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カテゴリー「ニュース」の記事

2021年9月30日 (木)

Katerraの破綻

かなり前の話になるが、シリコンバレーのスタートアップ Katerra事実上破綻した。気持ち的にはしてしまった・・・といいたいところだが、ニュースを見ていると論理的な帰結だったという気もするので「した」という表現の方がふさわしいといえるだろう。
日本ではSVF(Softbank Vision Fund)が20億ドルを超える投資をした企業として知られているだろう。ただ、アメリカの不動産マーケットを知っていた人間からすると、もう少し深い意味合いを感じる。


ConTechとアメリカの建築業界

Katerraが取り組もうとしたマーケットは、米国ではConTechと呼ばれるマーケットだ。これはConstruction と Techをあわせた単語で、アメリカにおいても労働集約的なマーケットである建築業界をテクノロジーによって変革しようと取り組んでいる企業群が多く存在している。

自分は前職のSRI International時代に戦略的提携を結んだ大林組とのお仕事があったため、アメリカの建築業界についても勉強する機会があった。


大手ゼネコンを頂点にピラミッド型のヒエラルキー構造が明確になっている日本とは異なり、アメリカの建築業界というのは、地域ごとにそれぞれ強い会社が直接顧客とやりとりをすることが多く、いわゆる「多重下請け構造」のようにはなっていない。それ以外にも日本とアメリカの建築業界では複数の違いがある。

 

  • 社員を抱えるタイプの日本の建築業界とは異なり、プロジェクトごとに契約社員(コントラクター)と契約してプロジェクトを生成するという形を取る。
  • 事前に契約金額を確定させる日本とは異なり、稼働期間と原材料コストに対して一定の割合を乗せるという形で利益を確保することが多い。
  • プロジェクトを”全部請負う”契約を結ぶことが多い日本とは異なり、設計はA設計事務所、土木部分はB社・・・のようにプロセスごとに他の会社が管理を担うこともある。

Katerraが取り組もうとしたこと

Katerraが取り組もうとしてたのは、この建築業界において可能な限りモジュール化を進めるという取り組みだった。建築業というのは土地の制約、空間利用の制約、設計や意匠の自由度などの理由から、基本的に多くの建築物が”一品もの”となりがちだ。
一品ものであるが故に、部材や製材といったものも現場での加工が必要になったり、あるいは別の事業者にカスタマイズを依頼しなければならない。もしこういった加工やカスタマイズを減らすことができれば、工期を短くし、コストを低減させることが可能になるだろう。

この考え方自体は決してKaterraのオリジナルではない。
日本でもコンクリートを工場などであらかじめ加工して出荷し、それを組み合わせて建築を行うというプレキャスト工法という方法は広く浸透しているし、中国では3Dプリンターを活用してマンションを6週間で建築するということを行なっている(※1)。特に3Dプリンターの一般化により、いわゆる部材構築に必要な時間はこれまでに比べて劇的に短縮された。

一方で業界や建築プロセスを考えればわかる通り、この資材や部材のモジュール化というのは、単にその部分を自動化しかつ標準化すればそれで終わりというものではない。設計段階からモジュールを使うことを前提にして設計しなければならないし、施工管理もモジュール化出来ている部分と非モジュール化部分を統合することを考えながら進めなければならない。これは部材そのものをモジュール化することよりもずっと難しいことだ。


Katerraは何に失敗したのか?

