【映画紹介】夏休み武狭映画 武狭 -アクションだと思ったら違ったでございます-
GWに次いで今回は今年第三回目の武狭映画紹介でございます(武狭映画とは何ぞや?
という方は以前書いたこちらのエントリーを参照のほど)。今回紹介するのは夏休み向けの武狭映画大本命である、その名もずばり「武狭」。現在の中国のアクションスター筆頭に位置する甄子丹(ドニー・イェン)と、日本人にもおなじみ日本語を話さないと益々格好いい金城武、そして「ラスト・コーション」の体当たりラブシーンを演じてから本土ではしばらく干されてしまっていた汤唯の3人の主役級が共演する・・という豪華俳優陣がウリの一本である。このごろ少し涼しいとはいえ、基本的には太陽が痛い上海で、夏の暑さを吹き飛ばすべく、わざわざ誕生日に見に行ったのであった。まあ、実際には見てびっくりだったわけだが・・・。
■ ストーリー概要 ■
ドニー・イェン演じる刘金喜は10年前にふと田舎のとある村に現れ、偶然出会ったま 演じる村の女性と結婚し、村で生活をしていた。子供も生まれ、貧しいながらも幸せな生活を送る家族。しかし、ある時その村に強盗が押し入る。たまたまその場にいたドニー・イェンは格闘技の経験がないにもかかわらず、幸運にも助けられ二人の強盗を倒すことに成功する。
多少の不自然なところはあるとはいえ、強盗を倒したことを喜ぶ村人達。しかし、死体と事件の検分に訪れた徐百九(金城武)はカンフーの達人である強盗二人を素人が倒したことを信じられず、自分の針師の知識を生かしつつ独自の推理を進めていくのであった。はたして、本当の刘金喜は一体どんな人間なのか・・・彼の過去を調べていく中で徐(金城武)は彼の正体に近づいていくのであるが・・・。
今回は監督である陈可辛の志向が反映されたのか、単純なキッタハッタではなくミステリー仕立てとなっており、アクションと謎解き、そしてそれぞれの登場人物の過去が少しずつ明らかになっていくという仕立てとなっている。
■ 配役と見どころ ■
武狭映画というのは基本的には(少数のアクションスターの中の)「誰が」「どうやって」「どんな敵」を倒すのかを見る映画なので、配役は大変重要である。ということで、今回も主役は甄子丹(ドニー・イェン)。本人もインタビューで言っていたように、この頃映画にでずっぱりである。いつ見ても切れがいいアクションだが、今回は多少うそくさい連付きが多かった。やはり彼は蹴り+突きがあって初めて映える。
本来であれば準主役として、敵役に注目される配役がされるはずだが、金城武は今回は
探偵役ということでほとんどアクションには参加しない。撮影時には2分の長回し格闘シーンがあったそうであるが、編集段階でゴッソリ削除されたとのこと。彼は中国語を話すとやはり格好いい(と思うが、友人に言わせるとちょっと変らしい)上に、今回は半分くらいは四川語を話している。ところどころ聞き取れない所があるな~と思ったら、四川風の言い回しをしていたようだ(実は、四川語は多少聞き取れるのだけど、いきなり四川語になったりするので耳が追いつかない時のほうが多かった)。
武狭映画には欠かせない「アイドル枠」は汤唯。彼女はラスト・コーション(中国名:色・戒)
という映画で濃厚なラブシーンを演じて(それだけが理由ではないが)ここ3年ほど大陸映画界では干されていた女優である。2011年、中国がまさしく総力をあげて「大ヒットさせた」建党偉業(建党伟业)にも撮影は参加したが、編集で全部カットされるという悲哀を味わった(と言いきれないかもしれないが・・・)。
パッと見ると范冰冰に似ていると思ったのだが、夫に対して疑いを持ちつつもそれに耐えて生活を続けていく不安定な心情をよく表現していて、これから頑張って大陸でも活躍してほしいものである(目が大きい女優は好みなので)。
しかし、孙丽・范冰冰・汤唯と似た感じの女優ばかりなので、たまには全然違うタイプの美人は出ないものだろうか。李冰冰は冷たい感じの美人でタイプが違うのだけど背が低いのが難点か。
さて、これだけ魅力的な俳優をそろえているこの武狭、絶対面白いに違いない・・と思って見に行ったのだが、正直ガッカリした。期待値が高かっただけに「本年度最もガッカリした映画」にノミネートされてしまう勢いである(しかし、中国内では評価が高い)。
ガッカリした点をあげるとキリがないのだが、以下三点をあげたいと思う。
- 甄子丹が出ている時点で、彼がカンフーの達人であることは明らかなのに、謎解きのシーンを引っ張りすぎている。スティーブン・セガールが弱いわけはないのと同じように、甄子丹が弱いわけがないのだ。前半部分のなぞ解きは新機軸で面白いと思ったけど、アクションまでの入りが長すぎて、少々疲れる。そして、アクションシーンになるといきなり全力。
- 金城武のキャラ設定が謎。まったく貢献していないと思われる四川語はとまかくとして、彼が「もう一人の自分」を意識しているシーンは意味不明だった。意図はわかるが、あそこまで画面を暗くして演出する意味はゼロ。明らかに欧米の類似の作品から持ってきたアイデアで浮いている。
- 戦闘に無理がありすぎ。僕は武狭映画は基本的に「何でもあり」派なのだが、ちゃんとファンタジーの中でも、その文脈に沿った闘いが必要だ。いきなり理由もなく無敵になったりしてはいけない。
と、不満をあげればきりがないのだが、一言でいえばこの監督はアクション映画の「起承転結」をわかっていないのだと思う。毎年毎年同じように出てくる武狭映画の中で自分の色を出したいというのはわかるのだが、まずはそのテンポをわかった上で自分の工夫を載せてほしいものである・・と強く思った。
個人的にベスト3にあげる武狭映画である「十月围城」(日本名:孫文の義士団)ではプロデューサー側ですばらしい仕事をしたので、ぜひ今後もプロデューサーの時の視点で武狭映画を作成してほしいな・・と思いながら、帰宅して口直しをかねて十月围城を見直したのであった。
(※文中の写真はすべて百度百科とWikipediaのものを利用しています)
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