うことによって、企業経営がより効率的になると言う理論である。一見すると矛盾した内容であるが、企業が賃金を高めにすることで利潤を最大化できると言うことなのだ。

この理由としては大きく4つの説明が存在している。
1つ目はより高い賃金を払うことで労働者が 健康を保つことができ、より生産性が高くなる可能性がある。 ただしこの説明は賃金が非常に低く均衡する賃金では、十分な食料や休息を手に入れることができないといった国の場合のみ当てはまる。

それ以外の3つの理由はいずれも労働者に関連することで、「 高い賃金を支払うことで離職率を下げることができる」「より質の高い労働者を採用することが出来る」「労働者の努力度を上げることができる(モチベーションを高めることが出来る)」といったものだ。

 

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