こういった業界の様々な課題に対して、Katerraは部材の徹底的なモジュールを進めることで工期の短期化とコスト低減を実現しようとした。もちろん3Dプリンターなどのデジタル技術も活用することも検討していたという。一品ものである建築を、工場での製造のように変革しようとした・・というのが、一言でいえばkaterraが取り組んだことだ。

しかし、既に書いたようにKaterraはその道半ば・・というか、市場規模を考えれば「スタートから第1コーナーを回ったあたり」でその旅を終えてしまった。大型投資を受けた企業の破綻ということで、アメリカのブルームバーグでも特別記事が掲載されていた。

(bloombergの取材なので必ずしも100%信じられるわけではないのだが)この記事を読むと、Katerraは建築業界における問題をあまりにも単純化したように見える。建築業界は単純にコードによってデジタル化することが出来るような世界ではなく、企業間の関係構築が必要であり、関係者の様々な「美しいとは言えない(dirt)」な思惑のコントロールが求められ、かつ様々なスキルが必要なマーケットだったと、記事は主張している。

確かにこの記事のいう、市場の特性というのはかなり当たっているだろう。しかしこの記事は重要な論点を無視している。Katerraの破綻後にその工場を買収したのは、katerraと似たようなアプローチをとっている競合だったのだ(Volumetric Building Companiesという企業が工場を買収している)。つまり、この市場にいるプレーヤー全てがKaterraと同じ道を歩んだわけではないのだ。少なくとも今のところは。


そう考えると、Katerraの運命を決めた一つの要因は、SVFからの投資だったのではないかという気がしてくる。彼らの持つ資金量というのは圧倒的で、シリコンバレーにおいては「スタートアップ投資の考え方を変えてしまった」と言われていた。これは決してこれまでのVC業界にSVFが受け入れられなかったということではない。

多少の好き嫌い(多少ではないかもしれないが・・・)があったとしても、スタートアップ業界は常に金の出し手を受け入れる。金余りの今はVCごとの競争はドンドン厳しくなっていくが、それでも金は貴重なリソースである。

むしろSVFの投資が”毒”となってしまうのは、投資された方の企業にとってだ。VC業界の標準的な考え方に沿えば、仮に2,000億円の投資を受けたとすれば、上場時の時価総額の期待値は最低でも2兆円を超える。これはいかにアメリカといえども、そう簡単ではない。

また、まだビジネスがそれほど軌道に乗っていない経営者が、突然数千億円を受け取って、これまでと同じように経営を続けるというのは、想像するだけでも極めて難しい。金はスタートアップにとっては必要不可欠なものだが、ありすぎるのもよくないのだ。シリコンバレーでは、SVFに投資を受けるということは「SVFという市場にIPOするようなものだ」と言われたりもした。


シリコンバレーの歴史や建築業界の規模、そしてそこにある多くの不合理を考えれば、contechに挑戦するプレーヤーは必ず出てくるはずだ。しかし、それは既存の要素技術を塗り替えるところからスタートするのではないだろうか。少なくともある要素技術をデジタル化することで、サプライチェーンとバリューチェーン全てを支配できると考えるKaterraのような会社はしばらくは出てこないだろう。

 

※1・・・日本と中国の建築基準の違いや監督精度の違いなどがあるので、今後技術が発展したとしても日本で同じ工期で完成することが出来るようになるとは想像はできない。

2011年1月12日 (水)

上海にカプセルホテルが開業!(予定)

日本でも結構取り上げられていた『上海初のカプセルホテル開業』を、僕も流れに乗ってとりあげてみたいと思います。といっても、実際に見に行ったわけではないので新しい情報を提供するというよりは、中国での取り上げ方と上海のホテル事情を簡単にまとめてみようとB_60793138 思う。

日本報道記事:上海にカプセルホテル誕生(MSN産経ニュース) 
(右写真は索狐転載の新民网ニュースより)

■ 上海のホテル事情 ■

昨年の万博の影響もあり上海はいまや世界で一番(中国系以外の)5つ星ホテルが多い街である。ハイアット、ウェスティン、リッツと有名どころから日本のオークラホテル(花園飯店)まで世界中の高級ホテルを楽しむことができる。万博が終わった今はかなり競争がきついようなので(とはいえまだ新しいホテルがOPENしたりするが・・・)お値打ち価格で高級ホテルに泊まるチャンスが大きい都市だと言える。

一方、下を見れば200元程度(3000円ぐらい)で外国人が宿泊可能なホテルもあり、値段の幅は非常に広い。中国語がまったく話せない人でも日本円で1万円も払えば少なくともお湯が出ないとかシーツが湿っているなどの心配をしなくても大丈夫だ。

さらに中国人向けには「旅館」と呼ばれるもっと安い宿があるのだが、さすがに外国人が止まるのはしんどそう・・というかそもそも宿泊できない可能性があるので、まだ試したことはない。上海でも中心部を外れれば150元ぐらいでも宿泊可能な場所はあるだろう。
(※中国では外国人はホテルに宿泊する際に公安に届け出をする必要があり、多くのホテルでは代行してくれるのだが、その対応ができないホテルは外国人の宿泊が許可されない)

ここ1年ぐらいは市内や大学の周りに、日本でいうラブホテル(ブティックホテル)もできつつあり、ホテル事情は日本よりもバラエティに富んでいいる。今回そこにカプセルホテルが新しく加わったというわけだ。

■ カプセルホテルの概要 ■

今回新しく開業するカプセルホテル(中国語:)の概要は以下の通りで、ほとんど日本と変わらない。

●カプセルの大きさ:高さ1・1メートル、奥行き2・2メートルWs000000
●値段:基本利用料28元(400円くらい)+時間チャージで4元、15時以降の利用は24時間まで88元で利用可能。
●設備:シャワー室、喫煙室、トイレは別

開業の場所は中山北路駅の近くの高架沿いにある雑居ビルの1Fだとのこと。
(右地図は上海の北側地図:上の緑針が宿、左下の青針が中心地のひとつ、静安寺  Mapは百度地図より切り出し)


この地域は長距離鉄道が止まる上海 駅と長距離バス駅の間にあり、他都市から来た場合の上海の入り口というイメージがある。上海市内に比べればまだローカル色が残っている場所で、土地代も市街地にくらべれば安い。
またもう少し北にいけば大学があるので学生の住人も多い。


■ 上海での取上げられ方 ■

昨日は上海でもニュースで第一報がとりあげられたが、本日になると早速体験レポートをしたというニュースが流れていた(なぜか利用出来ない女性記者が突撃みたいな記事もあった)

<中国での記事の一部>
上海のカプセルホテルについてのQ&A(中国語)
上海“胶囊旅馆”探密:进“胶囊”靠钻(← 体験レポート)
女记者亲身体验上海胶囊旅馆(← なぜか女性記者)

中国人記者が気になる点は、やはり寝心地、安全性やプライバシーの問題。変わったところではカプセルの中に寝ていると息が詰まってしまうのではないか?という質問をした記者もいるようで、日本由来の技術により1時間で7回の換気が行われるので大丈夫・・と開業者が回答したという部分もあった。

まだ正式に開業許可が下りたわけではないので評価をすることもできない部分もあるが、「日本から技術と経験を携えて!」というところに一定の評価をしているような雰囲気は文面からは感じる。


■ ビジネスとして成功するのか? ■

少なくとも写真や記事をみる限りにおいては(新しいもの見たさもあって)好意的に取り上げられているカプセルホテルだが、ビジネスとして成功するのか?というと、これは最初なかなか難しいと思う。

(1) 競合の問題
現在すでに上海には相当安い金額で宿泊可能なビジネスホテルがたくさんあり、記事でも99元でのホテルが取り上げられていた。開業者によれば10元の差しかなくてもパッと入れてパッと出れるカプセルホテルは優位性があるとのことだが、個人的にはそこはあまりアドバンテージにならないと考える。
確かに中国の事務処理はキビキビしているとは言えないが、それでもせいぜい10分程度であり、10元出して個室に泊まれるのであれば一般のビジネス客は個室ホテルを選ぶだろう。記事を見る限りではそもそもビジネス客を想定していないとあったのだが、やはり価格競争は相当厳しいとみる。

(2) 客層の問題
日本のブログの中には「ビジネスパーソンが利用することを見越して・・」とあったが、開業者としては学生や農民工と呼ばれる地方からの出稼ぎ労働者をターゲットにしているとのこと。
開業場所の選択もこのメインターゲットに沿って決められたと思うのだが、一番の問題ははたしてこの客層の選択は正しいのか?ということだ。中国に住んだ経験がある方は間違いなく同意してくれると思うが、農民工ははっきり言えば乞食とそれほど変わらない衛生状況だ。プライドの高い上海人はもちろんのこと外地人も農民工が止まっているホテルに好き好んで宿泊に来るとはあまり思えない。
また学生に関していえば、中国ではルームシェアが当たり前だし、友人が来れば数日部屋に泊らせるというのも普通に行われているのでわざわざ80元払ってホテルに泊まるというのはあまり想像できない。もちろん90年後はこれまでとは感覚が違うので、宿泊する人もいるだろうが、なんとなく気が付いたら農民工のたまり場になってしまうのではないか・・という気がする・・。

(3)衛生面・安全面

(1)とも関係してくるのであるが、どうしても客層のレベルが下がると安全面・衛生面での懸念点が増えてくる。喫煙室があってもカプセル内でタバコを吸う人間は絶対にいるし、シャワーなどもかなりメンテナンスが大変だろう。汚い話になってしまうが、シャワー室で排泄する人間もいるだろうし、衛生・安全面のプレッシャーは大きいと思う。

ということで、個人的には日本の形をそのまま持ってきても厳しいと考えている。同じく中国経験者と話した限りでは、むしろ温泉+簡易ベッドで眠れるような形のほうがまだ差別化できるのではないだろうか・・・という話になった。すでに上海市内には小南国という銭湯というか温泉のような施設があるので、新しく免許を取る必要があるならそれを組み合わせたら面白かったのでは・・と外野からは思ったりしている。

中国は一回流行るとあっという間に模倣が続出してものすごい勢いで普及し、値崩れが起こり、大資本が勝つという流れを踏みやすいので、最初にある程度成功している・・と思わせれば勝ちである。オペレーションの問題はかなり大変だと思うが、日本由来のサービスということで心の中では応援しています!(まだ外人は宿泊できないので・・・)。

2009年7月25日 (土)

シャープが中国で3G携帯を本格販売へ

二週間ほど前にNECの海外での携帯販売再開についてエントリーを立ち上げました。

中国における携帯販売マーケット

一方、街を歩いていると驚くほど多くの人が日本製の携帯をもっていることに気がつきます。特に人気なのが、SHARPの携帯です。こちらでもAQUOS携帯は画像の美しさとそのブランド力によって、公式には販売が行われていないにもかかわらず、一定数のファンを持っているのです(ちなみに中国ではSHARPは夏普と書きます)。

この中で、少なくとも中国では他の家電との相乗効果がないとなかなか厳しいので、シャープなどはうまくいくのではないかと書いていたのですが、そのシャープが中国で本格的に携帯販売を拡大するとの報道が先日ありました。

シャープ、中国で第3世代携帯 販売網5000店に(NIKKEI.NET)

シャープは中国で今年から本格スタートした第3世代(3G)携帯電話サービス向けの端末を発売する。8月に1機種を投入、今年度中に3機種程度に増やす。販売網も3000店から5000店に拡大する。シャープは日本メーカーで唯一中国の携帯電話市場に参入しているが、シェアは1%強にとどまる。3G向けに高機能端末を投入することでシェア拡大を狙う。


今まで3000店舗も販売店舗もあったの??というのがまずは意外というか、リサーチ不足なのですが、今後は5000店に増加させるとのこと。こちらでは、日本のようにキャリアが携帯を販売するということはあまりなく、各ベンダーが専門の店舗を展開しているか、国美电器苏宁电器といった家電量販店の中にブースのようなものを作って販売を行うことが一般的です。苏宁电器は先日日本のラオックスに資本参加したことで、日本でも今後知名度が上がっていくと思われますが、現状でも2大量販店といってよい地位にあります(国美电器の創業者が逮捕されてしまったため、今年はおそらく苏宁が1位になると思います)。

5000店舗まで増やすということは、各地の家電量販店への出店を強めるということだと考えられます。これらの出店形式は利用料を払ってブースの場所を借りるだけの形なのが一般的なので、そうとうなコストとなることが予想されます。シャープも本気でマーケットを狙ってきているということなんだと解釈してよいのではないでしょうか。


記事中に触れられているように、今回のシェア拡大を狙うための武器はやはり3G対応携帯。価格帯が5,000元を狙うということは完全に富裕層か若者向けです。上海ですら大学卒平均月収が3,000元という状態ですから、この価格はかなりの強気な金額です(日本人の感覚で言うと携帯に20万円ちかくはらう感じに近い)。一方、富裕層や親からお金をもらえる若者(+彼氏がいる女性)はこの程度の負担で、日本の最新携帯が手に入るなら支払うという判断も決して不思議ではありません。

すでにブランドはある程度あるのですから、どの程度販売力をもてるかが一つのキーになると思います。

・・・と思って、SHARPの中国側のHPを見たところ、TOPページのFLASHで既に携帯が取り上げられています。

ページもしっかり作られているし、これってかなり気合入ってる!という予感がします。今度店舗に見に行ってみよう。

2009年7月23日 (木)

日食時は見事に土砂振り@上海

昨日とりあげた皆既日食ですが・・・、上海は見事に土砂振り。なにも見ることが出来ませんでした・・とほほ。Image297

昨日はベッドに入ってからすぐに雨が降り出したので「これは、ダメだな・・」と思って眠りについたのですが、朝起きてみると晴れてはいないものの、雨は降っていません。これは、もしや・・と思い、ちょっと早めにお客様のところに行き、ビルの下で待機します(朝は道が込むのと、混乱があるかもと思って早く今日は家を出ました)。

待つこと30分・・そろそろかな~と思っていたところ、ダンダンと空が暗くなり・・・・・雨が降り出しました。まさに狙ったいるかのごとくピンポイント。空は確かに暗くなりまるで夜みたいでしたが、雨が降っているためまったく太陽は見えず(右の写真は日食時の写真です。ただの夜の写真みたいですね・・・)。

__2
会社に戻るころには雨も小降りになっていたので、前から楽しみにしていた人には本当にお気の毒です。わざわざ休みを取ったメンバーもさぞ機嫌が悪かろう・・と思っていたのですが、部下の一人がなんと写真を撮影したとのこと。雨の中どうやって??と思ったのですが、かなり朝早くから待機して、太陽がかけていくところを撮影したとのことです。右がその写真。

皆既日食はあのコロナが見えるのがやはり味だと思うのですが、満足そうだったのでとりあえずよしとしましょう(僕にどうこう言われる話でもないですしね)。


(一応)ニュースでも大きな混乱は伝えていませんし、トラブルもなかったようなので、一安心・・というところでしょうか。中国人はイベント好きな人が多いので、すぐに新しいイベントで盛り上がるでしょうしね。

2008年9月17日 (水)

リーマン・ブラザーズ破綻で人生のあやってやつを思う

今週の月曜日(一昨日)、めずらしく中国でも日本でも休日が重なった日、米系投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻しました。まあ、破綻といっても実際はチャプター11の申請ですから、何らかの格好で生き残るでしょうが、きっとリーマンという名はなくなってしまうのでしょう。

日経ビジネスオンラインのサブプライム関連の記事
http://business.nikkeibp.co.jp/news/subprime/


私のように金融とは関係ない仕事に就き、しかも中国で働き、その上経営にはあまりタッチしない立場だとそれこそリーマンが破綻しようがどうだろうがあまり人生には関係ない・・という気もするのですが、実は結構な感傷に浸っています。

私が社会人になったのは2005年の4月です。だいたい、就職活動はその1年ちょっとぐらい前からはじめるので、2002年末ぐらいから就職活動を始めました。
当時は(今もそうですが)外資系コンサルタントや投資銀行(いわゆる外銀・コンサル)を受験するのがファッションのようになっていて、当然のように私も両方を受けていました。今、考えると全然違う仕事なんですが、学生の目から見ると要求される能力はあまり変わらなく見えたんですね(僕の友人は「求められるプロパティは同じだが、求められるスタンスは真反対」と表現しました)。

新卒採用をする外資系など数がたかが知れているので、そこを希望している学生は大体一通り受験をするわけです。僕も例にもれず、全ての外銀・コンサルを受験しました。その中には当然リーマン・ブラザーズも入っていたのです。
当時の学生の目からみてもやっぱり外銀といえばゴールドマン・サックスかモルガン・スタンレーがTOP2であって、リーマンはやっぱりちょっと異端という感じでしたね。ライブドアの増資を手がけたり、ちょっと癖のある案件をやっているという会社というイメージがありました。採用人数も少なかったですし。

リーマン・ブラザーズは六本木ヒルズにあるのですが、専用の入り口を持っているんですね(これはゴールドマンも一緒)。で、筆記試験を受けるためにいくと、なかなか担当者が降りてこない。就職活動・・といっても生意気な学生ばかりですから(少なくとも僕はそうでした)、それだけで『もう何この会社』という感じになるわけです。もう、どうてもいいや、と。

私は担当者が降りてきて実際のフロアに行ったときにも、もう筆記試験のこととかどうでもよくなっていて、僕は六本木ヒルズから見える風景がすごくて、携帯で写真を撮っていましたね(今、考えると最低の学生です)。筆記試験のために通された部屋というのはおそらく誰かのオフィスで、子供の写真が張ってあったりパームストーン(案件がクローズするたびに作る記念品のようなものです)がたくさん並べてありました。
その部屋の持ち主の方は確か東京三菱銀行から転職してきた方で、当時の学生のイメージからすると外銀のような殺伐とした職場に子供の写真があるなんて不思議でしょうがなかったです。


私はそういった調子に乗った学生でしたから、当然即戦力を求める外資系には受からず、今の会社に入社したわけですが、当時の僕はまさか自分が受けていたリーマンやらメリルやらが今のようになるなんて想像もしていなかったわけです。私達にとってのリスクとは、外資系がオフィスをたたんでしまうことであったり、パフォーマンスが出せなくてクビになるかも・・・ということであって、会社がつぶれるなんて想像もしていなかったのです。

あの就職活動から5年しかたっていないのに、僕は今中国にいて、そしてもうすぐ転職をしようとしている。あの時に会ったほとんど人たちや入社した友人達はきっとすでに他のところにうつっているはずですが(こういう危ないって話はだいたい中にいて鼻がキク人ならわかるものです)、それでも、もし僕がリーマンに受かっていたら・・と思うと、人生の不思議というものを感じずにはいられない。そんな風に思うのです。

2008年5月20日 (火)

中国全土が喪に服す -地震情報 その後のその後のその後-

中国四川省の大地震から一週間が経過し、すでに中国は落ち着きを取り戻しています。被害者数は死者だけで5万人、被災者はまだ確定していませんが10万人以上になるものと思われます。日本でも報道されているように、各地から救援隊が震源となった汶川や成都に向かっており、復興活動が始まりました。

中国国内の様子はというと、各地で募金が始まりました。学校や職場はもちろんのこと、レストランやカラオケなどの娯楽の場でも募金箱がおいてあります。テレビはほとんど全てが救助活動を伝える番組一色。日本でも伝えられたように、延々と募金を行った人間と募金額を伝える番組が流れています。ここでは外国系企業も当然のように名前が載るので、資生堂やその他の一般消費者向けの製品を作っている企業は募金を積極的に(あるいは行わざるを)行っているようです。外資系企業の最低募金金額は1000万元(約1億5000万)という噂がまことしとやかに流れています。

テレビで煽る救援募金合戦

中国人の日本人への感情というのは大変揺れ動きやすいものなのですが、今回のようなときにいち早く募金を行うというのは、彼らにとって一つの「団結」の目安になるようで、方々で募金したかどうかを聞かれる上に、募金したことを伝えると「ありがとう!」と感謝されます。やはりというかなんというか、こういった時には中国人であるという強烈な団結心がよびおこされると言っていました。
特に今回の地震の舞台になった四川省の人たちは強烈に自分達が「四川人」であることを感じたといいます。もともと地域意識のはっきりしている中国ですが、こういった災害があると郷土意識が強くなり、同胞として何かをしなければという気持ちになるようです。

また中国全土は国の発表により、昨日より3日間喪に服すことが決定しました。昨日は上海でも地震のあった14時28分にサイレンがならされ、三分間街の動きがぴったりととまりました。車も路肩に止めて、クラクションを鳴らし続け誰も動かない中でクラクションとサイレンだけが鳴り響くという、ある意味幻想的な風景でした。
原爆投下や終戦記念日の黙祷になれている日本人とは異なり、今回のように国全体として黙祷をささげるという経験が初めてである中国人はその時間にはみなが歩道橋にのり遠くを見つめていました。もちろん、不思議な光景を撮影するためにカメラを回している人間もたくさんいましたが・・・。

この三日間は娯楽のようなものは一切禁止であるという通達が政府より出ましたので、例えば日式カラオケ(いわゆるキャバクラ)もお休みです。まさかこういうある意味アンダーグラウンドなところまで政府の力が及ぶとは・・・と、かなり驚いています。日本でも報道されたように各種HPも全て白黒で表現されており、サイトを開くとかなり不思議な光景を見ることができます。焦って色を落としているせいか、操作によっては色が戻ってしまうのは御愛嬌。日本で報道されているよりもはるかに多くのHPが同様の対応をしています。

<四川大地震>中国大手ポータルサイトが白黒表示で哀悼の意

僕が開発しているWEBサイトは、こういった動きがあることを察知できなかったため、当然のようにカラー表示が続いています・・・。実は今日になって中国人メンバーから意見があがったのですが、政治的な意味まで考慮して今回は対応しないことに決定しました。他の日系企業も対応は行っていないようです。単純に企業のHPとメディア系サイトを比較することはできませんが・・。

中国資生堂のHP

今回の地震については中国国内のBBSでも議論が沸騰しているのですが、最も今熱心に議論されているのが「募金の使い道」。さすが中国人・・というべきかどうかはわかりませんが、今回の募金は本当にちゃんと使われているのか、そもそもどのような組織が使うのか信用できないので、使い道を明らかにすべきであるという議論が展開されています。サイト系企業としては募金の呼びかけを行いたいものの、一方でそのような議論があるところでどのようにCSRを進めていくかというのは非常に難しいところです(こちらでは叩かれるときには徹底的にたたかれますので・・・)。
もう一つ言われているのは、これで四川はしばらくは復活景気にわくであろうということ。不謹慎である・・と日本人には言われてしまいそうですが、こういった視点もあるのも事実。特に四川には直轄市があるわけですし、政府としても協力をしている姿勢を出すためにも出費は惜しまないでしょう。今後莫大な利権が発生することが今から目に見えるようです・・・。

2008年5月13日 (火)

中国四川省地震 続報 -予想通り被害拡大-

昨日第一報があった四川省の大地震ですが、予想通り被害が拡大しています。

地震があった直後には国もすばやく対応したと見えて、すぐに国家指定の大災害に認定されています。官僚国家である中国では、このような『公式認定』はとても重要。

国家地震局启动一级预案 救援队已集结

その後少しずつ各省の情報が流れ始めます。例えば南西約100Kmにある重慶へは飛行機が止まることがいち早く流れました。また、このころから少しずつ死亡被害を伝えるニュースが見えはじめます。

重庆梁平一小学楼房垮塌 四人死亡四十多人被埋

日本でも、100人死亡というニュースが流れています。ちなみにこの報道は中国の新華社通信経由なので、公式ニュースです。

四川省でM7.8・100人超死亡、900人近い生徒が生き埋め

この一方、中国国内では民心を落ち着かせようとするかの報道が少しずつ入り始めます。こういった災害のときに誤った情報を流すのは、百害あって一利なしなのですが、こんなときでも情報統制はしっかり利いています。

                     [四川汶川地震] 省地震局:市民可放心睡觉(市民は安心して眠るように)

まあ、こんな情報はさすがに事実の前では無意味であって、昨晩の時点ですでに死者5000人程度は想定というニュースが人づてで四川のほうから流れてきていました。最低10000人は行くであろう事からまだ、少ない予想ではあると思ったのですが・・。

そして本日の朝、地下鉄で配っているフリーペーパーである时代报(時代報)によると現在のところ四川省だけで死者8533人という報道がされています。ここの記事にもあるようにこれは四川省の死者だけですから、全国規模でみればもっと被害が拡大していることはいうまでもありません。

現状ではインターネットの回線網はほぼ復旧しましたが(NTTのIP-VPNの基地センターが
成都にあるため、一時IP-VPNを利用している日本企業はインターネットが利用できなくなるという事態が発生しました)、依然として携帯電話は通じない模様です。そのため、成都にいる日本人に連絡が出来ないという事態が発生しているようです。
上海にいるとごく日常の生活をしている感じがしているのですが、他のグローバル企業がどのような対応しているか・・ということに非常に関心をもってみています。(在上海大使館でも特に地震を取り上げている様子はないようです、なんとなく残念・・)

2008年5月 7日 (水)

上海バス事故 -テロなの??と語る同僚-

一昨日の話になってしまいますが、上海ではバス事故がありました。

上海のバス火災で3人死亡 12人負傷、「自然に発火」(gooニュース)

僕がこの事件を知ったのは、日本のNIKKEI NETを読んでいたときです。このごろ日本のメディアは(半ば意図的に)中国の悪いニュースを取り上げる傾向にあるせいか、ヘッドラインとして取り上げられていました。

ニュースでは『上海』としかなかったので、すぐに中国のニュースをチェック(ここで上海としか書かれていないのは、ちょうど日本で『東京』としか書かれていないのと同じような感覚です)。調べてみると上海市内でも北側に位置する杨浦区での事件だとわかりました。

事件自体は朝から上海市内でも取り上げられていたようで同僚も知っていたのですが、近くに住んでいる同僚もいることから、死人が出たことを伝えると急に騒ぎに。

「テロなのかな?」とか
「爆発が起こったの?」とか
「地下鉄も危ないよね」といった言葉が次々と出てくるではありませんか。

バス爆発・・といった事件は日本ではもちろんめったに起こらないわけですが、たとえ起こったとしても『テロかどうか?』を考えるような人はめったにいないでしょう。しかし、中国ではごく一般の人が最初に考えるのは『テロの可能性』である。このことにあらためて自分が住んでいる場所がどこなのかを感じる瞬間でした。

ちなみに、中国国内では公に報道されることはないものの、少数民族関連や農民の暴動などで少しずつテロへの不安が高まっています。今回の事件も公式には『可燃性物質が誤って燃えた』ことになっていますが、本当かどうかは明確ではありません。
事実地下鉄の駅などでは検査台が設けられ、荷物検査を行ったり警察犬が出動していたりしたようです。

北京オリンピックに向けて、何事もなければよいが・・・というか、ここでテロをしてもよいことなどないのに・・・と思わずはいられない出来事でした。